川上犬は、FCI(国際畜犬連盟)やJKC(ジャパンケネルクラブ)にも公認されていない犬種です。オオカミの血を継ぐとも言われている日本犬ですが、日本での飼育頭数も約350頭と少なく希少な犬です。そんな日本原産の川上犬の歴史について紹介していきます。
川上犬の名前になっている川上村は長野県の東南端、山試験や埼玉県秩父市、群馬県上の村と隣接している場所にあります。2000m級の山々が周囲にそびえ立つ川上村は、米を作ることに適さない厳しい寒さの土地でした。
江戸時代では米を年貢として納める必要がありましたが、米が作れない川上村では付近の山で狩ったカモシカの毛皮を変わりに納めていました。そのため厳しい気候の中、カモシカが生息する切り立った岩場を歩くことができる強靭な足腰を持った川上犬が必要だったのです。
狩猟が盛んだった大正時代には村内で、70頭ほどの川上犬が飼育されていました。しかし、昭和に入ると林業が盛んになり、猟師が減少してことや川上村に洋犬が入ったことで川上犬の数は減少しました。 さらに戦争によって絶滅寸前まで陥りましたが、戦後に村民の大変な努力の末に頭数が回復し、昭和58年には長野県から県の天然記念物に指定されました。
柴犬よりも一回り大きい程度の大きさの川上犬は、子犬でも-25℃以下の寒さでも耐えられるほどの豊富な被毛を持っています。ここでは、川上犬の体型や毛色、被毛タイプや抜け毛について紹介していきます。
JKCには非公認ですが、川上犬保存会が犬種の「規格基準書」を定めており、そのなかでは、オスが体高38~45cm、メス35~42cmとされています。オスとメスで体型にはっきりと違っており、オスの体長は体高に近いのに比べ、メスの体長は体高よりもやや高く華奢な体つきをしています。
川上犬の毛色は、赤柴、黒柴、白、赤の4種類あります。
川上犬の被毛タイプは、極寒の環境下でも適応できるようダブルコートです。オーバーコートは、真っ直ぐで太い剛毛で光沢があり、アンダーコートは防寒のために柔らかく密集して生えています。 ダブルコートのため、換毛期にはごっそりと抜け毛が発生します。この時期には毎日のブラッシングが必要ですが、普段は週2~3回程度で大丈夫でしょう。
川上犬は、ペットとして改良されていない野生に近い犬種のため、扱いの難易度はとても高いです。しかし、一度信頼関係を築くことができれば、とっても愛らしい一面を見せてくれます。詳しい川上犬の性格について説明していきます。
川上犬は、信頼関係にある飼い主にはとても従順で、ご主人さまと決めた人に一途に従う性格です。飼い主にはとてもよく従い甘えん坊な一面を見せてくれますが、フレンドリーな性格ではありません。警戒心が強く、知らない人や動物には愛想を振りません。
また、とても頭のいい犬種のため、飼い主であっても一貫性をもったしつけをし、信頼関係を築かなければ、攻撃的になり噛みつかれることもあります。 洋犬とのしつけの仕方とは違うため、日本犬特有の性質をよく理解し、とことん向き合える自信がある方でなければかなり難しいでしょう。
川上犬は、運動神経が抜群でとても活発です。小さめの体で小回りが効き、スピードがあります。また、カモシカを追っていたときの名残から、斜面などの険しい場所も難なく走ります。
そのため、平面だけの土地で散歩させるだけでは、川上犬の運動量を満たすことはできません。自然豊かな環境でたっぷりと運動させることができることが可能な方でなければ川上犬を飼育することは難しいでしょう。 また、脚力も凄まじくフェンスを軽々と超えてしまうこともあり、脱走に注意しなければなりません。
川上犬は、長野県の天然記念物に指定されているため、ペットショップやブリーダーから購入できる犬とは違います。飼育するためには、保存会の事前審査を受けて、川上犬を育てるのに適しているかどうかを判断されます。
飼育環境やしつけ、運動量など気をつけるべきことが多いため、希少犬・川上犬を迎える準備ができるかどうかしっかりと検討しましょう。