
犬猿の仲は「そりが合わずとても仲が悪い関係」であることを意味することわざです。一方だけが相手を嫌っているのではなく、双方とも相手のことをよく思っていないというニュアンスが含まれているので、どちらかが一方的に嫌っているようなケースには当てはまりません。
「犬猿の仲」は、以下のように使います。
・犬猿の仲の◯さんと◯さんの席は、隣り同士にしない方がいいよ
・昔から彼女とは犬猿の仲で、彼女の考えていることが理解できない
犬猿の仲は「仲が悪い」「険悪な関係」に置き換えられ、使い方がややこしくないので、ことわざの中では比較的よく使われています。当人それぞれが「仲が悪い」と自覚している場合や、周りの人から見ても「際立って悪い関係に見える」ときに使われます。
もし誰かと誰かが犬猿の仲だということを耳にしたときは、当人たちの関係を悪化させないように気をつけましょう。
「犬猿の仲」ということわざの由来は、いくつかの説があります。
干支になれるのは、神様のもとに挨拶をしに来た最初の12種の動物で、到着した順に十二支の順番が決まったと言われています。実はこれが犬猿の仲の由来に関係していると考えられています。
犬と猿は仲良く神様のもとへ向かいますが、いつしか“我、先に”と競争心が芽生え、途中の川にかけられた丸太の橋でどちらも自分が先に渡ろうとして、犬も猿も川に落っこちてしまいまいました。これにより大げんかが始まり仲が悪くなったからと言われています。
また、仲良く一緒に神様のもとに向かっていたところ、途中で猿が犬にいたずらを仕掛け、そのすきに猿が先に神様のところへ到着。出し抜かれた犬は猿のことが大嫌いになり仲が悪くなった、という干支が由来の説もあります。
犬も猿も干支の順番が遅いので、この由来もあり得るかもしれませんね。
2つ目の説は、干支の話と全く違い、とても現実的です。猟師に同行して猟犬が山を歩いていたところ、縄張りに入ってきたとして猿が激しく威嚇。それに対し猟犬も威嚇して激しく吠え立て、その互いに威嚇する様子が「=とても仲が悪い」ということわざの由来となっているという説です。
現実的にあり得る光景なので、納得できるところがありますよね。
犬猿の仲の類義語は「水と油」などがあります。水と油は「そりが合わない」「しっくりこない」という意味合いがあり、気が合わず仲が悪い様子を表します。性質が違う水と油は、一生懸命混ぜても分離してしまうので、この性質を「仲がよくない関係」に例えているのです。
そして、犬猿の仲の対義語には「魚と水」が挙げられます。魚にとって水は生きていくうえで欠かせないものなので、その様子を例えて「とても仲がよい関係」「親密な関係」を表すときに使われます。
「犬猿の仲」は、険悪な関係であることを強調したいときに使われることが多く、日常生活で耳にすることがあると思います。どちらか一方しか嫌っていないときは当てはまらないので、使い方を間違えないように気をつけてくださいね。また、類義語や対義語も普段から使われているので、合わせて覚えておくと便利かもしれません。以上、犬にまつわる雑学【ことわざ・犬猿の仲】でした。
新井 絵美子/動物ライター
2017年よりフリーランスライターとして、犬や動物関連の記事を中心に執筆活動をおこなう。過去に、マルチーズと一緒に暮らしていた経験をもとに、犬との生活の魅力や育て方のコツなどを、分かりやすくお伝えします。