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健康管理 / 病気

2020.01.23

犬に漢方は有効?愛犬に漢方薬を与える前に知っておきたいこと

何ヶ月も動物病院に通っているけど症状が改善されない、なんとなく体調が悪そう。そんな愛犬の体調不良の悩みを抱えている飼い主の間で話題となっているのが漢方です。

漢方と聞くと、中国数千年の歴史が生んだ体に優しい医療というイメージがありますが、実は日本で生まれた日本独自のもの。今回は、漢方についての正しい知識と犬に漢方薬を与える効果や注意点について解説します。

#Healthcare / #Lifestyle

Author :西村 百合子/ホリスティックケア・カウンセラー、愛玩動物救命士

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犬と漢方を考える|そもそも漢方とは?

漢方 犬

漢方ってよく聞く言葉だけれど、本当はどんなものなのかよくわからない、そんな方が多いのではないでしょうか。なんとなく、漢方=中国の伝統ある医療というイメージが付きまといますが、実は、漢方は日本で生まれ、日本で発展した伝統医学なのです。

江戸時代、オランダから伝来した医学が蘭方と呼ばれていたため、中国(漢の国)から伝来し発展した日本の伝統医学と、蘭方とを区別するために漢方と呼んだのです。

日本漢方とも呼ばれる漢方は、中国医学を元にしていますが、日本人の気候風土、体に合わせて独自に発展したものなのです。なお、数千年の歴史を持つ中国の伝統医療は中国医学(中医学)と呼び、中国には漢方という医療は存在しません。

理解しておきたい漢方のこと

漢方では、人の体は「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」の3つの要素で構成されていると考えます。相互作用のあるこの3つのバランスが崩れることで、病気を発症すると考えられているのです。

また、体を支える重要なものを「肝」「心」「脾」「肺」「腎」と5つに分類し、これを五臓と呼びます。

漢方の最大の特徴は、これらの考えをもとに「証」とよばれる診断方法を用いること。この証では、病気の状態の他に体質、生活環境などさまざまな角度から病気の人を診断し、治療を行います。漢方では、この証に基づいてその人に合う生薬を処方するため、同じ病気でも全く違う漢方薬を使うこともあるのです。

漢方薬とは?

漢方で処方される薬は漢方薬と呼ばれます。病院で処方される薬とは違い、漢方薬はなんとなく効き目が緩やかというイメージがありませんか?まずは、漢方薬と病院の薬との違いを理解しておきましょう。

漢方薬と病院の薬は成分が違う

ここで理解しておきたいのが、漢方薬と病院の薬の成分の違いです。

漢方薬は、植物や鉱物など自然由来の成分で作られる薬で、一般に生薬と呼ばれています。漢方薬は、漢方の理論に基づき幾つかの生薬を組み合わせて作られる薬で、副作用が少なく体全体を調整する効果を目的としています。即効性はありませんが、3日程度で効果が出るものから緩やかに効果が出るものまでさまざまあります。また、継続して飲むことが必要です。

一方、動物病院で処方される薬は、化学的に合成された単一成分で作られています。即効性のあるものが多く、対症療法とも呼ばれています。風邪薬で例えると、漢方薬では植物由来の天然成分で作られた葛根湯、病院で処方される薬は化学的に作られた解熱剤や抗ヒスタミン剤です。

漢方と西洋医学では治療に関する考え方が違う

西洋医学では、悪いところをターゲットにした治療をするため、特定の症状に対して効果のある薬が処方されます。例えば、頭が痛い場合には頭痛鎮痛薬、お腹が痛い場合には胃薬と単一成分で構成された痛みを抑えるための薬が処方されるのです。そして、多くの人に同じ内容の薬が処方されることも西洋医学の特徴です。病院の薬は、局所的に対応するものなのです。

これに対し、漢方ではその人ぞれぞれの体全体の状態を見た上で、体の働きを正常に戻すための生薬が処方されることが特徴です。風邪には葛根湯が最適だと思われる方も多いと思いますが、実は、その人の体の状態によっては葛根湯以外の薬の方が効果が出る場合もあるのです。漢方薬は、体調の悪い人の体全体を見て、全身のひずみを治していく総合的な治療なのです。

犬に漢方薬を与えてもいい?

漢方 犬

最近では、動物病院でも漢方薬を処方する獣医師が増えてきています。漢方は、犬にとっても有効な治療法のひとつです。従来の治療では改善されなかった症状や慢性的な病気の場合、犬にも漢方を取り入れることを選択肢の一つとして考えてみてはいかがでしょうか。

犬に漢方薬をおすすめできる理由

漢方薬は、その犬ごとの症状に合わせて処方される薬です。通常、慢性疾患では、対症療法としてステロイドが処方されます。長期間にわたるステロイドの服用は、食欲が落ちてしまった、かえって体調が悪くなったなど、犬の体に負担をかける場合があります。漢方薬は、自然由来の成分で作られているため、そのような副作用が出にくいこともおすすめできる理由の一つです。

また、動物病院では診断がつかない体の不調にも、体全体のバランスを整え、症状に対する原因を取り除く漢方薬は有効です。漢方の大きな特徴は「未病」という考えで、病気にならない体を維持すること。なんとなく調子が悪そう、特にこれといった症状はないけれどいつもと様子が違う、そんな動物病院では診断がつかない症状の時にも漢方薬をおすすめします。

漢方薬はどんな時に効く?期待できる効果とは

漢方 犬

漢方では、全身の状態、症状の原因を探る「証」と呼ばれる診断を行い、漢方薬を処方します。
例えば、同じアトピー性皮膚炎だからと言って、どの犬にも同じ漢方薬が処方されるのではなく、生活環境や全身の状態、食べているものなどを考慮し、違う生薬を配合した漢方薬が処方されることもあるのです。一頭一頭の状態や生活環境に合わせて配合される漢方薬は、あらゆる犬のさまざまな症状改善に期待ができる薬だと言えます。

慢性疾患には効果が期待できる

慢性疾患の代表とも言えるのが、現代の犬に多いアトピー性皮膚炎です。動物病院では、かゆみ止めとしてステロイドが処方されることが一般的です。ステロイドは、一時的に痒みを止める効果はありますが、副作用や肝臓、腎臓への影響を考慮すると、長期間投与したくない薬の一つです。

また、ステロイドを飲んだからといって、アトピー性皮膚炎が完治するわけでもありません。漢方薬は、全身のバランスを整え症状を改善するのに役立つ薬です。どんな薬を飲んでも改善されない慢性疾患では、漢方薬の効果が期待できます。

自己免疫力アップが期待できる

動物には、元来自分の力で健康を維持する自然治癒力が備わっています。その自然治癒力を高めるには、自己免疫力アップが大切です。自然界にある植物や鉱物から作られる漢方薬には、動物の自己免疫力向上に役立つ力が備わっています。漢方の特徴は、内臓のバランスを整え免疫力を高めること。内臓のバランスが整うことで、自己免疫疾患である病気に対しても有効に働くと考えられています。

体質改善にも期待ができる

犬がストレスを溜め込むとバランスが崩れ、健康に悪影響をもたらします。体のバランスが乱れると代謝が悪くなり、余計な水分や脂肪を溜め込みます。水分や脂肪を体内に溜め込むことは、肥満への第一歩。漢方薬は、内臓のバランスを整え代謝力を上げ、全身の機能がしっかりと働くように調節をします。

犬に漢方薬を与える際の注意点とは

漢方 犬

漢方薬は、犬にも有効な薬であることがわかっています。しかし、与え方を間違えるとかえって健康を害する可能性もあるので注意が必要です。また、植物アレルギーのチェックを獣医師に行ってもらうことも大切です。

注意点1:漢方薬を処方してもらうためには飼い主の観察力が重要

漢方薬を与えるためには、飼い主が愛犬の症状をどのぐらい把握しているのかがポイントです。漢方で最も大事にされているのが証という診断方法です。話ができる人間の場合は、自分がどのように体調が悪いのか、普段どんなものを食べているのかなどを詳しく医師に伝えられますが、犬は口がきけません。そのため、犬の代わりに飼い主が症状を詳しく医師に伝える必要があります。犬に合わせた漢方薬を処方してもらうためには、飼い主の観察力がとても重要になるのです。

注意点2:他の犬と同じ漢方薬は飲ませないで

「この漢方薬、ウチの犬に効いたから飲ませてみて」そんなことを言われたことはありませんか?漢方薬は、その犬一頭ずつの体調や生活環境、食生活など全てを考慮した上で処方される薬です。知り合いの犬に効果が確認されたからといって、愛犬に同じように効果が出るとは限りません。最悪の場合は、深刻な副作用が出ることもあるので、注意が必要です。

注意点3:素人判断で人間用の漢方薬を飲ませないで

動物病院では、獣医師の判断で人間用の漢方薬を処方しているところも多くあります。だからと言って素人判断で、ドラッグストアなどで漢方薬を購入し飲ませた場合、その犬の体質や症状に合わないと副作用が出る可能性があります。また、市販されている漢方薬は成分量が少ないものが多いため、医師が処方した漢方薬に比べると効果が出にくい可能性もあるので、注意しましょう。

注意点4:用量を守りましょう

漢方薬は、症状によっては強い成分を持つ植物を使用することもあるため、必ず容量を守る必要があります。病院で処方される薬に比べて、漢方薬はゆっくりと効果が現れます。効果が出ないからといって用量を増やすことは犬にとって大きな負担となります。また、漢方薬は犬にとって、とても良い匂いと感じる成分のものがあるため注意が必要です。もし、誤飲してしまった場合は、すぐに動物病院へ連れて行きましょう。

犬の体に負担が少ない漢方薬だけれど注意も必要

漢方 犬

犬が本来持つ生命力を高めてくれる漢方薬は、犬のQOLにも役立つ薬として注目を集めています。最近では、日本全国に漢方を取り扱う動物病院が増えてきています。自然治癒力を高めてくれる犬にとって嬉しい効果が期待できる漢方ですが、成分が強いものもあります。病院の薬で改善されないからといって、安易に漢方薬を犬に与えるのではなく、獣医師や専門の薬剤師に相談し、犬の体質に合ったものを処方してもらうことが大切です。

◎ライタープロフィール
西村 百合子

西村 百合子/ホリスティックケア・カウンセラー、愛玩動物救命士

ゴールデンレトリバーと暮らして20年以上。今は3代目ディロンと海・湖でSUP、ウインドサーフィンを楽しむ日々を過ごす。初代の愛犬が心臓病を患ったことをきっかけに、ホリスティックケア・カウンセラーの資格を取得。
現在、愛犬のためにハーブ療法・東洋医学などを学んでおり、2014年よりその知識を広めるべく執筆活動を開始。記事を書く上で大切にしていることは常に犬目線を主軸を置き、「正しい」だけでなく「犬オーナーが納得して使える」知識を届ける、ということ。

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