
加熱した卵、生のままの卵、いずれの場合も犬が食べて問題ありません。犬の健康維持に役立つ栄養素が多く含まれていますから、適量であれば与えていきたいところ。まずは、どのような栄養素が含まれているのかご紹介します。
生卵には、ビタミンCを除くほとんどのビタミン類が含有されており、その多くは犬の健康にとって必要不可欠なものばかりです。
その中でも、特に注目のビタミンを見ていきましょう。
抗酸化作用で細胞の働きや再生を活発にしてくれます。免疫力も上がるので体力が落ち気味の時に特に効果を発揮します。
また皮膚や被毛の健康維持にも役立つため、犬にとってはなくてはならない栄養素だと言えるでしょう。
ビタミンDは「骨のビタミン」とも言われ、腸管からカルシウムやリンを吸収する手助けをしています。
体内では生成できないビタミンですから、食物から摂取した上で日光に当たることが望ましいでしょう。骨格や筋肉の維持に繋がっている大切な栄養素だと言えるでしょう。
コバラミンとも言われ、ビタミンの中で唯一、分子の中にミネラルを含んでいます。赤血球の形成に重要な役割を果たし、たんぱく質の合成にも深くかかわっています。
卵は動物性たんぱく質ですから消化吸収が容易で、犬にとって重要なエネルギー源となるものです。
筋肉量の維持や皮膚、被毛の健康維持にも欠かせません。特に筋肉量が落ちる傾向にあるシニア犬の場合ほど大切な栄養素となります。
犬に生卵を与える際は、注意してほしい点がいくつかあります。これは人間にとっても共通することなのですが、とにかく与えすぎは厳禁です。
せっかくの栄養素も、過剰摂取になると逆効果になる場合もあるのです。
卵は栄養素が豊富であると同時に高カロリーな食材でもあります。卵1個で80キロカロリーもありますし、与えすぎは肥満が心配になります。
いつものドライフードの分量を減らすか、日を開けて与えるようにしましょう。
人間の場合もそうですが、古くなった卵は生の状態で与えずに加熱してから与えましょう。
サルモネラ菌など、食中毒の原因となる菌は殺菌処理済みですが、古くなると雑菌が繁殖してくる可能性があります。
犬に生卵を食べさせると下痢をしやすいという声も聞かれます。どのようなメカニズムでそうなるのか?解説していきましょう。
また、卵を摂取することによる影響も合わせてご紹介していきますね。
白身の中に含まれている物質によって腸の消化酵素の働きが阻害され、軟便や下痢の原因となることがあります。
とは言っても、少量摂取するだけでは影響はありません。
生卵の白身にはアビジンという物質が含まれており、腸内でビオチンと結合してしまいます。その結果ビオチン欠乏症を引き起こし、食欲不振、脱毛、皮膚炎などを起こす可能性があります。
大量の生卵を継続して摂取することにより起こるものですから、普通の食生活をさせている分には問題はありません。
卵にもアレルゲン因子があるため、アレルギーの症状が出たら動物病院等での診察をおすすめします。
皮膚や被毛の状態をよく観察し、痒がる仕草がないかについても、日ごろから気を付けて見ておくようにしましょう。
生卵には豊富な栄養が含まれていて、犬の健康維持にも役立つ食材と言えます。しかし、生であるがゆえに多少のリスクがあることも分かりました。
もし、下痢やビオチン欠乏症に対する不安や心配があれば、白身を加熱することで不活性化できますので、愛犬の状態をよく観察しながら与え方を考えましょう。
▼以下の資料を参考に執筆しました。
※たまごの栄養と食生活(農林水産省・近畿農政局)
※ビオチン解説(国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所)
明石則実/動物ライター
フリーライターとして動物関連や歴史系記事の執筆を多数おこなう。柴犬と暮らす傍ら、趣味の旅行や城めぐりで愛犬と駆け回る週末。
愛犬家の皆さんにとって、お悩みを解決したり、有益な情報を発信することを心掛けています。