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犬の生態 / 気持ち

2019.12.27

動物行動学から読み解く「犬の表情」の変化|犬たちは意図的に表情を変えるのか

動物行動学では、「環境の変化とともに動物たちがとる行動がどのように変わるのか?」や、「学習によって本能はどう変わるのか?」などといった命題について研究されています。
犬の行動については、これまでに多くの研究者たちが研究を重ねてきました。しかし、犬の表情に関しては、「単に反射的なものに過ぎない」とする学説もあれば、最近では、「意識的に表情を作っている」とする研究成果も発表されています。
今回は、動物行動学の研究から分かった「犬の表情」について解説します。

Author :docdog編集部

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動物行動学における感情表現の区分|犬は表情を作れる?

動物行動学 犬の表情

動物の感情表現の違いについては、霊長類か非霊長類かで異なります。
霊長類はサル目とも呼ばれ、ヒトも含めたサルなど約220種で構成される動物区分です。哺乳動物の中でも脳が発達した動物が分類され、ここに分類される動物は、「感情表現」と「表情」が密接に関係すると言われています。

可笑しければ笑う。霊長類特有の特徴

数多くいる霊長類の中でも、明らかに「笑う」という表情が作れると認識されている動物は、ヒトと類人猿(チンパンジーやゴリラなど)だけだとされています。

英国ポーツマス大学の心理学者マリーナ・ダビラ・ロス氏によれば、1600万年前に生息していた類人猿の祖先から、笑う能力を引き継いでいるのがこれらの動物だそうです。コミュニケーション方法の一つとして、「笑う」というツールを身に付けてきたのが霊長類の特徴と言えるでしょう。

また、他者から見られたり注目されたりすることによって、表情に変化が起こり、表情が形作られているという研究結果も発表されています。

犬の表情は?

一方で非霊長類の場合は、楽しいときに笑う、見らたとき表情を作るなど、感受性による表情の変化は見られないと言われています。

犬の場合では、嬉しさや喜びを表すとき、しっぽを振る、激しく動き回るなどといった行動で感情を表現すると認知されてきました。
しかし、犬は数万年も前から人間社会で私たちと暮らしてきましたから、人間に対する感情表現を備えていったと考える研究者もいます。

実際に、犬はオオカミとは違って、疲労しにくい遅筋繊維が顔面筋肉に多く、同じ表情を長く保つことができると言われています。飼い主さん自身も「あ、今笑ってる!」と感じることも少なくないのではないでしょうか?

人間との長い歴史の中で、表情を使ってコミュニケーションを取る人間に、寄り添うかたちで犬たちのコミュニケーション方法が進化してきたとも言えるかもしれません。

動物行動学の研究から、犬に表情があると分かった!?

動物行動学 犬の表情

犬たちは、果たして自らの意志や感情によって表情を作れるのか、その問いに対する新しい研究成果が2017年に発表されました。
研究をおこなったのは、英国ポーツマス大学の心理学者ジュリアン・カミンスキー博士らのグループ。人間に注目されている時とそうでない時で、犬の表情がどのように変化するかを調べました。

カミンスキー博士がおこなった実験

何も変化がない環境で、犬が自分から表情を作ることは考えにくいですから、まずは環境を作る必要があります。その概要を見ていきましょう。

参加した犬たち

この実験に参加したのは、ダルメシアン、ゴールデン・レトリーバー、ボクサー、ボーダー・コリーなどのほか、雑種犬も含まれていました。
年齢は1~11歳までと幅広く、何の訓練も受けていない、ごく普通の24頭が選ばれました。

実験の内容

飼い主代わりの人を犬の前に立たせ、以下の4つの条件下で、犬の表情がどう変化するかをビデオカメラで撮影します。

A.食べ物を持って犬に顔を向けている
B.食べ物を持たずに犬に顔を向けている
C.食べ物を持って犬に背中を向けている
D.食べ物を持たずに犬に背中を向けている

結果から分かったこと

結果は、人が食べ物を持っているかどうかに関わらず、犬に顔を向けているときの方が、背中を向けている時よりも、犬の顔の動きが活発になったとのことでした。

食べ物を持っているか否かは活発な表情変化に影響しなかったことから、人の注目が自分にあるかどうかで表情を変化させている、つまり人に対して顔の表情で何かコミュニケーションを図ろうとしているのではないかと考えられました。

反射的かつ無意識に顔面の筋肉を動かしているだけではなく、随意に。意識的に表情を変えている、と表現しても良いでしょう。

犬はコミュニケーション好きな動物

動物行動学 犬の表情

私たちが普段犬と接する中でも、この子たちは本当に感情豊かだなと思うことがあります。それは、人間が読み取れるかたちで、犬たちが気持ちを伝えられている証拠でしょう。
喜びや怒り、悲しみといった感情を全身で表し、大好きな飼い主さんの顔をじっと見て表情を変えることもよくあります。大好きな愛犬と一緒にいるときに、彼ら彼女らの表情にも少し注目してみると、何を伝えようとしているのかが少しずつ分かってくるかもしれません。

  • 更新日:

    2019.12.27

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