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茶色と白の毛の犬が軟便でぐったりしている
健康管理 / 病気
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2021.10.05

【獣医師監修】犬の軟便、様子をみても大丈夫?考えられる原因や対処法とは

いつもはコロコロしている犬の便が突然ゆるくなり、軟便になってしまい心配になったことはありませんか?
便は犬だけではなく、人間や他の動物にとっても「健康のバロメーター」とも言われています。便の状態を観察することは、犬の健康状態を知る手がかりです。ここでは、犬が軟便になった場合に考えられる原因や治療法・予防法をご紹介します。

監修:加藤 みゆき/獣医師(文:江野 友紀/認定動物看護士)

犬の軟便ってどんな病気?

ベージュの毛の子犬が土に軟便を出している

便に含まれる水分量が異常に増え、通常よりも少し柔らかくなったものを軟便と言います。下痢の場合は水分が多すぎて形がありませんが、軟便には形があります。
食べ過ぎなどによる一過性の軟便であれば様子を見ることも可能ですが、軟便が何日も続いたり、嘔吐する、下痢になるなどの症状が見られる場合は要注意です。

初期症状とチェック項目

犬が軟便になる前には、お腹がキュルキュルと鳴ったり、食欲が低下することがあります。

犬の軟便に、粘膜や血が付いていたら

犬の軟便に、透明や半透明のゼリーのようなものが付着していることがあります。これは大腸の表面を保護している粘液や、腸の粘膜が剥がれて便に付着したものです。犬では健康状態が悪くない場合にも時々見られる症状ですが、大腸炎を起こしているときに見られます。

大腸炎になると腸が出血を起こし、血便になることもあります。粘液状のものが便に付着する症状が続く場合には、病気の疑いがあるので動物病院を受診しましょう。

他の犬や人にうつる?

軟便の原因が食べ過ぎや食事の変更によるものであったり、アレルギーによる消化不良の場合は、他の犬や人にうつる心配は無いでしょう。
寄生虫感染やウイルス感染、細菌感染など、感染症が軟便を引き起こしている場合は、うつされた側の犬や人が体調を崩し、軟便になる可能性は考えられます。

犬が軟便になる原因とは

クリーム色の毛の犬が軟便で体調を崩してぐったりしている

犬の便がゆるくなる原因には、何が考えられるのでしょうか?

原因【1】食べ物

フードの種類を切り替えたときや、食べ慣れない食材を与えたとき、いつもと同じフードであっても食べ過ぎたときなどに便がゆるくなることがあります。
また、犬の体質によっては、食物アレルギーによって軟便になっている場合も考えられます。

原因【2】ストレス

人と同じように、犬もストレスが原因で便に変化がみられることがあります。ストレスには、精神的なストレスと身体的なストレスがありますが、どちらも軟便の原因になり得ます。

精神的なストレス

新しくペットを迎えたり、近所で始まった工事の騒音がひどかったり、ペットホテルに預けられるなど、精神的なストレスを感じることで軟便や下痢になることがあります。

身体的なストレス

暑い日に長時間エアコンの効いていない車の中にいたり、病気や怪我、手術などによる痛みなど、身体的ストレスを受けることも軟便の原因になります。

原因【3】感染症

寄生虫感染やウイルス感染、細菌感染など、感染症が原因で軟便になることもあります。

寄生虫感染

特に仔犬では、犬回虫やコクシジウム、ジアルジアなどの内部寄生虫の感染により軟便が続くことがあります。仔犬が軟便や下痢を繰り返すと、脱水症状などにより短期間で重症化することがあるので、早めに対処する必要があります。

ウイルス感染

犬パルボウイルスや犬ジステンパーウイルス、犬コロナウイルスなどの感染症にかかると、軟便や下痢、血便、嘔吐、食欲不振などの症状を呈します。仔犬や高齢犬が罹患すると重篤になりやすく、命に関わることも考えられます。
ウイルス感染を予防するためには、獣医師の指示通りにワクチン接種を受けることが大切です。

細菌感染

大腸菌やカンピロバクター菌、サルモネラ菌により腸炎を引き起こすと軟便や下痢になります。拾い食いなどでこれらに汚染された食べ物や水を口にすることにより腸内で細菌が増殖して、ダメージを受けた腸粘膜が炎症を引き起こして腹痛や嘔吐、発熱を起こす場合もあります。

原因【4】内臓疾患など

膵炎や炎症性腸疾患(IBD)、消化器型の悪性腫瘍などの病気でも、軟便や下痢、嘔吐などの症状が見られます。

膵炎

膵炎は、膵臓の炎症により消化器症状や腹痛などを呈する病気です。はっきりとした原因はわからないことが多いですが、肥満や高脂肪食、高カルシウム血症、糖尿病などは要因として考えられています。

炎症性腸疾患(IBD)

炎症性腸疾患(IBD)は原因不明の慢性的な消化器疾患で、多くは長期にわたる内科治療が必要になります。遺伝的な素因や食べ物、免疫システムの異常などの関与があると考えられています。

消化器型の悪性腫瘍

胃や腸に腫瘍ができ、食欲不振や吐き気、下痢などの症状が現われます。悪性腫瘍は転移が多く見られるので、病気の早期発見・早期治療に努めることが大切です。

かかりやすい犬種や年齢は?

犬種によっての違いは無いと考えられていますが、胃腸が弱いなどの個体差はあるようです。また、食物アレルギーが起こりやすい柴犬やフレンチ・ブルドッグ、ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリアなどは、他の犬種と比べ食べ物の影響により軟便になりやすいと言えるかもしれません。

仔犬は成犬と比べ、軟便になりやすい傾向があります。理由は様々ですが、消化機能がまだ十分に発達していないことや、免疫力が不十分であること、ペットショップから家庭に迎えられるなどの生活環境の変化などが軟便につながることがあります。

犬の軟便の治療法とは

茶色の毛の犬が軟便でトイレトレーの隣でぐったりとしている

動物病院では、まず下痢の原因を特定します。検便をして寄生虫が見つかれば、その寄生虫に対する駆虫薬を投与し、ストレスなどが原因であれば整腸剤や下痢止めを使います。

食物アレルギーが疑われれば、アレルギーに対応した療法食への切り替えが推奨されることもあります。また、腫瘍が原因であれば抗がん剤の投与や手術など、病気に対する根本的な治療が必要になります。

獣医師が軟便の原因を特定する上で、実際に軟便を見たり飼い主さんの話を聞くことはとても参考になります。病院に行く際にはなるべく新鮮な便を持参し、いつから軟便なのか、回数はどのくらいか、軟便に伴い嘔吐などのほかの症状がみられないかなど、正確に報告できるように準備しましょう。

治療にかかる費用

食事の変更やストレスなどの原因が疑われる軽度の軟便の場合は、整腸剤や検便など2,000~3,000円くらいで済むこともあります。
軟便が何日も続くときや他の症状を伴うなど、病気が疑われる場合には、原因を特定するための血液検査や超音波検査、レントゲン検査など一回目の診察時に一万円以上かかることもあります。

自宅で様子を見ることは可能?

食べ過ぎなど原因がはっきりしていて、元気や食欲がある、他の症状を伴わないといった場合には、取りあえず自宅で様子を見ることも可能です。

半日ほど絶食させるか、ごはんの量をいつもの半分くらいに減らすなど、胃腸にかかる負担を減らす工夫をすることで症状が改善される場合もあります。ごはんを完全に抜くと嘔吐してしまう場合は、少量を与えるようにします。

仔犬の場合はごはんの間隔が空くと、低血糖を引き起こしやすいというリスクがあるので注意が必要です。動物病院を受診し、早めに治療を受けることをお勧めします。

犬の軟便の予防法とは

白と黒の毛の犬が軟便のため芝生の上で横たわっている

犬は食事の影響で軟便になることがよくあります。食事内容の急変は消化不良の原因になるので、ドッグフードの種類を切り替える際には1~2週間かけて新しいフードの比率を増やすようにして切り替えましょう。

ウイルス感染による軟便は、ワクチン接種による予防が可能であり、寄生虫感染には定期的な検便や駆虫薬の投与が有効です。

ストレスによる軟便は、原因を取り除いてあげることが大切です。慣れない環境に連れて行き緊張している場合は優しく声をかけて落ち着かせたり、運動不足によるものであれば十分にお散歩させたり、ドッグランでストレス発散させてあげましょう。

再発する可能性

軟便の原因によっては、再発しやすいことがあります。きちんと検査を受けて原因を特定したり、獣医師の指示どおりに通院して治療を受けることが大切です。

犬の軟便との向き合い方

ベージュの毛の犬が軟便が治り元気に散歩をしている

一度だけ軟便が出たものの、その後はいつもの便の固さに戻るなど、症状が一時的であればあまり心配ありませんが、軟便が続いたり他に症状を伴う場合には何らかの病気の疑いがあります。病気は治療せずに様子を見ていると悪化したり治療しても治りにくくなる場合があるので、長く様子を見ずに動物病院を受診しましょう。

  • 公開日:

    2019.12.25

  • 更新日:

    2021.10.05

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ライター・専門家プロフィール
  • 加藤 みゆき
  • 獣医師
  • 日本獣医生命科学大学(旧・日本獣医畜産学部)を卒業後、獣医師として埼玉県内の動物病院にて犬・猫・小鳥の小動物臨床とホリスティック医療を経験。その後、小動物臨床専門誌の編集者を勤めた後、現在は都内の動物病院にて臨床に従事。 日々発展する小動物臨床の知識を常にアップデートし、犬に関する情報を通じて皆様と愛犬との暮らしがより豊かなものとなるように勉強を重ねて参ります。