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住まい / 生活

2019.11.05

2019年動物愛護法改正のポイント・施行時期は?ペット業界の課題・海外の法律も解説

2019年6月12日、動物愛護法の改正案が参議院本会議で可決されました。ニュースでご覧になった方も多いのではないでしょうか。 今回の動物愛護法改正でどんなことが変わったのか?まだご存知ない方や内容がよく分からなかったという方のために、改正されたポイントを分かりやすく解説していきます。 また、ペット業界における課題や世界の各国の法律にも触れてみたいと思います。

#Lifestyle

Author :大森 きこ/ドッグライター

2019年動物愛護法改正の大きなポイントは3つ

動物愛護法 改正

動物愛護法改正では新しく加わったことや内容が変更されたことなどがありますが、皆さんは正しい内容をご存知でしょうか? 今回の動物愛護法改正での主なポイントを3つご紹介します。

マイクロチップの義務化

今回改正された中で新しく追加されたのが「マイクロチップの義務化」です。これはペットショップやブリーダーなど、販売される犬猫にマイクロチップの装着をしてから販売しなくてはいけないという法律です。マイクロチップを埋め込むことで、犬猫の遺棄や虐待があった際に飼い主が特定できるようになります。また、鑑札を付けずに迷子になった犬猫も飼い主がすぐに分かるようになるので、今までよりもお家に帰れる確率が上がることが期待されています。

しかし問題点としては、「今後販売される犬猫」が対象ということです。現在飼育されている犬猫については任意となるので、日本で飼育される全ての犬猫にマイクロチップが装着されるまでは、まだもう少し時間がかかってしまいます。

マイクロチップってなに?

マイクロチップは動物の個体識別をするための情報(飼い主の名前や連絡先)が入っている直径2㎜、長さ約8~12㎜の円筒形の電子標識器具です。「手術をしてGPS発信機のようなものを動物の体に埋め込むのではないか」とイメージをされている方もいると思いますが、実際は注射器のような形をしたチップ注入器で埋め込みます。 痛みは注射と同じくらいと言われており、麻酔や鎮痛剤などは使用する必要がありません。マイクロチップに登録する情報は、飼い主が「動物ID普及推進会議(AIPO)」のデータベースへ入力することで完了するのが現在の流れです。

参考: 環境省「マイクロチップを入れていますか?」

生後8週までの販売は禁止

今までは生後7週齢(49日)以降であればペットショップやブリーダーでの販売が許されていましたが、今回の改正により1週引き伸ばされ、生後8週齢(56日)以降の販売が義務付けられました。

この改正は「親元にいる期間を長くするため」「幼いほど衝動買いが増えるため」という理由から引き伸ばされました。 しかし、犬の社会化期は生後3週齢~12週齢と言われており、この時期にたくさんの人や音・他の動物と触れ合い社会を学ぶ必要があります。そのため、生後8週齢では意味が無いという意見も出ており、改正による効果がどう出るのかが注目を集めています。

また、天然記念物として登録されている日本犬6犬種については例外となり、生後7週齢での販売が継続されるとのことです。

動物虐待に関する厳罰化

動物虐待は昔から問題となっていましたが、近年SNSの普及によって可視化されることが増えてきました。 今回の改正では動物殺傷の罰則が「懲役2年」から「懲役5年」へ、または500万円以下の罰金と強化されています。さらに、動物虐待や遺棄の罰則として1年以下の懲役が加えられます。

2019年動物愛護法改正の施行時期

今回の改正は、2019年6月18日に交付され、施行はそこから一年以内に行われます。(施行とは法律が実際に現場に落とし込まれることを指します)

動物愛護法改正に関係するペット業界の課題

動物愛護法 改正

ペット業界の課題は、毎年劇的に変わるということも無く、もう何年も同じような課題を抱えていると言えます。

以前に比べれば風向きも変わってきており、少しずつ前進をしていますが、まだまだ課題解決に向けてやらなければいけないことが多いのがも現状です。 今回の法改正にも関係するペット業界の課題を、全ての問題に関して共通する「飼い主(消費者)の意識改革」と合わせて解説していきます。

殺処分問題

保健所や動物愛護センターが犬猫の引取を拒否出来るようになったこと、殺処分を行わないセンターが増えたことで殺処分数は減りつつあります。しかし、その分センターや保護施設の手が一杯になっているという現実もあります。ペットの遺棄は今後マイクロチップ装着の義務化によって減っていくかと思いますが、愛護センターや保護団体への持ち込みが減るかは分かりません。

「ペットショップで買わずに保護犬を引き取ろう」といった声が上がるようになり、10年前に比べると保健所やセンターからの譲渡率も右肩上がりで伸びています。「捨てられる動物を保護するキャパと譲渡を増やすことが大切だ」とも言われますが、それではいつまで経っても犬を手放す人はいなくなりませんし、むしろ捨てる人の為に受け皿を増やしている状況になってしまいます。

本当に殺処分を無くすことを考えるのであれば、ペット業界はペットショップで安易にペットを買えるシステムを無くし、ペットを飼ったら最後まで大切に面倒を見る人を増やす啓蒙に力を入れるべき、という意見もあります。

防災対策

環境省では、災害時の飼い主の役割として「同行避難」と「災害避難時における飼育管理」を挙げています。災害時にペットと離れ離れになってしまうと、迷子になっている間にケガをしたり死亡してしまう危険性があります。 さらに、人馴れしていない犬の場合は捕獲にも多くの労力が必要となりますし、野生化してしまった場合、繁殖をして野犬の群れが出来上がる可能性もあります。

今回の動物愛護法改正によってマイクロチップの義務化が加わったため、離れ離れになってしまったとしても今までよりは家族の元へ帰れる犬猫が増えるかもしれません。しかし、まだまだペットを飼育している多くの人は災害時の備えや地域の同行避難の確認が不十分であるというデータも出ています。

ペット業界は「飼育の意識を高く持とう」というプロモーションをメインにおこなっていますが、もっともっと災害時に対応したプロモーションを打ち出すことでペットを飼育している人たちの意識も変わり、災害時に可哀想な思いをする犬猫が減るのではないかと考えられます。

参考: 環境省「災害時におけるペットの救護対策ガイドライン」

ペットの高齢化問題

一般社団法人ペットフード協会の「平成30年 全国犬猫飼育実態調査」によると、調査対象の1300頭のうち半数以上が7歳以上のシニア犬という結果となっています。ペットの高齢化は獣医療の発達や飼い主さんの意識の向上が要因とされており、一日でも多くの日々を一緒に過ごせることは飼い主さんにとっても喜ばしいことですよね。

しかし、ペットの高齢化によって起こる問題点として病気の多様化があります。シニア犬の病気で金銭面の負担が大きくなり、犬を手放してしまうという飼い主さんも少なくありません。

また、犬は子犬から飼い始めれば平均して10~13年は生きますし、長生きすれば15年を越えることも珍しくはありません。その間に飼い主さんも歳を取るため、人と犬との老老介護という場面も増えてくるでしょう。

ペット業界はこれから犬の飼育を始める方に対して、犬の寿命やシニア期の病気についてしっかりと説明し、老犬ホームなどの提案も積極的におこなっていく必要があると言えます。

海外の法律

動物愛護法 改正

ドイツのペットに関する法律

ペット先進国とも言われるドイツは犬に対する意識が高いことでも有名です。ドイツのペットに関する法律は日本よりも厳しく、大前提にペットの店頭販売が禁止されています。 飼育を始めてからも1歳になるまでは室内飼育が義務付けられていることや、屋外で飼育する場合も囲いの大きさや犬小屋の広さまで細かく決められています。

カナダのペットに関する法律

カナダでは動物虐待に関する罰則が厳しく、買い物中の車内放置・屋外への繋ぎっぱなし等が通報される対象となり、逮捕となります。日本ではまだまだ当たり前のように見られる光景ですよね。罰則や内容の違いは強弱はあるものの、日本と海外の動物愛護に関する法律は似てきています。世界中どの国でもペットを家族として大切にしようという思いの表れではないでしょうか。

動物愛護法改正をきっかけに、犬と人が幸福な関係を築ける社会を

動物愛護法 改正

今回の動物愛護法改正では、多くの保護活動者やペット業界の方々が望む形までは到達しなかったと言われていますが、それでも少しずつ前進しているとも言えます。 ペットを飼う全ての人間がしっかり動物と向き合い、終生飼育をして、法律で管理しなくても良い社会になることが理想であることは言うまでもありません。今回の改正をきっかけに、1匹でも多くの悲しむペットがいなくなるよう、私たちに出来ることは何か?をいま一度、考えてみてはいかがでしょうか?

◎ライタープロフィール
大森 きこ

大森 きこ/ドッグライター

家族で出来る範囲での保護活動をしています。今まで小型犬から大型犬まで様々なコたちと出会い、新しい家族を見つけるお手伝いをしてきました。どんなコでも迎えてあげられるようにと、現在はペット看護師の資格を取るための勉強中です。

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