骨折は、犬で最も多いケガと言われています。なぜ骨折してしまうのか、その原因を知っておくことで愛犬の骨折予防にも役立てていきましょう。
骨折の多くは、落下事故です。
抱っこや階段など高い所から落下した際の衝撃で起こることが多く、中でも1歳以下の子犬が骨折をする率はとても高いです。
また、年齢を重ね、体が衰えてくることで、関節や骨が弱くなり、ちょっとした衝撃で骨折してしまうこともあります。
骨折をすると、骨が折れた部分の腫れ・熱を帯びる・痛み・歩行困難といった症状が見られるようになります。骨折してしまった足は地面に着くことができず、常に足を挙げた状態でいることが多いです。そのため、抱っこしたり痛みのある部分を触ろうとすると、嫌がったり痛みから攻撃的になることもあります。
また、日常生活の中であれば四肢(足)の骨折がほとんどですが、交通事故や高所から落下してしまった場合には、その他の部位を骨折している可能性があります。この場合、損傷を受けた場所によって様々な症状が引き起こりますが、肋骨の骨折などは、普段元気に歩き回っているのに、ジャンプをしたり走ったりしない等、なかなか症状に気付きにくいこともあります。
犬は怪我をしていても飼い主さんに隠そうとする習性があります。そのため、飼い主さんが異変に気付き、病院に連れて行ったときには既に複雑に骨がくっついてしまっていたという事例もあります。愛犬が辛く悲しい想いをしないためにも、日頃から愛犬のボディ・行動チェックは欠かさないようにしましょう。
ここでは、愛犬が骨折しているかも?と疑われる場合の事例をご紹介します。
・手足を引きずっている
・関節などが腫れている
・飛び跳ねたり走ったりしない
・元気がない、隅の方でじっとしている
・体を触ると嫌がる、唸る
骨折は、早期発見・早期治療をすることで良い状態での完治率が高まります。そのため、早い段階で動物病院を受診することと、症状にあった治療法を行ってもらうことが大切です。
骨折の可能性があると判断した場合、すぐに動物病院に連れて行きましょう。
動物病院では、骨折の疑いがあると触診だけでなく必ずレントゲンで骨の評価を行います。レントゲンを見れば、骨の状態がすぐに分かるので、骨折した部分がどのような状態になっているかを判断することが可能です。
私たちもそうですが、犬にも自然治癒力というものが存在します。不思議なのもので、骨折をすると、自然治癒の力で骨をくっつけようと体内の細胞が働きかけるのです。つまり、そのまま放置していても、骨はくっつくということです。しかし、元の場所でくっつこうとはしないため、変な角度のまま骨がくっついてしまったり、本来あってはならない場所でくっついてしまうといったトラブルがあり、今後の日常生活に支障をきたす可能性が高まります。こうした問題を防ぐためにも、ギプスによる固定など、適正な治療が必要になってきます。
治療で最も多いのが、ギプス固定です。ギプス固定は、手術困難な場所や手術までの間などに使用することが多い治療法ですが、症状が軽い場合などはギブス固定だけで治療することもあります。
次に多い治療法が、プレート固定です。 手術が必要な治療法で、骨と骨を金属製の細いプレートで固定する方法です。手術が必要な骨折で最も多く用いられる治療法で、最近では完治した後にプレートを取り出す再手術が必要ない金属を使用する病院も増えてきました。
骨折は、どの大きさの犬種にも起こりうるケガですが、中でも足が細く長い犬種に多い傾向があります。
また、小型犬ではミニチュア・ピンシャー、ポメラニアン、チワワ、イタリアン・グレーハウンド、トイ・プードル、マルチーズ、パピヨンなどの犬種が多く、中・大型犬ではボルゾイ・アイリッシュ・セター、サルーキなどが骨折しやすい犬種として知られています。
また、こうした犬種に関わらず、骨が未発達な子犬は骨折しやすいため、高いところでの抱っこや段差などには気を付ける必要があります。
犬の骨折は、高所からの落下によるものが最も多い原因となります。犬は、自分で限度が分からず、ときに無謀な行動をしようとします。つまり、それが骨折にも繋がってしまうのです。そのため、限度が分からないからこそ、飼い主さんが犬の行動をコントロールしてあげる必要があります。
ちょっとした気遣いで、骨折は未然に防ぐことができるケガですので、いま一度、ご家庭の生活環境を見回してみてください。危険個所をなくすことで、愛犬にとって怪我のない快適な生活を送れるように整備していきましょう。
阿片 俊介/クロス動物医療センター 主任動物看護師
茨城県出身。日本獣医生命科学大学を卒業し、認定動物看護師の資格を取得。
千葉県の動物病院に勤務後、動物用医薬品販売代理店にて動物病院への営業を経験。
犬とのより良い暮らしをサポートできるよう、飼い主の方の気持ちに寄り添いながら、安心して正しい情報をお伝えできるよう心がけています。