人のまつげは人種によって色や長さが違いますが、犬たちも犬種によってまつげに特徴がでます。
まつげの色は基本的に犬の被毛と同じ、または近い色のものが生えてきます。もし被毛の色と違って赤褐色になっている場合は、原因に涙やけが考えられます。
人間のまつげは髪の毛と違って一定の長さまでしか伸びませんが、犬のまつげはその犬の被毛と同じ長さまで伸びるといわれています。これは自分自身の被毛で目を傷つけてしまわないためです。例外として短毛種で被毛以上にまつげが伸びる犬種に、鼻が低いブルドッグやパグなどがいます。他犬種より目が前に出っ張ったようになるため、外部の刺激から目を守るようにまつげが長くなる傾向にあると考えられています。
犬のなかには、被毛がどこまでも伸び続けると考えられている犬種もあります。
そんな犬たちは当然まつげも伸び続け、ギネスに認定されたオーストラリアン・ラブラドゥードルの蘭丸くん(日本)はなんと2013年の認定時に15cm、2014年の再測定時には17cmもの長さがありました。
しかしまつげは目を守るための毛であり、長すぎると機能を失うばかりか目を傷付けかねません。2015年に発表されたある研究結果では、まつげの最適な長さは目の幅の約三分の一であると結論付けられました。犬のまつげの最適な長さも、その犬の目の幅約三分の一ほどであると考えられます。ただし犬種の特徴で挙げたような、鼻が低く目が出っ張るため外部から刺激を受けやすい犬種は、目の幅三分の一以上の長さが必要でしょう。
犬のまつげは伸びきると成長を止め、一定のサイクルで生え変わります。そのため基本的には、人が特別手を加えてケアをする必要はありません。
しかし被毛と一緒にまつげも伸び続ける犬種や、まつげに異常がある場合には正しいケアをしましょう。目の周りはとてもデリケートなため、ピンセットなどで抜くとダメージを受けてしまいます。伸びすぎたまつげをケアするときには、ハサミで最適な長さまで切り揃えます。飼い主さん自らが切るときには、目やその周りに怪我をさせないよう十分に気をつけてください。無理をしてはいけません。少しでも難しいと感じたらトリミングサロンや動物病院で相談してみましょう。
まつげの異常は3種類あります。
睫毛重生は、まつげの生える位置が正常より内側になっている状態を指します。まつげが柔らかい場合には、痛みなどの症状が出ることはありません。
異所性睫毛は、睫毛重生と同じように内側に生えてきて、なおかつ目の角膜に向かって伸びていく状態です。
睫毛乱生は、一般的に「さかさまつげ(さかまつげ)」と呼ばれ、正常な位置に生えているにも関わらず、まつげが目の角膜に向かって伸びていきます。犬にとっては珍しくない症状ではありますが、放置していると角膜炎などを引き起こす可能性もあります。
目をしょぼつかせる、涙をよく流す、前脚で目を擦る、充血しているなどの症状がみられたら、動物病院へ連れて行きましょう。ケアや処置の方法として、まつげを切る、抜く、毛根破壊、毛根除去などがあります。
まつげにはさまざまな要因から目を守るという大切な役割があります。しかし伸びすぎたまつげや、生え位置や伸びる方向が異常なまつげなどは、目を守るどころか反対に傷付けてしまいます。日頃から愛犬の小さな身体の変化や仕草を気にかけて、何か異常が起こったときにすぐ対処できるようになりましょう。
(※参考文献1)株式会社日経ナショナルジオグラフィック NATIONALGEOGRAPHIC
(※参考文献2)千葉シーサイド動物病院 千葉シーサイド動物病院ホームページ