老犬になると、トイレまでの短い距離ですら歩くのが辛くなることがあります。 本来トイレの場所は、通常犬が過ごしている場所から犬の歩数で10歩以内の場所にあるのが理想です。ところが、匂いや見た目の問題からこの距離に設置している飼い主さんは少ないと思われます。
ただでさえ遠いトイレまでの距離は、足腰が衰えてくる老犬にとっては辛いものがあります。 愛犬が老犬と呼ばれる年齢に近づいたら、足腰が弱くなることを考慮してトイレの場所を行きやすい距離に変更してあげてください。ただし、トイレの場所を変更する場合には、急に大きく移動することはせずに、数日間をかけて少しずつ移動させるようにしてください。
筋力が段々と衰えてくる老犬は、自力で排泄ができなくなってしまうこともあります。 通常、犬が排泄をする時には、自分の力でしっかりと立つ必要があります。ところが、筋力が衰えてくるとうまく踏ん張ることができず排泄もままなりません。
そのような場合には、トイレまで連れて行き、飼い主さんが腰の辺りを支えてサポートをしてあげましょう。排便の場合には、排便がしやすいような体勢を保つように支えてあげてください。最初はどの体勢がいいのか飼い主さんも戸惑うかもしれませんが、何回か繰り返すうちにベストな支え方が分かるようになります。
また、トイレの周りは愛犬の肉球が出来るだけ滑らないように、滑り止め付きマットを敷く等、配慮してあげると良いでしょう。
老犬になると、排便の時に踏ん張る力が弱くなり、便秘になりやすくなります。うんちが出ていないなと感じたら、日頃からお腹のマッサージをしてあげたり、食物繊維を含む食材を与えたりしてみましょう。また、腸の働きをサポートする効果が期待できる、オリゴ糖などが配合されているフードを与えるのもいいでしょう。
食物繊維を含む食材の中では、さつまいもがおすすめです。火を通したものを小さくカットし、普段食べているフードにトッピングとして与えてみてください。1回に与える量は小型犬であればスプーン1杯程度が適量です。ただし、食物繊維を含んだ食材を与える時には、水分をしっかり摂取するように促してあげましょう。水分量が足りないと、さらに便秘になってしまうことがありますので注意してください。また、あまりにも便秘が続く場合には動物病院で診察を受けるようにしましょう。
老犬になると消化機能も衰えてきますので、下痢をしてしまうこともあります。下痢や軟便が続く時には、食事の量を少し減らして様子を見るか、消化の良いフードに切り替えてみてください。それでもなかなか下痢が改善されない場合には、脱水症状を引き起こす可能性もありますので、動物病院で診てもらうようにしてください。
老犬介護の中でもトイレ問題は、失敗をした時の清掃や洗濯なども伴ってきますので、飼い主さんの負担はかなり大きいものです。 飼い主さんが老犬のお世話に疲れてしまっては元も子もありませんので、老犬用のおむつやトイレシートなども併用しながら、少しでも負担が軽減されるように工夫をしてみてくださいね。
阿片 俊介/クロス動物医療センター 主任動物看護師
茨城県出身。日本獣医生命科学大学を卒業し、認定動物看護師の資格を取得。千葉県の動物病院に勤務後、動物用医薬品販売代理店にて動物病院への営業を経験。犬とのより良い暮らしをサポートできるよう、飼い主の方の気持ちに寄り添いながら、安心して正しい情報をお伝えできるよう心がけています。