勇ましく水をこよなく愛するレトリバー・チェサピークベイレトリバーは、レトリバー種のなかで唯一のアメリカ原産の犬種です。なぜ、アメリカ原産なのかは、チェサピークベイレトリバー誕生の歴史と関係があります。ただし、チェサピークベイレトリバーの誕生には諸説あり、本当のところは未だに解明されていません。
チェサピークベイレトリバーの誕生については、アメリカ東海岸チェサピーク湾で難破した船に乗っていたニューファンドランドの子犬と地元のハウンド系の犬を交配して誕生した犬が基礎犬であるという説と、イギリスで猟犬として改良されたカナダ原産のセント・ジョンズ・ドッグとチェサピーク地域で水猟犬として活躍していた犬によって誕生した犬が基礎犬であるという二つの説があります。
どちらにしても、アメリカ・メリーランド州チェサピーク地域で誕生した犬が祖先犬であることは間違いないようです。
1,800年代、アヒル猟や水鳥猟が盛んに行われていたチェサピーク湾では、冬になると氷点下ともなる冷たい海と悪天候にも耐えられる水猟犬を必要としていました。 そこで、チェサピークレトリバーの祖先犬となる犬に、ニューファンドランド、アイリッシュウォータースパニエル、フラットコーテッドレトリバー、カーリーコーテッドレトリバーなどとの交配を行い、現在のチェサピークレトリバーが誕生したと言われています。
レトリバーの中で最もごついと評されているチェサピークレトリバーですが、どのような特徴があるのでしょうか?
ラブラドールレトリバーのような短毛でありながら、全身をモコモコとしたウエイブがかったダブルコートで覆われているのがチェサピークベイレトリバーの特徴です。 水を弾くための被毛はオイリーであることも他のレトリバー種との違いで、水中で活躍することが大好きです。
極寒の海で活躍するチェサピークベイレトリバーの体型は大きく、体系も筋肉質な身体つきをしています。
チェサピークベイレトリバーのオスは、体高58~66cm、体重29.5~36.5kg、メスは体高53~61cm、体重25~32kgと、他のレトリバー種に比べて一回り大きな体型をしています。
頑丈でバランスの良い体型と、力強く、機敏でスタミナもある体質から、過酷な環境下でもレトリバーとしての能力を最大限発揮できます。
水猟犬として優秀な能力を持っているチェサピークベイレトリバーは、アメリカではチェスの愛称で親しまれています。
性格は、レトリバーらしく明るく、陽気で飼い主に忠実な面を持ち、独特の笑顔で笑うこともあります。しかし、チェサピークベイレトリバー独特の性格があるため、チェサピークベイレトリバーと一緒に暮らすためには理解が必要です。
アメリカの愛犬家に「ラブラドールには指示を、ゴールデンには頼め、チェサピークベイレトリバーには交渉を」と言わしめたチェサピークレトリバー。 非常に知性が高く、猟犬としての資質を十分に持ち合わせていますが、反面、初心者の飼い主に対しては、自分の考えを押し通すところがあります。飼い主がしっかりとしたリーダーシップを発揮することで、その能力を十分に発揮してくれます。
レトリバー6犬種の中で、最も強い性質と強靭な体力を持つチェサピークベイレトリバーですが、明るく、知的で家庭犬として楽しく暮らすことができます。 しかし、その強い性質から育てていく上で気をつけなければいけない点もあります。
チェサピークベイレトリバーは知性が高いことから、他のレトリバー種に比べ頑固な一面を持っています。 自分が思ったことや自分がやりたい、行きたいと思った方向を追求し、飼い主の指示を聞かない時もあります。また積極的な性格から、見知らぬ人に対して吠えるなどの攻撃性を見せることもあるので注意が必要です。
レトリバー種の中で最もエネルギッシュなチェサピークベイレトリバーは、1日30分程度の散歩では物足りません。 家庭犬として一緒に暮らすのであれば、ボール遊びやフリスビーといったチェサピークベイレトリバーの本能を刺激する遊びを毎日行う必要があります。 運動不足になるとストレスがたまり、破壊行動など問題犬となる可能性が高いため、十分な運動をさせてあげることが大切です。
類い稀な水猟犬として優秀な能力を発揮するチェサピークベイレトリバーは、犬と一緒にアクティブな毎日を送りたい飼い主には魅力的な犬種です。 精悍な顔立ち、がっしりした体格、従順な性格と猟犬に必要な資質を全て備え持っているチェサピークベイレトリバー。その魅力を深く掘り下げてみましょう。
チェサピークベイレトリバーは、アメリカで唯一水猟犬として育種されたレトリバー種です。メリーランド州のマスコット犬としても知られ、多くのアメリカ人から愛され、アメリカ原産のレトリバーとして誇りを持っています。
チェサピークベイレトリバーの大きな魅力は、水辺でその能力を発揮するところです。彼らの水への情熱は、並大抵のものではないと言われています。 多少お天気が悪かったり、水温が低くても怯むことなく、水の中へ飛び込んでいくそのエネルギー溢れる姿は、ほかのレトリバー種には見られない魅力があります。
独立した気質を持つチェサピークベイレトリバーは、一度思い込んだら自分を通す自我の強さがあります。犬を飼うことが初めての人には不向きな犬種ですが、いわば玄人ウケする犬らしさを持っていることも魅力の一つと言えます。 家族を大切に思う気持ちは、他のレトリバー種と変わりはありませんが、番犬としての気質の高さはほかのレトリバーとは比べものになりません。
2018年度、JKC(ジャパンケンネルクラブ)の登録状況を確認すると、現在の日本では1頭も登録されていないチェサピークベイレトリバー。
残念ながら、日本では実物のチェサピークベイレトリバーにお目にかかることはできないようです。しかし、動画や写真で見る彼らのたくましく勇壮な姿は、レトリバーファンならずとも犬を愛する人にとっては魅力的に映るはずです。
猟犬としての力強さとレトリバーならではの陽気で優しい性格を併せ持ったチェサピークベイレトリバーは、アメリカ人ならずとも多くの人が魅了されるのではないでしょうか。