災害救助犬の歴史は古く、主にヨーロッパでは牧羊犬が活躍していたとされています。紀元1,000年代にスイスのアルプス中腹の修道院で飼育されていたセントバーナードのバリーが、遭難者を見つけで救助したことが始まりと言われています。日本では1990年にジャパンケネルクラブが事業計画を始め、1995年の阪神淡路大震災では8等の災害救助犬が活躍しました。
現在ではジャパンケネルクラブを含めた4団体が主となり、消防庁や自治体と連携をとりながら災害救助犬の育成や派遣を行っています。
牧羊犬が使われることが多かった災害救助犬ですが、今ではジャーマンシェパードやラブラドールレトリバーの頭数が多くなっています。
災害救助犬と警察犬は、どちらも「探す」という仕事は同じなのですが、その探し方に違いがあります。警察犬は持ち物の源臭を元に地面の匂いを追跡するのに対し、災害救助犬は空気中に漂う浮遊臭を嗅ぎ分けて探し出します。警察犬のように臭いから特定の人を探すのではなく、しゃがみこんでいる人・倒れている人・隠れている人という特徴を嗅ぎ分け探し出すのです。
災害救助犬の仕事は、災害時に浮遊臭を嗅ぎ分けて人命を救助することです。倒れ込んでいる人、身動きが取れなくなっている人だけを探し出す為の厳しい訓練を受け、災害救助犬になることが出来ます。それでは、大きく3つに分けられた災害救助犬の仕事内容をご紹介します。
日本で活躍する災害救助犬の主な仕事は災害時の行方不明者探しです。
重い瓦礫や敷詰まった土砂の中に埋もれている人を探すには、人間ではあまりにも時間がかかってしまいます。そのため、嗅覚の優れた犬が活躍するのです。
大きな地震による家屋倒壊の際は3頭1チームで捜索をします。2頭が先に捜索を開始し、反応があった場所で3頭目の犬も反応をした場合、そこに要救助者がいる可能性があります。3頭とも反応が合った場所を警察や消防、自衛隊に伝え、人命救助が行われます。
新緑が出始めた春や紅葉が美しい秋は入山者が増えるため、登山コースをはずれてしまった遭難者も多くなります。災害救助犬は災害時だけではなくこのような遭難者の捜索にも出動しているのです。
また、雪崩や土砂崩れで行方不明になってしまった人を捜索することもあります。
災害救助犬は浮遊臭を元に身動きが取れなくなっている人を捜索しますが、雪や土砂に埋もれてしまった人を見つけ出すことは簡単ではありません。僅かな隙間から臭いが漏れ出ている場所を探し、注意深く捜索を進めます。
ほんのわずかな隙間から臭いを取らなくてはいけないので、人にも犬にも緊張感が走る現場です。
水難救助犬の仕事は、海や川などで溺れている人に浮き輪を届けて陸まで連れて帰ることです。 泳ぎの得意なニューファンドランドやラブラドールレトリバーが多く活躍しています。 一般的に災害時に活躍する災害救助犬とは別に考えられる事が多く、訓練方法も水辺に合わせたものに変わります。
災害救助犬が活躍するフィールドには、災害現場や山などがメインになります。どちらも足場が悪かったり見通しが悪かったりと悪条件が重なりますが、それらを想定した訓練が日々行われています。
家屋が倒壊した瓦礫の山や、土砂崩れの現場が主な活躍フィールドです。災害現場には瓦礫だけではなく食べ物も散乱していることもありますが、誘惑につられることのない徹底した訓練を受けています。 足場の悪い現場が多いため、家屋倒壊を想定した練習場での捜索実習や、狭い瓦礫の隙間に入り込む訓練、障害物を越えながら素早く歩く訓練もされています。
災害救助犬は山林での捜索も行います。山林は広範囲に木々が生い茂っている為、犬を遠隔で指示出来るような訓練をします。 また、山林は野生動物も多く潜んでいるので目には見えない臭いも多く、動物の臭いに反応しないような訓練も必要になります。
災害救助犬1匹が持続する集中力は20~30分だそうです。3頭が交代交代に捜索をすることで、長時間の捜索が可能になります。とは言っても、足場の悪い場所や長時間の捜索でケガをしたり体を壊す可能性がなくはありません。海外の先進国に比べると日本はまだまだ災害救助犬の育成・出動が出遅れている印象です。もちろん出動する機会が無いに越したことはありませんが、人のために体をはって捜索を続けてくれている災害救助犬には心からありがとうを言いたいですね。
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