口を舐めるというとても簡単な仕草のなかに、犬たちはさまざまな気持ちを込めています。犬自身の口であったり飼い主や他の犬であったりと、舐める対象が変わると理由や気持ちも変化します。舐め方や舐めているときのシチュエーション、犬の身体の動きなどによって犬がどんな感情を伝えようとしているのかが読み取ってみましょう。
おやつを持っているときやご飯の時間が近いときに、嬉しそうな表情で自分の口周りを必死に舐めているときは「早く食べたい」という気持ちがよく分かります。
食後にぺろぺろと口をしきりに舐めているときは、犬が自分で歯磨きをしている状態です。口周りに付いた食べ残しや、歯の間に挟まった食べ物を綺麗に掃除しているのです。
また、リラックスしているときや今から寝ようとしているときには、あくびなどと一緒に口を舐めることがあります。これは口を舐めることで心が落ち着き、より眠りやすくなると考えられています。
もし明らかに異常なほど口を舐めている、口元を気にしているようなら、何かしらの病気の疑いもあります。異物や症状がないか口の中を確認したり動物病院へ連れて行ったりしましょう。
犬が飼い主や他の犬の口を舐めるのは、祖先のオオカミたちもやっていたボディランゲージのひとつです。愛情表現、相手を慕い服従している、相手の怒りや不安を鎮める、自分の不安を鎮める、甘えているなどさまざまな理由が考えられます。代表的な例をご紹介します。
朝起きてすぐや、外出から帰宅したときに軽く飼い主さんの口を舐めるのは犬なりの挨拶です。
帰宅したときに必死にぺろぺろと飼い主さんの口を舐めるなら、分離不安などによって強い不安や緊張をしていたという感情が読み取れます。犬にとってストレスになる生活や接し方をしていないか見直してみましょう。
子犬はミルクや吐き戻しの離乳食をねだるとき、母犬の口元を舐めて催促します。この行動が元となり、飼い主に対しても甘えたいときに口を舐めてくることもあります。
訓練中やイタズラなどを叱っているときに飼い主さんの口などを舐めてくるのは、犬が嫌な状況をなんとか止めてもらおうとしている可能性があります。しつけの際には、可愛らしい仕草に負けないよう一貫した態度をとるようにしましょう。
愛犬が飼い主さんの口を舐めるは愛情表現や挨拶ではありますが、実は衛生的にはあまりよくはありません。なぜなら犬から人へ感染する人畜共通感染症(ズーノーシス)に感染してしまう可能性があるからです。
人畜共通感染症のなかには、口径感染するものもあります。代表的なものはパスツレラ症、カプノサイトファーガカニモルサス症、サルモネラ症などの犬の口内に常在している菌による感染症です。
健康な犬でも菌が一定の確率で常在しており、犬が感染することはあまりありません。もし感染したとしても症状がでないものがほとんどです。そもそも犬の口内にはさまざまな細菌や微生物も存在しており、感染症ではなくとも腹痛や発熱、体調不良などを引き起こす原因がたくさんあります。
普段はあまり気にする必要はないかもしれませんが、体調が悪いときや、小さな子供、高齢者など免疫力が低下しているときは十分に注意しましょう。犬が口を舐めてきたら優しく止める、水で洗い流すなどの予防を心がけてください。
犬は言葉を話せない代わりに、さまざまな行動で、自分の気持ちを伝えてきます。そのなかでも口を舐めるという行為は、愛情表現や不安解消などさまざまな感情が込められています。小さな変化や動きから愛犬がどんな感情でいるのか、なにを伝えようとしているのかを読み取れる飼い主さんになってくださいね。