
犬の歯茎の色は生まれつき黒い先天性のものと、成長していくなかで黒くなる後天性のものに分かれます。生まれつき歯茎に黒い点や模様などがある場合のほとんどが、色素沈着ですので特段問題はありません。習慣的に歯磨きを強めにしている、硬いおもちゃやおやつを与えている場合でも、この色素沈着が起きることがあります。子犬の時期だけでなく、成犬や老犬になってからでも色素沈着は起きます。
そもそも色素沈着とは、日光や外部からの刺激を受けた部分にメラニンが増加することで色が濃くなり、黒く沈着する状態をいいます。歯茎以外の身体のさまざまな部位で起きる現象ですので、慌てて動物病院へ駆け込む必要はありません。
ゴールデン・レトリーバー、チワワ、ダックスフンド、柴犬など、歯茎が生まれつき黒いまたは黒くなりやすいといわれる犬種がいます。しかし遺伝的な関係や確実な証拠はなく、犬種の特性によるものというのは不明瞭な説でもあります。硬いおもちゃやおやつをよく齧っていれば、どんな犬種でも色素沈着は起こり得ますので、注意深く愛犬の歯茎をチェックしましょう。
先天性の黒い歯茎は色素沈着によるものがほとんどですが、成長の過程で歯茎が黒くなった場合には注意が必要です。
黒くなった部分が少しでも膨らんでいたり、しこりのように硬くなっている場合は悪性黒色腫(メラノーマ)の疑いがあります。腫瘍が大きくなる進行のスピードがとても早く、しこりの大きさは生存率に深く関係します。歯茎だけでなく肺やリンパ節など別の場所へ転移します。
症状としては「口臭がきつくなる、食欲不振、食事のときに歯茎から出血がある、食べ物を口からこぼす、よだれが増える、よだれに血がまざる」などがあります。悪性黒色腫(メラノーマ)の原因はいまだ不明で、確実な予防策もみつかっていません。少しでも疑いや不安がある場合はすぐに動物病院へ行きましょう。
悪性黒色腫(メラノーマ)以外にも、歯周病や口内炎など犬の口で発症する病気はたくさんあります。日頃から自宅で愛犬の口内チェックをすることで、病気の早期発見や愛犬とのスキンシップに繋がります。ポイントをしっかり押さえて、正しい口内チェックをおこないましょう。
1、口臭はちゃんと少ないか
2、歯並びや噛み合わせが歪ではないか
3、よだれの量は多くないか
4、赤い発疹などはないか
5、歯茎や舌の色に変化はないか
6、歯石は多くないか
7、歯は白く綺麗か
8、出血している部分はないか
愛犬専用のメモやノートを作り、毎日の口内チェックした結果や体調などを記録しておくとすぐに変化に気付くことが出来ます。イラストや写真などを残しておくのもおすすめです。動物病院での定期的な検診や受診をするときに、獣医師にノートを見せることで診察の判断材料となります。
ただの色素沈着なのか、悪性黒色腫なのかは、素人ではなかなか判断がつきません。もし悪性黒色腫だった場合、病気の進行が早いため放っておくと手遅れになってしまう可能性があります。少しでも不安があればすぐに動物病院へ連れて行きましょう。そして早期発見のためには、自宅で口内チェックを日頃からおこなうことが一番効果的です。愛犬の健康をしっかりと守れる飼い主さんになりましょう。
みなみ 愼子/名古屋ECO動物海洋専門学校非常勤講師 動物福祉・倫理学、ホリスティックケア・インストラクター
非常勤講師のほか、ペットマッサージやアロマテラピーの教室を開講しており、犬の保護施設でもペットマッサージのボランティア活動を実施中。一緒に暮らしている犬はロットワイラー、フレンチブルドッグ、MIX犬の3頭で、犬との伸びやかな暮らしを楽しみたいと思っています。