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健康管理 / 病気

2019.12.27

【獣医師監修】犬の乳腺腫瘍ってどんな病気?実際にかかった場合の治療法とは

乳腺腫瘍は犬の腫瘍としては発生率が高く、動物病院でよく見かける腫瘍です。本記事ではそんな乳腺腫瘍についてご紹介したいと思います。

Author :docdog編集部(監修:相澤 啓介/あさか台動物病院 獣医師)

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犬の乳腺腫瘍ってどんな病気?

犬 乳腺腫瘍

犬の乳腺腫瘍は、中高齢の未避妊のメスにおいて一般的に認められる腫瘍です。発生した良性腫瘍と悪性腫瘍の比率は1:1といわれているものの、この比率は年齢、犬種、腫瘍のサイズなどにより変動します。

年齢による違いは?

年齢に関しては良性腫瘍を認めた犬の平均年齢が7~9歳であることに対し、悪性腫瘍であった犬の平均年齢は9~11歳と高く、また5歳以下の大における悪性腫瘍の発生は極めて稀とされます。犬種では、小型大種における悪性腫瘍の発生率が25%であることに対して、中・大型犬種での発生率は58.5%であり、小型犬種では良性腫瘍、大型犬種では悪性腫瘍の発生率が高くなる傾向があります。また良性腫瘍は時間が経ち、大きくなるにつれて悪性になる可能性が高まります。

犬種や大きさによる違いは?

犬種では、小型大種における悪性腫瘍の発生率が25%であることに対して、中・大型犬種での発生率は58.5%であり、小型犬種では良性腫瘍、大型犬種では悪性腫瘍の発生率が高くなる傾向があります。また良性腫瘍は時間が経ち、大きくなるにつれて悪性になる可能性が高まります。

どんな症状が出る?

多くの症例は乳腺領域のしこりを主訴に病院を受診するか、定期検診時に触診によって乳腺腫瘍を発見することが多いです。乳腺腫瘍は尾側2対の乳腺に発生が多いです。
悪性腫瘍は急速に増大し、自壊、出血、炎症を伴うことがあります。

診断・検査方法は?

乳腺に発生したしこりは悪性である可能性を考慮し、しこりの周りへ広がり、発生部位や増大速度、大きさと形、皮膚や筋肉への固着の有無、割れていないかなどを評価します。また腋窩リンパ節や胸骨リンパ節、鼠径リンパ節や腰下リンパ節群の腫大の有無について評価します。

転移している場合

転移している場合にはリンパ節が腫大しますが、逆に腫大していないリンパ節でも転移を起こしていることがあるため、できれば針生検にて細胞診を行い、転移の有無を確認することが望ましいです。さらに悪性の乳腺腫瘍は肺に転移することが多いので、レントゲン検査やCT検査によって確認します。これらの検査を行うことは、現在の状態の把握と治療の選択、予後の予測を可能にするという意味で重要です。

病理検査を行なう理由

続いて、術前にしこりに対する病理検査を行います。乳腺には脂肪や筋肉、乳腺細胞など様々な細胞が存在しており、これらの部分や良性悪性の部分が混じり合っているため、細い針生検だけではそのしこりを正しく診断することは難しいです。ただし乳腺領域に発生した他の腫瘍の除外を検出できるかもしれないので行うべきです。

また炎症性乳癌という非常に予後の悪いタイプのものもあるので、疑わしい場合には少しだけ切除して悪性度を評価することで手術適応となるかどうかの判断材料としていきます。

あなたの愛犬が乳腺腫瘍に罹ったら?

犬 乳腺腫瘍

比較的遭遇する機会の多い乳腺腫瘍。実際にあなたの愛犬が罹ったらどのように対処したら良いでしょうか?ここでは治療や予防法についてご紹介したいと思います。

どのように治療するの?

手術が禁忌となる炎症性乳癌を除いて、治療の第1選択はしこりを手術で切除することです。また診断時にリンパ節あるいは遠隔転移を認めた場合でも、割れて出血を繰り返したりするのを防ぐ目的に緩和的な外科手術を実施することがあります。摘出したしこりは病理組織学検査に提出し、術後の補助治療について検討する判断材料にします。手術は原則として腫瘤確認後、早期に行うことが推奨されます。特にしこりの大きさが1cm未満の場合は根治率が高いこと、3cmを超えると悪性の可能性が高くなることからも、治療の早期介入が望ましいとされています。

未避妊の場合

未避妊の場合、発情時期と手術のタイミングが重なることで術中の出血量が多くなり、術後の内出血の増加につながることが考えられるので、可能な場合は発情時期をずらして行うことがあります。

術式にはしこりのみを切除するものから両側乳腺を全摘出するものまでありますが、腫瘤が完全切除されるのであれば術式による治療成績に差はないとされるため、悪性度や腫瘤の数、年齢や一般状態を考慮して術式を決定します。

ただし乳腺組織が残存していると術後6割程度の確率で新たに病変が発生するとのことから、若齢で低悪性腫瘍の犬では片側の乳腺全切除術を、高齢で高悪性度の腫瘍などでは一部の乳腺切除術を選択することが多いです。鼠径リンパ節や腋窩リンパ節は転移が疑われる場合は乳腺と一緒に切除するようにします。

術後の治療法

術後に高悪性度や遠隔転移、切除が不十分な場合には、抗がん剤による治療を行います。しかし現在犬の乳腺腫瘍に対して有効な化学療法は確立されていません。ドキソルビシンやミトキサントロン、パクリタキセルと言った抗がん剤を使用することが多いです。

また手術が出来ないような乳腺腫瘍に対しては放射線治療を行う場合もあります。

治療を行うべきタイミングって?

雌性ホルモン(エストロジェン)と腫瘍の発生には強い関連が認められ、初回発情前に避妊手術を実施した犬における乳腺腫瘍の発生率は0.05%、2回目の発情までに手術を行った犬では8%、2回目の発情以降で手術を行った犬では26%となります。乳腺腫瘍は早期に避妊手術を実施することでほぼ確実に予防できる疾患です。

また、中高齢になって避妊手術を行った場合にも、ホルモン依存性の新たな乳腺腫瘍の発生を予防できる可能性があるため、長期的な予後が望める際には避妊手術を検討すべきです。また若齢期の肥満は血清エストロジェン濃度を上昇させ、これが乳腺の腫瘍発生リスクを高めると認識されています。肥満に気をつけた方が良いでしょう。

悪性だと命に関わる乳腺腫瘍ですが

犬 乳腺腫瘍

悪性の乳腺腫瘍は肺転移し命に関わりますが、対応次第ではその発生自体や悪性になることを防ぐことが出来ます。病気を正しく知って愛犬との健やかな暮らしを送ってくださいね。

◎監修者プロフィール

相澤 啓介/あさか台動物病院 獣医師

1988年生まれ。日本大学/生物資源科学部獣医学科公衆衛生学研究室を卒業し、その後、あさか台動物病院で勤務。一般外来のほか、循環器の分野に専門的に携わっています。獣医師という立場から、大切なワンちゃんの健康をサポートするために、正しく分かりやすい情報を伝えたいと思っています。

【 主な所属学会・研究会・団体 】
埼玉県獣医師会、日本動物病院協会、日本獣医循環器学会、日本獣医がん学会

  • 公開日:

    2019.10.22

  • 更新日:

    2019.12.27

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