はじめに、犬の予防接種にはどのような必要性があるのでしょうか?そして、犬の予防接種は法律ではどのように扱われているのでしょうか?まずこの2点から見ていきます。
狂犬病は哺乳類すべてに感染し、有効な治療法がないため、発症すると100%死亡するというとても恐い病気です。アジアではほとんどが狂犬病を発症した犬に噛まれることでヒトへ感染しています。
日本でも多くの犬やヒトが感染し死亡したため、1950年に狂犬病予防法が制定されました。
そして制定からわずか7年で狂犬病を撲滅し、日本は現在も、世界で7地域しかない「狂犬病清浄国」で在り続けています。このような背景から、犬の飼い主には狂犬病予防法という法律に基づき、義務づけられていることは
・市町村に犬を登録すること
・犬に毎年狂犬病の予防注射を受けさせること
・犬に鑑札と注射済票を付けること
やむを得ない理由もなく行わない飼い主は、20万円以下の罰金の対象となります。(参考:厚生労働省 公式HP)
飼い主が任意で受ける感染症予防接種です。混合ワクチンは、致死率の高い複数の感染症から犬を守ることができるため、必要性は高いと言えます。
犬の予防接種の種類と費用について、どのような種類があり、どのような病気を予防できるのか?また、どのくらいの費用がかかるのかについても解説していきます。
市町村指定の集団接種、またはかかりつけの動物病院で個別接種します。集団接種の場合、費用は3,000円程度です。動物病院で個別接種する場合の費用は、それぞれの病院で異なります。
また、市町村への登録費用は3,000円程度、注射済票の発行手数料は550円程度別途でかかります。
混合ワクチンは2種~10種まで種類があります。数字が大きくなるにつれて、予防できる病気が増えていきます。実は、動物病院によって取り扱っているワクチンの種類は異なりますので、かかりつけの動物病院では何種のワクチンが選択できるのかを、先生に尋ねてみると良いでしょう。そうすることで、獣医師に相談し、愛犬の生活環境等に合わせた最適な種類のワクチンを選ぶことができます。
・2種=「犬パルボウイルス感染症」「犬ジステンパー」
・5種=2種+「犬伝染性肝炎」「犬アデノウィルス2型感染症」「犬パラインフルエンザウィルス」
・6種=5種+「犬コロナウィルス感染症」
・7~10種=5種または6種+「犬レプトスピラ症」
犬レプトスピラ症は多数種類があり、数字が大きくなるごとに予防できる種類が増えます。
費用も数字が大きくなるにつれ高くなります。動物病院によって料金は異なるため、ひとつの目安としてですが、1種1,000円というイメージが平均的です。
では、実際に犬の予防接種を受けるとき、どのようなことに注意が必要なのでしょうか?大切な注意点を見ていきましょう。
犬の予防接種は、できる限り午前中に受けましょう。万が一体調に異変が起こった場合、その日のうちに動物病院へ駆け込めるようにするためです。犬がいつも通り元気な日を選びましょう。体調や行動に変わったところはないか、飼い主にしか分からないことはたくさんあります。
犬が予防接種を受けたあとは、しばらく動物病院で様子をみましょう。最も危ない副作用である「アナフィラキシーショック」は注射後数分で症状が現れます。命を落とす可能性も考えられる副作用ですので、一刻も早い処置が必要となります。
帰宅したあとに顔が腫れる、異常に痒がる、斑点が現れるなどの「遅延型アレルギー」にも注意が必要です。
これらの症状が見られた場合は自己判断で様子を見たりせず、すぐに動物病院で診察を受けましょう。
翌日まで激しい運動は避け、身体を休ませてあげてください。シャンプーやトリミングも数日間は避けるようにしましょう。
犬の予防接種、特に混合ワクチンについては、飼い主と先生が相談し合うことが大切です。どこの病院でも同じではなく、やはり日頃から犬の身体や体調を診てくれている先生に予防注射もお願いするのが良いと考えられます。
阿片 俊介/クロス動物医療センター 主任動物看護師
茨城県出身。日本獣医生命科学大学を卒業し、認定動物看護師の資格を取得。千葉県の動物病院に勤務後、動物用医薬品販売代理店にて動物病院への営業を経験。犬とのより良い暮らしをサポートできるよう、飼い主の方の気持ちに寄り添いながら、安心して正しい情報をお伝えできるよう心がけています。