愛犬から生臭い口臭を感じたら、まずは口の中をチェックしてみてみましょう。歯石や歯垢が溜まった状態ならば、口臭の原因は歯周病の可能性が高いです。
まず、歯と歯茎の間に溜まった食べ物のカスに細菌が繁殖し、ネバネバとした「プラーク」とも呼ばれる歯垢になります。細菌の塊である歯垢をそのまま放置しておくと、歯垢にカルシウムやリンが沈着し石灰化することで歯石へと変化します。
歯垢は3日ほどで歯石へと変化し、また歯石の上に細菌を含んだ歯垢が付着していき雪だるま式でどんどんと増殖していきます。
細菌を含んだ歯垢や歯石は歯茎に炎症を引き起こします。炎症が進み歯茎だけでなく歯周組織までに及んでしまうと歯周病となります。歯石や歯垢が発生させる臭いに加えて、炎症による膿などが生臭い口臭を発生させるのです。
3歳以上の犬猫の約8割が歯周病であると言われています。そこまで危険な病気ではないような気がしてしまいますが、重症化すると体に様々な悪影響を及ぼしかねません。
人では歯周病が心筋梗塞や糖尿病などの原因となることが知られていますが、犬でも心臓や肝臓などに悪影響を及ぼすことがわかってきています。細菌が歯周ポケットの毛細血管から全身に回って、体全体に影響を与えてしまうのです。
歯周病は心臓疾患だけでなく、脳梗塞や糖尿病、肝臓や腎臓疾患など様々な病気のリスクを高める可能性もあります。
歯周病が重症化し、細菌が増殖して炎症が歯の根っこの部分にまでに及んでしまうと、歯を支える顎の骨が溶けてしまうことがあります。これによって、瘻管(ろうかん)と呼ばれるトンネルのようなものができることがあります。さらに症状が進むと、目の下などの皮膚や歯肉に穴を開け、血や膿を出します。
これだけ聞いてもとても恐ろしいですが、小型犬の場合は下顎骨が重度に溶けてしまうと、ちょっとした衝撃で下顎骨が骨折してしまうこともあり、とても危険な状態に陥ります。歯の病気は重篤なリスクになりますので、歯周病が重症化してしまう前に、動物病院で診察してもらうようにしましょう。
口臭の臭いの原因でもあり、健康に害を及ぼしかねない歯周病を予防するためには、毎日の歯のケアが重要です。それぞれの状態に合わせた歯のケア方法を紹介していきます。
まずは、歯周病の原因である歯石をつくらないことが重要です。たった3日で歯垢が歯石へと変化してしまうのですから、1週間や1ヶ月に1回の歯磨き頻度では意味がないことが分かりますので、犬にも毎日の歯磨きを習慣化させましょう。
犬の歯を磨く際の注意点として、歯にこびり付いた歯石を取ろうとゴシゴシと力を入れて磨かないようにしましょう。普段自分の歯を磨いている力加減で磨いてしまうと、人間よりも小さな犬の歯茎には負担が大きすぎて、歯茎を傷つけてしまうこともあるので注意が必要です。
既に歯石が沈着した状態であれば、獣医師と相談して動物病院で歯石除去を行ってもらうことを検討しましょう。
歯石除去は、全身麻酔をかけて超音波スケーラーを用いて行います。歯石は歯の表面だけではなく歯周ポケットまでも到達しているため、歯の表面のみをきれいにするハンドスケーリングでは十分に取り除くことができません。
全身麻酔はリスクを伴いますので、愛犬の健康状態などを考慮して獣医師と相談するようにしましょう。
犬の口臭の原因である歯周病は、口臭以外にも重症化すれば恐ろしい影響を与えます。
歯のケアは、愛犬が寿命を全うするまで終わることはありませんから、愛犬にあったケアの仕方を見つけてあげて、歯の健康を保ってあげるようにしましょう。
また、愛犬の口のなかに歯石が見当たらない状態でも口臭がひどい場合は、内臓疾患など他の要因があるかもしれませんので、獣医師に相談するようにしてください。
阿片 俊介/クロス動物医療センター 主任動物看護師
茨城県出身。日本獣医生命科学大学を卒業し、認定動物看護師の資格を取得。
千葉県の動物病院に勤務後、動物用医薬品販売代理店にて動物病院への営業を経験。
犬とのより良い暮らしをサポートできるよう、飼い主の方の気持ちに寄り添いながら、安心して正しい情報をお伝えできるよう心がけています。