
SUP(サップ)とは、スタンドアップパドルボードの略で、ハワイ発祥の新しいウォータースポーツです。その名の通り、ボードの上に立ってパドルを漕ぐことによって水面を進むスポーツです。年齢、性別またウォータースポーツの経験の有無を問わずに、誰でも挑戦できるスポーツであることから、ハリウッドセレブからトップアスリーツまで、さまざまな人たちがSUPを楽しんでいます。
歩いては行くことができない、海や湖、川などの水上をSUPで漕ぎ出すことによって、日常では触れられない風の音、水のせせらぎといった大自然を身近に感じることができることがDogSUPの大きな魅力です。また、沖にある無人島や陸からはアプローチできないビーチなど、SUPに乗ることで非日常を味わうことができます。
従来のウォータースポーツは、波や風がないと楽しめなかったりと、楽しむためには一定の条件が必要でした。また、限られた場所でのみ楽しむことができることが多いため、ウォータースポーツを体験してみたい人にとってはハードルが高いスポーツでした。そういったウォータースポーツに比べ、大きなボードとパドルを使用するSUPは、海や湖、川などあらゆる場所で楽しむことができることも大きな特徴です。
犬と一緒に何かをして楽しみたい!そう思う方も多いと思います。そんな飼い主としての願望に答えてくれるのが、DogSUPと言えます。1本のボードに犬と一緒に乗り、自然を楽しむことができるSUPは、犬との一体感を味わえる唯一のスポーツと言っても過言ではありません。
SUPの楽しみは、水上をのんびり散歩できるところ。大きなボードに犬を乗せて沖へと漕ぎ出せば、日常とは違う風景や匂いに犬も興味津々です。泳ぎの好きな犬は、目の前で飛び跳ねる魚や水中でゆらゆら動く海藻や水草に釘付けになるかもしれません。日常のお散歩で味わえない刺激は、自然が大好きな犬にとっても大きな楽しみとなるかもしれません。
魅力が満載の犬とのSUPですが、流行の兆しを見せている昨今、マナーやルールを守らない飼い主によって、SUP禁止となる海岸や湖が増えてきています。まずは、基本的なマナーやルールを認識しておきましょう。また、犬にとってストレスとならないように気をつけることも大切です。
前述のようにSUPは、どこでも誰でも楽しむことができるウォータースポーツです。しかし、どこでも楽しめるからといって、どんな場所でもSUPをしてもいいとは限りません。ボートやボードを出すことが禁じられているダム湖や自然保護地域、海水浴場などでSUPをすることはルール違反です。また、海や湖ではローカルルールが定められている場合があります。SUPのみならず犬の立ち入りが禁止されていることもあるので、景色が美しいから、車が停めやすいからなどの個人の主観でSUPを出すのではなく、その場所にはどんなルールがあるのかを事前に地元のサーフショップやカヌーショップなどに聞いておくことが大切です。
DogSUPがブームとなりつつある昨今、嫌がる犬を抱っこして無理やりボードに乗せようとしている方をよくみかけます。水が嫌いな犬、不安定なボードの上が怖い犬など犬には個体差があります。「あの子ができているからうちの子も」という概念は捨てることが大切です。まずは、水に慣らす、ボードの上が怖くないと教えるなど基本的なことを時間をかけて教えることが重要です。
SUPのボードには、空気を入れて膨らませるインフレータブルボード、ボディボードに似た柔らかい素材のソフトボード、サーフィンのボードと同じ素材のハードボードの3種類があります。持ち運びが便利、収納が楽という理由から、DogSUP愛好者の方に人気のボードがインフレータブルボードですが、実は、最も取り扱いが難しいのがこのボードであることを知らない方が多いことも事実です。
犬がSUPに乗っている時は、足元が不安定なため4本の足を踏ん張って乗ることになります。犬が足を踏ん張る時に使うの爪です。インフレータブルボードは、表面がゴム素材で作られているため、爪などの鋭利な刺激には弱いことが特徴です。また、ボードメーカーは、犬の爪がボードの表面に食い込むことを想定して作っているわけではありません。そのため気が付かない間に、ボードの表面に小さな穴が空いている可能性があります。
穴が空いているインフレータブルボードは、いつどこでパンクするかわかりません。パンクした場合、一瞬にして水中に沈むことが実証されています。そのため、取り扱いには十分に気をつけるようにとメーカーから注意喚起がされているのです。特に、体重が30kg以上の大型犬の場合、ボードにかかる力は2本足で乗る人間を想定しているボードメーカーの想定の範囲を超えるため、使用することは危険が伴うと言えます。
SUPは、風に弱いスポーツです。犬を乗せている場合、髪の毛がそよぐ程度の風でも自分が思っている方向に進めなくなります。風によって押し流されてしまうと、ボードは風下に向かっていきます。この状態をウォータースポーツの世界では「流される」と言います。もし、流されていると感じたら、自分が元いた場所に戻ろうとするのではなく、近くに岸を目指すことが基本です。安全のためにも、風が吹いている時にはDogSUPを諦めることが命を守ることにつながります。
水遊びが好きな犬にとっては、新鮮でとても楽しいアクティビティとなり得るDogSUPは、誰もが手軽に楽しめるウォータースポーツとして人気を集めています。しかし、DogSUPを楽しむ上で、最も大切なことは「飼い主と犬との信頼関係」です。どんなに泳ぎが得意な犬でも、陸地から遠く離れた場所に連れて行かれるのは怖いもの。飼い主との信頼関係が築けていない場合は、犬が途中でボードから飛び込んでしまったり、ボードに乗ることを嫌がってしまうなど、DogSUP自体を拒否してしまう可能性があります。まずは、日常から信頼関係をしっかりと築くことを心がけましょう。
西村 百合子/ホリスティックケア・カウンセラー、愛玩動物救命士
ゴールデンレトリバーと暮らして20年以上。今は3代目ディロンと海・湖でSUP、ウインドサーフィンを楽しむ日々を過ごす。初代の愛犬が心臓病を患ったことをきっかけに、ホリスティックケア・カウンセラーの資格を取得。
現在、愛犬のためにハーブ療法・東洋医学などを学んでおり、2014年よりその知識を広めるべく執筆活動を開始。記事を書く上で大切にしていることは常に犬目線を主軸を置き、「正しい」だけでなく「犬オーナーが納得して使える」知識を届ける、ということ。