ドイツ原産で短足胴長が特徴のミニチュアダックスフンドは、最小の狩猟犬としてヨーロッパを中心に活躍している犬種です。ウサギやアナグマの巣穴に入ることができる特徴的な体型ながら、運動能力に優れ、勇敢で従順な性格が世界中の人に愛されている理由です。また、美しい被毛はアンダーコートとオーバーコートのダブルコートで、単色、2色の他にダップル、ブリンドルなどバリエーション豊かな毛色が特徴です。
ミニチュアダックスフンドは、品種として確定するまでにさまざまな犬種を育種に使用したため、スムースヘアー、ロングヘアー、ワイヤーヘアー3種類の毛質があります。どのタイプもアンダーコートとオーバーコートのダブルコートのため、こまめなお手入れが必要です。また、豊富な毛色が認められていることも特徴です。ここでは3タイプの毛質に分けて、その特徴とお手入れ方法をご紹介します。
ミニチュアダックスフンドの基礎犬となった毛質がスムースヘアーです。硬く、短い毛質ですが、光沢のあるビロードのような美しさが特徴です。毛色は、単色ではレッド、レディッシュ・イエロー、イエローで鮮明なほど好ましいとされています。2色では、濃いブラック&タン、ブラウン&タンが良いとされ、その他にダップル、ブリンドル、タイガーブリンドルなど豊富なバリエーションがあります。
スムースヘアーは、周囲一回程度のブラッシングと定期的なシャンプーのお手入れで十分です。短毛のため、カットする必要もありません。
柔らかく光沢のあるウエイブがかった被毛が特徴のロングヘアーは、スムースヘアーのミニチュアダックスにスパニエル系の犬を交配して誕生したため、スパニエルのフレンドリーな性質も受け継いでいます。犬種別人気ランキングの上位に常にランクインしているのがこのロングヘアーです。毛色は、スムースヘアーと同じ豊富なカラーがあります。
柔らかく長い被毛は、伸びやすく絡まりやすいことから、定期的にトリミングを行う必要があります。また、飾り気が多く、毛玉になりやすいので毎日のブラッシングも欠かせません。
短く粗い剛毛のワイヤーヘヤーは、スムースヘアーのミニチュアダックスにテリア系の血統を入れて育種されているため、テリア気質と言われる気の強い面があります。海外では、ミニチュアダックスフンドの中ではこのワイヤーヘアーの人気が高いようです。ワイヤーならではの毛色ワイルドボア、ドライリーフがあります。このほかに、スムースヘアーと同じ豊富な毛色があります。
ワイヤーヘアーも、他のミニチュアダックスフンドと同じように定期的なブラッシングやシャンプーが必要ですが、余分な毛を抜くプラッキングをトリミングサロンでする場合もあります。
ミニチュアダックスは、基本的にはトリミングが必要のない犬種ですが、ロングヘアータイプは、夏前に被毛を短くカットするサマーカットが人気です。サマーカットを自宅で行うのは難しいため、トリミングサロンに連れて行くことがおすすめです。トリミングサロンでは、さまざまなデザインのサマーカットを用意しているので、どんなカットが似合うかトリマーと相談してから決めましょう。また、ワイヤーヘアーは、カットによって表情が変わることから、サマーカットではなくデザインカットをすることが人気です。ここでは、人気のカットスタイルとサマーカットの注意点についてご紹介します。
胴体部分と尻尾の被毛を短くカットし、首から上と胸の被毛を長くし、尻尾の先端をフサフサに残したライオンカットは、ミニチュアダックス以外の犬種にも根強い人気です。ライオンカットは、耳まわり以外も全て短くカットするデザインと首から上の被毛と胸の被毛を残したデザインの2タイプがあります。
テリアやシュナウザーに似た毛質のワイヤーヘアーに人気のあるデザインは、カッコ良さを追求したカット。テリア風にヒゲを短く整え、顔周りをすっきりさせたデザインや、シュナウザー風にヒゲ周りを残したデザインが人気です。また、男の子にはモヒカンも人気です。
ミニチュアダックスフンドに限らず、夏になると長い被毛をバリカンで短く刈り込んだサマーカットをしている犬が増えます。サマーカットをする前に、絶対に知っておいて欲しいこととして、犬の被毛は、その犬種にとって必要不可欠なものであるということ。
被毛は、紫外線から皮膚を守る、ノミ・ダニ・蚊などの害虫から体を守る、寒さによる体温低下を防ぐなど、犬が生活する上で重要な役割を果たしています。人間の感覚で「見た目が暑いから」「暑そうだから」などの理由で、安易にカットすることはおすすめできません。特に、サマーカットした場合、熱中症のリスクが高まります。
また、バリカンで短く刈り込んだ場合、後から毛が生えてこなくなる、毛質が変わるなどのリスクがあります。また、紫外線によって皮膚が炎症を起こすこともあるので、外出時には洋服を着せるなどの対策をする必要もあるのです。もし、見た目のファッション性や毛量が多すぎることからサマーカットを考えている場合は、犬のカラダに及ぼす影響を考えた上で、バリカンを使わずハサミでカットしてもらうようにしてください。
ミニチュアダックスフンドは、ダブルコートの犬種です。換毛期には、大量の抜け毛が出るため、丁寧なブラッシングが必要です。また、ロングヘアーは、被毛の伸びが早くまた絡まりやすいため、日頃のお手入れも大切です。特に、パッド周りや耳周りなどの余分な毛は、こまめにカットして毛玉ができないようにしてあげましょう。
ミニチュアダックスフンドは、そのままでも十分にかわいい犬種ですが、少しデザインカットをするだけで、個性的な雰囲気を演出できます。バリカンで短く刈り込むことは禁物ですが、顔周りやヒゲのカットをするだけでいつもと違った表情に見えるはずです。どんな犬種でも、被毛は体を守る大切なカラダの一部です。むやみやたらと刈り込まず、必要最小限のカットで個性を演出してあげてくださいね。