体重を支えきれず手首足首のあたりで内側に足が折れ曲がることを「ナックリング」と言います。前肢・後肢どちらにも症状が見られることがあり、足の甲で地面に立ち、歩くときもそのまま甲を使う歩き方をします。多くの場合、痛覚麻痺も同時に発症するため、痛がったり足を気にしたりせず、犬自身が気付かぬままに歩き続けることがほとんどです。
ナックリングは、大きくふたつの原因・症状に分けることができます。
ひとつめは腕神経叢裂離(わんしんけいそうれつり)という神経の病気による症状で、主に前肢に異常がでます。主な原因としては、交通事故、転倒、落下など外部からの神経の損傷が挙げられます。
腕神経叢裂離とは、頸椎(首辺り)から前肢に伸びている腕神経になんらかの異常が起きている状態のことを指し、下記のような症状が表れます。
・神経が上手く情報を伝達できず足が不自然に曲がる(ナックリング)
・肩や肘が動かしにくくなる
・痛覚麻痺を起こす(痛みに鈍感または感じなくなる)
ふたつめは加齢による筋肉や神経の衰え、脊椎の変形などが原因となる症状で、主に後肢に下記のような異常がでます。
・足が不自然に曲がり、甲を地面に付ける
・爪や足をひきずって歩く
・痛覚麻痺を起こす
症状の進行度によっては、足を切断しなければならなくなる可能性もあります。
もしかしたらナックリングかもしれない、加齢で足腰が弱くなってきているなど少しでも「いつもと違うな、変だな」と思ったらすぐにかかりつけの獣医師に相談してください。既に神経が損傷していても、軽度なら回復することもあります。また加齢と共に少しずつ対策や予防の準備をしていれば、ナックリングの症状が出てからでも愛犬に負担をかけにくい生活を送ることができます。
予防としても症状が出てからでも行うことができるマッサージは、身体や足の血行を良くすることで神経麻痺の緩和が期待できます。専門家に依頼することも、飼い主さん自身が自宅で行うことも可能です。飼い主さん自身がマッサージをする場合は、愛犬のためにきちんと正しい方法を学んで行いましょう!
ナックリングの症状がある場合、甲や爪先を地面にこすって怪我をする可能性もあります。麻痺して痛みを感じずらいときには、いつまでも足を引きずってしまいます。そのようなときには犬用のブーツや靴下を履かせることで怪我を防ぎましょう。症状が軽度であれば、サポーターやテーピングを使って足を曲がりにくくすることもできます。
ブーツやサポーターの着用は、無理をさせない範囲で、少しずつ慣らしていきましょう。
散歩のときに胸元に装着するハーネスではなく、ヘルニアや足腰が弱って自力で歩くのが難しい犬のための歩行補助用ハーネスがあります。前足用、胴体用、後ろ足用など愛犬の症状によって使い分けることができます。ハーネスを持ち上げることで足腰にかかる負担が減って歩きやすくなるため、愛犬自身の「歩きたい」という欲求を解消することにも繋がります。
●犬用靴/Polar Trex(ポーラートレックス)
どんな愛犬でも、ある日突然歩き方がおかしくなる可能性はあります。症状がでる前からの予防と、症状がでた後の対策をしっかり知っておきましょう。人間も犬も、できるだけ自分の足で歩くことが身体全体の健康に繋がります。