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2018.12.27

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犬のお悩みよろず相談室「そうだ、かえさんに聞いてみよう!」 vol.6

「コングだけでお留守番ができるようになるのか心配」

犬生相談のお時間です。今回はふたたび分離不安についてのお便り。後追い、無駄吠え、イタズラ、粗相、自傷......多岐に渡る分離不安の症状は、飼い主も泣きたくなる問題です。何かできることはないか、もう一度考えてみましょう。

#Lifestyle

Author :写真・文=白石かえ

保護犬出身の犬の分離不安のお悩み

【ご相談】
初めまして、Tと申します。
サイトを拝見し、うちの愛犬の分離不安症についてご相談させていただきたくご連絡致しました。

うちの愛犬は、生後8ヶ月の際に保護団体から譲り受けた保護犬です。
最初からひとりになることを嫌がり、後追い、無駄吠えが多く、お留守番もまったくできない状態でした。

その後、大学病院の先生に相談して、分離不安のしつけの仕方を教えていただき、コングでのお留守番の練習を繰り返しているのですが、練習を始めて半年経った今、多少の進歩はありましたがお留守番は相変わらずまったくできない状況で、後追いも止みません。

このままコングでの練習を続けるだけでお留守番ができるようになるのか心配で、何かアドバイスをいただくことができればとご連絡いたしました。

「コングでの練習を続けるだけでお留守番ができるようになるのでしょうか」

初めてのご連絡で長文になってしまいましたが、ご意見いただければ幸いです。
よろしくお願い致します。

(Tさん)

分離不安はすぐには治らない。根気と包容力が大事

悩む飼い主さんは全国にいっぱいいる

 Tさん、お便りありがとうございます。保護犬を迎え、でもお留守番ができないことに大変心を痛めているのが伝わってきました。後追いされたり、無駄吠えされ、留守番させることができないと、飼い主さんの社会生活(会社に行ったり、おつかいに行ったりなど)にも影響を及ぼし、心労が耐えない状況は、私も経験者なのでよくわかります。

 Tさんは、大学病院の先生にも相談されているということなので、行動治療の専門家にかかっておられるわけですから、そちらの方が本家本元の専門家ゆえ私が出る幕などない気もしますが、ちょっとでもお役に立てればと思います。

 

 まず、前回フラットさんちから分離不安の相談のときに、けっこう全力でこの問題について記事を書いております。お読みいただけたでしょうか? まずは復習がてら、今までの記事をご確認いただきたいと思います。コングのほかにも複数の対策を提案をしています。

犬のお悩みよろず相談室「そうだ、かえさんに聞いてみよう!」 vol.3
「分離不安かも!? 外出すると30分間吠えっぱなし......」

犬と暮らして30余年。白石家の知恵袋<vol.3>
分離不安は、犬も飼い主も辛い。回避するための5つの予防線

 というわけで、基本的なことはすでにもう書いちゃっています。さて、どうしましょう(←けっこう難題で、今回は悩む白石)。でも、Tさんが悲痛なお便りをくれたのを放置はできません。またTさん以外にも、留守番できない犬と暮らしていることで心が折れる思いをしている人が、日本中にいっぱいいるんだと想像します。

 でもね。Tさんを含め、愛犬が分離不安でほとほと困り果てている飼い主のみなさん。大変なのはよく知っている。とくにご近所の手前とか、共働きとかだと、本当にしんどいよね。どうすりゃいいんだ、と八方ふさがりになる。だけど、どうか諦めないでください。最悪、犬とお別れしないといけないのか、などと頭をよぎるかもしれないけれど、その考えはやめてください。分離不安を改善させることは大変だけど、たいてい克服できます。うちの日本最強の分離不安犬(自称)のワイマラナーも、最後は克服して平和な余生を過ごして享年16年8カ月の天寿を全うすることができました。みんな、負けないで。まず、私はこれを声を大にして叫びたいです。

犬種は? 過去のトラウマは? いまの年齢は?

 さて、ここで具体的にT家の犬について考えてみたいのですが、まずわかっている情報とわかっていない情報を整理してみます。

  • 保護犬出身である(犬種は? どんなタイプ? どんな性格?)
  • 生後8カ月の際に保護団体から譲り受けた(どういう生い立ち? 何かトラウマがある?)
  • コングでの留守番練習をして半年経過した(いま、何歳? コング以外でやっていることは?)
  •  犬種は何か(洋犬なのか、日本犬なのか。純血種なのか、雑種なのか)とか、過去の生い立ちの情報から、ヒントを思いつくこともあるのですが、そこがわからないので一般論でしかお伝えできないのが、このたび残念なところ。また、生後8か月でおうちに来たとのことですが、大学病院に何歳のときに診察を受けたのかわかれば、それから半年間練習しているということなので現在の年齢がわかるのですが......。もちろん保護犬の場合、正確な年齢がわからないこともありますが、だいたいいくつくらいなのかな~と。それによっても対応策が変わると思うんです。

    行動治療(行動の見直し)が必要なのは、犬と飼い主の両方

     まずは、本当に分離不安症なのか。ここが最初の分かれ目です。でも、大学病院の行動治療のプロに「分離不安症」だと診断されたということですよね? 他の肉体的な病気の影響もないということも調べた上での診断だと思います。なので今回は、分離不安症だと診断名がついているという前提でお話しを進めます。

     獣医さんからのアドバイスは、コングだけではなかったと思いますが、ほかにはどんな指示がありましたか? 行動治療プログラムは「行動の治療」と名前がつくように、家族構成、ライフスタイル、生い立ちなどをカウンセリングし、問題の原因は何かを紐解いていくもの。さまざまな原因が複雑に絡んでおきることが多いので、複数のアプローチを提案されていることでしょう。つまりコングで時間稼ぎするだけではダメなのです。本当に不安が強いコは、コングのおやつに見向きもしないで、後追いすることがありますもの。獣医さんに提案されたことを全部行い、犬と飼い主両方の「行動」の「治療」や「改善」に取り組んでください。

     単に「犬が悪い」「犬の心が弱い」「過去の生い立ちが悪い」だけでなく、「飼い主が犬に依存している」「心配になりすぎて、犬をよけい神経過敏や不安にさせている」「留守番時間が長すぎる」など、ニンゲン側の行動を改めないと治らないことも多いです(私自身大いに耳にが痛い)。

    犬の欲求を満たし、心のバランスを保たせる

     ストレスや不安を助長させる要因には、運動、刺激、社会化などが足りない、また自信や飼い主との関係不足なども考えられます。毎日たっぷり時間をとって(できれば1日2時間あるとベター)、お散歩に行き、外の空気を吸わせ、ニオイを嗅がせ、音を聞かせ、遠目でいいからいろいろなニンゲンや子どもや犬や車を眺める刺激を与えたいものです。心身ともに健全な普通の犬なら、飼い主が不在中は、たいてい、ぐうぐぅ昼寝しているものです。まずは、散歩量や時間は十分かも検証してみてください(ただし、いきなりたくさんやるのは逆効果。犬をよく観察し、無理のない範囲でね)。

     また純血種であれば、犬種によって求める欲求が違います。日本では「家庭犬」というポジションを与えられていても、本来の犬種の欲求を満たす努力もしてあげたいです。湖で撃ち落とされたカモを回収したり、漁の手伝いをしていたレトリーバーやウォータードッグ系の犬なら、アクティビティーに泳ぐことを加えてあげると喜々として水に入るでしょう。テリア系やダックス系なら、穴掘りが好きですねぇ(あ、うちの故コーギーも穴掘りが大好きでした。砂浜で砂まみれで掘りまくってましたよ)。つまり犬種差だけでなく、個体差もあります。ニンゲンでも、球技が好きな人、マラソンが得意な人、水泳は上手い人など、いろいろですよね。Tさんちの愛犬はどんな犬なのでしょう。何を喜びそうですか? よく観察して、喜びを探してあげてみてはどうでしょう。ただ、保護犬出身のコは、どんな生い立ちかにもよりますが、散歩に慣れていなかったり、びっくりしやすかったりするコもいるので、絶対に迷子にさせないように注意してください。

     また、すべての犬は、サイズに関係なく「猟犬」。獲物を探して、捕食行動をする動物です。だから自分の嗅覚で獲物を探して、美味しいものにありつけるノーズワークは、犬に自信を持たせることに有効。「ノーズワークってもともとはアメリカの保護施設の犬たちの遊びで、今サンディエゴとロサンゼルスでは、保護犬のためのノーズワークプログラムが始まっているんです。(中略)保護犬や怖がりの犬たちに、もっと自信を持ってほしい。その自信につながるのが、やっぱり嗅覚なんですよね」(『スニッファードッグ・カンパニー』代表の細野直美さん談)という言葉もあります。同クラブでは、日本各地にノーズワークのトレーナーを輩出していますから、近くの先生を探してみるのもよいかと思います。

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    たっぷり日光を浴びることで、脳内に「セロトニン」という物質が分泌される。セロトニンは、心をポジティブにし、自律神経を整えるなどの効果が科学的に証明されている。お日様の光の下でいっぱい過ごすことも、分離不安の解決の一助になるかも~と、私は期待している

    心を安定させるためには、飼い主との信頼関係や社会経験が必要

     また一緒にたくさん歩いたり、共同作業をしたりしているうちに、見えない飼い主との絆、信頼関係もできてきます。そうしていずれ「ママ(パパ)は出かけても、絶対におうちに帰ってくる。私は寝て待っていれば大丈夫!」という確信、安心感が犬に根付いていく。それで年齢(飼い主との歴史)とともに、分離不安症は薄らいでいくことが多いのかもしれないなとも思うのです。

     でも絆や信頼関係は、短期間ではでき上がりません。根気のいる作業です(というか、犬と暮らす間、一生継続すべき課題です)。トラウマがあるコならば、より丁寧に忍耐強く、ニンゲンを信じてもらうための努力が必要かとも思います。それはペットショップで陳列されていたコなどでも同じで、保護犬だから、ということはありません。

     何歳くらいのコかによっても変わります。若ければ若いほど、不安は強いと思います。(犬の大きさにもよりますが)性成熟していない1歳か2歳以下のうちは、若犬です。犬によっては3歳〜5歳になっても、落ち着かない子どもっぽいのもいます。まだちびっ子なので、置いてきぼりは不安なのです。「犬だから留守番は当然」という風潮はよくないなぁと思っています。安易な擬人化はいけないけれど、3~5歳くらいのニンゲンの子どもくらいの心の強さと想像してみましょう。ニンゲンの子の場合、そんな小さなコだけを残して留守番はさせないですよね。

     でも、共働きなどでは留守番をさせないとしょうがないときもあります。もし経済的に許すなら、トレーナーやドッグウォーカー(散歩代行業)の人など信頼のできる人に、デイケアをお願いするのもよいと思います。その間自宅に留守番させなくてすむだけでなく、愛犬の心の成長を促すためにも役立つんですよ。保育園に行かせるのと同じような感覚です(でもお金もかかるから、毎日じゃなくていいの。習い事とかボーイスカウトに参加させると言えばイメージしやすいかな)。保護者抜きでほかのニンゲンやほかの犬に出会い、もまれて、心が強くなり、一人前に育ってくれたら嬉しいですよね。

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    何を隠そう、うちのクーパーはもう9歳半なのに、来年からデイケアに行かせてみようと思っています。これは分離不安対策といえばそうなんですが、もっと言うと、将来、多頭飼育中の犬(ボクサー)に先立たれたときに大打撃を打たれそうなへたれな性格なので、少しでも心を強くしてもらいたいと願ってのことです(つまり何歳になっても、オトナの犬になっても、そのライフステージに応じていろいろな問題は起きるもんなんですよー。一生犬のトレーニングと飼い主の修行は続くのです。でもデイケアによりクーパーがどう変わるのか、今から楽しみなんです)

    散歩で固まりますか? 外の世界は好きですか?

     とまあ、つらつら書き連ねましたが、念のため大御所のトレーナーの友人にもご意見を伺ってみました。そうすると、おおーっ、なるほどね、ということを聞き返されましたよ。

    「そのコは、外に散歩には普通に行けるの? 固まらない?」
     つまり、お外にでて固まることなく、喜んで外をお散歩できますか?

     もし「散歩は大好きです! 外に出ても、固まったりしません!」というコなら、さらにもっと自分に自信をつけさせ、不安を払拭させるべく「グループレッスンに通うのを勧める」とのこと。散歩に行くのが大丈夫なレベルなら、グループレッスンに加わっても臆することなく、参加できるはず。ほかの複数の犬や飼い主たちがいるレッスンに参加することによって、もっと社会化を促して、不安なことを減らしていく(馴らしていく)ことができるし、また退屈で留守番がイヤだという場合もいい意味で消耗してくれます。本当に飼い主さんが大好きすぎて分離不安だとしても、レッスンで一緒にいる時間を共有することにより、絆も深まります。飼い主も犬への接し方で改めるべきところを学習していくはずです。

     さらに、何よりも飼い主さんにとって一緒に勉強する仲間ができる、というのがいいそうです。同じような悩みを持つ飼い主さんと一緒に練習することで、情報交換ができたり、「一緒に頑張ろう!」という前向きな気持ちが生まれてきます。大事ですね。また犬というのは、飼い主の感情を感じ取る天才だから、飼い主さんがポジティブな気持ちで自分(犬)と向き合ってくれる方が、いい方向に転がっていきやすい。反対に、飼い主さんが犬の顔を見るたび、悲壮感が漂っていたり、機嫌が悪かったりすると、犬も不安や緊張に包まれます。飼い主が、大らかに前向きに取り組む、ってすごく重要ポイントです。

     反対に、もしも「散歩で固まります。行きたがりません」という犬なら、本当にシャイで神経過敏な性格なのでしょう。そんな犬にいきなりグループレッスンは刺激が強すぎます(デイケアも辛い)。そういう怖がりさんの犬なら前述のノーズワークがやっぱりオススメ。なにしろノーズワークは、ほかの犬と一緒にはなりません。あるのは、フードを箱に入れる係りのニンゲン(なるべく気配を消している感じ。笑。一切、声かけもしません)、箱、おやつだけ。「犬が恐怖を乗り切る(=自信がつく)とは、リカバリー能力、すなわち自分で問題(今ここにある危機やピンチ)を解決できる能力を身につけること」。徐々に自信をつけていくノーズワークは、グループレッスンにいずれ通えるようになる下準備ともなります。

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    愛犬が小型犬サイズの犬でも、外の散歩での刺激は必要ですよ。ただし、神経過敏でナーバスな犬に、無理矢理、社会見学させるとトラウマを作ってしまうことがあるから、様子をよく見て、犬の心のキャパシティーの許容範囲内から社会化練習を行い、徐々に時間を伸ばしたり、内容に変化をつけていってください

     さらにもうひとつ逆質問されました。

    「置いていったコングの中味は食べてますか?」

     完食している? もし食べていて、レッスンに通う時間がないなら「コング10個置くべし。そうしたら、かなり時間を稼げる」との助言もいただきました。

     もし食べていないとしたら......中味をもっと魅力的な香りの強い好物(レバーをペースト状にしたものなど)にするか、それでもダメなら、つまりは飼い主の不在が、不安で不安で、食べ物にも興味をそそられないということだから、やっぱり自分で問題解決能力を少しでもつけていく練習(=ノーズワーク)を地道にしていくしかないと思います。

     そのほか私は、バッチフラワーレメディを試したり、動物病院で処方されたサプリメントを試したり、鍼灸をしたり、いろいろやってみました(職業柄、うちの犬で実験したくなるというのもあります。笑)。今は、友人の獣医さんからの助言で「耳の内側に塗る漢方」をクーパーに実験中。犬により効果があるコとそうでないコもいると思いますが、もしクーパーの体質があえばラッキー!というくらいの気持ちでやっています(ただし、私は獣医師の裏付けがないものには手をださないようにしています)。

     とにかく、諦めないで、根気強く、愛犬を導いてあげてください。分離不安の症状がでているときは、飼い主も辛いが、愛犬にとっても辛い時間。その時間が少しでも短くなり、いずれ大丈夫になって、飼い主の不在中に、へそ天で寝られる日が来ますように。本気で祈念しています。

    ◎お知らせ

    【犬のお悩みよろず相談室「そうだ、かえさんに聞いてみよう!」】は、docdogメディア自体のリニューアルを控えていることもあり、いったん休止とさせていただきます。
    毎回の配信を楽しみに長らくご愛読いただいた皆様、ありがとうございました。
    また、現時点で投稿いただいているご相談に関しては順次記事化させていただきますので、しばしお待ちください。コーナー再開時期については未定ではありますが、決まり次第サイト上にてお知らせいたします。

    ◎プロフィール

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    白石かえ
    犬学研究家・雑文家。家族は、ジャーマン・ショートヘアード・ポインターのクーパー、ボクサーのメル、黒猫のまめちゃん、夫1、娘1。前職は、自然環境保護NGO・WWFジャパン。犬猫と暮らして30数年。彼らの存在は可愛いだけでなく、尊い。犬が犬らしく生き生きと暮らせる、犬目線の原稿を書くのがライフワーク。

    ●執筆サイト: dogplus.me 犬種図鑑 ほか多数
    ●ブログ: バドバドサーカス
    ●主な著書:
    『東京犬散歩ガイド』、『東京犬散歩ガイド武蔵野編』、『うちの犬 あるいは、あなたが犬との新生活で幸せになるか不幸になるかが分かる本』、『ジャパンケネルクラブ最新犬種図鑑』(構成・文)

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