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2018.12.28

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順風満帆?!あおとの暮らし【柴犬生活航海記 vol.35】最終回

白柴・あおの里帰り

2015年・秋から「あお」と名付けた柴の仔犬と暮らし始めた「犬の新人飼育員」の「僕」と「もうひとり」。3年ぶりに2人と1匹は思い出のアノお宅へと出かけた......。

#Lifestyle

Author :写真・文=舘川範雄 協力=(株)浅井企画

あお・強制退場

 最近、公園でよく会うジムくん(ビーグル&コーギー)に対して、マズルにシワを寄せて「来ないで!ガウガウガウ!」とやるようになった。
 ジムくんの飼い主さんはおふたりとも寛容なので、スケバンあおのそういう態度を大目に見てはくれているが、たまに他の知り合い犬にも同じような行動に出ることもあり、このままいくと"最要注意危険犬"になってしまうおそれがあるので(もう、そうなっているかもしれないが......)
「そういうことをするとイヤなことが起こる作戦」を発動することにした。

 その日もあおは、ジムくんがなにもしていないのにガウっとやった。
 すかさず僕はあおを抱き上げ、ひっくり返したまま公園を出た。
(良く言えばお姫様抱っこ状態、悪く言えば丸太運び状態)
「お前おしまい、お前はおしまいだ」と呪文のようにつぶやきながしばらく行ったところで下ろすと、いつもならまだ公園にいたい!それじゃなきゃ抱っこして!と主張するあおが、家の方に向かってトボトボ歩き出した。どうやら(やってしまった......もう家に帰らなければならなくなった......)と理解しているようだった。自分の行動でイヤなことが起きた......とはっきりわかっていたはずである。
 そして翌日。いつもの公園にいつものメンバーが集まっていた。いつものメンバーにあおがガウっとやる心配はないので(今日は何事もなく終われるかな)とホッとしていたのだが、試練はやってきた。
 時々会う、ロンくんの登場である。
 あおは基本的にロンくんのことは好きなのだが、時々ロンくんに匂いを長めに嗅がれて、「しつこい!」とガウることがある。当のロンくんは打たれ強いので、いつもケロッとしているが......。
 この日もロンくんは、あおのことをクンクンやりだした。
 いつものあおなら、しばらくして「やめて!」と、いくところだが、昨日のことがおそらく効いていたのだろう、少~しだけムキッとなりつつも、僕の「あお頑張れよ」や、他の飼い主さんの声援を受けて、なんとかガウりそうになるのを抑えていた。あおは耐えていた......それはよくわかった。
(あお、このまま我慢だ!)
 いつもの倍の時間は頑張った。けれどそれ以上は我慢ができなかった。
「ガウ!!!」
(あ〜!!!やっちゃったー......やりたくないけど、強制退場だ!)
 あおを捕まえるためにしゃがもうとすると、あおは僕から逃げるのではなく、丸まるように地面に伏せていた。
「やっちゃった〜、わたしやっちゃった~......」
 絶望したように丸まるその弱々しい背中はとても切なかった。やってはいけないと、頭ではわかっていたのに......。
「お願いします、勘弁してください」
 そう、背中は言っていた。その姿を見て僕は一瞬、抱き上げるのをやめようかとも思った。しかしこれで許してしまうと、やってもいいの?と思われてしまうかもしれない。
 心を鬼にし、あおを抱き上げひっくり返した。僕の腕の中で空を向く形になったあおの表情は硬かった。
 大目に見てもいいかも......と一瞬思ったが、さらに心を鬼にして公園を出た。
「あお、おしまい。今日のお前はおしまい」
 しばらくしてあおを降ろすと、昨日同様にシッポはダダ下がり。またトボトボと、自ら家に向かって歩き出した。
 一緒にいたもうひとりの飼育員も、あえてあおに声などかけず、無言。
 甘噛み撲滅キャンペーン中の、歯が当たっただけでもおおげさに「痛い!」と言って、あおの前から二人して立ち去った、あの演技を思い出した。

 ガウッとやるとイヤなことが起きる......そう思わせられただろうか?
 ひとつ気がかりだったのは、両日とも「ガウッとやる」→「強制帰宅」のあとに「午後はおでかけ」というスケジュールだったことである。《ガウッとやって公園からつまみ出されても、その後にいいことが待っている》そう思われてしまわれたらどうしよう。
 初日は、あおのお気に入りのカフェへ。メインの目的はシャンプーだったが、その前にカフェの店員さん、お客さんたちにたっぷりかまってもらい、さらに美味しいおやつまで!

右前足が上がってしまうほど美味い様子

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あお、3年ぶりに葵ちゃんの家へ

 次の日の午後もおでかけ。そもそも前日のシャンプーは、このお出かけのためだった。
 我々が向かったのは、あおが我が家に来る前に、2日だけ預かってもらった葵ちゃんの家。
柴犬生活漂流記vol.2参照)
 あれから3年。あおはすくすく、のびのび、(またはのうのうと)大きくなった。それまで何度も成長したあおを連れて葵ちゃんのお宅へ伺おうと思っていたがなかなかタイミングが合わず、先日やっとその機会を得た。
 今考えれば、あおが親元を離れて初めての夜を過ごしたのは葵ちゃんの家ということになる。どんな気持ちで一夜を過ごしたのか......不安だったろう、寂しかっただろう、、、想像すると胸が痛い。でも現実は、生まれてまだ2か月、そんなことなど一切思わず、「眠いから寝る~」「起きたからご飯食べる~」と、ただのんびり過ごしていたに違いない。
 里帰りにも似た訪問。なんだか我々飼育員も緊張する。
「あお、覚えてるかな~」
 もうひとりの飼育員が言う。
 果たしてどうだろうか?いや覚えてるはずがない。
 しかし、それを言ったら話が終わってしまうので、「どうかな~?」と一応乗ると、
「いや覚えてないでしょ」とあっさり言われた。
(なんだったんだ?今の会話は......)

 そんな無駄話をしているうちに、我々は予定よりも10分早く現地に着いた。
 あまり早く伺うのも失礼だと思い、車内で待つことにしたのだが、すぐにあおの鼻に抜ける声が......。
「クーーン......クーーーン」
 翻訳すると「ねえ、何待ち?」。あおは本当にせっかちだ。

 仕方ない......あおを抱き上げ、葵ちゃんのお宅へ向かった。

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「お邪魔しま~す」
 葵ちゃん母、中学生になった葵ちゃん、葵ちゃん姉、葵ちゃん父・葵ちゃん祖母、みなさん勢揃いで出迎えてくれた。
 せっかくの日曜日にすみません......などと言いながら居間へ。すると、葵ちゃん家の愛犬・柴犬のリンちゃんがいた。
 あおが泊めてもらった頃はケージの中にいたのだが、今のリンちゃんはフリースタイル。あおの登場に固まるリンちゃん。そんなリンちゃんを見つめるあおは、アウェイでは弱気。おとなしく挨拶できる可能性の方が高い。と、思っていたら、リンちゃんの方がダメだった!
「ワンワンワンワンワン!!!!!」
 けたたましい声と共にリンちゃんが姿勢を低くしてあおにズズズズと迫ってきた!
「あんた誰!?来ないで!!」
 そんなところだろう。そりゃそうだ、リンちゃんにしてみたら、午後、のんびりしていたらいきなり目の前に知らないのが図々しく入ってきたのだから。

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「リンは犬の友達が全然いないんですよ~」
 お母さん、それ先に言ってください~。

 リンちゃんの威嚇は続く。強い犬なら無視できるのかもしれないが、襲いかかられたら確実に自分が負けるとわかっているあお、必死に吠えて対抗していたが、完全に腰が引けていた。
 そろそろクールダウンさせた方がいいなと、ストップをかけて、両者を離した。

 ここでふと思ったこと。
「リンちゃんとのガウガウは叱らないのに、どうして朝、公園でガウガウやったら叱られたの?」
 もしあおにそう聞かれたら、なんと答えればいいのか......。
「今のは防衛だから許可。でも朝のは先制攻撃だったから不許可」
 よし、これでいこう。(無駄な準備)

 一戦交えたあとのあお。普通の犬ならシッポを下げて「もう帰りたい」と出口へ向かうのだろうが、図太いというかなんというか、リンちゃんと距離を取りながら、葵ちゃん一家に堂々とかまってもらい始めた。さらに、リンちゃんが二階の部屋へ移動させられた途端、それまで怖くて近寄れなかったリンちゃんの陣地へスタスタスタ。ベッドやフードボウルなどを念入りにチェックし始めた。その姿、まさに占領軍。弱肉強食の世界とはこういうことだと思い知った。

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 いつもは昼寝をしている時間だからなのか、リンちゃんと必死でやりあったからなのか、あおはいつしかくつろぎ始め、さらには寝始めた。 なんという我が物顔!

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 ということで、我々が想像していたような感動的な再会シーンではなく、あおらしいといえばあおらしい3年ぶりの訪問。

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 行く前にお願いしようと決めていたことがあった。
『あの日と同じように、葵ちゃんに今のあおを抱いてもらおう』
 子犬の写真を嬉々として撮ることがどこか照れくさかったので枚数も少なく、耳がフレームの外だったり、ピントも合っていなかったり、構図の工夫もなにもなかった。
 時間を切り取り、永遠に残す難しさ。後から見直して後悔した。
 だから今回は恥ずかしがらずに......。

「葵ちゃん、あの時と同じ感じで、あおと一枚、お願いできるかな」
 葵ちゃんはあおを抱き上げてくれた。

 そこにはあの日と違う、あの日と同じふたりがいた。

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 あの日、今にも壊れそうな1.5kgの体を怖々抱いた。手の上で眠り始めたあおの、その小さな呼吸を聞きながら命の重さにひるんだ。

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 あの日から3年が過ぎた。
 他の柴犬と比べたら小さい方かもしれないが、8.8kgの体は、ちょっとやそっとじゃ壊れそうもない。

 あおはオトナになった。
 そしてこれからも、あおはオトナになっていく。
 あおとの暮らし。このままずっと続けばいいな。
 考えると苦しくなる。

 さあ! 散歩に出かけよう。
 せっかちなあおが僕らを待っている。
 早くしないと時間がないよと、黒い瞳で言っている。

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 今日もなぜだか我が家には、白い小さな柴がいる。
 彼女の名前はあお。
 もうすっかり、家族のつもりで寝そべっている。

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(つづく)かな?

◎お知らせ

2017年10月より連載してきた白柴あおのシリーズですが、docdogメディア自体のリニューアルを控えていることもあり今回の【柴犬生活航海記 vol.35】最終回をもって、いったん休止とさせていただきます。
毎回の配信を楽しみに長らくご愛読いただいた皆様、ありがとうございました。
次シーズンについては未定ではありますが、再開が決まり次第、またサイト上にてお知らせいたします。
*あおの近況は、インスタグラム(ao20150721)にて公開中です!

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◎プロフィール
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舘川範雄 (たてかわ のりお)
1966年9月19日生まれ。1987年4月から作家活動に入る。
「コサキン」「SMAPxSMAP」「ポンキッキーズ」「スクール革命!」「THEカラオケ☆バトル」などテレビ、ラジオで多数の番組構成を担当。また関根勤主宰「カンコンキンシアター」の他、オリジナルコメディーやミュージカルの作・演出など、活動は多岐にわたる。
*本連載の1stシーズン【柴犬生活漂流記】は、こちら
*インスタグラム(ao20150721)で白柴「あお」が毎日、犬の目線で日々の出来事を投稿中! 

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