magazine

  1. トップページ
  2. MAGAZINE
  3. 白柴・あおの「されても平気なこと」

2018.12.07

ブログ        

順風満帆?!あおとの暮らし【柴犬生活航海記 vol.32】

白柴・あおの「されても平気なこと」

2015年・秋から「あお」と名付けた柴の仔犬と暮らし始めた「犬の新人飼育員」の「僕」と「もうひとり」。今回は3歳になったあおが、いつの間にか嫌がらなくなっていたことについて......。

#Lifestyle

Author :写真・文=舘川範雄 協力=(株)浅井企画

許容範囲拡大中?

 インスタグラムなどで、愛犬にいろいろなことを仕掛けている飼い主さんの投稿。頭の上に何かを乗せたり、犬の顔を横にひっぱって変顔にしたり。そういう写真や動画を見るたびに「よくできるな~」と感心することが多かった。

『柴犬はベタベタされることを好まない』と思っていたので、頭や背中を撫でることはあっても、それ以外は抱っこ移動、体や足を拭く、歯磨きぐらいで、あおに何かすることはあまりなかった。
 あおは"フリーの愛犬"または"流しの飼い犬"なので、よその人にはデレデレベタベタするが、うちではよそよそしい。ちょっとでも近付こうものなら「やめてっ」と、少し離れたところへ移動するので、ベタベタするのはあおにとってのストレスなのだろうと、距離感を持って生活していた。
 だが「もうひとりの飼育員」は、お構いなしにやたらとベタベタ。されている時のあおの顔は明らかに迷惑そうだった。

「でも最近は、あおも嫌いじゃないんだよ」
 そう彼女は言うので、そんなことないでしょと言い返そうとしてふと思った(でもそういえば逃げないな......)。
 以前なら必死に逃げ出していたあおが、そう言われてみるとベタベタされてもじっとしている。よその人にかまってもらっている時のとろけるような表情ではないが、たしかに「自分からはしないけど、ベタベタされるの嫌いでもない」という感じだ。
 ひっくり返しも、足拭きも、歯磨きも、全部できるようになった。あんなに暴れていたのに、今は当たり前のことになっている。
 すべては『慣れ』なのか、それとも『あきらめ』なのか......。

 目頭に黒い目ヤニがついていることがある。小さな頃は取ろうとすると嫌がっていたが、今は「あお、目!目!」と言いながら顔に手を近づけると、そっと目を閉じたままじっとしている。
『慣れ』なのか、それとも『あきらめ』なのか......。

 散歩から帰ってきたら、足を洗ってタオルで拭き、そのまま流れでドライシャンプーシートで全身を拭く。さらに今年はコームで毛並みを整える作業も加わった。足を拭かれるのも、体にブラシや櫛を当てられるだけでも嫌がってのに、今ではじっとしている。
『慣れ』なのか、それとも『あきらめ』なのか......。
(答え:時々「きゅー」みたいな高くて変な声を小さく出すので、きっとこれは『あきらめ』)

 雨の日のレインコート。着ただけでその場から動かなくなっていたのに、今ではおとなしく着せられ歩いている。
『慣れ』なのか、それとも『あきらめ』なのか......。
(答え:『慣れ』。濡れながら歩くのが嫌いなので、今はレインコートを着ていないと雨の中、歩こうとしない)

 レインコートは着られるようになったが、ハーネスなどは経験が少ないので苦手。服も着ることが少ないのと、可動域が制限されるのが嫌なようで、着せられるとあまりいい顔はしない。とはいえ、服を見ただけでも逃げ回り、着せようとしただけでも大暴れしていた頃と比べればかなりの成長だ。

 

 今年のハロウィンでは帽子も被っていた。今までは頭に何かを乗せられた瞬間、振り落としていたのに。
『慣れ』なのか、それとも『あきらめ』なのか......。
(答え:不明)
 そんな最近のあおに可能性を感じた「もうひとりの飼育員」は、あることを企んだ。

あお着るか?

「コレにするのはどう?」
 彼女が手にしたのは茶色の物体。先日参加した白柴会でのことである。
(※白柴会については航海記vol.27を御覧ください)

 今回は白柴会の特別編、白以外の柴も(なんなら別犬種も)参加OKの「柴運動会」と銘打たれた集まりだった。

181201_02.jpg

 50m走に参加したあおは、いいスタートを切り、好記録を期待させたが、ゴール前でまさかの急停止、「え?どうすればいいの?」という顔のまま数秒間フリーズ。
 ゴールの向こうからの「あおちゃん!」「あおちゃん!」の声にやっと「あ、そっちまでいくのね?」と理解してなんとかゴール。

181201_03.jpg

 記録的には残念な結果に終わったが、表彰式ではなんとあおの名が呼ばれた。

※表彰台での記念写真(実際は2位でもなんでもない)

181201_04.jpg

 おそらくおもしろ系での受賞である。
 賞品はいくつかある中から自分たちで選んでいいというので、どれにしようかな~と考えようとした瞬間、冒頭の言葉である。
「コレにするのはどう?」
 彼女が手にしたのはモコモコした茶色いモノ。被り物であることはすぐにわかった。
「サイズ、あおにぴったりじゃない?」
(ぴったりだけど、それ、あお着る?)
 言おうとしたが、面白そうなので彼女の選択に乗ることにした。
 あとで聞くと、その服は柴運動会の幹事のひとり(男性)の手作りだった。ハンドメイドとは思えないほどの高いクオリティ。器用だな~と感心しながらありがたく頂戴した。

 翌日、早速あおに着せようということになった。
 果たしておとなしく着るか?それとも逃げ回るか?

「あお、ちょっと着てみて」
 以前なら服を見た途端、逃げ出していたあおが「なにそれ?」と興味ある顔で見ている。いけるのか?
「じゃあ着てみよう!」
 頭を通し、さらに前足を通して着せた。
 おお、すんなり着せられた!
 着せ終わると、目の前にチェブラーシカみたいなのがいた。

181201_05.jpg
181201_06.jpg

 その姿にも笑ったが、着せられっぱなしでも気にせずにいるのも笑った。
「こういうのもイケるのね......」
 もうひとりの飼育員がこの服をトナカイ風にアレンジして、今年のクリスマスに着せようとしていることを、あおはまだ知らない......。

あおのどうしても譲れないこと

『されても平気なこと』が増えてはいるあおには、『どうしても譲れないこと』も存在する。
 あおは毎日、夜の散歩プランを考えているらしい。
「昨日はあそこに行ったから、今日はあそこに行こうかな」
 考えるのは自由だがこちらの都合は一切考慮されていないので困る。

 ちなみにあおのプランの「あそこに行こう」の「あそこ」とは公園でなく、(またかと思われる方もいらっしゃると思いますが......)『カフェ』。
「あそこの店に行く前に、途中あの公園にちょっと寄って用を済ませてから行こう」と、公園に立ち寄る。朝の散歩ではあんなに公園でくつろぎたがるのに、あおにとって夜の公園は目的地ではなく通過点なのだ。
 歩いてくれるのはありがたいが、そうそう毎日カフェによるわけにもいかない。仕方なく付き合うこともあるが、店の前まで行ったところで抱き上げてスルーすることもある。
 離れたところで降ろすと、今までは「戻る~!」と方向転換しまくっていたが、ここ最近は、降ろしても振り返ることなく進み出す。
 あおの心の声はこうだ。
「じゃああっちにしようよ」
「あっち」とは公園ではない。『別のカフェ』である。
 今のあおの頭に中には「カフェリスト」が出来上がっている。
 Aの店がダメなら、Bの店にしよう!
 二次会を仕切る幹事のように、あおは自分のなじみの店の中からTPOに応じて選ぶのである。
(こいつ進化している......)
 ここまでくると感心する。

 最近は店内が暗いと定休日だとわかるらしく、「今日はやってないね......わかった、わたしに任せて!」と、別の店へと進んでいく。
 この間のこと。いつものようにあおには夜散歩のプランがあったらしい。
 公園を出たあおは、スタスタとなじみの店へと向かっていた。けれど僕は最初から店に寄るつもりはなかった。
(あお、悪く思うなよ。だって今日は家にご飯があるんだよ)
 店の前についたところで抱き上げ、「あお、今日は行かないよ」と言いながらスルーすると、以前ならあきらめきれずに戻りたい!と駄々をこねていたあおが「わかった、じゃあ別の店に行こう!」と、軽快に歩き出した。
 このスタスタ歩きを散歩に利用しない手はない。あおおすすめの第二の店までついていった。あおの背中からワクワクが滲み出ている。
(あお、悪く思うなよ。今日は家にご飯があるんだ)
 第二の店に着いたところで、あおを抱き上げ、「はい着いたけど、また今度」と言いながらスルーした。
 最初の店をスルーした時はおとなしくしていたあおが、必死に後ろを振り向こうと僕の腕の中で体をねじってきた。
(......まずいな)
 店から十分に離れたところであおを降ろした。あきらめて歩き出すと思いきや、瞬時に座り込んだ。
 つぶらな瞳で僕を見上げている。
 その目は完全に「それはないよ」と訴えていた。

こういう目(イメージ)

181201_07.jpg

「あの店に入るために一生懸命歩いてきたんだよ」と言っていた。
 わかるよその気持ち。でもあお、今日はうちにご飯があるんだよ。
「そんなの関係ないね」
 あおの目が、小島よしおか柴田恭兵的なセリフをぶつけてくる。
 黒い目が僕を見続けている。だんだんせつなく見えてくる。
「昼からずっと楽しみにしてたんだよ」
「どうしてそんなひどいことするの」
 やめてくれ......そんなこと言わないで......。

「......わかったよ!」
 またわかってしまった。
 あおの前にしゃがみ、あおの最終確認した。
「お店に行きたい?行きたい人!」
 手のひらをあおに向けると、あおは前足で僕の手にタッチした。
「イエーイ!」

 あおはすくっと立ち上がり、店に向かって早足で歩き出した。

 店に着くと顔なじみとなった店員さんが、「いらっしゃいませ」と半笑いで迎えてくれた。
(また犬の言いなりになっている人来たよ)
 店員さんの顔には、そううっすらと書いてあった......。
 そして計画通り店に入れたあおの顔にはこう書いてあった......。

「この店やっぱり落ち着くね」

181201_08.jpg

(つづく)

◎プロフィール

mitsui_pr.jpg

舘川範雄 (たてかわ のりお)
1966年9月19日生まれ。1987年4月から作家活動に入る。
「コサキン」「SMAPxSMAP」「ポンキッキーズ」「スクール革命!」「THEカラオケ☆バトル」などテレビ、ラジオで多数の番組構成を担当。また関根勤主宰「カンコンキンシアター」の他、オリジナルコメディーやミュージカルの作・演出など、活動は多岐にわたる。
*本連載の1stシーズン【柴犬生活漂流記】は、こちら
*インスタグラム(ao20150721)で白柴「あお」が毎日、犬の目線で日々の出来事を投稿中! 

掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法等により保護されています。

白柴・あおの七不思議

白柴・あおの七不思議