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2018.11.23

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順風満帆?!あおとの暮らし【柴犬生活航海記 vol.30】

白柴・あお「秋の長散歩」

2015年・秋から「あお」と名付けた柴の仔犬と暮らし始めた「犬の新人飼育員」の「僕」と「もうひとり」。今回は、「秋の散歩」について......。

#Activity / #Lifestyle

Author :写真・文=舘川範雄 協力=(株)浅井企画

帰りたくない......

 新記録が出た。「散歩最長時間記録」。樹立されたのは11月10日(土)のことである。
 あの日の東京は朝から気温が18℃もあり、少し汗ばむほどの陽気だった。
 あおに朝ごはんを食べさせ、我々飼育員が家を出たのは8時半過ぎ。そこからいつもの公園へ向かい、いつもの公園メンバーと落ち合った。

この日も僕から離れ、よその家の愛犬ぶっていた

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 その日の僕の計画は......
「10時過ぎに帰宅→あおの足と体を拭く→シャワーを浴びる→昼食→原稿書き→夕食」だった。
 ちなみに「もうひとりの飼育員」は友人と美術館へ行くと約束があると、途中で離脱。公園から去っていく彼女の背中を見ながら、あの人みたいに自由に生きてみたいなーと思いつつ、飼育員はひとり体制となった。 ひとりの時に限って、何かが起きるのがいつものパターンである......。

 おやつをもらったり、おやつをもらったり、おやつをもらったりしながらおやつをもらっていると、あっという間に時刻は10時。
 みんなが帰り支度をはじめると、最近のあおは決まって門と反対方向へコソコソ逃げるように歩き出す。「わたしはまだ残ります」の意思表示だ。
 ひとり居残り、孤独に公園を満喫するのがいつものあおの楽しみ方なのだが、こちらとしてはここに長居されると困る。しかし公園に来ているのに、全然歩いていないあおをこのまま帰宅させるのも、運動不足でまずい。少し遠回りしながら帰ろうと、あおを抱き上げみんなと一緒に公園を出た。
 強制的に公園から出されたあおは、みんなの後ろをついて行きながらも、その足取りは重かった。しかし、みんなと写真を撮るスポットに着いた頃にはもう公園のことは忘れて楽しそうにオヤツをもらって記念撮影の列に並んでいた。

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 この時点ではまだ10時過ぎ。このまま少し歩いて家に帰れば、ほぼ計画通りだ。
「それじゃまた~」
 みんなと分かれるとあおは軽快に歩き出した。
(もしやこれは......)
 嫌な予感は当たった。
 あおが向かったのは家ではなく、いつもかまってくれる保育の先生たちと会える公園だった。でもこれは想定内。帰り道の途中といえば途中なので、歩いてくれる分には問題ない。
 公園に着くと、数組の親子が遊んでいるだけで、先生たちはいなかった。
(あお、悪いな。今日は土曜日、先生たちはいないのさ)  心の中でほくそ笑みながらあおに言った。
「あお残念~今日は土曜日だからいないんだよ。さあ、帰ろう」
 公園を見回し、先生たちがいないことがわかると、あおは落胆するようにしゃがみ込んだ。

ボー然

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「ほら、帰ろう」
 するとあおは立ち上がり、歩き出した。
(お!理解した!?)
 ......してなかった。数歩歩いた先はベンチの前。ゆっくりと寝そべった。
 まずい......長期滞在のパターンだ......。
(まさか来るまで待とうとしているのか?)
 数分その状態のまま様子をみたが、動く気配はない。
「あお、そろそろ行こうか!」
 ダメ元で提案すると、
「いいよここで」
 ......そんな顔をされた。

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(まずいな......)
 またも抱き上げて公園を脱出した。

 このまま抱き上げたまま家に帰るのが一番早いが、距離もあるのでやめた。なんとか自分の意志で移動してもらえないだろうか......?
 そこで、帰りのルートを『最初の公園経由、我が家』に設定し直すことにした。少し戻る形にはなるが、帰り道からは大きく外れてはいない。経由して帰るぐらいなら大丈夫だろう。提案した。

「(※最初の)公園に寄ってから帰ればいいんじゃない?」
 新たな帰宅ルートの方向へあおを導くと、あおも「あ~、そういうことね」と、歩き出した。でもホントにこちらの意図が伝わっているのか半信半疑。
 わかっているのか?......行くのか?......行く?......行ったー!
 見事、あおは最初の公園に戻った。
(園内をちょっと歩けば、まあ満足するだろう)
 しかしその考えは甘かった。
 しばらくうろちょろしたあと、あおはまたも寝そべりだした。まずい......。
 みんなから「あおちゃんはここに家を建てて住めばいい」と言われるぐらい、この公園はあおのお気に入り。でもさっき散々ここにいたんだけど......。呆れながらあおに声をかけた。
「もういいでしょ?帰ろう」
 するとあおに
「まだだよ」
 という顔をされた。

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 この時点で11時。帰宅予定時間より1時間オーバーである。
 あおは公園でのんびり過ごしたい。僕は仕事に取り掛かりたい。
 そこで急遽、新しいプランに切り替えた。
 ベンチに座ってあおをひざの上に乗せ、ここで仕事をすることにした。
(iPhone便利!)

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 あおは景色を眺めながらのんびり。ぼくはその時間を利用してネタ作り。
 できた!メールを送信して、ひと仕事完了。まだ仕事は残っているが、これで少し気持ちがラクになった。時刻は11時半を過ぎ。
「よし、あお帰ろう」
 そのままあおを抱き上げ、公園を出た。

あお、どこへ行く?!

 あおも満足したのか、下に降ろすと自ら家の方に向かって歩き出した。
 よかったー。
 家まであと300m。しかしそこであおはグイッと方向を変えた。
(なぜここまで来て右折?!)
 ここであおの体の向きを変えれば、きっとそのまま帰宅できたと思う。
 あおもきっと、(もし許されるなら......)と、ダメ元での方向転換だったような気がする。
 でもこの時、僕の中に怖いもの見たさの気持ちが湧いてきてしまった......。
(このまま行かしたら、どこに、どこまで行くのだろう?)

 よせばいいのに、僕はそのままあおについていくことにした。
 ひと仕事終えた安堵感が、僕を観察モードに突入させた。

 あおはまず、最近通っていなかった路地をあちこち歩きまわった。
 軽快な足取り。笑顔も浮かべている。30分以上うろうろしたところで、あおは大通りへと進路を変えた。道を渡って少し行くと大きな公園がある。(まさかまた公園?(いや、違うきっとあそこだ)
 予想的中。あおが向かったのは公園のそばにある、最近ご無沙汰していた、あおのお気に入りのカフェだった。
(あおです!来たよ~)
 そんな感じで僕よりも先に店内に入っていく。1時間ほど前から感じていた空腹をここで満たすことにした。
 散歩バッグにイザという時のために入れてある財布の中を確かめる。
 わ!なにやら領収書が入っている......そういえばこの間"もうひとりの飼育員"が、あおに引っ張られて別のカフェに寄らされたと言っていた。
 彼女もこの財布から払ったのか~。使われた分は......もちろん補充されはいない。けれどもうこういうことには慣れっこなので焦りはしない。
 財布の中身を確認せずに出発してしまった自分を責めながら、誰にも見られないよう、そっと残金を確認した。なんとかランチは食べられそうだ。
 その間、あおはすっかり床に寝そべりリラックス。
 あお、ここもお前の家なのか?!

通路でくつろぐ邪魔なヤツ

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 パスタランチを終え、時計を見ると午後1時過ぎ。
 会計を済ませバッグを手にすると、あおはすくっと立ち上がって自ら出口へ向かった。
(朝8時半からの散歩、さすがのあおも帰りたくなったかな?)と思っていると、店から出たあおは家とは反対方向に進み始めた。
 もう帰った方がいいだろう......でもどこまで行くのか見届けたい......。
 ここでもあおを止めず、つい付き合ってしまった。
 ここを左に曲がれば広い公園......天気もいいし、腹ごなしにはいいかもと、こちらも散歩したいモードになってきたのだが、あおは左ではなく右に曲がった。
(まさか......)
 またも予感は的中した。あおが目指したのは、別のいきつけカフェだった。
(うそ!?ハシゴ?)
 当然!と、あおは店に入っていった。
 店員さんが(またあの人、犬に連れて来られたよ)という表情で僕を迎え入れてくれたので、心の中で(助けて)とつぶやきながら席についた。
「お食事されますか?」
 メニューを差し出されたが、もう一食食べる胃袋とお金は持っていなかった。
 以前この店で食事をし、一度退店したのに数分後、またあおに店に連れ込まれて座る羽目になった時、僕に同情してくれた店員さんが「こちらをどうぞ」とサービスでちょこっと出してくれた杏仁豆腐がやけに美味しかったことを思い出した。
「杏仁豆腐とジャスミン茶をお願いします」
 ランチのあと、別の店でデザートを食べる......。
 もはやこれは散歩ではなくデートなのか?
 あおは早くも床にふせ、音楽を聴きながらくつろぎ始めていた。

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 およそ30分後......。
「そろそろ行こうか」
 声をかけると、あおはぴょんと起き上がり、満足気に店を出た。
(もう帰るよね......)
 甘かった。あおは公園に向かった。
 時刻はもうすぐ午後2時......。昼寝もしてないのに、嬉しそうに公園を散策するあおに疲れは見えなかった。

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 公園を40分ほど歩きまわったところで、あおはやっと外に出る気になった。
(もう帰る?......らない?......らないぞ......もしかして)
 あおはまたも家とは反対方向に進み出した。どんどん我が家が遠のいていく。

「ねえ、ここ入れそうだよ」
 立ち止まったあおは、そういう顔でこちらを見てきた。

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 そこは宅配ピザの店。中に席はない。
「カフェっぽいけど違うから」
「だよね~」
 そんな顔で再び歩き出すあお。

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 なぜあっさりと歩き出したのか......それは目的地が別にあったからだ。
(こいつ、絶対あそこに行くぞ......)
 予想はまたも的中。あおが目指す先に別のカフェが見えてきた。
 カフェ3軒はしご?!バカじゃないの?!

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 あおが当たり前のように入ろうとすると、
「すみません、今満席で......」と、店員さんに止められた。
(助かった~)
 しかしあおには通用しない。
「なにやってんの?入ろうよ!」
 ぐいぐい前に行こうとするあおを「満席だから入れないって」と言いながら止めると、「だったら待つ!」と、言うように座り込んだ。

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(出たよ......)
 この時、こちらの感覚は完全に麻痺してきた。
(あおが待つなら一緒に待つか)そんなふうに思ってしまった。
 しばらく席が空くのを待ったがなかなか席は空かない。
 10分ほど待ったところでやっと我に返った。
(なんで待ってる?帰れ俺!)
 しかしあおは入る気マンマン。これであおを抱き上げて帰るのは簡単だが、
 ここまでくると何か立ち去る理由が欲しくなっていた。何かないか......。
 と、あおがやおら立ち上がった。
(ん?)
 次の瞬間、ビュンとリードが引っ張られた。振り返るとそこには初対面犬!
 あおはその犬に飛びかかろうとしていた。
「おまえ何やってんだよ!」
 慌ててあおを引き戻し、初対面犬の飼い主さんに非礼をわびた。
 そして同時に思いついた。
(『ガウガウやると嫌なことが起きる』を使おう!)

 まずあおを抱き上げ、「あ~あ~せっかくカフェに入ろうと思ったのにな~、お前の今のでナシだよ~。あ~残念、あ~入りたかったな~」とぶつくさ言いながら店から離れた。
(あお覚えておけ、これはこちらの都合ではなく、あおのせいで帰宅するんだぞ)
 自分がしたことでカフェに入れなかったと理解したかのように、下に降ろしたあおは、その後素直に家に向かって歩き出した。
(言ってみるもんだな)
 と、よくわからない充実感の中、午後3時15分、ついに帰宅!

 足を拭き終わって時計を見ると3時40分を越えていた。
 長かった......実に長かった。
 朝8時半に出て、もうすぐ夕方の4時。ほぼずっと外にいた。
 あおはベッドで丸くなって寝始めた。

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 僕の方はアドレナリンが出ていたのか不思議と眠気はなく、そのまま仕事に取り掛かれた。
 19時少し前仕事部屋から居間に行くと、あおはベッドからクレートに移動し、本格的に寝ているようだった。
(夜の散歩は22時過ぎでもいいかな)
 と、思っていると、モソモソとクレートからあおが起き出してきた。
(あ、起きた......)
 あおは大きなあくびをひとつし、僕を見上げて目で言った。
「え?もう散歩行く?!」
 その目は輝いていた。
(まだ行かないよ!)

(つづく)

◎プロフィール

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舘川範雄 (たてかわ のりお)
1966年9月19日生まれ。1987年4月から作家活動に入る。
「コサキン」「SMAPxSMAP」「ポンキッキーズ」「スクール革命!」「THEカラオケ☆バトル」などテレビ、ラジオで多数の番組構成を担当。また関根勤主宰「カンコンキンシアター」の他、オリジナルコメディーやミュージカルの作・演出など、活動は多岐にわたる。
*本連載の1stシーズン【柴犬生活漂流記】は、こちら
*インスタグラム(ao20150721)で白柴「あお」が毎日、犬の目線で日々の出来事を投稿中! 

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