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2018.10.02

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犬と暮らして30余年。白石家の知恵袋<vol.4>

犬もストレスが溜まります。愛犬は大丈夫?<退屈ストレスの知識編>

9月はなんだか雨続きでしたね~。「雨ニモマケズ風ニモマケズ」犬の散歩に行くのが基本ですが、こんなにも長雨や台風が続くと、どうしても犬と外へ出かける時間が短くなりがち。そんな日が続くと、退屈でヒマを持て余して犬もストレスが溜まります。そこでまず前半の<知識編>では、そもそもストレスとは何かと、ストレスが溜まっているかどうかを見極めるポイントなどをお伝えします。

#Activity / #Lifestyle

Author :写真=横井 徹、白石かえ、docdog編集部 文=白石かえ

犬にとっての「健康で文化的な最低限の生活」とは

雨続きだと、刺激が少なく、イライラしているかも

 9月初めから、東日本と西日本では前線や台風、湿った空気の影響で、曇りや雨の日が多く、日照時間の少ない状態が続いている。昼間久しぶりに日が射すと「やったーー♪」と思って、急いで洗濯物を干す。しかし、喜んでいたのも束の間、「夕立」というにはあまりに情緒の欠片もないドシャドシャ雨になり、洗濯物撃沈(涙)。そして「これ、いつやむのーーっ? 今日も散歩、厳しーーっ」(行きますよ、行きますけど、1時間も歩けませんっ)という日が多かった。

 ニンゲンは日照時間が短くなると、うつ状態になりやすいそうだが、犬はどうなんだろう?(まだその研究をしているという獣医さんは聞いたことはない)。でも科学的に証明されていなくても、ニンゲンと同じく感受性のある哺乳類なんだから、日照時間不足だと犬も気持ちがどんよりするかもしれないぞ(柴の認知症が進むという説は聞いたことがある)。しかも、犬は、会社にも学校にも行かない。テニス全米オープンで大坂なおみ選手がセリーナを破って初優勝しようが、プロ野球セ・リーグでカープが球団史上初の3連覇で9度目の優勝をしようが、関心がない。ヒマだ。退屈だ。楽しいことが足りない。そうなると健康な犬ならストレスが鬱積する。今、問題行動の芽が、犬の心の中でじわりじわりと生長しているかもしれない。

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犬友達の若いイングリッシュ・ポインター。せっかく与えたオモチャも15分後にはこの有り様(飼い主泣かせだよね〜)。でも、中味の綿をだしてしまう犬は多いね。獲物の内臓をだして食べる捕食行動の名残りなのかなと思ったりもする

日本の犬の生存権は、憲法にまだ含まれてないけれど

 では犬にとって、楽しいこと、というかまず最低限保障されるべき健康で文化的な(犬らしい知性を満足させる)生活はなんだ?というと、やはり「5つの自由」が満たされているかどうかだ。

「5つの自由」
(1)飢えと渇きからの自由
(2)不快からの自由
(3)痛み、負傷、病気からの自由
(4)恐怖や抑圧からの自由
(5)自由な行動をとる自由(正常な行動を表現する自由)

 ヨーロッパでは「ペット動物の保護に関する欧州協定」(1987年)が結ばれるほど、動物の権利が法律で認められており、中でもスイスやドイツでは、憲法に「動物保護j の規定が導入されている。残念ながら日本ではそんな法律が実現するのは遠そうだ(いつかその日がくるといいんだけど)。

 でも、おおむね日本の飼い主の中には、(1)のごはんや水を与えないとか、(2)の雨ざらしのところで鎖につないで飼っているとか、(3)の病気で苦しんでいるのに病院にも連れて行かない、という人はいないだろう(いや、それすらちゃんとしない人がたまにいて、虐待としてニュースになる。そういう人は次は無理して飼い主にならないでほしい)。

意外と気がついてもらえない、抑圧や犬らしい欲求の制限

 そんな人はdocdog読者にはいないと思うので先に進むが、意外と日本人飼い主で盲点となりがちなのが、(4)と(5)である。(4)の「今、すごくつまんないと思っている」「ほんとは(この環境は)すごく怖い」「今は無理して我慢している」や、(5)の「犬らしい行動をさせてもらえない」「犬というイヌ科の動物として扱ってもらえず、それ相応の運動や悦びを与えてもらえない」など、犬の気持ちをちゃんと気がついてあげられているか。犬を犬として見て付き合い、擬人化せず、犬の行動や気持ちを理解し、観察できる人であることが望まれる。

ストレスゼロが、別のストレスを生む

 ちなみにひとくちに「ストレス」と言っても、ストレスにはとても広範な意味が含まれる。まずイヌもヒトも、生きているかぎり「ストレスゼロ」のいう日は訪れない。というか、ストレスは日本語だと悪い意味のイメージがあるが、「いいストレス」もある。

「ストレスとは、外部からかけられたプレッシャーに対する心の防御反応」、ついでに言うと「プレッシャーとは、外部からかけられる圧力。重圧」らしいが、個人的には犬の場合「ストレス=刺激」とイメージするとわかりやすいかもしれないなと思っている。怖すぎる体験とか、個体の許容量を超えた運動は、心身に悪い影響を与えるストレス(刺激)だが、ワクワクドキドキする体験や、1日中走り回って満足した運動は心身によい影響を与えるストレス(刺激)だ。

 それを応用したのが社会化トレーニングだと思う。適度なストレス(刺激)を受ける経験を犬にさせることにより、これからの人生(犬生)、ストレス耐性のある、環境適応能力のあるコに育ってもらいたい。そのために練習(社会見学、社会体験)させる。ストレスは全部が悪いものではない。ちなみに、たとえば同じ犬種に、同じ量の運動や外的刺激をを与えたとして、それがしんどいと思う個体もいるし、気持ちいい、楽しいと感じる犬もいるから、ストレス(刺激)のかけ具合は無理をさせない程度に行う必要がある。今までの社会化(経験値)の差、もともとの性格や運動能力などによる個体差が関係するから、よいストレスと負荷になるストレスの境界線を見つけるのは飼い主の腕の見せどころだ。

 ともあれ「ストレスゼロ」というのは「外的刺激ゼロ」「体験ゼロ」であり、「生きる悦びゼロ」とも言えるので、よいストレス(刺激)は必要。病気の犬で寝たきりになっているならいざしらず、健康なまだ若い犬に、刺激や生きる悦びのない生活をさせていたら、精神的な苦痛となる悪い方のストレスが溜まっていくのは当たり前である。ストレスゼロは、「5つの自由」の(4)の抑圧であり、(5)の犬としての正常な行動をとらせてもらえない状態なのだ。

 ちなみにストレスは、犬の精神的なものだけでなく、寒い、暑いだってストレスだし、うるさいのもストレス(きっと1日中、無音もストレスだね)、空腹もストレスだが、食べ過ぎもストレス。いろーんなストレスがある。でも今回は、「生きる悦びゼロ」、つまり、退屈、ヒマ、無職の犬のストレスをどう改善できるかを考えてみたい。

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雨の日でも散歩へ出かけるものの、どうしても単調になってしまう......。雨が苦手、嫌いというコもいるだろうから、外出以外のストレス発散方法はバリエーション持っておけるといいと思う

愛犬は今、ハッピーなのか、ストレスフルなのか

ストレスサインがないか、いつも気にしてみよう

 では、犬が、ストレスを感じている状態なのかを観察してみよう。docdogの、獣医行動のスペシャリストである荒田明香獣医師が監修された、ストレスに関する記事に、犬のストレスをチェックする項目が載っているから、そこから引用してみる。

□ 落ち着きがなく、じっとしていられない
□ いろいろなものを怖がる
□ 熟睡できておらず、すぐに起きてしまう
□ 食欲がない
□ 頻繁に下痢や嘔吐をする
□ 自分の前足をしつこくなめている
□ 物音などに過敏に反応してすぐ吠える
□ よく物を破壊する
□ シッポを追いかけて回ることがある
□ 人を噛もうとするなど、攻撃的な行動をとることがある

 これ以外にも個体によっていろいろストレスサインはあるが、上記のものが代表的なものだ(退屈だけでなく、寒い、怖い、痛いなどのストレスもここには入っている)。ちなみにうちのクーパー(ジャーマン・ショートヘアード・ポインター)は、お恥ずかしながら(いや、ここで恥ずかしがっている場合ではない。正直に現実を見つめることが飼い主にとって大事なことだ)、「自分の左後肢をしつこく舐めて、血が滲むほどで、500円玉ほどのハゲになっている」状態である。これには思い当たる節がある。彼は、山で自由運動し、鳥獣や山の葉っぱのニオイを嗅ぎ回る生活が大好きだ。しかし週末が雨だったり、私が〆切前だったりすると、山に行けなくなる。そうすると2~3日後に必ずお約束のように、彼は舐め始める。これは子犬の頃からの悪癖だ(「悪癖」という言い方もニンゲン目線でよくないね。クーパーにとってはこれは悪癖ではなく「心の叫び」なのだ)。自傷行為であり、痛々しい。

 またメル(ボクサー)は、大好きな娘(メルの飼い主である)が、キャンプや合宿に大きな荷物を持って出かけてしまうと、その晩は「物音などに過敏に反応してすぐ吠える」。おお、まさに先生の書かれているとおりである。これは分離不安っぽい「寂しい」ストレスなのかもしれないし、「なんで出かけちゃうんだ! 解せない!」という欲求不満のストレスなのかもしれない。素人の私にはどっちが正解かわからないけれど、メルの態度を見ていれば、いずれにせよ強いストレスを感じているのはわかる。

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編集Mさんちのモーフも、退屈してくると足を舐める癖があるようだ

彼らの心がハッピーに転じるオモチャを探せ!

 ともあれ、クーパーもメルも、何らかの理由があって、ストレスがあるから、こういうサインを出している。申し訳なく思う。でも、大雨の中、山へ行って私が遭難したらよけいみなさまに迷惑をかけるし、年頃の娘に対して合宿や外泊一切禁止、というわけにもいかない。ニンゲンは社会生活を営んでいるかぎり、仕事に行かなくちゃいけないし(「働かざる者、犬を養えず」も我が家の家訓)、学校も冠婚葬祭などもあるから、犬に我慢をお願いしないといけない場面はでてくる。そのためできることはしたいと思い、雨の中、夜に2時間くらいカッパを着て、散歩をする日もある。でも、やはりクーパーの舐め壊しは止まらない(涙)。住宅街の散歩では彼のストレスは解放されない。

 猟師や牧羊業など犬種にマッチした仕事についている人なら、犬と一緒に働けて、1日中そばにいられて、好きなだけ山を走らせてやれる。頭も使わせてやれる。そういう環境が犬にとってはいちばん幸せなんだろうけど......(犬種によっても飼い主のベストの職業は違うね。テリアは農場でネズミ捕りがしたいかな。柴はウサギが追いたいかな。現代では改良されているからどれくらい狩猟欲が残っているかは個体差があるだろうね。だけどいずれにせよ、すべての犬、すべての動物性タンパク質を必要とする生き物には狩猟欲がある。小型犬であってもそれは同じだ)。

 そうは言っても、すべての人が猟師にはなれないのも現実。ならば、どうやったら少しでも、日本の犬の退屈ストレスを減らすことができるのか。会社の日でも、雨続きでも、彼らの心がハッピーに転じる、おうちでも遊べるゲームやオモチャを探してみよう。次回に続く!(実際クーパーやメルで試したものを紹介します)

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プラーは外ではもちろん、家の中でも工夫次第でいろいろと遊べる。引っ張りっこ、空中キャッチやモッテコイの初歩トレーニングなどなど

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◎プロフィール

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白石かえ
犬学研究家・雑文家。家族は、ジャーマン・ショートヘアード・ポインターのクーパー、ボクサーのメル、黒猫のまめちゃん、夫1、娘1。前職は、自然環境保護NGO・WWFジャパン。犬猫と暮らして30数年。彼らの存在は可愛いだけでなく、尊い。犬が犬らしく生き生きと暮らせる、犬目線の原稿を書くのがライフワーク。

●執筆サイト: dogplus.me 犬種図鑑 ほか多数
●ブログ: バドバドサーカス
●主な著書:
『東京犬散歩ガイド』、『東京犬散歩ガイド武蔵野編』、『うちの犬 あるいは、あなたが犬との新生活で幸せになるか不幸になるかが分かる本』、『ジャパンケネルクラブ最新犬種図鑑』(構成・文)

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