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2018.10.22

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シャープと大阪府立大学のウェアラブル開発秘話<後編>

ウェアラブルデバイスで愛犬の3日間の活動を計測してみた!

着せている間、体表温・心拍数・呼吸数・自律神経バランスを計測し続けられるウェアラブルデバイスを使うと、どんなことがわかるのでしょうか? シャープと大阪府立大学との共同研究で開発が進められているウェアラブルデバイスを使った「バイタル計測サービス」を、実際に2頭の犬たちに3日間試してもらいました! その測定結果とは!?

#Healthcare / #Lifestyle

Author :写真=大浦真吾 文=山賀沙耶

読者の愛犬がバイタル計測サービスを体験!

 例えば吐いた、下痢をした、足を引きずっている、呼吸が荒い、ぐったりしているなどなど、今、飼い主が愛犬の異常に気づくためには、外から見てわかりやすい症状に頼らざるを得ない。

 ところが、愛犬のバイタルサイン(体表温・心拍数・呼吸数)を計測し続けられるウェアラブルデバイスが開発されれば、まだ見た目にはわかりづらい段階で愛犬の不調に気づき、病院に連れていくことができるだろう。そんな夢のようなウェアラブルの開発が、シャープと大阪府立大学との共同研究で進められており、今年(2018年)の7月から法人向けに計測サービスを提供し始めている。

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首の後ろにデバイスを背負い、脇からデータを取る形のウェアラブルデバイス

 この研究結果をもとに、今年7月には企業や研究機関向けに「バイタル計測サービス」を開始。そこで、docdogメディア読者の愛犬2頭に協力してもらい、このサービスを体験させてもらうことに! 具体的には、2頭にウェアラブルをつけたまま3日間、日常生活を送ってもらい、その測定データの報告書をシャープから受け取って、今後どんなことができそうかを考えてみた。

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今回、測定に協力してくれたシエル(ダルメシアン、9歳、オス)と、ゼロ(チワワ、推定5歳、オス)

フセ、オスワリ、立つ、歩く。1秒ごとの活動がわかる

 まず、報告書の最初に書かれていたのが、3日間の活動の記録。

【2頭それぞれの活動の割合】

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 活動の割合でいうと、なんとシエルは約8割、ゼロは9割寝ていたとの結果が出た。
 なぜ、どんな活動をしていたのかがわかるのだろうか。

「このウエアラブルデバイスには、体表温・心拍数・呼吸数・自律神経バランスを計測する機能の他に加速度計も搭載しており、そのデータを元に、そのコがいつどんな活動をしていたかを秒単位で推測しています。例えば、ある心拍数の値が出たとしても、そのときまでにどんな活動をしていたかによって数値の解釈が異なると考えているので、どんな活動をしているかも重要な情報なんです」と、シャープの研究開発事業本部の梅本あずささん。

 また、どんな活動をしていたのか、分単位でもグラフ化されていた。グラフの下に書かれている「帰宅」「散歩」といった文字は、飼い主がメモしたイベント記録を参考にしたもの。

【シエルの3日間の活動グラフ】

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 このグラフによると、シエルは飼い主の不在中はほぼ寝て過ごしていることがわかる。
「私たちは共働きなので、シエルは日中、先住犬と老猫の3頭でお留守番しています。先住犬ももうかなり高齢なので、私たちの不在時に2頭で遊んだりすることもなく静かに寝て過ごしているのでしょうね。外出中のようすが気になって留守番カメラをつけたこともありましたが、こうして日中の行動の傾向がわかるだけでも安心です」と、飼い主の山中さん。

【ゼロの3日間の活動グラフ】

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 一方、ゼロの場合、23日は落ち着きなく寝たり起きたりを繰り返しているのに対して、24日はほぼ寝ていたようだ。また、24日の明け方2〜6時にかけて、およそ1時間おきに目を覚まして歩き出していた形跡もある。
「わが家では、就寝時に持ち運び用の小さなキャリーケースで寝かせているのですが、『歩き出していた』というのは、よく眠れなくて、落ち着きなくその場でくるくると回ったりしていたのでしょうか。慣れない機械を装着して、落ち着かなかったのかもしれないですね。わが家も、共働きで小さな子どももいるため、ついついゼロのことは二の次になってしまいがち。彼の精神面などについても気にしてあげなきゃなと、改めて思いました」と、飼い主の安部さん。

健康状態の把握に欠かせないTPRも1分ごとに計測

 体温(Temperature)・心拍数(Pulse)・呼吸数(Respiration)は「TPR」と言われ、動物病院に行けば必ずと言っていいほど測定される、健康のバロメータとなる数値だ。このウエアラブルデバイスでは、心拍数、呼吸数に加え、体表温を測定しており、それぞれの数値に関しても、日別の安静時の値がまとめられている。自律神経バランスとは、心拍数から推測される、リラックスしているかどうかを想像できる数値のこと。この計測サービスでは、リラックスしていれば自律神経バランスの数値が高くなり、逆に緊張や興奮しているときには数値が低くなる。

【ゼロの日別心拍数】

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【ゼロの日別呼吸数】

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 シャープおよび大阪府立大学がこれまで収集してきた健康犬のバイタルデータを元に策定した「安静時の健康犬数値範囲」を紫色の点線で、日別の平均値を赤い点で、それぞれ表している。心拍数、呼吸数ともに1日目の平均値は数値範囲を超えているが、ウェアラブルデバイスを装着した初日は高値が出やすい傾向にあるとのこと。

【ゼロの日別自律神経バランス】

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 自律神経バランスは、日を追うごとに数値が上がっていることから、徐々にリラックスできている様子がうかがえる結果となった。活動グラフでも、日を追うごとに寝ている時間が増えているように見えるため、活動の様子と自律神経バランスとの関連が深いことがよくわかる。
 また、1分ごとの呼吸数・心拍数・自律神経バランスのデータも出ているため、どんな要因が愛犬にストレスを与えるのかを想像することもできそうだ。

「動くことによって心拍数が上がり自律神経バランスが下がる、じっとすることによって心拍数が下がり自律神経バランスが上がることは、ごく自然なことです。しかし、じっとしているのに心拍数が下がらない、自律神経バランスが上がらないといった場合には、何らかの不調が隠れている可能性があるだろうと、今は考えています。これまでも多くの犬のデータを計測してきましたが、今後も引き続きデータを積み上げて、傾向をつかんでいきたいですね」と、2014年からシャープとともに研究開発を進めてきた、大阪府立大学の島村俊介先生。

体の異常発見だけでなく、ストレス状況の把握にも役立ちそう

 これらの測定データから、どんなことがわかり、普段の健康管理にはどのように役立てられそうだろうか。docdog所属の獣医師である小林辰也先生に聞いてみた。

 「例えば今回、ゼロちゃんは前夜に比べて24日の明け方に何度も目を覚ましているという結果が出ていますよね。長く記録をとっていくと、このような行動が通常なのか、いつもと違う行動なのかわかるわけです。もし、これがいつもと違う行動である場合、前日の運動不足や騒音などの外的要因とか、いろいろな原因を想定して対処することができると思います」

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飼い主が寝てしまっていると気づきにくい、睡眠の状態についても把握できるだろう

 また、今回は3日間だけの計測だったが、長期的に観察していけば、普段のデータと比べて相対的に判断することもできる。それによってわかることはいろいろありそうだ。

「例えば、動物病院やペットホテルに行ったとき、新米犬を迎えたときなど、さまざまな場面での犬の緊張状態やリラックス度合いを把握できるので、愛犬は何が好きで、何がストレスになるのかなどが想像できそうですね。また、心拍数や呼吸数の大きな変化や昼夜逆転の活動といった普段とは異なる兆候を早期に発見できる効果もありそうです」

 人間の世界では、ウェアラブルによって体の異常を発見でき、命を救われた人も出てきている時代。言葉で異常を訴えることができない犬だからなおさら、健康状態を見守ってくれるウェアラブルデバイスの開発が待たれる。今後の展開が楽しみだ。

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