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2018.08.24

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順風満帆?!あおとの暮らし【柴犬生活航海記 vol.17】

白柴・あお「集中するチカラ・考えるチカラ」

2015年・秋から「あお」と名付けた柴の仔犬と暮らし始めた「犬の新人飼育員」の「僕」と「もうひとり」。2歳を越えて散歩中、前へグイグイ、横へビョーン!がほとんどなくなってきたあお。散歩の好みにも微妙に変化が......。

#Activity / #Lifestyle

Author :写真・文=舘川範雄 協力=(株)浅井企画

なんなのその集中力は?

 どちらかと言えば公園よりも"街ぶら"が好きなあお。そんなあおが最近ご執心なのは、住宅地を歩いていて見つけた「民家の駐車スペースのコンクリートの隙間」。

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 急な坂道の上り始めにあるこの場所を、ある時からやたらと気にするようになった。

「あお、行くよ!」

 においを嗅ぎ続けようとするあおに声をかけ、リードを引いてもまず動かない。はじめのうちは、暑いし、急な坂道を上るのがイヤでそこに居座ろうとしているのかな?と思っていたが、どうもそうではないらしい。 試しに抱き上げて坂の上まで移動したことがあったが、降ろしたとたん、Uターンして気になる隙間にまっしぐら......ということもあった。

 なぜそんなに執着しているのかよくわからなかった。

 何か埋まってるのか?金塊ならいいけど、死体だったら事件に巻き込まれるー!何かいそうな気がするのか?やけに気になるにおいがするのか......理由はよくわからなかった。よくわからない行動に付き合わされるのは、それこそよくわからないので、しばらくすると、「はい、おしまい」と抱き上げて移動させた。それが数日続いた。

「そんなに気になる?」

 僕とあおだけの早朝散歩の時、ふと思いついた。あおは一体どのくらいにおいを嗅げば満足するのか?試してみた(ヒマ人)。

 脇目も振らずに目的地に到着したあおは、いつものようににおいを嗅ぎ始めた。

 5分経った......まだ嗅いでいる。

 10分経った......飽きる気配なし。

 すっかりこちらは飽きてきた。そろそろ終わりにしようかなと、一瞬思ったが、それではあおの"気になってる度"が測れない。辛かったが様子を見続けた。

「はい、気が済みました」と、あおが自分からその場を立ち去るまでの時間、32分。長い!!

 その翌朝も、あおはこの隙間に向かい、「なにかいそうなんだけど......」と、疑いの眼差しで見つめ、においを嗅いでいた。
(鼻水がポトッと落ちるほど)

「なにかいる気がする......」

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 さすがにその日は3分で切り上げさせたが、あおは納得できないという顔。次の日もまたここに行った。

 においを嗅ぐあおを見下ろしながら、このひたむきさ、集中力を別のことに活かせることができたなら、きっと凄いだろうに、と思った。

「グリット」と言う言葉がある。意味は「やり抜く力」。成功する者の多くは、何かをあきらめることなくやり抜くことができる人だという。今、目の前にいるあおはこの「グリット」の塊。毎日毎日同じ場所に通い、飽きもせずににおいをひたすら嗅ぎ続ける......
「グリット」である。

 あおがもし起業したらきっと成功するんだろうな〜なんて思いながら、あおのにおい嗅ぎに付き合っていた。
(それぐらいこちらは何もすることがない)

 この「あおのグリット」がなんと翌日実を結んだ!

 その日の早朝散歩は、もうひとりの飼育員が担当した。
(連日の疲れが出たので僕は朝休暇をもらって横になっていた)

 出発してから30分ほど経って、もうひとりの飼育員から動画が送られてきた。見ると、気になる隙間のにおいを嗅ぐあおの姿。

「また行ってるよ~」

 呆れながらぼんやり見ていると、最後に、あおを夢中にさせていたモノの正体が映っていた......。それは、つぶらな瞳で隙間の下からカメラを見上げる、ミッキー!もしくは「トムとジェリー」のジェリーの方!
(以下、写真。苦手な方は目をお閉じになって、お好きな哺乳類を思い浮かべてください)

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 まさかホントに何かいたとはーー!あおの勘は正しかったのだ。「こんな隙間に何もいないよ!」と散々言っていた自分が恥ずかしい。あおのグリットの高さが証明されたのだ!
(そんなに大したことではないが)

 何かがいることがはっきりわかってからのあおは、今度はそれがそこにいるかどうか、確認するために連日通った。
(グリットと言うよりしつこい)

 数日後、台風12号が接近。その夜、東京は思ったほど豪雨にはならなかったが、風はそれなりに強かった。

 翌朝、あおはまた隙間に向かった。においを嗅ぎ、隙間を覗いた。僕も覗いた。ミッキー(またはジェリー)の仲間の姿はそこにはなかった。

 やはり台風の影響だろうか......。
あおはしばらくじっと覗いていた。

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「あお、いないね」
 言うと、あおはうなずきはしなかったが、そうだね......というように、あっけなくその場から歩き出した。

 あおさん、今までただのしつこいヤツだと思っていてすみません......。ちゃんと目的があったから通っていらっしゃったんですね。でもそのチカラ、何か他のことに役立ててはいかがでしょうか......。

あおの"考える散歩"

 時間に余裕があると、時々僕は、『今日は半分・山政流でいっちゃう?』と、あおが行きたいところにただついて行く散歩をすることがある。

『山政(やままさ)流』とは、いつもの公園で時々会う、美濃柴の種炎(しゅほ)ちゃんの飼い主さんが行っている犬(日本犬)との付き合い方。
(参考:山政流犬牽会

 詳しくはホームページに書かれているが、簡単に言うと、江戸時代のドッグトレーナー=犬牽(いぬひき)が行っていたやり方を、学者である種炎ちゃんの飼い主さんが、古文書を元に復元・昇華させたのが山政流だそうで(ちなみに若い学者さんです)、『犬牽たちは犬に尽くす姿勢を表すことを飼育法の根底にしていました』とのこと。

 これ、どこか自分に当てはまっちゃうなぁ......と、心の中で思いながら公園で会った時には、いろいろ質問している。

 あおは周りの犬に比べて散歩時間が長い方で、公園で会う飼い主さんには「あおちゃん、今日はもう2時間かな?」「あおちゃん、今日は何軒目(の公園)?」とよくからかわれる。あおの「まだが外にいたい!」を受け入れすぎている我々が、散歩の時間を伸ばしているだけなのだが、種炎ちゃんに会ってからは、あおの散歩なんてちょろいものだと思うようになった。

 種炎ちゃんの飼い主さんが毎日更新しているインスタグラム(@yamamasa_dogs)には、その日の散歩の様子が報告されているのだが、驚くことに、毎朝の散歩は、なんと4~5時間!その間、飼い主さんはひたすら種炎ちゃんに付き合うそうで、行き先は種炎ちゃんが決める。とにかく犬がしたいようにさせ、ストレスになるようなことはさせない......それが山政流。

 このスタイルにどこか憧れてしまうところがあって、時々真似てみたくなる。山政流の詳しい流儀は正式に教わっていないので、僕は「半・山政流」。あおが行きたいところに行きたいように行ったらどうなるのか?

 最初に「山政流」風の散歩をしたのは今年の2月10日。スタートは15時頃だった。

「あお、今日はお前の好きなところに行っていいよ」

 いつものように「こっち行こう!」と言われると思っていたあおは、リードを引くこともしない僕を見上げて「?」の顔。

「いいよ、好きなところに行きな」

 言うと、意味を理解したのか、しばしじっと考えたあと、スタスタ歩き出した。その方向は僕が行くと予想していた、いつも挨拶したくて寄りたがる美容院とは反対方向だった。

 そのまま大通りに出て、信号の前で立ち止まるあお。選択肢は4つ。右へ進むか、左に行くか、それとも直進?まさかのUターン?......。ここでも僕は何の指示もしなかった。リードを引くこともやめて、リードの抵抗感も無くしてみようと、ずっとたるんだ状態をキープさせていた。

 あおは、ここでも考えた。しばらく考え、そして「こっちにする」と、左に歩き出した。これも、僕が予想していたのとは違う方向。どうやらあおは、普段行かない方向をあえて選んで進んでいるようだった。

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 しばらく進んで、また分岐点。あおは考え、行く方向を決めていた。
(なんか面白いぞ!)

 あおが自分で考えている姿、新鮮だった。

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 しばらく行くと公園発見。それまで数回しか入ったことのない場所。あおは進み、その公園を隅々までチェックしはじめた。僕はただあおに付き添うだけ。

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 それほど広くない公園を念入りに見て回ること、およそ1時間。あおはやっと外に出た。山政流、想像以上に大変だぞ......思いつつ、さらにあおについて行った。

 商店街を通り、裏道に入り、あまり歩いたことがない住宅地を歩くあお。途中何度か僕を見上げて「どうすればいい?」という顔もしていたが、そのたびに「あおが好きなところに行きな」とだけ言って、ただ付き添った。

 するとあおはちょっと考え、また歩き出した。

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 しばらくすると大通り。交通量が多いのにもかかわらず、あおは通り沿いに歩きはじめた。気になる店の前で立ち止まり、観察しては移動する。

 まだ開店していないカフェを見つけ、看板や入り口を念入りにチェックし始めた。なんでそんなに?と思っていると、どうやらそこは犬同伴OKの店のようだった。だからそんなに気になるのか~今度来た時に入ろうと思ってる?まさか開店まで待つつもりか?などと思いながら付き合った。通り過ぎる人たちには、(なんでこの人、まだ開いてない店の前をうろちょろしてるの?)という顔でチラチラ見られたが、気にしないようにがんばった。

 この店の前をチェックすること30分、そろそろこちらもキツくなってきたな〜と思っていた頃にあおも納得したようで、その場から離れ、また別の道を歩いた。そこは他の犬も多く通る川沿いの散歩コース。

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 あおは初対面の犬とすれ違うと、ついガウガウ!とやってしまうことが多いのだが、知らない犬が横を通ってもまったく気にしない!これもノーストレスの賜物か?!前に進むことを楽しんでいるようだった。

 いつもと違うあおの散歩、この先どうなるのだろう......わくわくしていたのだが、ここでまさかの小雨......。小雨が苦手なあお、急にそわそわし始めた。付添人の僕も、撥水の上着を着ていなかったので同じくそわそわ。どうしよう、もっと降り出したらずぶ濡れ、風邪でもひいたら面倒だ。

「あお、帰ろう」と一応提案してみた。するとあおも「そうする!」と言わんばかりに散歩の切り上げに応じてくれた。時計を見ると17時過ぎ。スタートしてから2時間半ほど歩いていた。あおにとってはそれほどのロング散歩ではなかったが(人に言わせると「十分長い」)、心地よい疲労感があった。

 家に着いたのは18時頃。足を洗われたあおは、コテっと横になりそのままグーグー寝始めた。肉体疲労というより、頭脳疲労。あおが犬の幼稚園でトレーニングを受けて帰ってきた時と同じような疲れ方に見えた。あおは2時間半、かなり脳を使って歩いていたのだと思う。でもその寝顔は自由に歩く楽しさを満喫した顔に見えた......。

 

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 この「ときどき山政流」散歩、今は暑くてあまりやれないが、涼しくなってきたら、時間のある時にやってみようと思う。

 初めて歩く道を嬉々として進んでいる時の顔、分かれ道で、どちらに進もうか真剣に考えている時の顔......。普段とは、ほんの少し違って見えたあおの顔を見ていて、僕はまだまだあおのすべてを知ってはいないのだと感じた。

 まだ見ぬあおの素顔、観察できるのが楽しみである。

(つづく)

◎プロフィール

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舘川範雄 (たてかわ のりお)
1966年9月19日生まれ。1987年4月から作家活動に入る。
「コサキン」「SMAPxSMAP」「ポンキッキーズ」「スクール革命!」「THEカラオケ☆バトル」などテレビ、ラジオで多数の番組構成を担当。また関根勤主宰「カンコンキンシアター」の他、オリジナルコメディーやミュージカルの作・演出など、活動は多岐にわたる。
*本連載の1stシーズン【柴犬生活漂流記】は、こちら
*インスタグラム(ao20150721)で白柴「あお」が毎日、犬の目線で日々の出来事を投稿中! 

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