
2015年・秋から「あお」と名付けた柴の仔犬と暮らし始めた「犬の新人飼育員」の「僕」と「もうひとり」。犬がこんなに暑さに弱いとは、一緒に暮らし始めるまで全くしらなかった飼育員たちは毎年、あおに涼しさを提供するためのグッズを用意するのだが......。
あおが1歳の夏はこちらも夏散歩初心者だったので、早朝散歩に切り替えるぐらいで、他には何も暑さ対策をしなかった。あおは地面に伏せてカラダを冷やし、舌を出す以外に暑さをしのぐ方法がなかったと思う。
2016年の夏の写真。どれも暑くて溶けそう
おかげで帰り道は「暑い~!歩けない~」と途中でダウンするので、いつも抱っこで帰宅。こちらも汗だく。大変だった。
「やったぜ抱っこだぜ」の顔
そこで2回目の夏(2017年)は、できるだけあおに涼しさを提供しようと決めた。
まずは、保冷剤が入るバンダナを巻いてみた。どれぐらいの冷却効果があるのか?あおは黙して語らずが信条なので、巻いている時と巻いてない時の様子から判断するしかない。巻いているとなんとなく涼しそう、巻いていないとなんとなく暑そう......。
そんな感じでとりあえず巻いていた。
初めて巻いた日の写真。まあまあ快適そうな顔
それでも散歩終わりは暑くてダウン。で、緊急冷却
(※ごく短時間)
もっと広い範囲で涼しくなるものはないか?
探すと「スイスのドッグブランドが作った、水に濡らせば涼しくなるハーネス」を見つけた。あおはカラー派だが、暑い日はこのハーネスにしてもいいかも......と購入。すぐに届いて、すぐに試着させた。その時の写真がこれ。
こんな顔ありますか?
まずハーネスを見たら逃げ出し、やっと捕まえて着せたらこの顔。どうもあまりお好きではない様子。まあ、実際に暑くなったら付けるだろうから大丈夫......と、自分に言い聞かせた。
その直後にもうひとつ、良さそうなモノを見つけていた。
「アメリカ・ニューヨークで馬用のコートを製造しているメーカーがその技術を応用して作った、ドッグクールコート」
カラダを覆う形なのでかなり涼しさを感じられそう。ちょっと高い気もしたが、熱中症になっては困るし、毎年使うようになるモノだから......と、こちらも購入した。こちらもすぐに届いたが、ベストの時のような顔をされたらショックなので、すぐには試着させず、猛暑の日が来るまでしまっておいた。
そしてしばらくしてやってきた、やけに暑い朝。クールバンダナだけでは暑さをしのげないかもしれない......クールコート出動だ!!水で濡らしてあおに着せ、散歩スタート!するとあおは一歩も、一歩たりとも歩かないーーー!!!水に濡れて重くなったコート......初めて着せられたコート......おろしたてで固くてゴワゴワしているコート......。
「わたし動けません」
着たままその場に数分立ち尽くすあお。試しに脱がせたらスタスタ歩き出した。あおが脱いだ濡れコートを握りしめながら、心の中で自分を叱責した。
『あおさんが練習なしで着るわけないだろ!』
そこで、まずはそれを真似てみることにした。
お台場の仕事終わりでドッググッズの有名店に寄り、店員さんに犬種、体重などを伝え選んでもらったのは、メッシュタイプの涼しげな青い服と黄色の服。家に帰って着せてみると、え?胸のあたりがパンパン......。
小さい頃歩かせすぎたからか、あおはけっこう胸筋が発達している胸マッチョタイプ。一応それも説明してサイズを選んでもらったのだが、服の形状的にあおにはマッチしていないようだった。それでも着ないよりは着た方が涼しいだろうと、着せてみたのだが......
レインコートを最初に着せた時と同じ、この顔
「あぁ早く脱ぎたい......」の顔
もう一枚の方もサイズに難ありで、家で着せた時点でこう......
「あぁ早く冬来てほしい......」の顔
やっぱり窮屈なのが気に入らないらしい。そこで手を加えることにした。
洋裁が得意な、もうひとりの飼育員の妹に相談。「胸に別の布を足して、横に広げてみる」と言って持ち帰ってくれた。
数日後、「出来たよ」と連絡が入り、「今度持って行くね」と言われてから、数ヶ月。「ごめん、夏終わっちゃったね」と、すっかり涼しくなった11月の終わりにリメイクされた夏服は届けられた。
胸の部分、ほぼ別の布
冬毛になっていたのでけっこうパンパン
そんなわけで、この浮かれた感じの服を着るのは翌年に持ち越された。
冬が過ぎ、春を迎え、そしていよいよ2018年の夏到来!梅雨明けが早かったが、我々の準備も実はけっこう早かった!まず、装着出来ずに終わったクールハーネスの練習を5月の終わり頃に開始。家から着せると歩かないおそれがあったので、公園に着いてから装着した。
「これ辛い......」と顔で訴えている
歩く練習。スピード遅い。顔暗い
1歳下の白柴リッコ(♂)に覗き込まれイラつく
「なに見てんのよ!」
ハーネスの先輩、あずきちゃん、ルネくんと歩く
練習のおかげで、クールハーネスへの抵抗は軽減されたようだった。
我々が装備する涼風グッズも梅雨明け前にミニ扇子から、ミニ扇風機にチェンジした。扇子も悪くなかったのだが、暑がるあおを仰いでいると、こちらの体温がどんどん上がってキツい。カバンに入る電池式の小さな扇風機、出てないかな~?と検索してみると、あった!小型の扇風機がたくさん発売されていた。
威力はどれほどかわからなかったが、1000円台の商品がけっこうあったので、その中でも良さそうなものを選んで注文した。
翌日届いたミニ扇風機、試してみると......想像以上に威力あり!最強にするとかなり涼しい!夏が来て、実際に使ってみると......
あおもかなり気持ちよさそう
ついに夏グッズで成功を収めることができたー。
(ちなみに公園でよく会う柴犬のももちゃんが暑そうに地べたに寝そべっていたので、涼しくしてあげようとこれを出してスイッチを押したら、怖がって立ち去ってしまった。涼しさよりも得体の知れない何かに対する恐怖が勝ってしまうパターンもあるのか......と勉強になった)
クールバンダナとミニ扇風機でしばらく過ごしていたが、7月の終わりに今年の夏の暑さに負け?なかなか着せる勇気が出なかった、あのオリジナルすぎる浮かれた感じの服を着せてみることにした。
まず、家で服を出したとたんにあおが猛ダッシュで部屋中を逃げ回った。2年前なら断念していたが、こちらも飼育員3年目、ワン!と吠えられようとウゥと唸られようとお構いなし。「着るの」で終わり。あおも諦め、着せられた。夏毛になって初めて着る浮かれ服......思った以上に浮かれているように見える!
最初は嫌がっていたあおも浮かれ始めた
どことなく石ちゃん(石塚英彦さん)の衣装っぽい
胸元に余裕アリで動きやすそう
調子に乗って走り回ったら暑くなって結局倒れ込む
途中、背中に何度か水をかけて涼しさをキープ。このクールランニングの導入も成功したようであった。
帰宅後、足を洗われてリビングにやってきたあおの背中を見ると、なんだか濡れている。足洗いを担当した、もうひとりの飼育員に言った。
「まだ背中濡れてるよ」
「うん、その方が涼しいかなと思って」
え~!!??それでなくても皮膚が弱いと言われている柴犬、濡れたまま冷房の効いた部屋に放置していいわけない、慌ててドライヤーで乾かした。
「え?濡れたままじゃダメなの?」
あおの飼育員となって互いに3年。なのに......なのに......。
『最大の敵は味方にあり』
もうひとりの飼育員トラップ、まだまだなくなりそうもない(ToT)
(つづく)
舘川範雄 (たてかわ のりお)
1966年9月19日生まれ。1987年4月から作家活動に入る。
「コサキン」「SMAPxSMAP」「ポンキッキーズ」「スクール革命!」「THEカラオケ☆バトル」などテレビ、ラジオで多数の番組構成を担当。また関根勤主宰「カンコンキンシアター」の他、オリジナルコメディーやミュージカルの作・演出など、活動は多岐にわたる。
*本連載の1stシーズン【柴犬生活漂流記】は、こちら。
*インスタグラム(ao20150721)で白柴「あお」が毎日、犬の目線で日々の出来事を投稿中!
「順風満帆?!あおとの暮らし【柴犬生活航海記】」記事一覧