
2015年・秋から「あお」と名付けた柴の仔犬と暮らし始めた「犬の新人飼育員」の「僕」と「もうひとり」。1歳のあおを連れ出した『はじめての夏旅』、「箱根」の次の日、一行が向かったのは......。
夏旅2日目。今回のメインイベント、あお、はじめてのプール体験の日である。我々は山中湖方面へとクルマを走らせていた。
そうとは知らず、あおは前日遊び疲れて車内で熟睡
1時間ほどクルマを走らせ、迷うことなく「ドッグリゾートwoof」に到着した。宿泊もできるこの施設、我々は日帰り利用、メインはプールである。受付を済ませて、まずは緑が眩しいドッグランへ。
「そろそろ行きますか......」
「行きましょう」
我々は走りを楽しんだあおを、いよいよプールゾーンへ連れていった。屋内にある25mプールは本格派。泳ぐの大好き!と大型犬たちが気持ちよさそうに泳いでいた。いきなりここは無理。初心者の我々は屋外の小さなプールへ向かった。
まずは水に慣れさせる為の小さなプールへあおを入れた。あおは、水に浸かったまま気持ちよさそうにしているだけで動かない。確かに浴槽のようなプールなので水風呂気分だったのかもしれない。
「じゃあ次、行きますか......」
「行きましょう」
我々はあおを連れて、小型犬でも楽しめる浅いプールへ移動。いよいよ"はじめてのプール"に挑戦である。プールには先客の柴犬がいた。愛犬を泳がせていた飼い主さんと話すと我々同様、はじめてのプールだという。
「まずは飼い主も一緒にプールに入って、補助付きで練習させると良いみたいですよ」
アドバイスをもらった。
一緒にプール入る?......どうしよう、水着持ってない。"渚のバルコニー"状態である。ふと見ると、もうひとりの飼育員が太めのパンツを履いている!!
「えー、よろしくお願いします」
「え?わたし?......わかりました」
こうして、もうひとりの飼育員があおのサポート役を担当することになった。あおのカラダを支えたまま、ゆっくり水の中に降ろすと、さすが犬!習ってもいないのに犬かきができた!
この練習を何度か行うことで、あおは徐々に水に慣れていった。
「じゃあ、そろそろいきますか?」
「いきましょう!」
いよいよあおの"自力犬かき"の時がやってきた。さっきの飼い主さんに「リードをつけて、横についてあげるといい」と教えてもらい、もうひとりの飼育員が引き続き水中スタッフとしてプールに入った。
「あお、がんばれ!」
プールサイドの動画撮影隊(僕)が声をかける。
「いきます!」
まず、水中補助スタッフ(もうひとりの飼育員)があおを抱いて水の中に入った。あおはその時点で、空中犬かきを始めている。その動きは「ちょっと待って!ちょっと待って!」と言っているようだった。
「あお、いくよ~」
もうひとりの飼育員が優しく声をかけながら、ゆっくりとあおを水の中に降ろした。
「バシャバシャ!バタバタ!バシャ!バタバタ......」あお、大慌てである。
その動きは『ムリムリ!わたし絶対ムリー!』
すぐにプールサイドに上がろうとするあおに「大丈夫!頑張れ!」と声をかけながら泳がせた。最初はただの溺れ犬だったあお。でも徐々にコツを掴んできた!
「いいじゃん!いいじゃん!あお!」
陸地を目指し、歌舞伎役者みたいな顔で必死に泳ぐあお!がんばれーー!
お見事!あお、初泳ぎ大成功!(補助付きだけど)
二日目の宿は、「レジーナリゾート富士Suites & Spa」。
ここは"もうひとりの飼育員"の要望通りの「人もゆっくりできる宿」。全室かけ流し温泉付き、「箱根」同様、食事も本格的。我々が通された部屋はスタンダードルームとは思えない広さで、ミッドセンチュリー系でまとめられたインテリアも心地良かった。大きな窓から見える木々の緑はまさに避暑地!
部屋で一休みしてから、宿の周りを散策した。
勧められた散歩コース。富士山がきれい!
肝心のあおの写真はなぜかしょぼい......
夕食は館内のレストランで。犬同伴もちろんOK、どのテーブルも犬同伴。両隣の初対面犬に緊張して、吠えたらどうしようと心配していたが、場の空気を読んだのか、あおは終始おとなしくしていた。
そして美味しそうなものをお食べになりました
食後はスタッフのおねえさんに甘えて満足
翌朝。軽く宿の周りを散歩してから朝食。どうせ持参したフードを食べないだろうと、あおにも宿のごはんを注文。あっという間に平らげた。
食後、満足げに寝そべる
あおとの夏旅・最終日。その日の予定は特になし。とりあえず湖の方へ行ってみようということになった。もうひとりの飼育員がネット検索、犬も入れる施設を見つけた。
「クラフトの里・ダラスヴィレッジ」。ペット同伴OKで、吹きガラス、トンボ玉、ワイヤークラフト、陶器絵付けなどが体験できる。敷地内にはドッグランもあるという。河口湖へと向かった。
手作り体験好き派の我々だったが、どれもまあまあ時間がかかることがわかり、どちらかが体験している間、あおと一緒に待つ?という案も一瞬出たが、それもどうかな......ということで断念、他の人がやっているところを見学するだけにした。その後、あおを連れてドッグランへ。ここも緑の芝生が走りやすそう、あおも一気にテンションが上がって、嬉しそうに走り回っていた。
少し遅めの昼食は、検索係となったもうひとりの飼育員が見つけた、デッキ席犬同伴可のPICA山中湖ヴィレッジ内のレストラン「FUJIYAMA KITCHEN」で。美味しそうなドッグメニューもあった!が、あおには内緒にしておいた。
吹き抜ける風が心地良いデッキ席
しばらくするとリラックスして転がっていた
食事を終え、山中湖のほとりに行ってみることにした。芦ノ湖では盛り上がらなかったあおだが、山中湖は盛り上がった!その理由は「はじめての白鳥」に遭遇したからである。
スワンボートの横にリアルスワン!こんなに大きな鳥を間近で見たことのなかったあお、大興奮!
一見、嬉しそうに見えるが、よーく見ると......
緊張で背中の毛がボワっと立っている!
さらに接近。白鳥デカい!
こうして、あおとの2泊3日の夏旅は終わった。
初めての体験は脳を活性化させるという。きっとあおにもいい刺激だったはず。我々も、初めての犬連れ旅行でたくさんのことを学んだ。
(例:『旅先でいつものフード人気ナシ』)
いろいろなことが体験ができたこの旅で、あおと我々は、家族とまではいかないが、少なくともひとつの「チーム」にはなれた気がした。
もうひとりの飼育員が、旅の途中にしみじみ言っていたのは、
「あおと一日中一緒にいられることなんて、なかなかないから楽しい」
確かに散歩以外の時間、実はバラバラに生活していたことに気がついた。昼間、我々はそれぞれ仕事をし、あおは家で寝ている、またはおもちゃで遊び、その後寝ている......。考えてみると、一日のうちで、あおと一緒にいる時間はほんの僅か。僕らの知らないあおの素顔は、まだまだあったのだ。
その知られざるあおの素顔、この旅でまたひとつ、新たに知った。
2日目の夜、なぜだかあおは、僕が寝ているベッドのそばの床で眠り始めた。慣れない場所で不安だったのかもしれない。普段自分の部屋(クレート)で勝手に寝ているあおが僕の近くに来るなんて、かわいいところあるな......なんて思いながら、初めてあおのそばで眠りに就いたのだが、しばらくすると、寝ていたあおがいきなりムクッ!と起き上り、ガサガサ、ガサガサ。どうやら寝る位置を変えているらしい。夜、あおがどんな風に寝ているのか全く知らなかったので、え?こんなに寝返りうつの?と驚いた。
このガサガサ、ガサガサうるさい寝返りが、夜中に何度も繰り返され、その度にこちらはビクッ!として目が覚めた。さらに寝ながら「ムニャムニャムニャムニャ」「クチャクチャクチャクチャ」と、うるさい。あ~気になって眠れなーい!向こうで寝て欲しーい!!
あおと初めて旅をしてわかったこと、それは、
『あおは寝ている時、けっこううるさい』であった......。
(つづく)
舘川範雄 (たてかわ のりお)
1966年9月19日生まれ。1987年4月から作家活動に入る。
「コサキン」「SMAPxSMAP」「ポンキッキーズ」「スクール革命!」「THEカラオケ☆バトル」などテレビ、ラジオで多数の番組構成を担当。また関根勤主宰「カンコンキンシアター」の他、オリジナルコメディーやミュージカルの作・演出など、活動は多岐にわたる。
*本連載の1stシーズン【柴犬生活漂流記】は、こちら。
*インスタグラム(ao20150721)で白柴「あお」が毎日、犬の目線で日々の出来事を投稿中!
「順風満帆?!あおとの暮らし【柴犬生活航海記】」記事一覧