lab

  1. トップページ
  2. docdog lab.
  3. 救急外来に駆け込むべきか、愛犬の状況を見極めるには?

2018.07.05

知っておくと心強い、救急外来のこと<前編>

救急外来に駆け込むべきか、愛犬の状況を見極めるには?

中村篤史 TRVA動物医療センター院長

動物病院の診療時間外に愛犬が体調を崩して、このままようすを見てもいいのか悩んだことのある人も多いのでは? 愛犬の変調は突然やってきます。そのときに慌てなくていいように、動物の救急外来について知っておきましょう。夜間救急部門をメインとするTRVA動物医療センターの院長、中村篤史先生にお話を聞きました。2回に分けてお送りします。

写真=永田雅裕 文=山賀沙耶

#健康

救急外来とは、生きるか死ぬかの動物を助けるプロ集団

――救急外来の役割とは?

 動物の場合、救急外来ってほぼ夜間病院、つまり一般の病院が営業していない時間帯に体調を崩した動物を見るところです。でも僕はそれだけではなくて、急性・突発性の事故や病気によって生死の境をさまよう動物たちを救命する、プロ集団であるべきだと思っています。当院では現在、95%が事前にお電話をいただいて来院されるケースで、残りの5%は昼間の動物病院から引き継がれるケースや、連絡なしで来られるケースですね。

――救急診療って一般診療とどう違うのでしょうか?

 実は僕も最初わかっていなかったし、大学では習わなかったことなんですが、そもそもアプローチが違うんです。普通、吐いたとか下痢したっていう症状で来院されたときに、まず胃腸炎なのか異物なのか膵炎なのかって見立てて、それに対して検査して、原因を特定して、対処療法していくというのが、一般診療の進め方です。
 それに対して救急診療は、まずは命に関わる問題があるかどうか確認して、問題があれば診断の前にとりあえず安定化させる。何の病気だろうと考えている猶予はなく、酸素を吸わせる、輸液の準備、抗けいれん剤投与、体温管理などの処置をしながら、同時進行で病気の診断をするのが、救急外来のアプローチです。

180703_02.jpg

――ペット用の救急車というのはないですよね?

 今のところないですね。求めている飼い主さんはいると思いますが、法規制や運転手の確保などの問題があって、そこはまったく発展していない分野です。

――飼い主が救急外来を訪れる理由として多いのは?

 下の図は、犬猫の当院への来院理由をまとめたデータです。

180703_03.jpg

 はっきり分類するのは難しいのですが、嘔吐・下痢・血便などの消化器疾患、異物・中毒、てんかんの発作など神経疾患、脳卒中や心臓病などの循環器疾患あたりが多いですね。特に異物・中毒は年間400症例以上なので、かなり多いなと感じます。

急に歩けなくなったら、かなり緊急性は高い

――救急外来に行くべきかどうか、見極めるポイントは?

 これはすごく難しいですね。ある獣医師の先生は、「飼い主さんが救急だと思ったら、すべて救急である」とおっしゃっています。飼い主さんが何か不安を持たれているなら、来ていただくという。実際、飼い主さんがおかしいと思うときって、かなり悪いときなんです。
 ただ、そこには別の問題もあって、例えば治療費のこと。当院では初診料が8,000円かかりますし、例えば胃腸障害の鑑別を進めて行くときに、最低限必要な血液検査、レントゲン、超音波に治療費を加えると、4~5万円にはなります。また、夜間に病院まで移動する手段が確保できるかという問題もありますよね。それに、愛犬にとっては、初めての病院に行くストレスや、移動のストレスもあるかもしれません。
 そう考えると、翌朝まで待って、信頼しているかかりつけの先生に診ていただくほうがいい場合もあると思います。

――こうなったら絶対行くべきという症状は?

 それには、人間の救急現場で使われる、STARTトリアージの考え方が参考になると思います。下の図を見てください。

180703_04.jpg

 例えば、大震災や大事故などで怪我人・病人が同時に多数出たとき、現場に救急医が送り込まれたら、まずはこの方法で死傷者を識別していきます。

 このとき何を見ているかというと、まずは「歩けるかどうか」。歩けない原因は、呼吸が苦しい、中枢神経障害がある、低血糖、お腹の中が血まみれで血圧が下がっているなどいろいろありますが、とにかくさっきまで歩けていたのに歩けなくなったというのは、大きな問題です。歩けるようなら、とりあえず緊急性は低いと判断できます。

 そして、歩けないようなら、次に見ていくのはABCDです。

【A=Airway 気道が通っているかどうか】
□呼吸をしているかどうか

【B=Breathは呼吸に問題はないか】
□呼吸数はいつもと同じか

【C=Circulation 循環に問題はないか】
□心拍数はいつもと同じか
□舌など粘膜の色はいつもと同じか(真っ白になったり、充血して真っ赤になったりしていないか)
□足先が冷たくなっていないか

【Dysfunction of the central nervous system 中枢神経に問題はないか】
□名前を呼んで、呼びかけに応えるか

 これらのどれかに問題があるようなら、緊急性の高い状態と判断できます。もちろんこの判断をするには、愛犬の正常な状態を知っておくことも大切です。

呼吸、脈拍など気づきにくい症状こそ重要

――緊急性が高いけれど、飼い主が気づきにくい症状はありますか?

 飼い主さんは、血便や血尿、嘔吐、下痢、てんかん発作、脚を引きずるとか、劇的な症状があると「うわ、病院行かなきゃ!」ってすぐに思うんです。ところが、呼吸が速い、発熱、粘膜が白い、不整脈、尿が出てないといった見えにくい症状だと、ようすを見てしまいがち。だけど、実は本当にまずいのは後者で、特に症状が複数合わさったときはかなり危険です。
「元気がない」っていうのは、もしかしたら気持ち悪いのかもしれない、お腹がすごく痛いのかもしれないし、立ちくらみがしているのかもしれない。けれど、犬たちは言えない。そういった見えにくい症状に気づくことが大切なんです。

――不安だったら、お電話してもいいのでしょうか?

 早めにお電話いただいたほうがいいと思います。緊急の状態かどうかって、プロでも見分けにくいので、一般の飼い主さんが判断することはかなり難しいです。お電話にはだいたい看護師が出ますが、何かあれば獣医師が代わることもあります。
 ただ、電話口で症状を説明していただいて、「これってなぜですか?」と聞かれても、「それは診ていないからわかりません」としか言えません。来院するかどうかの結論も、飼い主さんに出していただくしかありません。こちらとしては、短い時間の中で、飼い主さんの不安な気持ちに寄り添いながら、一緒に考えるというスタンスでお話しするように心がけています。

>>後編では、実際に救急外来を訪れる際に、準備すべきことや気をつけるべき点などを聞きます!

掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法等により保護されています。



 この記事が気に入ったらいいねしよう!
 最新記事をお届けします。

白柴・あおの交友関係

保護犬出身・アルの日常

保護犬出身・アルの日常
白柴・あおの交友関係