
2015年・秋から「あお」と名付けた柴の仔犬と暮らし始めた「犬の新人飼育員」の「僕」と「もうひとり」。なんで?どうして?理解できないあおの要求、その謎は深まるばかり......。
あおと我々にとっての「クルマで出かける都内三大公園」は、【代々木公園】【駒沢オリンピック公園】【砧公園】。たまには広い場所であおに散歩を楽しんでもらおうと(常におもてなしの心丸出し)、ある時からたまに出かけるようになった。
【代々木公園・はじめての頃】
初めて訪れた日、あおはその広さを見て一瞬立ち尽くし、そして次の瞬間、顔がパカっと開いて笑顔になり、猛ダッシュした。
代々木公園の広さにワクワクするあお
「なにここ?!広い!」
ここに来るたび、あおは積極的に散策を楽しんだ。
「ここ、ずっといたいかも!」
我々飼育員も新鮮な気持ちで、あおとの散歩が楽しめた。いつまでもここにいたい!あおの気持ちはきっとそうだった......。
【駒沢オリンピック公園・はじめての頃】
広い場所を見つけると、思わず駆け出さずにはいられないあお。ここでも楽しそうにあちこちを歩き回っていた。
「草の上っていいね!」
【砧公園・はじめての頃】
あおの首輪が外れて大騒ぎになった場所(※柴犬生活漂流記 vol.22参照)。
犬が入ることを許されていない場所もあるのだが、それでもかなりの広さで、来るたびに新鮮な気持ちで散歩ができた。
広い公園大好き!あおの顔がそう言っていた。遊び疲れ、帰りのクルマの中でうとうとするあおを見ながら、これからも行ける時には連れていってやろうといつも思った。
しかし今は「あー行くのめんどくさい!」と思ってしまう。わざわざクルマで行くのが面倒なのではない。面倒だと思うのは、あおが始めた「謎の要求」に対してだ。
「あおの要求」。前回に続き、今回はその③。
【あお・謎の要求】公園に来てすぐ「もう出たい!」
ある日からあおは、クルマを降りて1~2分公園を歩いただけで、すぐに「もう外に出たい!」と要求するようになった。
「あお、どこ行くの?公園こっち!」
そう言いながらリードを引けば、その数倍の強さで「わたしはこっちに行きたいの!」と門の方へとグイグイ引っ張るあお。こちらとしては、クルマまで出しているわけである。その目的は公園で遊ばせるためである。なのにお前のその要求はなんだ?なぜお前は公園の外に行きたがる?
【代々木公園・この頃】
到着後およそ3分でフリーズ
「公園?行かなくていいし」
外に出たい!と、門の近くで座り込んで要求
呼ばれているのに聞こえない顔で出口を見つめる
「わかったよ!」
要求のしつこさに根負けして外に出る。するとあおは生き生きとした顔で急にぐんぐん歩き出す。
急にぐいぐい進むあお
ナニ?この真剣な顔!
あおが向かっている場所、それは「カフェ」!
あおはカフェが大好き。公園で遊ぶよりもその近くにあるカフェを取るのだ。大きな公園の近くには犬も入れる店がいくつかある。あおは一度行ってしまうと、その店に立ち寄らずにはいられないのだ。代々木公園に行くと、最近は必ずこうなる。
店付近。信号待ちでも笑顔
「はやく渡りたい!」
店の入り口。空席待ちでも笑顔
はじめて会った人でも呼ばれるとすぐ遠征
かまってくれそうな人のところにすり寄る
英語が飛び交う席にも自ら顔を出す
あおはカフェに来て何をしたいのか?ドッグメニューがある店なら行きたいのはわかる。でもこの店にはない。あるのは、音楽が流れるゆったりとした空間と、かまってくれる人。あおはどうやらそのふたつがたまらなく好きらしい。
ただただ、くつろぐ
お店の人にもかまってもらって満足げ
【駒沢オリンピック公園・この頃】
見てください!このつまらなそうな顔
ちょっと歩いただけで、誘ってくる......。
「もう出よう!」
公園を出るとすぐカフェ
「入らないよ」と言うと覗き込み
さらに座り込んで入店を要求。負けて入店
あまりかまってもらえないが、それでもいいらしい
お気に入りカフェは他にもいくつか......
【砧公園・この頃】
駐車場を数分チェックしたら......
「もう外行きたい!」と出口を見つめる
公園を出ると......
大通り(環八)方向へスタスタスタ
環八沿いをスタスタスタ
「ここはカフェじゃないよ(自転車店)」と言うと仏頂面
カフェ発見ならず失意のおすわり
環八の反対側に店を見つけ、わざわざ歩道橋を渡り入り口に突進
残念ながらここはファミレス。
「ここ入れないよ」
「うそでしょ?カフェでしょ?」
恨めしそうにしばらく中を見ていた......
「あおですけど。入れてください」
「クルマで出かける都内三大公園」。あおにとってメインはもはや公園ではなく、カフェ入店。 かと言って、カフェに入って満足して帰るのかというとそうではない。『カフェのあと、公園を散歩』が、あおのプランなのだ。時間かかるー!代々木公園の場合はカフェと公園の間にもうひとつ入ってくるから面倒だ。あおはなぜだか人が大勢いる所に行きたがる。代々木公園のカフェから出ると、あおは公園に背を向けてスタスタ歩き始める。その方向にあるのは渋谷の街......。あおの要求は「公園行く前に渋谷行きたい!」。
あお、お前はなんなんだ?!
にぎやかな公園通り嬉しい
公園通りから渋谷駅前スクランブル交差点まで歩く
表参道まで足を伸ばしたこともあった!
「散歩行こうよ!」「この公園、入ってみたいな!」
それが犬の要求ではないのか......。
『公園?それよりあのカフェ入りたい!』
『公園?それより渋谷を歩きたい!』
『帰る?やだ。だって公園行ってないもん』
ああ、あおとただゆっくりと自然の中を歩いてみたい。カフェ好き、人好きのあおとの散歩、時にめんどくさくて仕方ない......。
(つづく)
舘川範雄 (たてかわ のりお)
1966年9月19日生まれ。1987年4月から作家活動に入る。
「コサキン」「SMAPxSMAP」「ポンキッキーズ」「スクール革命!」「THEカラオケ☆バトル」などテレビ、ラジオで多数の番組構成を担当。また関根勤主宰「カンコンキンシアター」の他、オリジナルコメディーやミュージカルの作・演出など、活動は多岐にわたる。
*本連載の1stシーズン【柴犬生活漂流記】は、こちら。
*インスタグラム(ao20150721)で白柴「あお」が毎日、犬の目線で日々の出来事を投稿中!
「順風満帆?!あおとの暮らし【柴犬生活航海記】」記事一覧