
2015年・秋から「あお」と名付けた柴の仔犬と暮らし始めた「犬の新人飼育員」の「僕」と「もうひとり」。出かける時の強い味方になるであろう『ドッグカート』......。飼育員たちはその導入について検討を繰り返していた......。
前回記した、台車にクレートを乗せた自作カート作戦の大失敗もあり、我々の"本物ドッグカート"への興味は高まっていった。
夏、あおと旅した時。宿泊した宿のレストランはあおも一緒に入れた。
普段なら、我々は椅子に、あおは床に座っている。旅先では、いつもと雰囲気が違うからなのか、我々だけいつもと違う料理を食べているのが悔しいのか、あおは持参したいつものフードに口をつけようとしない。仕方なく(まあ旅の思い出だし)と、あお用のメニューを注文して食べさせるのだが、この時のレストランではいつもより食べさせやすかった。そのわけは「テーブルごとに用意されていたカート」である。
カートに乗ってじっとしているのは嫌がるかな~と思いながら乗せてみると......嫌がらない。あんた、カート嫌いじゃないね。
自家用カートに乗っている犬を見かけることは多いが、ここではカートを持っていない我々もカートに犬を乗せて一緒に食事ができた。
我々と同じ高さになったあお。食べさせやすいし、こちらも落ち着いて食事ができた。
カートに乗っていっしょに食べる(なまいき)
それでもまだ我々はカート導入に躊躇していた。いるかな?いらないかな~?あると便利じゃない?なくても平気でしょ?あったらあったでいいんじゃないの?なかったらなかったで何とかなるでしょ?......堂々巡り。
その間に、犬同伴OKのアウトドアグッズ店で重い~重い~と言いながら、9kg近いあおを抱きかかえながら買い物する辛さを再確認した我々は、また性懲りもなく「試乗してみる?」とカートを扱っている店へと向かった。
「横浜ベイクォーター」。初めて訪れた。
ここはリードをつけていれば犬も歩けるショッピングモールだが、広場で"愛犬自慢コンテスト"のようなイベントが開催されていて、出場する犬連れと見学する犬連れのドッグカートがズラリと並んでいた。
「カート使っている人、やっぱり多いね」
カートの近くを歩きながら横目でチラチラ観察。三輪タイプ、四輪タイプいろいろある。
それにしてもあおは、人がたくさんいる場所に来るのが本当に嬉しくて仕方がないらしい。着いた瞬間、顔がパカーっと輝いた。
ペットグッズの店もいくつかあり、置いてあるカートを見てまわった。
「なるほど......」と、何がなるほどなのかわからないが、我々はそんなことを言いながら、さらに近くにある"横浜そごう"に向かった。ここの8階にはペットグッズの店があり、さらに事前に調べたら、デパートなのに犬も入れるらしい。ベイクォーターとそごうは連絡通路でつながっていて、犬も歩いていける。けれどそごうの入り口で不安になった。デパートだよ、本当に大丈夫?
あおは入る気満々
念のために、横浜そごうの入り口から、横浜そごうに電話をして聞いた。
「今、入り口にいるんですが、犬を連れて入ってもいいんですか?」
「はい」
(わ!ホントに入れる!)
「ペットショップの中は歩いていただけますが、それ以外の場所はペットキャリーや抱きかかえなどでお願い致します」
よかった~聞いといて。ベイクォーターのノリで、そのままあおも歩いて入るところだった。店内を抱っこ移動して
エレベーターでも抱っこ。ちょっと重くなってきた
そしてついた8階。小型犬は珍しくないのだろうが、抱っこされた柴犬が売り場を歩く姿は店員さんでもあまり見ないのか、心なしかこちらを見てちょっと笑ってる。
(張り切って黄色のリボンなんかつけちゃってるし)
お目当てのペットグッズの店に入る。ここはあおも歩行OK。
そしてまたまたカートに試乗した。
せっかく歩ける場所に来たのにカートに入れられるのは嫌かな~?と思っていたら......嫌がるどころか、乗ったとたんに笑ってた。
完全にカート好き......。クルマに乗るのも好き、抱っこで移動するのも好き、あおは知らないところを歩くのも好きだが、ラクに移動できること全般も大好きだったのだ。
お店の人にまたも取り扱い方を教えてもらい、もうひとりの飼育員は上の部分を外せば新幹線に乗れるサイズであることも確認していた。
「ありがとうございました......検討します」と、また買わずに帰った。
そろそろ買えよ!と言いたくなるが、まだ踏ん切りがつかなかったのだ。
そごうを出て、クルマを停めてあるベイクォーターに戻り、またペットグッズの店に入り、また試乗した。
(しつこい)
店の人にまた取り扱い方を教わり、さらにもうひとりの飼育員は「これで新幹線に乗れますよね?」とまた聞いていた。そのお店の人はブレーキ付きのタイプだと改札の幅に車輪が引っかかるかも......と新情報をくれた。ブレーキ付きのメリットは、坂道などでうっかり手を離してしまっても安心、デメリットはノーマルタイプより幅が少し広くなり、少し重くなるこということだとわかった。
「よくわかりました!ありがとうございます」
お店の人はさすがプロ、我々が今は買う気がない客だと見抜いたのだろう、笑顔で「ぜひご検討ください」と言ってくれた。
「はい!検討します!」
帰宅して我々は改めて本気で検討した。何度試乗したというのだ?何度店の人に説明してもらったというのだ?そして何度、何人に「検討します」と言って逃げるように店をあとにしたのだ?
「買おうか?」
「そうね」
こうして、我々はついにドッグカートの導入に踏み切ったのだった。
(結局これもネットで買ってしまいました。お店のみなさん......すみません)
写真も動画も撮れなかったが、あおは箱からカートが出てきた瞬間、シッポを振りながら僕に前足を何度もかけてきた!その姿、喜んでる!
カートが届いたことに喜ぶなんてありえないと思われるかもしれない。でも普段は大きな段ボールが届くと「やだ怖い!」とシッポを下げて遠くから様子を見ているあお。なのにこの時は出てきた瞬間、テンションが一気にアップ!どう見てもあれは「うそ!わたしのカート?やったー!!」と大喜びしていたとしか思えない!
Myカート初乗り
後日、アウトドアグッズの店へカートで乗り込んだ
我々もあおもラク
乗っている姿......どこか笑える
電車にも乗った(担当:もうひとりの飼育員)
油壺マリンパークでも乗った
ついに我々は禁断の(?)カートを手にしてしまった......。
これで、もうひとりの飼育員はいつでもワンオペであおと新幹線に乗って里帰りできるだろう。カートの出番は今のところそれほど多くはない......しかし、あおと一緒に出かける場所の選択肢が増えたことは確かである。
「出かけるの楽しーい!」
(つづく)
舘川範雄 (たてかわ のりお)
1966年9月19日生まれ。1987年4月から作家活動に入る。
「コサキン」「SMAPxSMAP」「ポンキッキーズ」「スクール革命!」「THEカラオケ☆バトル」などテレビ、ラジオで多数の番組構成を担当。また関根勤主宰「カンコンキンシアター」の他、オリジナルコメディーやミュージカルの作・演出など、活動は多岐にわたる。
*本連載の1stシーズン【柴犬生活漂流記】は、こちら。
*インスタグラム(ao20150721)で白柴「あお」が毎日、犬の目線で日々の出来事を投稿中!
「順風満帆?!あおとの暮らし【柴犬生活航海記】」記事一覧