
2015年・秋から「あお」と名付けた柴の仔犬と暮らし始めた「犬の新人飼育員」の「僕」と「もうひとり」。毎日の散歩は朝晩しっかり1時間以上のあお。でも『雨』の日はそうもいかずに......。
「あ〜残念、雨だよ」
朝、雨が窓を濡らしていたら今日の散歩は中止。出かけられないとわかると、あおはふて寝......。それが当たり前だったあの頃。
「トイレは家の中でずっとできるようにしておいた方が絶対にいい。そうじゃないと雨でも雪でも散歩に行かなくちゃならないから大変!」と、仔犬だったあおを連れて曇り空の下を歩いていると、いろいろなところで"犬との暮らしの先輩"たちによく言われた。
もちろんそのつもりだった。あおは大丈夫!と思っていた。あおは大きくなっても絶対に家でも外でもできる!
だがしかし......あおが家の中で「小」または「大」をする回数はどんどん減っていった。なんとか家の中でさせようとしていたが、散歩に出るとしてしまう。しちゃダメ!と言えなかった。このままいくとあおもご多分に漏れず、「小さい頃はウチでもできていたんですけどね......」ということになるだろうと覚悟をし始めていた。
毎度のパターンで恐縮だが、あおがうちに来るまでは、雨の日に犬を散歩させている人を見ると(なんでわざわざ雨の中歩かせてるんだろう)と思っていたが、まさかわざわざ歩かなければならない理由がちゃんとあったなんて......。今まで心の中でそう思いながら見ていた雨中散歩の方々に謝りたい。そして言いたい。我々もその道にしっかりと進みましたと......。
来るべき"雨中散歩"に備え、我々はあおが6カ月になった頃にレインコートを購入しておいた。前もって"着る練習"もしておいた方がいいと言われていたので、我々の"着させる練習"も兼ね、あおにレインコートを着せ、外に出てみることにした。
まず「着るのイヤ!」と家の中で大騒ぎ。なんとか着せて外へ出ると、この通り。
「歩けません!」
この日の飼育員ノートには「外に出たけど歩かない」と記されている。
結局、あおが購入時のサイズよりも大きく成長したことで、レインコートはその役目を果たすことなく、静かにその一生を終えた......(もったいなーい)。
そして買い直した(もったいなーい)、同じデザインのワンサイズ上のコート。もう同じ過ちは繰り返さない!買ったんだから使わなきゃ損だ!あおが室内排泄をする機会もめっきり減った。
我々は「ウチのは小さい頃からずっと家でも外でもできるんですよ〜」と自慢気に言い放つ夢は諦め、現実を受け入れる準備をし始めていた。そしてこの日、「来た!雨!行こう!レインコート!」と、あおにレインコートを着せ、出かけることにした。
まず、着せるまでに一苦労。(半年前と同じ)ちょっと暴れるあおをなだめすかして(オヤツも投入)、なんとか着用成功。
明らかに納得していない顔
「わたしだけ濡れるわけ!?」とあおに言われたくなかったので(言わないが)ここはフェアにいこう、あおに合わせて、我々も傘はささずにレインウェアだけで行くことにした。
(左手にリード、右手に傘という"両手塞がり"で歩くのが怖かったというのもある)
朝6時半、レインコートを着せられたあおと我々はついに雨の中へ。こちらとしても初めての挑戦。緊張である。
「さあ行こう!」あおに声をかけてリードを引くと、歩かない......。
「行こう!練習、練習」さらにリードを引くと、さらに踏ん張って前に行くのを拒む。
道の向こうを雨の中、コートも着ずに平気な顔でスタスタ歩く犬がいた。
(飼い主は傘)
「あお、あれが普通なんじゃないか?」と言いながら、なんとかあおを説得して雨散歩スタート。
が、スピードが遅い!まず濡れた道を歩くのがイヤなのだ。トボトボトボトボ歩く。さらに露出している顔(マズル)が雨でどんどん濡れていくのがどうにも耐えられない様子。すぐに「もうわたし歩けない」と座り込んでギブアップ。
スタートしてからたったの5分であおの雨散歩は終了した......。
途中からイヤになって早々に帰宅
恨めしそうにこちらを見る
こうしてあおの初めての雨散歩は途中リタイアという残念な結果となった。
この頃通っていた、しつけ教室のトレーナー川野輪さんにその話をすると、「あおちゃんは可動域が制限されるのがイヤなのでは?」とレインコートの形状について指摘を受けた。
確かにあおのコートは袖を通すタイプ。「上から被るポンチョタイプの方が合っているかも」というアドバイスを受けてネットで検索。モデルチェンジ前のものが安く売られていたので、それを試しに買ってみた。
このタイプ、あおには合っていたようで、着せられる時も少し抵抗しただけで、すぐに慣れてくれた。やはり動きやすいというのがポイントのようだ。
家で着る練習(我々にとっては着せる練習)
涼しくなったので着用練習(雨は降っていない)
サイズは少し大きめ。上下をボタンで留めるだけなので着せやすい
いつもの公園オールスターズと。ひとりだけレインコート
コートを着ていてもこの笑顔。
レインコートは着られるようになった。こちらも着せることに慣れた。あとは雨を待つばかり。
そしていよいよポンチョ導入後、初の雨散歩がやってきた。
玄関を出て外を見たあおは、道路が濡れていることに気が付き、「雨ムリ!」そのまま家に戻ろうとした。
「あお、行こう!がんばろう!」
しばらく雨と濡れた地面を見つめていたあおは考え直したのか、そーっと外に向かって歩き出した。トボトボと歩いて家から一番近い公園についたが、そこで気持ちは折れたようで、最後はその場におすわりしたまま動けなくなった。雨も強くなってきたので、残念ながらこの日も抱っこで帰宅。しかし雨の中を歩けなかったあおにしてみれば大進歩だと、あおを褒めて次の挑戦に期待した。
しばらくあおの雨中散歩はこんな感じでなかなかうまくいかなかった。雨は上がっているのに、濡れた地面を見ただけで玄関に戻ろうとすることもあった。
雨が降っているのを見て頑なに外出拒否
「行こう!」とリードを引くと「なに言ってんの?雨だよ!」という顔
一度、あまりの豪雨だったのでクルマに乗せて近くの公園に連れて行ったことがあった。あおはすぐに仕事(「小」)をすると、自分から早足でクルマに戻って「もう帰る!」とアピールした。いつもは何時間でもいたがる公園なのに、そんなにイヤなんだね、雨......と笑っていたが、この「雨の日はクルマで公園」をあおは最良の方法だと思ったらしく(行きも帰りも濡れずに済む)、ちょっとでも雨が降っているのがわかると道路には出ずに、なんと地下の駐車場につながる階段に向かうようになった。
「あお、クルマでは行かないよ」と言うとその場に座り込み、リードを引いても頑として動かない。まるで「なに言ってるの?雨だよ。クルマでしょ」と言っているようだった。
以降、恥ずかしながらしばらくは雨が降るとクルマで近くの公園に向かい、近くの駐車場に停め、仕事が終わると駐車料金(100円〜200円)を払い帰宅するという、情けない時期もあったが、いつしかなんとか雨の中も歩けるようになった。
2歳になった今は雨の中でも平気で散歩
雨の散歩。してみてわかったのは「何事にも慣れが必要」、そして「あおの顔は下地が黒い」ということであった。
【追記】
2017年10月の後半、雨が数日続いたことがあった。レインコートがあれば雨の中を歩けるようになっていたあおだったが、毎日毎日雨の中を歩くのはかなりのストレスだったようで、朝起きて雨が降っているとわかると、シッポも気持ちもダダ下がり。顔もなんとなく暗かった。
犬同伴で雨を気にせずに歩ける場所はないものか......思い出したのがお台場にある『ヴィーナスフォート』。たしかあそこ、犬が歩いてたぞ!フジテレビが近いので行ったことは何度もあったが、あおと一緒に行くのは初めて。なにがどう楽しめるかはわからないが、レインコートなしで濡れずに歩けるだけでもいいかも!と、もうひとりの飼育員と共に訪れた。
初めての場所が大好き!にぎやかなところ大好き!のあお。雨に濡れずに歩ける喜びも合わさって笑顔満開!
人いっぱいで大喜び
カートに試乗。嫌いじゃない
かまってもらってテンションアップ!
「なんかたのしい!」
こうしてあおのストレスはどこかにふっとんだ。
雨の日の過ごし方......飼育員として、これからも研究が必要だと実感した。
(つづく)
舘川範雄 (たてかわ のりお)
1966年9月19日生まれ。1987年4月から作家活動に入る。
「コサキン」「SMAPxSMAP」「ポンキッキーズ」「スクール革命!」などテレビ、ラジオで多数の番組構成を担当。また関根勤主宰「カンコンキンシアター」の他、オリジナルコメディーやミュージカルの作・演出など、活動は多岐にわたる。
*本連載の1stシーズン【柴犬生活漂流記】は、こちら。
*インスタグラム(ao20150721)で白柴「あお」が毎日、犬の目線で日々の出来事を投稿中!
「順風満帆?!あおとの暮らし【柴犬生活航海記】」記事一覧