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2018.06.07

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クパメル隔週レポート「笑う犬には福てんこ盛り」vol.23

犬を惑わす「心のノーリード」。信頼コンビ復活大作戦!

犬とスローライフ体験記3回目。山梨県北杜市明野に借りぐらしして1か月。夏が近づいて、田舎暮らしならではの事件も続出! 田舎で暮らすというのは素敵なことがいっぱいあるけれど、試練もいっぱいあるのだ。

#Activity / #Lifestyle

Author :写真・文=白石かえ

スズメバチ、ムカデ、トカゲ......都会人が忘れている野生との遭遇

【5月25日(金)】
 前回のクパメルレポートが公開され、脳味噌がふぉわ〜としたまま、日没前にちょっくら山爆走へ。......そういう私の気の緩みは、そのまま犬にバレるらしい。ザザザッと大きな黒い影(シカ?)が森の中で動いたと思ったら、クパが弾丸のように追いかけていった。そのとき私が即座に「ピュイッ!」と、いつもの注意喚起&呼び戻しの口笛を吹けばよかったのに「ま〜いつもどおり呼べば帰ってくるだろう」と油断した(バカ、バカっ)。

 いつもなら数分後、というか数十メートルごとに「ホウ・レン・ソウ」(犬も飼い主に「ホウコク・レンラク・ソウダン」しなさい、と教えている)しに戻ってくるのに、クーパーが戻ってこない(焦っ)。口笛を吹き、大声で名前を呼んでも、いつもなら遠くからクマ鈴の音がコロンコロンと近寄ってきてクーパーが戻ってくる気配がわかるのに、鈴の音も聞こえないっ(焦焦焦っ)。

 メルはメスだし、猟犬種ではないので、飼い主の目の届く範囲内にいるから問題はほとんどないが、やっぱりクーパーは猟犬種。そりゃ野生動物のニオイは魅惑的だろう。天然のノーズワークで、いい刺激になるとも思っている。が、しかし! それを言っていいのは、完璧を期した呼び戻し訓練を施している飼い主だけだ(猛省......とりあえず、そのあとクパはハーハー言いながら戻ってきました。心配したっ!)。

 もちろん生き物だから「絶対大丈夫」はどの犬にも言えない。だからこそ永遠の目標である100%を目指して、日々努力、日々修行をするしかないのだ。「うちの犬は、たぶん大丈夫」っていう飼い主の気の緩みのオーラみたいなのが、犬にも伝わっちゃう気がする。

 そのうえ借りぐらしを始めて3週間を超え、クーパーもこの辺りの山の地形にも慣れて、自信や勇気が増してきた。慎重なクーパーは、最初は遠くへ行かなかったのに、だんだんレンジ(探索距離)が広くなっている。明らかに調子に乗っている、あるいは、私の存在より別のもの(獣臭や本物の鳥獣)の魅力が勝っている。クーパーの強い心や自立心を育むことは、この借りぐらしの目的のひとつでもあるのだが、自立心=飼い主を無視する心、であってはならない。

 トレーニングされた鳥猟犬や災害救助犬などが、ノーリードで放たれても、キチッと言うことを聞くのは、ちゃんと心がハンドラーとつながっているからなんだ(と、恥ずかしながら改めて実感)。犬の体と心は、リードでコントロールするもんじゃない。つながっていなきゃいけないのは「心」。目に見えない「心のリード」は、絆とか信頼関係と呼ばれるもの。そっちの方が100倍重要だった(もちろん交通事故防止とかのために目に見えるリードも大事だけどね)。

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自然のお花畑を自由に走るクパメルはとても楽しそう(クーパーも探してね)。だけど「心のリード」は放しちゃいけなかったのだ!!

 つまりは「心のノーリード」が大問題なんだと、今回の件で痛感した(何十年も犬と暮らしているってのに、全然まだダメ飼い主。涙)。リードをオフしていても、心はガッツリつながっていなくちゃ。それができないのならノーリードなんかしちゃいけない。危ない。迷子になる。よそ様に迷惑をかける。それに、心がノーリードになっている犬は、心ここにあらず、という感じに見え、だんだん犬が飼い主を尊重しなくなる、ほかのことでも勝手な振る舞いをするようになりそう。飼い主との信頼関係の絆がちぎれかかっている(ヤバい!)。すなわち、犬が飼い主を必要としなくなっているのではないか!?(あわわわっ)

 もっと広範に考えれば、これは都会のドッグランでも同じことが言えるのかも。ノーリードで自由運動をさせることは、犬の心身の健康のため(筋肉や骨関節を強化する肉体的、心が解放される精神的)に欠かせない。でも、ドッグランの中だからといって、飼い主を無視していいわけではない。自由に走っていても、ほかの犬と遊んでいても、気ままに探索活動していても、呼ばれたらピッと反応し、喜んで飼い主の元へ駆けてこなくちゃ。それが、心のリードがつながっている状態だろう。

 そりゃ犬種(昔の仕事)によって、飼い主と離れる距離や気質(従順さ、素直さ、頑固さなど)は違う。オスとメスでも違う(通常はオスの方が距離が長い)。だけど、いずれにしても飼い主(ハンドラー)の声に喜んで反応し、すぐに言われたとおりの行動を取ることが絶対大事。大事だし、それが犬と暮らす悦びである。

 自立心を促すことと、放置することは同じじゃない。というか、心のノーリードは、ネグレクト(育犬放棄)になるんじゃないかとすら感じた。うん、今回は勉強になった。災い転じて福となす、にしたい。

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呼び戻し強化のため、犬笛のトレーニング再開。煮干しやクッキーを用意し、まずお庭のドッグランで、犬笛の音を理解させる。すぐにクーパーは覚えてくれた。さすがだね、ガンドッグ♥

☆合わせて読んでおきたい ~編集部オススメ記事~

【5月27日(日)】
 山の暮らしに夏が近づいている。それを実感したのは......昼間なのにキッチンの流しに7センチくらいのムカデが出たからっ。し、しまった、火バサミとか用意しておけばよかった! ティッシュで掴んでも噛まれちゃう! でも掴むものがないからやむを得ずギュッと数枚のティッシュで掴んでみたが、スルスルと脱走して床に落下! そうしたら好奇心旺盛なメルが、ムカデに急接近! メルが噛まれるーーっ!と、焦った私はとっさにルームシューズでムカデを踏みつけ、圧死させた(母は強し)。でも、あとで調べたら、ムカデは潰しちゃいけないんだって。体液のニオイを嗅ぎつけて、数時間後に別のムカデが出るんだって! コワいよー。やだよー。お礼参りは勘弁してぇー。というわけで、殺ムカデ現場と死体遺棄現場を、虫除けハーブのスプレーで念入りに拭いた。そして次なる敵に備え、火バサミも準備。よし、かかってこいやーっ(ウソです。来ないで)。

 やれやれ、と思ったら、今度はスズメバチが、庭のテラスにブィーーーーンとやってきた。ああ、クパちゃんがハチのすぐ下で寝そべっている。クパ、動くなよっ(心の中で懇願)。今、私が外へ出てハチを追い払うのはよけい危険。ジッと様子を覗うことしかできない。

 するとスズメバチが、私の目の前にあるガラス窓に、カツンカツンと当たってくる。なに、なに、これ偵察? 威嚇!? よくわかんないけど、コワいよぅ。というわけでネットで対策を検索したり、友達に聞いたり。とにかくスズメバチさん、どうかこのおうちに巣を作るのはやめてください。庭で遊ぶ犬たちが刺されたら困るのよっ。

 さらに。夕方、庭のウンチ拾いをしようと屈んだところ、シャッと動いた物体に反応し「ヒャッ!」と悲鳴をあげてしまった。胴体が細めのキュウリくらい、足は割り箸より太い。ニホントカゲか!? デケーーよっ! 瞬間的に、腕にバッと鳥肌が立ったよ(毛が逆立つ猫の気持ちがわかった)。しっぽまで合わせると全長20センチ超え。別にトカゲは噛んでこないから無害だけど、やっぱりいきなりの登場にはおののいてしまった。

 ああ、今日はなんて日だ。お山に行くのはやめておこう。いやな予感がする(次はマムシかもしれぬ!?)。

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田んぼ周辺の道路端にもマムシがいるかもしれないけれど、山中で噛まれるより、スマホの電波圏内にいた方がまだマシだ(←山爆走では、圏外のとこも多いのであーる)

【6月1日(金)】
「心のノーリード問題」で、まだ反省の日が続く私(相当凹んだもよう)。毎日、犬笛呼び戻し練習を繰り返すことに加え、(当たり前だが)オンリードで散歩し、ちょこっとオビディエンス(日本語では「服従訓練」と言われるけど、服従って単語がなんかちょっと違和感あるというか、強制感があるというか......もっといい日本語訳ないのかしらね〜)をしながら散歩するようにした。田舎暮らし中は、人間1人でクパメル2頭引きなので、1対1のきちんとしたトレーニングはできないけれど、それでもやってみると、意外や手応えを感じる。犬が、私のことをよく見るようになる(散歩以外の時間でも)。

 ああ、そういえば。この借りぐらしでは、広い庭がドッグランになっているし、さらに敷地は広くて駐車場側にも門とフェンスがあるので、そちらにも探検に行ける。門を閉めていれば、ノーリードのままクルマに乗せて外出することも可能なので、一時期ズルをしてリードをつけないでそのままクルマに乗せることも多かった(スーパーにおつかいなど、犬をクルマから下ろさない用事のとき)。

 犬にリードをつけない日々。「自宅に大きな庭があれば、犬も自由に走れるし、いつでも排泄できるから、散歩はそれですませちゃえばいいよね。飼い主も楽ちん。そんなマイドッグランがあったらいいな〜」と憧れていたが、どうやらそれは違うのかもしれない(むろん社会化トレーニング的にもダメなんだけど)。犬は、リードでも絆でも、どっちとも飼い主とつながっていたいのではないかと、今回感じた。そりゃノーリードも好きだ。でも、ノーリード100%の毎日だと、飼い主とのつながりを確認できないというか、心を不安定にさせるというか、放置されすぎてかまってもらえていない寂しさのようなものがあるのではないか。

「服従訓練」という言い方だと、警察犬など特別な犬のためのものかと思われがちだけど、そういうエリートの犬だけのものではなく、すべての家庭犬に共通して必要なもの。でも「服従」という言葉で誤解もされてそう。ならば、なんと言えばわかりやすいのだろう。えーと、えーと。そこでdocdogライター仲間で、オーストラリアでトレーナー資格を持つ、英語も日本語もわかるイガチャン(五十嵐廣幸氏)に聞いてみたら、面白い返事が返ってきた。

「オビィディエンス(服従訓練)は、飼い主と犬の漫才コンビの、ボケとツッコミみたいなものだよ」

 ダメなことや危ないことをしそうになったら(ボケたら)、おいおい、ってツッコミを入れる。よいコンビは、その間合いがいいし、会話が成り立っているし、約束事がお互いちゃんとわかっている、みたいなイメージだって。なるほどねー。そっかー、そう言われると気楽に思えて楽しくやれちゃう気がするー。

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「不法投棄禁止」と書いてある裏寂しい高速道路の側道で、日没前に「スワレ」「マテ」→「オイデ」の練習。それにしても、なぜそんなにちんまりと2頭くっついてオスワリするのだ?(こんなに土地は広いのに)

 クーパーは、野山でシカを追いかけたい本能もあるけれど、それ以前に私としっかりいい漫才コンビになっていなきゃダメなんだ。最近、野放しにされてばかりだったから、コンビを解消されたみたいで、不安で、どう反応したら(どうツッコミに返していいか)わからなくなっていたのかもしれない。だから、呼ばれても1度目の呼び戻しでサッと反応しない。それはコンビの絆が薄れている状態なのだ。きっと。

 そこで、朝は清々しい青空の下、夕方はゲコゲコとカエルが合唱している田んぼ道を、のんびりと一緒に歩く時間を長くとることにした。引っ張ったら「ゆっくりねー」とツッコミ、リードをたるませながら歩けたら「やればできるじゃーーん、いい子じゃーん」と声をかけ、見通しの悪い集落内の十字路では「はい、マテだよ」とツッコミを入れながら散歩すると、なんだかクパメルもチラッチラッとこっちをよく振り向く(=アイコンタクトしてくれる)。山爆走(自由運動)を十分やって満足している今こそ「ボケとツッコミ・オビィディエンス」もやりやすい。毎日継続して練習し、クパメル(とくにクーパー)と、もっともっといいコンビになりたいなー♪

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大きな木の下には、古墳時代後期(6世紀前半。弥生時代の次の時代)につくられた「穴塚古墳」があるそうな。クルマだと見過ごしていたが、犬と歩くと発見できた

【6月7日(木)】
「笑う犬には福てんこ盛り」vol.23公開。

 本日はこの「りとんち」の管理人、トレーナーでもあるKさんが来訪。近所の黒柴の楓ちゃんちとともに、3人で草刈り大会をする。トカゲさん、出ませんように。

 借りぐらしも1か月を過ぎると、楽し〜、嬉し〜だけではなくなってきた。草もすぐボーボーになるし、ヘビの轢死体を見ちゃったし、山でキツネにガン見され、メルが察知して大変だったし。スズメバチもムカデもトカゲも蚊もブヨもいるし。おうちの中にクモがいるのは普通(むしろクモは大切に)。「日常」とはそういうものだ。いいことばかりじゃない、これがリアルな古民家暮らし。

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農家の人の朝は早い。田植えって重労働。お米の1粒も残さず、大事に食べようと思いました

 ああ、来週はどんな事件が起きるのか。まあ、それだけ都会と違って、季節によって自然が移り変わり、生活に変化があるということ。近隣の田んぼはあれよあれよという間に田植えがほぼ終わり、風景が変わってきた。ニオイも変わる(花?草?牛糞?)。登場する虫や爬虫類も変わる(泣)。変化があって楽しい!(負け惜しみではないよ。本当にそう思っている)。

 次の事件もお楽しみに。また再来週の木曜にお目にかかりましょう!

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田舎暮らしの毎日を、のどかに過ごしているうちに、6/1にメル8歳、6/2にクパ9歳になりました。ケーキの代わりに、山梨といえばサクランボ! うちの犬は、器用に枝と種をペッとだします

  • ワンとヒトの充電施設『りとんち』(山梨県北杜市明野町)
  • HP:http://wellbe-dog.com/secondhouse/
  • ◎プロフィール

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    白石かえ
    犬学研究家・雑文家。家族は、ジャーマン・ショートヘアード・ポインターのクーパー、ボクサーのメル、黒猫のまめちゃん、夫1、娘1。前職は、自然環境保護NGO・WWFジャパン。犬猫と暮らして30数年。彼らの存在は可愛いだけでなく、尊い。犬が犬らしく生き生きと暮らせる、犬目線の原稿を書くのがライフワーク。

    ●執筆サイト: dogplus.me 犬種図鑑 ほか多数
    ●ブログ: バドバドサーカス
    ●主な著書:
    『東京犬散歩ガイド』、『東京犬散歩ガイド武蔵野編』、『うちの犬 あるいは、あなたが犬との新生活で幸せになるか不幸になるかが分かる本』、『ジャパンケネルクラブ最新犬種図鑑』(構成・文)

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