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2018.05.15

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クパメル隔週レポート「笑う犬には福てんこ盛り」vol.21

富士山の見える古民家で、犬とスローライフ

昨年から準備していた、憧れ(かつ無謀!?)な計画を、ついに実行に移す日がやってきた。これから約3カ月間、私は(オットと娘と離れて)クパメルと一緒に念願のスローライフを体験するのだ!

#Activity / #Lifestyle

Author :写真・文=白石かえ

八ヶ岳と南アルプスに囲まれ「借りぐらしのクパメルッティ」

【4月28日(土)】
 しばらく東京を離れることにした。そこで、その前に必ずやっておかねばならないことは、犬たちの健康チェックと予防接種、そしてフィラリア&ダニ予防薬を受け取ること。今から行く山梨県の南アルプス・八ヶ岳・奥秩父山塊に囲まれたエリアは、シカやタヌキなどの野生動物が多く生息する地だけに、犬と野生動物の共通感染症には十分注意が必要。

 マダニならまだ目に見えるサイズ(ベビーダニは数ミリ、血を吸ったら小豆大)だから見つけやすいが、私的にいちばん厄介だと思っているのは、ほぼ肉眼では見えない疥癬(ヒゼンダニ)

 最近、全国的に疥癬に侵されたタヌキの話をよく聞く。皮膚がゾウの皮のように灰色に肥厚して別の生き物のようになったタヌキの画像がネットで流れたり、毛が抜けていかにも免疫力が低下していそうなタヌキを、2月の宮崎出張の際にも目撃したりもした。可哀想だよぅ、気の毒だよぅ。そもそもポンポコタヌキさんは昔っから日本にいたのに、なんで今こんなことになっちゃっているんだろう。農薬のせい?(農薬入り昆虫などを食べるとかでタヌキの免疫が落ちてきた?) タヌキが日本から絶滅したらどうするんだ。

 あ、話がずれちゃった。とにかく疥癬にはなりたくない。それと、友人の獣医の話によると地方では未だ混合ワクチンをしない飼い主もけっこういるらしい。ということは、東京ではあまり聞かないパルボやレプトスピラなどの感染症が身近に存在している可能性がある。ワクチンを打ってしっかり抗体を作っておかねば。

 さらに、行く前にクパメルが健康体であることを確認しておくことも大事。ホームドクターにしっかり診てもらっておく。まあ、借りぐらし先には友達の黒柴の楓ちゃんママがいるので、何かあったら動物病院をすぐに教えてもらえるが、そんな緊急事態にならないに越したことはない。

 また今回は夏場にかけて出かけるので、フィラリア予防薬も先に半年分もらった。フィラリアに加えて、ダニ、ノミ、線虫類(回虫や鉤虫など)もこれひとつ月1回与えればよいタイプ。これならマダニに効果があるので、おそらく疥癬のダニにも効くはず。頼むぞー。

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旅行の前にはワクチンと健康診断を忘れずに〜

【5月6日(日)】
 5月連休の最終日。大渋滞の中央道上り線を横目にしながら、反対方向の下り線で一路山梨県へ。都心から2時間もかからない。近い。なのに、自然がいっぱいの別天地。雪をかぶった南アルプスや八ヶ岳が目の前にある。富士山がまるで銭湯の絵のように、でっかくハッキリ見える。ああ、なんて美しいんだ。

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縁側から1日中富士山が見える。なんて贅沢!!

 今回滞在するのは、旧知の間柄のトレーナーのKさん(私は未だに「といちのママ」と呼んでいる。彼女の先代の犬が「といち」という名の日本犬雑種だった)が管理している「りとんち」。Kさんは、私の先代の故バド(ワイマラナー)時代からの知り合い。今回の夢のスローライフが実現できたのは、先代犬たちが紡いでくれたご縁なのである。「りとんち」は、年間ビジネスメンバー専用の日帰り利用施設なんだけど、今回はバドに免じて特別バージョンで滞在させてもらえることになった。

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まるで親戚のおうちに来た感じ。二間続きの和室ではしゃぐクパメル。「りとんち」は屋内も犬OK。ノーズワーク練習会や、オフ会でもし雨が降っても室内ゲーム大会とかもできるよ。今ならもれなく私とクパメルに会えます(笑)。でもお邪魔なときは私たちは終日お出かけしてくるから遠慮なく「りとんち」へお問合せを

 それにしても、といちとバドが出会ったのはもう20年以上前。早いなーっ。当時、といちママはまだ犬の学校の学生だったのに(あ、年がばれそう。笑)、今では「先生」と呼ばれる立派なトレーナーさんになっておられる。時の経つのは早い。ああ、「命短し、愛せよワンコ」。この短い人生の中で、私はあと何頭の犬と暮らすことができるのだろう(そう感じているアラフィフ以上の人は多いんじゃないかな)。バドもといちも死んじゃって、バドの後輩犬のクーパーはこの6月で9歳、メルは8歳だ。いつの間にか(認めたくないが)もうシニア枠ではないか。

 犬人生は光陰矢のごとし。つまりはクパメルだって、あと何年一緒にいられるかわからない。私は、充実した犬らしい時間(犬生)をちゃんとクパメルに与えているのだろうかと、よく自問自答する。

 ボクサーは都会のコンパニオンに向いている犬なので、メルは東京にいてもさして不自由さは感じてなさそうだが(笑)、ジャーマン・ショートヘアード・ポインター(以下、ジャーポ)は、どう見ても「山を愛する」ガンドッグ。家庭犬の枠に収まる犬ではない。なのに私は、自分のワガママで、この山男のような犬種が大好きで、一方的な片思いで選んで、うちに迎えている。ほかのどの犬種でもそうだけれど、犬種やその個体の性質やスペックに合致した環境で飼養することが重要であり(それができないのなら本来なら迎えるべきではない)、百歩譲ってそれでも好きな山男(=クーパー)と一緒にいたいなら、できるかぎり全力でその環境に近いものを提供するように頑張らないといけない。と、いつも懺悔に似た想いを私は抱いている。

 それにやっぱりメルだって、自然の中に出かけると喜ぶ。飛んだり跳ねたりして、大はしゃぎする。だって犬だもの。小型犬でも、超大型犬でも、使役犬でも、家庭犬でも、犬の基本コンセプトは同じだ。

 だから、クパメルが健康体で元気いっぱいのうちに、山暮らしをしてみたい。いっぱい山で走らせ、森のにおいを嗅がせてやりたい。日当たりのいい場所で、日がな一日、日なたぼっこをさせてやりたい。いつでもオシッコしたくなる草地があれば、メルの尿漏れ(避妊手術後のホルモン異常でなっている症状。膀胱炎も併発しやすい)が治らないかな。治ったらいいな。

 そんな想いが募りまくる。しかし、距離的にも時間的にも経済的にも、現実はそう簡単ではない。人間には人間の都合がある(それじゃダメだという友達もいるけどもー)。だいたい私は背骨に持病があるのでひとりで山ごもりするのは無謀。かたや犬友達の中には、犬のために田舎に移住したり、別荘やキャンピングカーを買った人もいるってのに......我ながら不甲斐ない......。

 ......しかし、神様は見捨てなかった! 昨秋、といちのママから、たまたま「りとんち」の紹介のメールが来て、そこで私が閃いて(笑)、とんとん拍子で「クパメルと一緒にりとんちに滞在計画」が現実に向かって動き出したのである。犬神様か、山神様かは存じませぬが、私たちをここへ引き寄せてくれた。感謝。ついでに南アルプスの天然水も飲み放題。なんだか私まで浄化されそう。

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縁側に即席パソコン机を置いた。しばらくはここで原稿を書きます。窓から富士山と、庭で遊ぶクパメルを見ることができる。サイコー!

【5月15日(火)】
「笑う犬には福てんこ盛り」 vol.21公開。

 きゃー、短期とはいえ移住計画を遂行していたら、Wi-Fi電波問題やらがありまして、ついに、隔週木曜公開のクパメルレポートが遅れてしまいました。ごめんなさい!

 初日は、軽い引越状態でバタバタしており、山へは行かず、ドッグランのような庭ですます。ここだけでも都会っ子には、十分贅沢なスペースである。

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緩やかな傾斜があり、クパメルでも遊び甲斐のある「りとんち」のお庭ドッグラン

 2日目。山遊びできそうなところを探しに行くと、シカの親子が私の前をジャンプして通り過ぎた。いきなりシカの親子連れとは! 初っぱなから、野生の王国の洗礼を受ける。

 3日目、大雨にもめげずに新しい林道を開拓して歩いていたら、今度はノウサギが目の前を横切った。すごい。至る所に野生動物がいるんだと感動。

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この季節は新緑がきれい! もう少し登ったら甲斐駒ヶ岳、富士山、八ヶ岳が見えた

 4日目。オットは3日目の夜にいったん高速バスで東京へ帰ったので、いよいよドキドキのひとりと2頭暮らしに突入。なので今日は山へは行かず、おとなしく近所の集落を歩いてみた。すると、畑と林をつなぐ小道でハクビシンと鉢合わせ。クパがガッとリードを引っ張り、焦った。あぶねーッ! 心の準備もできぬまま、野生動物が出没する。油断ならない(クルマの運転も然り)。さらに、そのあと黒っぽい柴犬サイズくらいの四つ足が、全速力で走り去るのも目撃(夕方、散歩に行かずに鎖を放たれた飼い犬かなと思っていたが、もしかすると剥げた疥癬のタヌキかもしれぬ!?)。

 毎日毎日、新しい野生動物に出会う。朝はウグイスなどの野鳥のさえずりで目覚め、夕方はカエルの合唱。ブラボー田舎暮らし!

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オットが東京に帰ると、その夜はクパメルともに挙動不審になった。パパが玄関からもうじき入ってくると信じて待っているクーパー

 

 それにしても「田舎」の定義ってなんだろね。ここにいるとなんだかわからなくなってきたよ。東京都渋谷区から見れば、ここは田舎といえば田舎。お店は18時くらいで閉まるところも多い。でもクルマで5〜10分も走ればコンビニもあるし、農協で地元の美味しい野菜も買えるし、大きなスーパーやホームセンターや、マクドナルドのドライブスルーだってある(←これに妙に安心感を覚えてしまうダメな私)。田舎と呼ぶには、十分都会的だ。

 かたやクルマで5〜10分走れば、シカやノウサギに会える。「クマ出没。注意」の看板もある。もう少し走れば、南アルプスの天然水や八ヶ岳の湧き水のお水取りもできる。夜は道路に外灯もなく、真っ暗(それなのに奥の集落への抜け道らしく、クルマがうちの前の道をけっこうなスピード出して過ぎていく。こりゃビーコンを買わなくちゃやばいぞ)。

 現代社会の都会的な側面もあれば、昔ながらののどかな田舎っぽい側面もある。

 ともあれ夕焼けの中、田んぼのあぜ道を、犬と散歩しているおじいちゃんを見ると、ああ、いいなぁ、って素直に思う。昔ながらの原風景だ。

 そこで、あれ?と、ちょっと気がついた。私は、フリーランスで犬の原稿を書いて20年になる。でも、私が書いてきたのは、都会向けに偏りすぎた情報だったのではないか、と。

 日本全体のアニマル・ウェルフェアが向上するように書いていくことは大事。だけど、なんていえばいいのかなー、都市と田舎の格差が大きくて(都会では犬は外で排泄しちゃいけないとかさー)、犬に望むこと、強要していることが違う。犬は、みな犬という同じ動物なのに。

「ヒール」(飼い主のふくらはぎ付近の横について、リードを引っ張らずにしずしずと歩く)できない田舎の犬は不幸なのか、というとそうでもないと思うんだよね。嬉しそうにしっぽを振りながら、ズンズン歩いている田舎暮らしの犬。ギャンギャン吠えている犬の声もまだ聞こえてこない。田舎の犬は、土地の広さと同じくらい、心も広いのか。あ、飼い主さんの心、近隣住民の心も広いのかも。

 もちろん無計画に繁殖させてセンターに子犬を持ち込むとか、雨の吹き込む犬小屋で室外飼育して犬が濡れてしんどそうにしているとか、そういう時代はもう田舎でも終わらせなくちゃいけない。でも、もしかしたら古き良き昔ながらの日本人と犬との付き合い方とか距離感とか、大らかさとか、いい面も多いんじゃないかな。と、今回来てみて気がついた(思い出したというか)。

 まあ、むろん住宅密集地と、田畑や林のエリアとでは、環境が違うから同じようには語れないというのもわかるんだけど、でも、なんというのかな、心の余裕とか、他者やほかの動物への寛容な気持ちというか......「管理」とか「権利」を声高に叫ぶ前に、「生き物へのリスペクト」とか「共生」とか、「一緒にいると楽しいね、嬉しいね」という気持ち、そういう根幹部分のあったかい気持ちを忘れちゃいけないんじゃないかな、と思った。ほんわりのんびりしたスローなテンポと距離感、お互いが無理してない心地よい関係......そういうの、素直にいいなぁ、と思っちゃう。そういう感覚を早速「りとんち」は私に感じさせてくれた。

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築50年以上の平屋の日本家屋。気密性は低いけれど、広い縁側、二間続きの広い和室など、古き良き素敵なところがいっぱい。しかもここは「日照時間日本一」の地。晴れたらすぐ布団干し。もちろん犬ベッドも干す。毎日フカフカ。幸せだ〜

 

 ともあれ、ここでしばらく過ごしてみます。借りぐらしを楽しみます。すべてが未知の経験、実験的要素が多く、何が起きるかわからない。犬ライターとしては、毎日の生活がネタの宝庫になりそう(笑)。また数日間の旅行では味わえない、「生活」ならではの新発見もあるはず。田舎の人には当たり前でも、東京人には当たり前ではないことがいっぱい。毎日がちょっとしたカルチャーショック。しかも野生の王国。うふふー。ワクワクするねー。

 これからしばらくの間、のどかなスローライフで感じたことをレポートします。お楽しみに〜♪(次回は必ずや翌々週の木曜日にお会いしましょう)

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朝一から庭で遊んで、日向ぼっこして、野鳥を目で追って、夕方2時間お山を歩いて、大満足のクーパー。クーパーの大満足の寝姿は、バンザイ寝

 
  • ワンとヒトの充電施設『りとんち』(山梨県北杜市明野町)
  • HP:http://wellbe-dog.com/secondhouse/

  •  そしてそして、「そうだ、かえさんに聞いてみよう!」は、引き続き単独企画としてお便り募集中ですっ! 素朴な疑問でも、個人的な相談でもいいのよ。ほかの飼い主さんはどうしているのかなー、とか、獣医さんやトレーナーさんに聞くほどじゃないしなー、みたいなそういうレベルのものでいいの。匿名なんだしさ、恥ずかしがらないで、じゃんじゃん聞いてね。

     そのときに一緒に書いてほしいのは、おうちの犬や飼養環境のヒントになるような情報です。「犬種(ミックスなら何キロくらいのどんな犬か)、オスかメスか、犬の年齢、飼い主の年代、性別、居住地、職業」など。私だったら「ジャーマン・ショートヘア・ポインター(オス、8歳半)、ボクサー(メス、7歳半)、アラフィフ女性(笑)、東京都、自由業」という感じ。相談内容により、フルタイムで働いていて留守が多いか、小さな子どもがいるか、などの情報も教えてください。それによって答えが変わるかもしれないからね。あ、あと、掲載可能なお写真を2~3枚ほどお便りと一緒にお送りください(編集部注;できれば横位置のお写真を!)。

     同じような悩みを持っている人は、日本全国にまぁまぁいると思うのよ。だからみんなで悩みをシェア、情報をシェア。そして日本中の犬と飼い主がちょっとでも生きやすく、暮らしやすくなれたら嬉しい。お待ちしてまーーす。

    ☆質問・相談の送り先は、こちらのアドレスまで☆
    ↓↓↓
    docdog_media@delightcreation.co.jp

    *メールタイトルを「そうだ、かえさんに聞いてみよう!」と入れていただけると助かります。

    ◎プロフィール

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    白石かえ
    犬学研究家・雑文家。家族は、ジャーマン・ショートヘアード・ポインターのクーパー、ボクサーのメル、黒猫のまめちゃん、夫1、娘1。前職は、自然環境保護NGO・WWFジャパン。犬猫と暮らして30数年。彼らの存在は可愛いだけでなく、尊い。犬が犬らしく生き生きと暮らせる、犬目線の原稿を書くのがライフワーク。

    ●執筆サイト: dogplus.me 犬種図鑑 ほか多数
    ●ブログ: バドバドサーカス
    ●主な著書:
    『東京犬散歩ガイド』、『東京犬散歩ガイド武蔵野編』、『うちの犬 あるいは、あなたが犬との新生活で幸せになるか不幸になるかが分かる本』、『ジャパンケネルクラブ最新犬種図鑑』(構成・文)

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