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2018.05.28

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トレーナー直伝!愛犬との暮らしに役立つワンポイントアドバイス vol.17

犬の「褒めるトレーニング」、誤解していませんか?

こんにちは。ドッグトレーニングインストラクターの三井です。ここ数年、犬のトレーニングは力で押さえつけるのではなく、褒めて育てる"陽性強化"が主流となり、一般飼い主の方々にもかなり浸透してきています。それは大変喜ばしいことなのですが、陽性強化とは褒めるだけで、犬が間違っていても褒めていればいいという誤った認識をされている方もいるようなので、改めて簡単に陽性強化トレーニングについてお話しようと思います。

#Activity / #Lifestyle

Author :写真・文=三井 惇

犬の陽性強化トレーニングとは

「陽性強化」と聞いてもピンとこない方は、たくさんいると思います。英語では"Positive Reinforcement"。ではポジティブってどういう意味でしょう。 辞書を引けば、「肯定」、「前向き」、「陽性」、「正」と言った言葉が並んでいます。これだけ見ても、悪い印象は受けませんが、「陽性強化」と言われても一般の人にはわかりませんよね。私の個人的な考えでは「肯定するトレーニング」が一番わかりやすいような気がします。では何を肯定するのでしょう。

「今君のやっていることは合っているよ」と、合っていることを肯定し、褒めていくことで、犬が正解を出す頻度を上げていき、結果的にその行動を出しやすくし、身につけさせていくのが「陽性強化」のトレーニング法です。場合によっては犬の好きなオヤツを使うこともあります。

 ここでポイントになるのが、犬が正解を出しやすくする環境を人間が作ってあげることです。人間は失敗しながら学ぶと言いますが、犬は失敗(エラー)が続いて褒められなくなると学習意欲が落ちてしまい、考えることを放棄してしまうこともあります。

 犬が正解を出したとき、「合っている」と伝えるタイミングも重要になります。間違ったタイミングで褒めてしまうと、犬は違うことを学習してしまうからです。そこでクリッカー(カチッと音が鳴るトレーニングツール)を使って、タイミングを逃さずあっていることを伝えていく方法がトレーニングではよく使われますが、人間が「そう!」や「イエス!」と言ってあげてもかまいません。しかし、「よくできたね。おりこうさん」などと言っていると、「オスワリ」した瞬間を褒めようとしたのに、犬が立ち上がってしまうなんてことにもなりかねません。

 いちいち面倒くさいような話ですが、特に都会での犬との暮らしにはどうしても周囲の環境が大きく影響してしまいます。近所に小さい子どもがいて、玄関前を走って遊んでいるようなときは、愛犬に大人しく伏せているように言う必要も出てきます。放っておけば子どもを追いかけてしまう可能性があるからです。万が一事故が起きれば、責任を取らなければいけません。愛犬を守れるのは飼い主だけですから、愛犬にとっては楽しいことではないかもしれませんが、「オスワリ」や「フセ」をきちんと教えておくことも必要でしょう。本格的なオビディエンスであってもそうでなくても、犬たちに楽しく学習してもらおうというのが陽性強化トレーニングです。

どうやって指示を犬に伝える?

「それで合っているよ」と伝える陽性強化トレーニングでは、犬を押したり引いたりするのではなく、犬が自発的にとる行動や、場合によっては誘導などによってやって欲しい行動を出やすくしたりしながら、できたことを褒めていきます。

 では、やって欲しい行動が出ない時はどうするのか。そこで環境設定が必要になってくるわけです。

 例えば「オスワリ」。いつも飼い主の後ろを付いて回ったり、飼い主に飛びつこうとする子犬を見たら、少し待ってあげるとそのうち勝手に座る瞬間があるはずです。こちらは特に何も言いません。「ダメダメ、跳びつかない」や「オスワリ」なんて言っても子犬には関係ありませんから。余計な言葉はいらないので、ただニコニコして待っていれば子犬はそのうち疲れて座ります。その瞬間に、「オスワリできた、いいコだね」と声をかけて褒めているうちに、自分から座る頻度が増えてきます。もし、座ったと思ったらすぐ立ってしまうような時は、先ほどお話したクリッカーなどで、その瞬間をマークしてからフードやトリーツをあげるということもできます。座る都度「オスワリ上手だね」とやさしく声をかけていれば、腰を下ろす行動と「オスワリ」という言葉のキューが関連付けされていき、ある日「オスワリ」と言えば自分から座れるようになるものです。そこで「合ってるよ!」としっかり褒めてあげれば、犬は自信を持ってオスワリをするようになります。そんな面倒くさいことをやっていられないと言わないでくださいね。そもそもそれが陽性強化トレーニングなのですから。もちろん、いくら待っても座らない犬の場合は、犬の好きなもの(オヤツやオモチャ)を鼻先に見せて少し上にもちあげてやれば自然と腰を落としやすくなります。どちらも犬が自分で腰をおろす状況を飼い主が作っているわけです。

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子犬が自分から座ったら、すかさず褒めて、座る行動が出やすくする

 犬に何かを伝えよう(教えよう)と思ったら、犬が回答を出しやすい環境を作ることが飼い主やハンドラーの務めと言っても過言でありません。

犬は指示を理解しているか

 家に迎え入れてから、家のルールも含め多くのことを犬に伝えていくわけですが、果たしてそれらが本当に愛犬に理解されているのかどうかが大事なポイントです。ではどうやってそれを確認することができるでしょうか。まず家の中など、愛犬にとって刺激が少ない場所でキュー(指示)を出し、犬がちゃんとできるかどうか確認します。言葉だけでできるのか。ハンドシグナルが必要なのか。少し待っても行動に起こさなければ、まだ理解できていないと考える方が無難でしょう。家の中でできるようになったら、玄関の外、散歩の途中、ドッグランの横など、さまざまな場所で確認していきますが、犬にとって誘惑などの刺激が多い場所でできないからといって、犬を叱るのはフェアではありません。環境が変われば当然犬も平常心ではいられないため、飼い主の声が聞こえなくなることがあるからです。

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周りの環境が刺激的であれば、集中がそがれて飼い主の声が聞こえないかもしれません

 できることを少しずつ増やしていくことは、飼い主のサポートが無ければできません。そのために、飼い主はどうやったら愛犬が正しい答えを出せるのか、考える必要があります。「教えたからできるはず」と思い込んでいると、できなかったときに「この犬はバカだから」などという誤った結論に辿り着くことになってしまいます。犬からすれば、「あんたの教え方がマズイんじゃないの?」と言われそうですね。

犬が間違った行動をしたときはどうするか

 犬がまだ理解していないのに間違えてしまったときは当然指導者(飼い主)のミスですから、この場合は叱ったりなじったりするのはアンフェアですね。指導者としては、ステップをひとつ落としてもう一度教え直すところから始めればいいのです。間違っていることに対して、特に「ノー」や「イケナイ」と言ったネガティブワードを使う必要はありません。とはいっても、人間ですから、「あっ」と声が出てしまうかもしれませんが、小さい声ぐらいにしておきましょう。

 何度も教えて完全に理解したと思うことであっても、久しぶりにやったり、あるいは似た動作を教えたりしている場合、犬にも忘れたり勘違いしたりすることがあるので、100%完璧にできないということを常に想定しておきましょう。間違ってしまったときやできなかったときは何も言わないでもう一度やってもらい、ちゃんとできたらしっかり褒めます。何回か繰り返してみて間違えなければリマインドできたと考えられます。もしも何度も間違えるようであれば、やはり理解が十分でないかもしれません。勘違いの場合は一度時間をあけてリセットしてあげると、できるようになる場合もあります。「待つ」ことや「無理をしない」ことも、犬のトレーニングいおいて忘れてはいけないポイントです。

 基本のトレーニング方法は今までお話したように、できる環境を作り、できたことを褒め、繰り返し練習し、犬が身に付けるのを待つ。という流れで教えるのですが、そうは言っても人間社会で共生する中で、例えば急に走り出そうとしたり、何かに跳びかかろうとしたりすることもあるでしょう。そんなとき正しい行動をするまで待っているというのでは、実生活には合いません。危険を感じた時ははっきりとした言葉で呼び戻したり、犬を動かさないために「マテ」をさせたり、伏せをさせるなどの対応も必要です。「コイ」や「フセ」あるいは「オスワリ」といった基本行動は、しっかり教えておきたいものです。

おわりに

 ここでお話したのは、愛犬に何かを教えるときに行う手順のようなものです。犬には個体差があるので、当然どのコも同じペースで学習していくわけではありません。根気よく、愛犬のペースに合わせ、犬に無理をさせないことが基本です。

 何かに慣らすために行う場合であっても、できるようになるまでのプロセスは細かく設定していく必要があります。特に何も感じていない物であれば受け入れやすいですが、すでに恐怖心などを持っている場合には、いくら大好きなオヤツなどを使っても効果が出ないこともあります。そう言う場合は陽性強化トレーニングと言うより、リハビリを行う必要があるのでやり方はまた変わってきます。

 ニュートラルな状態から「できる」を増やしていくときに、陽性強化トレーニングは効果を発揮するでしょう。

◎プロフィール

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三井 惇
CPDT-KA(国際資格)ドッグトレーニングインストラクター。1997年に迎えたボーダーコリーと始めたオビディエンス(服従訓練)をきっかけに、犬の行動学や学習理論を学ぶ。2004年にドッグダンスをと出会ってその奥の深さに魅了され、愛犬家に広めたいと2006年からインストラクターとしてドッグダンスを教え始める。自身も一競技者として、オビディエンスやドッグダンスの競技会に参加。

●ブログ: Dance with Dogs
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●主な著書:『ニコルとドッグダンス』/エー・ディー・サマーズ

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