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2018.05.14

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トレーナー直伝!愛犬との暮らしに役立つワンポイントアドバイス vol.16

トレーニングは犬のレベルに合わせて

こんにちは。ドッグトレーニングインストラクターの三井です。犬にいろいろなことを伝えていく中で私が日々感じているのは、いつどのタイミングで、どう伝えるかということです。犬育ては子育てと一緒で、個体それぞれの学習レベルや成長の度合いに合せて行わなければなりません。今日はそんなお話をしようと思います。

#Activity / #Lifestyle

Author :写真・文=三井 惇

子犬は赤ちゃんと同じ

 子犬を家に迎えたとき、普通に元気がある子犬であれば、新しい環境に連れて来られてしばらくすると好奇心から家中を探索したり、人間の後ろを付いて歩いたりするようになります。生後2カ月程度の子犬であれば、型にはめようとせず、まずは人慣れや環境馴れ、同時に屋内飼育の場合はトイレトレーニングなどが最重要課題。この時期に無理矢理オスワリやフセを教えたところで、おそらくきちんと座ることすらできないでしょう。

 この先10数年共に暮らすのですから、まずは飼い主のことが好きにならなければ始まりません。子犬の頃はたくさん遊んでやり、その中でやって欲しくない行動が出づらいように環境を作ってやればいいのです。当然オスワリが何であるか知らないのですから、お尻を押したりして無理矢理座らせようとすれば抵抗するでしょう。自分から飼い主を見上げた時にオスワリの姿勢になってしまったところをさりげなく「オスワリ上手ね」と褒めていけば、将来本格的にオスワリを教えるのも簡単です。

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子犬は名前を呼ばれたらいいことがあると教えていく

 同様に、子犬に自分の名前をしっかり認識させなければいけない時期でもあるので、名前が呼ばれたらいいことがあるとたくさん刷り込んであげます。名前を呼んでも反応しなければ、こっちに来やすいように飼い主が動いて追いかけさせたり、おもちゃなどを動かしながら好奇心を掻き立ててみたり、人間もさまざまな工夫をしなければいけません。すると名前を呼ばれたら楽しいことがあると学習した犬は、多少気になることがあっても、すぐにとんでくるようになります。

 反対に呼ばれて嫌なことがあると思えば、絶対来てはくれないでしょう。この時期呼んでも来ないからと叱ったり、強制的に引っ張ったりしても、子犬は楽しくありません。子犬のほうから行きたいという気持ちにさせるための努力を惜しめば、将来ドッグランでフリーにしたときなどに戻ってくる確率は少なくなるでしょう。子犬の時期にはそのときにしかできない、飼い主との関係性も含めた土台作りが不可欠です。

 これらのことは何も子犬に限ったことではありません。保護犬などのように、環境が変わった犬に対しても同様のことが言えます。人と共同作業をする経験を持たない犬や、人に対して不信感を持っている場合などは特に何かをやらせようとするのではなく、まずはありのままの犬の状態を知ってから、少しずつ距離を縮めていくプロセスが欠かせません。追いかけまわすのではなく、犬が自分に興味を持つまで待つ必要があるでしょう。

犬の立場に立ってみる

 子犬を外に連れて出るようになると、家の中では完璧だった呼び戻しや飼い主への集中力が、あっという間に崩れていくことに気づくでしょう。外の世界に一歩足を踏み出せば、子犬は人間に想像もつかないような、好奇心や恐怖心を刺激する多くのものと遭遇することになります。ときには風に舞うたかが落ち葉ひとつが、飼い主の手の中にあるオヤツより魅力的だったりします。そんなとき、呼んでも戻ってこないからと犬を叱るのではなく、この子のレベルでは無理だと考え、刺激的なものから少し離れてもう一度呼び戻してみたり、愛犬の好きなおもちゃやオヤツを見せたりして、飼い主の元に戻る方がいいことがあると伝えてもいいでしょう。ちゃんと戻ってきたらご褒美としてあげればいいのです。戻ってきたことをしっかり褒めてあげる方が、犬にとってはいい経験が一つ増えることになります。家の中と同じ手法で練習してもうまくいくはずがないという大前提のもとで、犬が飼い主に方に気持ちを向けやすい環境を作り、成功する確率を上げることをまず考えましょう。犬の気持ちを考えることで犬に適切な学習環境を提供することができるはずです。

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外のお勉強は静かな場所から

 例えば、家の中で愛犬と向かい合ったときなら必ずオスワリができるとしても、人や犬が行きかう環境ではできないのは当たり前のことだと思えば、飼い主もイライラしなくなります。それなら少し静かな場所に移動して、同じことをやってみればいいのです。場合によってはすぐにやってくれなくても、ちょっと待っているとできることもあります。外での成功体験が増えて褒められることが多くなれば、犬にとっても散歩は楽しいものになります。

犬は成長する

 こうしてさまざまな経験を積む過程で、犬たちは多くのことを学習していきます。彼らにとって最優先すべきは自分にとってのメリットでしょう。遊ぶ・食べる・寝る・作業する※。と言った欲求がすべての根本にありますが、そこに飼い主という信頼に値する人間が絡んでくることで、何を優先すべきか頭で考えることができるのも犬です。
(※犬種によっては、ハンドラー(飼い主)と行う作業自体に強い欲求を持つものもいますが、それ自体はDNAによって刷り込まれていたり、あるいはハンドラーとの作業の中で楽しみをみいだしながら培われていく場合があります)

 犬同士で楽しく遊んだ経験を持つ犬は、犬を見ると誰かれかまわず遊びに誘おうとするかもしれません。フレンドリーなのは何よりですが、「遊べるまで帰らないぞ」と道端で伏せて頑として動かない犬を見て、「ダメ!」ではなく、「おいで」と言われて飼い主の元に戻ってくるようにするには、先にお話したように、いろいろ気になるものがあっても飼い主の元に戻るといいことがあったという経験をたくさん積んでいなければできません。学習レベルが上がって、戻ることが当然だと学習している犬であれば、おもちゃやオヤツを見せなくても、自分から戻ってこられるようになっているはずです。

 犬の成長や学習の度合いに合わせたマナートレーニングをすることで、犬も人もストレスを軽減して理解し合うことができるようになります。そんな関係作りの手間を省いてしまうと、犬は自分の利益を優先させられないことにストレスを感じるだけでなく、飼い主の言うことを聞かなかったという理由で叱られるという楽しくない状況が繰り返されるようになります。それではなかなか信頼関係は築けないでしょう。

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飼い主と遊ぶこともコミュニケーションづくりのひとつ

 当然のことながら犬との生活の中では、犬がいつも喜ぶことばかりが起きるわけではありませんが、そんな状況であっても、力で強制するのではなく、犬にやって欲しい行動を上手に引き出す工夫をすることで、道は開けてくるはずです。

◎プロフィール

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三井 惇
CPDT-KA(国際資格)ドッグトレーニングインストラクター。1997年に迎えたボーダーコリーと始めたオビディエンス(服従訓練)をきっかけに、犬の行動学や学習理論を学ぶ。2004年にドッグダンスをと出会ってその奥の深さに魅了され、愛犬家に広めたいと2006年からインストラクターとしてドッグダンスを教え始める。自身も一競技者として、オビディエンスやドッグダンスの競技会に参加。

●ブログ: Dance with Dogs
●HP:http://wanbywan.com/
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●主な著書:『ニコルとドッグダンス』/エー・ディー・サマーズ

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