magazine

  1. トップページ
  2. MAGAZINE
  3. やっぱり犬は悪くない

2018.05.02

ブログ        

トレーナー直伝!愛犬との暮らしに役立つワンポイントアドバイス vol.15

やっぱり犬は悪くない

こんにちは。ドッグトレーニングインストラクターの三井です。今日は前回のラリーオビディエンスより難度が高いFCIのオビディエンス競技を通して再確認した愛犬との関わり方について、三井の個人的な感想を交えながらお話しようと思います。

#Activity / #Lifestyle

Author :写真・文=三井 惇

訓練競技の目的とは

 おそらく多くのドッグトレーニングに関する競技がそうであると思いますが、どんな競技であってもハンドラー(指導手)と犬の共同作業を目的としています。

 犬のトレーニングに関する競技は前回のラリーオビディエンスも含め、さまざまな団体が独自のルールを持って開催しています。それぞれ難度やルールは違っていても、基本的には愛犬に人間社会における基本的なマナーを教えることから始まり、それらをきちんと理解させた上で各競技課目を完成させていく過程の中に、犬との絆や信頼関係を深めていくことができるのではないかと私は思っています。

 ワールドチャンピオンシップが開催されている、FCI規定のオビディエンス競技はヨーロッパで盛んにおこなわれていますが、日本国内ではJKC(ジャパンケネルクラブ)が主催しています。JKCがメインで主催しているCD(コンパニオンドッグ)の競技会は、一般家庭犬のオーナーが始めやすい内容の課目が多く入っていますが、オビディエンス競技の難度は全般的に高くなっています。そのため、まだまだCDに比べると競技人口は少な目ですが、一度始めるとその面白さに引き込まれていく方が多いようです。特にクラス2からは犬の嗅覚を使った課目が入ってくるので、犬種に関係なく、犬の本能を目の当たりにすることができるのも面白いところです。

 ここまで聞くと、おそらく「ウチの犬はそんなこと必要ないから」という飼い主の方もたくさんいるでしょう。しかし、競技に参加していらっしゃる方も、その技術を生かして犬に何かさせようというのではなく、愛犬との共同作業を楽しんでいるのです。もちろん世界大会を目指す人もいますが、基本は愛犬に何かを伝えていく過程を一喜一憂しながら楽しんでいるのではないでしょうか。

競技への取り組み方

 我が家の犬たちは先代の頃(およそ20年前)から、主にJKC主催の訓練競技会に参加しています。当初一般飼い主でも簡単に参加できる競技はCDだけだったので、CDIからCDII、CDIIIとレベルを上げながら競技に取り組んできました。しかし、基本的には家庭犬としてのトレーニングの成果を競う場であり、決められている規定課目自体も特に難しい作業はありませんでした。もちろん、普段できていることが本番で発揮できるかどうかは別の話しです。さらに自由選択課目がいくつか選べることもあり、愛犬の得意課目の作業をすれば、規定課目で多少減点されても、ある程度得点しやすい仕組みになっています。当然のことながら、順位を上げようとすれば正確性や作業意欲などが評価されるので、ただやればいいというものでもありません。

 先代の犬たちや現在のアシスタント犬とCDの競技会に出て、とりあえずグランドトレーニングチャンピオンを達成したあと、愛犬ともっと何か一緒に出来ることは無いかと考え、FCIオビディエンス競技に出てみようと思いました。前の犬たちの頃からドッグダンスはやっていますが、個人的にはドッグダンスの基本となるべきものは服従訓練だと思っているので、服従訓練のもっと難度の高いものにチャレンジすることで、必ずドッグダンスにも生きてくるものがあると考えたからです。

180502_02.jpg

FCIオビディエンス競技クラス1、「障害飛越を伴う招呼」

 現在のアシスタント犬と一緒にオビディエンスを始めてしばらくしてから、見習いが我が家にやってきました。毎朝アシスタントと練習しているのを横で見ている見習いは、見よう見まねで遠隔の作業(ハンドラーから離れて課題を行う)などをやるようになりました。教えてもいないのにやっている姿を見て、犬の賢さに改めて驚いたのですが、実はこれが大きな落とし穴だったのです。つまり、一見ちゃんとやっているように見えて、場所が変わったり、ちょっと状況を変えたりするととんでもない行動をとることがわかりました。つまり本犬はまったく作業の意味を理解しておらず、アバウトに何かやれば褒めてもらえると思っていただけだったのです。上級者が集まる練習会に参加してその事実が判明してから、私は見習いのことを安易に信じなくなりました。というより、きちんと教えていないことは確実にできるはずはないというあたりまえの理論に戻ったのです。

 それから見習いに対しては、一見できていそうでも騙されずに段階を追って一つひとつ丁寧に教えていくことを肝に銘じ、アシスタントの時以上に時間をかけて教えることにしました。どこまで理解できているのだろうか。ここでできなかった原因はなんだろう。彼はどうしてその答えを出したのだろう。そんなことを考えるようになりました。少しでも鼻鳴きが出た時は、ストレスがかかっていると考えていったん作業を中止しました。課目の作業で使用するコーンやダンベルなどの刺激が強すぎて、ハンドラーの声が聞こえなくなっているときはリセットしました。どうやったら冷静に考えられるだろう。などなど、多くのことを人間側からでなく、見習いの立場に立って考えるようになりました。今までの犬たちはこちらの要求に対して、なんの疑いも無くすんなり受け入れてくれたので、そんなことを考えようとも思わなかったのですが、まだ若い見習いに何かを伝えようとするときは、決して手を抜いてはいけないということを改めて教えられたのです。

犬は悪くない

 訓練競技を通して見習いとの向き合い方を再確認しましたが、実は日常生活の中で愛犬に何かを伝えようとするときにも「犬の立場で考える」ことがとても大事になります。トイレトレーニングひとつとっても、「なぜ決まった場所でトイレができないのか」とイライラする前に、「犬にとってその場所は落ち着いてトイレができる場所なのか」、「遊びに夢中になっている子犬にとって、その部屋の広さにトイレはひとつで十分なのか」、「トイレを失敗したときに叱ってしまったことで、トイレを叱る人から見えないところでしているのではないか」などなど、犬の思考回路に近づくことで人間にとっての問題が解決される場合もあります。もちろん少しはみ出してしまったことで余計なイライラがあるのであれば、トイレスペースを広げてやったり、少しはみ出しても掃除がしやすい素材を床に敷いてやったり、人間側の工夫ひとつで解決できることもあります。

 犬に新しいことを教えるときも、力で教えてもなかなか犬は理解出来ません。「違う!」や「イケナイ!」を連呼するだけでは犬にはなかなか伝わりません。正しい行動を引き出しやすく誘導することも必要ですし、それを何度も繰り返してあげないと身に付きません。一回でできるようになるなどと考えてはいけないのです。人間の子どもであれば言葉で伝えることができます。それでも子どもは何度も繰り返し聞いてくるでしょうし、親は「何回言えばわかるの?」などと小さい子どもには言わないはずです。犬も同じです。何度も繰り返して伝えていきます。「さっき言ったよね」ではなく、「まだ理解できていないようだから、もっと練習しよう」と頭を切り替えて考えることが重要です。犬はいつも正直です。犬が間違った時の原因は常に人間側にあると言っていいでしょう。

180502_03.jpg

犬がわかりやすいように誘導しながら行動を引き出す

考える時間をあげよう

 犬の生涯の中で私たちは多くのことを犬に伝えていくわけですが、時には犬に考えさせる時間もあげましょう。その時間が、犬が理解できているかどうかを確認する大事な時間でもあります。

 例えば「オスワリ」と言ったのに犬が座らなかったとき、今まで何度も練習してきてできるはずだと思ったら、「オスワリ、オスワリ、オスワリ!」と連呼するのではなく、一回言った後に少し間をおいてみます。オスワリがどんなことをするのか考えてから、ゆっくり座る犬もいるかもしれません。しばらく待っても座らなければ、まだ犬が「オスワリ」と言われたら腰を下ろすことだと認識できていない可能性があるので、もっと練習する必要があるでしょうし、もしかしたら、周囲にたくさんの刺激があって、飼い主の声が耳に届いていなかったのかも知れません。たかが「オスワリ」という一言であっても、犬がすぐにできるかどうかはその時の状況で変わるものです。

180502_04.jpg

床から上がる浮遊臭をたどって隠したものを探す練習

「待つ」というのは、犬に考える時間を与えるためにとても有効です。せかすのではなく、逆にすぐ正解を与えてしまうのではなく、自分で考えて行動できるようにすることが犬に自信をつけさせます。競技に出る出ないの話ではなく、日常生活の中でも自信がある犬とそうでない犬では行動に大きな差異が出ます。「弱い犬ほどよく吠える」ではないですが、犬のストレスを軽減させる意味でも、犬に考えて正解を出す時間をあげることがとても重要です。愛犬に何かを伝える時間を多くとることは、犬とのコミュニケーション時間が増えて信頼関係も築きやすくなるでしょう。ぜひ試してみてください。

◎プロフィール

mitsui_pr.jpg

三井 惇
CPDT-KA(国際資格)ドッグトレーニングインストラクター。1997年に迎えたボーダーコリーと始めたオビディエンス(服従訓練)をきっかけに、犬の行動学や学習理論を学ぶ。2004年にドッグダンスをと出会ってその奥の深さに魅了され、愛犬家に広めたいと2006年からインストラクターとしてドッグダンスを教え始める。自身も一競技者として、オビディエンスやドッグダンスの競技会に参加。

●ブログ: Dance with Dogs
●HP:http://wanbywan.com/
*Facebookページもぜひチェックを♪
●主な著書:『ニコルとドッグダンス』/エー・ディー・サマーズ

掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法等により保護されています。



 この記事が気に入ったらいいねしよう!
 最新記事をお届けします。

モッテコイ遊びの道具は? 枝で遊ぶ危険性

愛犬を洗った後の乾かし方、本当に知っていますか?

愛犬を洗った後の乾かし方、本当に知っていますか?
モッテコイ遊びの道具は? 枝で遊ぶ危険性