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2018.05.22

知っておきたい、がん事情の最前線<前編>

愛犬をがんで死なせないために、飼い主にできることは?

林宝謙治 埼玉動物医療センター院長

現代の日本では、犬の約半数ががんで亡くなっています。がんを予防するため、また、もしがんにかかっても助けるために、飼い主にできることは何でしょうか? 日々がんにかかった動物たちの診察・治療を行う、埼玉動物医療センターの院長であり、日本獣医がん学会獣医腫瘍科Ⅰ種認定医でもある、林宝謙治先生に聞きました。2回に分けてお送りします。

写真=Ekaterina Brusnika, Chendongshan, Littlekidmoment / Shutterstock.com、docdog編集部 文=山賀沙耶

#健康 / #食事

日本に特有の犬種別がん事情

―――日々がんの犬たちを診察する中で、最近の傾向として感じることはありますか?

 最近の傾向とは少し違いますが、犬種にもよるものの、10〜20年前に流行した犬種ががんになって診察に来ることが多いです。最近はミニチュア・ダックスフンドが多く、しかもミニチュア・ダックスという犬種に限って罹患率の高いがんがあるんです。例えば、悪性黒色腫という口の中にできる悪性腫瘍もそうだし、消化器型リンパ腫という腸にできるリンパ腫は、罹患率も高いけど治療成績もいいという、犬種特有の事情があります。

 7〜8年前までは、20年ぐらい前に流行ったゴールデン・レトリーバーやラブラドール・レトリーバー、フラットコーテッド・レトリーバー、バーニーズ・マウンテンドッグなどの大型犬が多かったですね。フラットやバーニーズには組織球性肉腫という腫瘍が多いんです。それに、コーギーの腫瘍もよく見かけますね。もちろん、流行してもがんになりにくい犬種もいます。

 ちなみに、ここにあげたのは日本独自の傾向で、欧米の獣医師と話すと「そんな腫瘍知らないよ」なんてこともあります。

―――それは遺伝的な要因が大きいのでしょうか?

 遺伝的な要因が証明されているものもあるし、されていないものもあります。ブリーディングの問題が関係している可能性もありますが、それを証明するのはなかなか難しいですね。

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タバコを遠ざけ、健康診断を受けさせよう

―――そもそも、がんの原因は何でしょうか?

 愛犬ががんになったとき、「何がいけなかったんでしょうか?」という質問は飼い主さんからもよく受けますが、私はいつも「何も悪かったことはありません」とお答えしています。一般論として、年を取ればみんながんになりますし、現在日本では2頭に1頭の犬ががんで死んでいます。そもそもがんとは遺伝子の故障であり、年を取ってきてがん抑制遺伝子が壊れると発生するので、老化としか言いようのないものがほとんどです。

 ただ、いくつか疫学的に証明されている要因があって、その代表的なものがタバコです。飼い主さんが喫煙者だと、副流煙によってペットにがんが発生する確率は上がります。犬や猫の場合、タバコの有害物質が毛についてしまうんです。特に猫はよく毛づくろいをするので、喫煙者の家庭で飼育されていると、口の中のガンの発生率が上がることが論文になっています。喫煙される飼い主さんは、動物を大切に思うなら、部屋の中で吸わないことです。

―――その他に、飼い主にできることはありますか?

 年に1〜2回、動物病院で健康診断を受けることですね。特に胸の中やお腹の中の腫瘍の場合、健康診断で偶発的に見つかることも多く、それがきっかけで紹介されて来られる方もよくいます。そういう場合は、体力に余裕のある元気な状態で受診されるので、意外と助かることが多いです。

―――食べ物は、がんの発生と関係ありますか?

 調べていけばなくはないと思いますが、証明しようがない部分もあります。一般的にプレミアムフードと言われている、きちんとしたメーカーのフードを食べていれば、相応に栄養バランスが取れていて、添加物などカラダに悪いものは排除されていると思います。特に欧米のものは、その辺りの規定がしっかりしています。人間でも添加物などすごく気にされる方はいらっしゃいますが、それを言い出すとキリがないかもしれないですね。

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口の中のできものや鼻血は要注意

―――飼い主はどういうきっかけで、がんだと気づく場合が多いですか?

 がんの発見には大きく分けて2つのパターンあります。1つは、飼い主さんも主治医の先生もがんだと思っていなくて、よく調べたらがんだったというパターン。例えば咳が止まらない、下痢が治らないなどで、最初は近くの動物病院で咳止めや下痢止めをもらって、いったんよくなってもまた悪化したり、全然よくならなかったりで、これは何だろうと。それでいろいろ調べてみたら、肺に影があるとか、お腹の中のリンパ節が腫れているとかで、初めて腫瘍じゃないかと疑われる場合です。

 その他にも、皮膚病が治らないので調べてみたら皮膚型リンパ腫だったり、脚を引きずっているからと受診したら骨肉腫だったり、目が赤いとか急に見えなくなったというのが目の腫瘍や脳腫瘍だったりと、いろんなケースがあります。

 もう1つは、これは腫瘍じゃないか、と疑って受診されるパターン。外から見てわかる場所や触れる場所にしこりがあるとか、口の中に何かできていて出血しているとかで、がんを疑って来られる場合です。

―――「これは気づきにくいけれど要注意」という症状はありますか?

 いろいろありますが......、口の中の腫瘍は発見が遅れることが多いです。歯周病だと思っていたら、口腔内腫瘍だったというケースはよくあります。ところが、病院で口の中をおとなしく見せてくれる動物は少なくて、麻酔をかけないと詳しく見られない場合もあります。だから、家でリラックスしているときや、口を開けて寝ているときに、口の中を見てくださいとよく言っています。歯磨きができる動物は、家で自由に見られるし、病院でも見やすいので、早く見つかる可能性が高いですね。

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 それと、鼻血です。犬や猫はそんなに簡単に鼻血は出ないので、1回でも出たら軽んじないで、とりあえず病院に相談したほうがいいです。1回の鼻血でも腫瘍の可能性を考えなければいけないし、何度も出るようなら腫瘍の確率はかなり高まります。鼻の中はCTやMRIを撮らなければ詳しく調べられないので、一般病院では検査が難しいことも多いです。早めに高度医療の可能な病院にご紹介いただくことが重要です。半年や1年も鼻炎の治療をして引っ張ってしまって、どうにもできない状態になってから来られることが多いので......。

 もう1点、食べているのにやせてくるというのは、がんの兆候で見逃されやすいけれど、家で気づける症状の一つです。年を取ってきたらからかなと思ってしまう人が多いのですが、これはがん性悪液質が原因。いわゆる食べても食べてもがんに栄養を奪われてしまう状態です。体重をまめに測って、1〜3カ月で20%ぐらい体重が落ちてきたら、動物病院で相談してください。

>>後編では、最先端のがん治療についてお聞きします!

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