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2018.04.27

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コントみたいな犬との暮らし【柴犬生活漂流記 vol.26】最終回

あお、旅に出る

2015年・秋。「あお」と名付けた柴の仔犬を迎え入れ、生まれて初めて「犬の飼育員」となった「僕」と「もうひとり」。トイレの失敗もなくなった生後5カ月のあおはついに「はじめての旅」に出た......。

#activity / #lifestyle

Author :写真・文=舘川範雄 協力=(株)浅井企画

クルマ大好き犬

 あおを初めて家に連れて来た時、その移動手段はクルマだった。急にあおが来ることになり、慌ててネットで買った小さなクレート。あおを中に入れて後部座席に置き、その横に"もうひとりの飼育員"が座り、揺れないようにしっかり押さえながら、葵ちゃんの家から(詳しくはvol.3)自宅を目指した。

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乗り物酔いする犬は多いと聞く。僕も乗り物酔いしやすいので、クルマが苦手な犬の気持ちは痛いほどよくわかる。もしかしたらあおも......と心配していたのだが、さすが自分のシッポを追いかけながら猛スピードでグルグル回れるだけあって、あおは今まで乗り物酔いしたことがない。お陰でお出かけの選択肢が広がって助かった。最近はクルマの鍵を手にするだけで「え?もしかしてどっか行く?」とシッポをブンブン振って大喜びである。

リラックスしながらドライブを楽しむ あお

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 そんなクルマにもクレート移動にも強いあおが、2015年の冬、別の乗り物デビューを果たした。

あお、初めての新幹線

 2015年12月31日の朝。月齢5カ月(と10日)のあおは、クレートの中で、タクシーに揺られながら品川駅に向かっていた。

 あおとの初めての正月を「もうひとりの飼育員」の実家がある静岡で過ごすことになったからである。あおにとって初めての遠出、初めての外泊である。

 移動手段の候補にクルマもあったが、"年末年始混むよな〜"でやめた。前の年のゴールデンウィーク、うっかりクルマで静岡に帰省して、普段なら3時間もあれば余裕で帰れるところを東京までなんと8時間以上もかかるという大渋滞地獄を味わった。今回はあおもいる。途中休憩を入れるとしても、車内、しかもクレートの中で、けっこうな長時間をあおに過ごさせる自信はなかった。

「今回は新幹線しかないかな......」

 まず、どうやってあおと乗ればいいのか?確か乗れると思うけど、乗ったことないからわからない......。まずはインターネットを駆使して調査を開始。「新幹線 犬」で検索すると、すぐわかった(カンタン)。

小犬、猫、鳩またはこれらに類する小動物(猛獣やへびの類を除く)で、長さ70センチ以内で、タテ・ヨコ・高さの合計が90センチ程度のケースにいれたもの。ケースと動物を合わせた重さが10キロ以内のもの。
手回り品料金は、1個につき280円です。ご乗車になる駅の改札口などで荷物をお見せのうえ、普通手回り品きっぷをお求めください。

 抱いたまま、バッグ、スリングなどはダメと書かれていた。バリケンを測ってみると、大きさはクリア。その頃のあおの体重は7kg台。ケースと合せても10キロ以内で問題なしだ。これで手回り品料金280円を払えば、あおも新幹線に乗れる! でも鉄道会社は荷物感覚で犬を捉えているのか......と複雑な気持ちになりつつ、そのページは閉じた。

 続いては、新幹線に愛犬と乗った人たちの旅日記を探して参考にさせてもらった。レポート文と写真で確認できて、未経験者にはとてもありがたかった。

 ひとつ気になったのは、小型犬が多いこと。小さいけれどあおは柴。あれ......大丈夫かな......。「新幹線 柴犬」で再検索。〜いるいる!大丈夫だ。

 クレートはみんな座席の足元に置いている。車両の最前列のシートを予約すると何かとよさそう。うちもそうしよう!

 犬と新幹線の旅、大変そうなのが、クレートを持っての移動。キャスター付きのモノや、カートならまだラクかもしれないが、うちにあるのは普通のクレート。あおを入れたまま運ぶのは、重くてかなり大変である。

 以前、こんなに小さなハンドルなのに、あおを入れたまま運んでも壊れないなんて、さすがメイド・イン・USA、頑丈でスゴいな〜と、運ぶたびにバリケンを絶賛していたのだが、ある日不安になり調べてみると、ネットショップの注意事項として―――

※上部のハンドルはペットを入れた状態での持ち運びには耐えられません。ペットが入った状態でハンドルを持って持ち運ばないでください。

―――と書かれていた! だよねー!だって小さいビス4つで固定されてるだけだもの!

 あぶない!今までずっとハンドルを持って運んでたー。え〜?じゃあどうやって運ぶ?サイドを両手で持って運ぶしかない?

 やってみると、バリケンのサイドの出っ張りなんてほんの少し、指の第一関節ぐらいしか引っかからない。しかも細い出っ張りがあって、それが指に食い込んで痛い!これ持って長時間歩くのツラい!両サイドに運ぶ時用の持ち手をつけて欲しいと思った。まあ、重さと指の痛さには耐えるしかないとして、両手が塞がってしまったら自分の荷物はどうする?リュック?でも今回三泊、さらにあお用の荷物もある。持っているリュックは普通サイズ。そんなに荷物は入らない。(大きなモノを買うしかないか)また散財......としょげながらもアウトドアグッズの店に行った。

「とにかく荷物がたくさん入るリュックが欲しいのですが......」
「登山か何かですか?」
『犬と新幹線に乗ります』とは言えず、
「ええ、まあそんなところです」と、あやふやに答えた。

「ではこちらはいかがですか?」

 勧められたのはエベレストに登る人が背負っているようなリュックだった。縦に長くて荷物がたくさん入りそうである。かなり大げさだが、大は小を兼ねるで、小さいよりはいいかも。

「背負ってみますか?」

 試してみた。

「このリュックは使う人に合わせて中の骨組みを曲げて、カラダにフィットさせるタイプなので......、ちょっと背筋を伸ばしていただけますか......」

 カラダにフィットするように調整してもらうと、確かに背負いやすい。でも思った。お前はこれを背負ってどこに行くんだ!?と。

「こちらのリュックは本格的な登山でも使えますし......」

(いえ、犬と新幹線に乗るだけです......)
 心の中でつぶやきながら、この大げさなリュックを購入した。これで、僕とあおと、もうひとりの飼育員の荷物も少しは入るだろう。

 バッグは手に入った。自分の荷物の量はなんとなくわかるので、あお用の荷物をリストアップ。フード、食器、新幹線の中でクレートの扉越しに使える給水器、タオル、ウエットティッシュ、遊び慣れているおもちゃ、抜け毛防止用に服、トイレシートは向こうで買うとして、あと何か忘れているような......。

 忘れていた。サークルどうしよう......。

 この頃あおはまだ1日の半分ぐらいはサークル生活。でも家で使っているものは組立て式とはいえ、重過ぎて持って行くことはできない。

クレート前で睡魔に負け倒れ寝するあお

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頭だけ入れたところで睡魔に負けたあお

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うっかりクレートの上に乗ってしまい降りられなくなったあお

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 カンタンに持ち運べるサークルが欲しい。またもネット検索!あった!これなら肩に掛けて持てる!購入。また散財。

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 収納バッグから出して、広げていくと......

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 こうなる。

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 こうして装備は整った。

 あおの荷物と僕の着替えなどで、大きなリュックなのにけっこうパンパン。 (旅慣れていないので、着替えを余分に入れてしまうのも原因)

 リュックを背負い、肩には組み立て式サークルをかけ、あおをクレートに入れて両手持ちで運ぶ。重い!そして持つところがほとんどない!

クレートの横・持つところは......

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幅が狭い

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裏側。へりが薄くなっていて指に食い込む

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 自宅から駅まではタクシーで。車内でもあおは静かだった。

 品川駅に到着。改札を通り中へ。あおの料金を払う窓口の場所を聞き、きっと念入りにサイズを測られるのだろうと思ってクレートを運んだが、窓口越しにチラッと「はい」と、あっさりOKをもらって280円を払った。

※この札をクレートのハンドルにつけた

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 発車時間までは休憩室で待機。クレートにはあお落ち着くようにタオルをかけた。

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 発車時間の10分前にホームへ。初めて聞く新幹線の走行音。怖がるかもしれないなぁ......大丈夫かな......と少し心配したが、あおはすっかり旅気分、クレートの中をのぞくと、顔が明るい!ワクワクしちゃってる!

※撮影のため、わざとポツンと置きました

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 8:30ホームに新幹線が滑り込む。あおが乗ったクレートと共に車内へ移動。いよいよ2時間弱の新幹線の旅の始まりだ。

 クレートは我々の足元。横向きに置く。最前列で前にシートがないので、他の席より若干足元が広いのでギリギリ置けた。でも足はまっすぐ降ろせないので、もうひとりの飼育員は上手くずらしながら乗っていた。

 さあ、あおはおとなしくしていられるか?あまり吠えたりしないタイプ。さほど心配はしていなかったが、ワンワン言い出したらデッキに出るしかないな......と覚悟していた。けれどクレートから出すことはできないので、どうやってなだめればいいのか......。そうなった時用のオヤツ、おもちゃなども用意していた。

 クレートには、あおも落ち着けるだうと、休憩室と同じようにタオルをかけた。しばらくして様子を見てみた。あおの反応は......。

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 寝てるー!大物――!

 その後もあおは吠えることなく、クレートの中で出たい出たい暴れることもなく、到着する少し前に小さく「ク〜ン」と2回言っただけで、あとはずっと静かに新幹線に揺られていた。

 クレートでの長時間移動。途中、外には出られない。もし吠えたらどうしよう、もし「小」しちゃったらどうしよう、もし酔っちゃたらどうしよう......いろんな"どうしよう"が出発前には浮かんでは消えていたのだが、そんな心配は必要なかった。

「あおはもう仔犬じゃない、オトナだ」

実家に到着

 駅からクルマで10分ほどで、もうひとりの飼育員が生まれ育った場所についた。

実家の前を歩く、あおともうひとりの飼育員(※火星ではない)

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 家にあがると、なぜかバランスボールが転がっていた。こんな大きなボールは初めて。あおがじっと見ている......。
(マズい。いや、あおはもうオトナだ。大丈夫......)

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 と、思ったのに!かじった!!即、破れた......。

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「すみません!」

 もうひとりの飼育員の父は「テープでも貼っときゃいいら」と言ってくれた。

 そんな中、あおは家の中の調査を開始。クンクンやりながらあちこち移動し始めたので、もうひとりの飼育員が付き添った。廊下、居間、畳の部屋、そして奥の洋間に入ってしばらくすると、彼女の「わーーー!」という声が聞こえた。

 駆けつけると、なんとあおは敷いてあった絨毯の上でいきなり"小"!!

「え〜〜トイレの失敗なくなってたのに〜」

 あお、まさかのミスしょん!この頃のあおはまだ部屋の中のトイレシートで"小"も"大"もできていた。我が家にはないフカフカの絨毯......もしかしたらその踏んだ感じがトイレシートと似ていたのかもしれない。さらにあおは顔には出してはいかなったが、見知らぬ家に連れてこられて、内心かなり混乱していたのかもしれない。ここどこ?と、わけがわからなくなっていたところに、フカフカがあって、思わずシャー。来て早々に大惨事!

 なのにもうひとりの飼育員の母も寛大で、動揺も激怒もせず、「ごめんねあおちゃん、まぎらわしくて」と、反対にあおに謝っていた。
(お義父さんお義母さんすみませんーーー)

 これにはさすがの、もうひとりの飼育員もちょっと凹んでいた。
「もう大丈夫だと思ってたのに......」

 ちなみに、夜、持っていった折りたたみ式サークルを広げてあおを入れようとしが、怖がって入らず、強制的に入れると「出して!出して!出して!」と暴れ続けるので即撤収となった。家で、クレートに慣れる練習をしなかったことが敗因だ。(そもそもそんな練習が必要だと思っていなかった)。

2年後のリトライ。オヤツでなんとかクリア!

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 その夜。あおはいつも寝ているクレートにすら入らず、僕らの近くで丸くなって眠った。あおがクレート以外で夜を過ごすのは初めてだった。きっと知らない場所でひとりになるのが不安だったのだと思う。

 今になって思う。どうしてあの時、我々はあおを連れて行こうと思えたのだろう?もう新幹線にだって乗れると、思っていたのはなぜだろう?

 生後5カ月のパピー、まだ乳歯も残っている頃である。今だったら「5カ月でしょ、まだ早いよ」と、多分言ってしまう。でもあの時はそう思わなかった。あおはもうオトナだと思っていた。

 なぜか?思い返してみる。

 あの頃、一日がとても長く感じた。多分我々が、あおの成長に常に寄り添って生きていたからだと思う。みるみる成長していくあおの一日は、我々にとって一週間ぐらいの感覚だ。一日にいろんなことがありすぎて、ありすぎて......。

 あの頃、毎月あおの誕生日がやって来た。うちに来て6日目。最初に祝った誕生日。
「9月21日。おめでとう!あお2カ月!体重1.6kg!」

 そして翌月。
「10月21日。あお3カ月!体重2.75kg!」

 毎月祝った。あおの年齢は月単位だった。
「11月21日、やっと4カ月!」
「12月21日、ついに5カ月!」

 5年経っていた感覚とは言わないが、あおはもうオトナになったと思っていたのだ。

 今思う。5カ月だったあおは、まだ5カ月なのに静かに新幹線に揺られ、まだ5カ月なのに初めての家に泊まり、初めて会う人にも、「あおちゃん怖いー!あっち行って!」と、大して怖くもないけど雰囲気で叫び怖がる4歳児に時々邪険にされても、怯えもせず、吠えることもなく、あおは立派に家族の一員として、生まれて初めての正月を迎えた。

 今、改めて思う。

 あお、お前偉かったな!

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もう一人の飼育員の父と母とあお

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茶畑さんぽ

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初・年越しワンこそばもこのあと完食!

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もう一人の飼育員の姪っ子大好き(拒否されても負けずに近寄る)

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顔にひっつきむし!(初体験)

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本人まったく気にせず笑顔

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「外、たのしーい!」

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『柴犬生活漂流記』おわり。

次回『柴犬生活航海記』へと、つづく。

◎プロフィール

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舘川範雄 (たてかわ のりお)
1966年9月19日生まれ。1987年4月から作家活動に入る。
「コサキン」「SMAPxSMAP」「ポンキッキーズ」「スクール革命!」などテレビ、ラジオで多数の番組構成を担当。また関根勤主宰「カンコンキンシアター」の他、オリジナルコメディーやミュージカルの作・演出など、活動は多岐にわたる。
インスタグラム(ao20150721)で白柴「あお」が毎日、犬の目線で日々の出来事を投稿中! 

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