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2018.04.20

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コントみたいな犬との暮らし【柴犬生活漂流記 vol.25】

あおゴコロ、いろいろ

2015年・秋。「あお」と名付けた柴の仔犬を迎え入れ、生まれて初めて「犬の飼育員」となった「僕」と「もうひとり」。あおのココロは思った以上に繊細で複雑だった......。

#Activity / #Lifestyle

Author :写真・文=舘川範雄 協力=(株)浅井企画

あおの庭

 家のそばにある広い公園。あおが来る前はたまに散歩で"通り抜ける"ぐらいだった場所が、今では毎日1時間以上も滞在し、夏の早朝散歩の頃は、開門時間を扉の前で待つほどの場所となっているから不思議だ。

 この公園はあおの公園デビューの場所。その時、まだ4カ月だったあおを優しく迎え入れてくれた飼い主さんと犬たちが、現在のあおの生活には欠かせない存在となっている。他の公園にも足を伸ばすことはあるが、ほぼ毎日会えるのは、このいつもの公園のメンバーである。

 時々、もしかして家よりも居心地のいい場所なのかも......と思うほど、あおはこの公園にいたがる。誰よりも早く来て、誰よりも遅く帰る。タイムアップで抱っこ強制退場も珍しくない。

公園デビューの日。みんなのチェックを受けるあお

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白柴の先輩ジロちゃんに嗅がれながら
トイプードルのルネくんを嗅ごうとするあお

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そして初対面でいきなり甘える

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 そんな大好きな「いつもの公園」なのに、あおが突然「わたし行きたくない!」と拒否した時があった。

 その日、公園に着くと、あおはいきなり中に入らず、反対方向へグイグイ進み始めた。公園の中をのぞくと、いつものメンバーがいた。(今日は別の公園に行きたい気分なのかな?)と、深く考えずに、別の公園に行ったのだが、帰りがけにさっき公園でその姿を確認した『いつもの公園オールスターズ』とばったり会った。

「あおやった!会えたぞ!」と、好きな芸能人に偶然会えたファンのように盛り上がったのだが、見るとあおは無反応。

(遠いから認識できないのかな?)と思いながらリードを引いて、みんなのところへ駆け寄った。『いつもの公園オールスターズ』は「あ!あおちゃん!!」と喜んでくれたのだが、あおは、いつもハイテンションで犬と飼い主さん全員に挨拶するのに、見向きもせずにグイグイと家の方に僕を引っ張り始めた。僕も『いつもの公園オールスターズ』のメンバーも「え????」。

 あおはさらに首が取れそうになるぐらいの力で「ここにいたくない!帰る!帰る!!」とその場から逃げるよう立ち去った。

いつもはこんな感じで輪の中にいる

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 まるで、別れた恋人と街でばったり会い、気まずくてこっそり逃げるような、そんな感じ。

 元々、個人行動が多いタイプだったが、まさか急に犬嫌いに? 心配になって、犬の幼稚園「ドギーステップ」のトレーナー川野輪さんに相談した。


川野輪さん:「人と同じように、犬にも仲間と交わるのが面倒に感じることがありますよ。きっとあおちゃんは、その時、そうだったのかもしれませんね」

 犬も、人と同じように仲間と交わるのが面倒に感じることがある?!驚いた。

 確かにあおは公園にみんながいても、気がつくとひとりになっていることがけっこうあった。その気持ち、なんとなくわかる。(誰とでもすぐに仲良くなるタイプの"もうひとりの飼育員"に「そういうところ似てるよね」とよく言われる)一匹狼とまではいかないが、一人遊びも好きなあおは、その時の気分でみんなと付かず離れず、付き合っているところがあった。

ドッグランでもよく、こんな感じでポツン......

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みんなと遊んでいても

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ふと見るとこんな顔

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川野輪さん:「犬の付き合い方は和犬と洋犬でも違います。洋犬は比較的、誰にぐいぐい来られても『やあ!こんにちは!』とおおらかでいられる犬が多いですが、和犬は、そこまで近くにこられると『ちょっと......』と引いてしまう犬が多いんです。あおちゃん、人に対しては洋犬並みのフレンドリーさでいきますけど、犬に対しては"The和犬"ですからね」

 好きな人と会った瞬間、前足かけてピョン!しゃがんでかまってくれる人には、顔めがけてジャンプしてペロペロペロ!! ラテン系の熱烈アプローチをするくせに、犬同士だと、洋犬の明るいノリがちょっと苦手らしい。

 犬にグイグイ来られた時、あおは相手に「やめて......これ以上こないで......これ以上きたら私、いくからね!」と警告を出しているらしい。しかし洋犬の多くはそんなことなど気にせずに「やあ俺はジョン!よろしく!」みたいなノリで、あおが苦手とする「顔への接近」をしてくる。警告を出しつつ、あおは一応我慢をするが、あまりにしつこいと、ある瞬間プチんとキレて「あんたウザい!」と「ガウっ!」といくらしい。

グイグイ来られるの苦手......

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※あおの警告顔(おそらく)

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 こういう場合、あおが悪いわけではなくあおのサインを見落とす、または無視する相手の犬が悪いと川野輪さんは言ってくれたが、その犬の飼い主さんには、あおが攻撃をしかけたという事実だけが残るので、気をつけなくてはいけないと言われた。確かに飼い主さんは、あおが警告を出していることなんて多分わからない。僕にすら、あおの警告はわからないことの方が多い。なのであおが『ガウッ!』とやれば、相手に「わ!怖い!!」「柴って危ないのよね......」と言われてしまうのがオチだ。

こういう目になった時も要注意

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(※ちなみにこの時の相手はルンバ)

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 洋犬だけでなく、和犬同士でも「なんか気に食わない」的な感じで衝突することも少なくなく、散歩中に会う、"はじめまして"の犬とどう接すればいいのか、実は悩んでいた。

 1歳を越えた頃から初対面の犬との挨拶がうまくできなくなってきた。川野輪さんには「それがあおちゃんの個性として受け入れていい範囲だと思いますよ」と言われていたが、かつてどこに行っても初対面だろうとなんだろうと上手に挨拶ができていて、「おとなしいわね」「まだ1歳になってないの?落ち着いてていい子ね」と言われてこちらも鼻高々。

 よく川野輪さんに自慢気に報告して「これからもドギーステップの生徒代表としていろんな公園を回りますよ」などとほざいていた、あの頃が懐かしく恥ずかしい......。

僕:「どうしてあおはガウっといくんですかね?」

 川野輪さんの答えはひとつ。

川野輪さん:「飼い主のリーダーシップが足りないんです」
(またそれですかー......ですよねー)

足りてないことは自覚している。でもどう不足しているのか具体的に聞かないと、わからなくなっていた。

川野輪さん:「あおちゃんが安心するリーダーになってください」

 技術だけではない、メンタル部分も合わせて「犬が安心するリーダー」になるためにはどうすればいいのか?

 第一に指摘されたのは
「犬とすれ違う時(挨拶する時)、あおちゃん主導になっていませんか?」
 つまり、あおが「わたし行く!」と、自分の意志で犬に近づいている時点で、我々飼育員のリーダーシップは失効しているらしい。

川野輪さん:「行くか行かないかは人が決めます」
(そうしなくちゃいけないことはわかっているんです。でも、あおが先にグイグイ行くんです......)

川野輪さん:「まず犬と会った時に、あおちゃんが前に出ているのがダメです」

 犬と会う時、あおが我々よりも後ろにいれば、それでまず安心するのだという。そして、犬同士を近づける時は人間が「行こう」と決めてから。

川野輪さん:「でもすれ違う犬すべてに、無理に挨拶させる必要はありません。とにかく自分の犬の様子を見て判断してください」

僕:「犬と会って、警戒し始めたなと思ったら、何かで犬は胸のあたりを撫でられると落ち着くと読んだのでそうしているんですが、これは......」

川野輪さん:「ダメですね」

 あっさり却下。

川野輪さん:「例えば動物病院で犬が怯えている時に『大丈夫』と励ます飼い主さんがいますが、吠えたり怖がったりしている時に『大丈夫だよ』と体をなでることで、犬はその状態が良いことだと思ってしまう場合があります」

 なるほどー。聞かないとわからないことばっかり。
 さらに川野輪さんはリードを上に引くだけで"オスワリ"の指示を出す方法も教えてくれた。

僕:「そんなことできるんでしったっけ?」

川野輪さん:「リードを一瞬、パッと引き上げることで、あおちゃんにはオスワリの指示が伝わります。そんなに強くなくていいです。人でいうと、腕を掴んでちょっと引く感じ。ちょっとやってみましょう」

 いきなり実技教習となった。あおにリードをつける。あおは「は?なに始めるの?」みたいな顔。

僕:「やりまーす!」

 リードをパッと上に引き上げると、おー!!何も言ってないのにオスワリした!!さすがドギーステップ仕込みー!なんだ簡単!(早く言ってよ川野輪さ〜ん!)と、喜んでいたら「今は落ち着いている環境なので、まあできますけどね」とあっさり言われた。

 けれど、このミニ教習で、今までよくわかっていなかった「リーダーシップのメンタル」が、少し理解できた。

『お前が気にしなくていい。俺がいるから安心しな』を、どこまであおに伝えられるか......。

 これからは犬に会った時、
「あおは後ろ。行く時は人が誘導。リードは張らずに」
または
「その場にオスワリさせて『マテ』でスルー」
で、行こうと心に決めた。

 教室からの帰り道。向こうから会ったことのない犬がやって来た。あおは早くもリードを強く引き始めている。
(出たよ......)

 まだけっこう離れているのに、あおの様子は「ガウっ」といく気マンマンのように見える。よしここだ! あおの目の前に立ち、人差し指を出す。

「あお、オスワリ!」

 しかし、あおは僕の指をチラリとも見ることなく、こちらに向かってくる犬から目を離さない。

 あれ?話が違うぞ......もう一度言う。

「あお、オスワリ!」

 あおの耳に僕の声は入っているはず。なのに思いっきり無視!!
ココロの中で手紙を出した。

『拝啓 川野輪さん、考えてみたら、僕の指示を聞くような犬なら、最初からほかの犬にガウガウいくはずありません......』

 臨戦態勢に入っている時、あおは一緒にいる僕を、飼育員どころか、なんとも思っていないのだ。

 どうする?オスワリ、マテできないぞ。
 様子を見るしかない。大丈夫か〜?マズい、僕の緊張があおに伝わる。川野輪さんはこうも言っていた......。

『すれ違う犬に自分の犬が飛びかかりそうな時は犬と犬の間に入ってください。その時、リードはピンと張らないようにします。人の方も、飛びかかって行かないようについリードを自分の方に引いてしまいがちですが、飼い主の緊張が犬に伝わるだけでなく、リードが張られて自由に動けなくなっていることでフラストレーションが溜まり、逆に興奮が高まってしまいます。ドッグランなどで、ノーリードでいる犬同士だとあまりケンカにならないのは、お互いにいつでも自由に動ける=逃げられる、立ち向かえるという安心できる状態だからです』

 落ち着いて、あおの表情を見ながら、リードを緩めて持ち、リラックスした空気を漂わせながら、いざガウっといったら素早くリードを引いて止めよう......でもあおの表情を見るにはしゃがむしかないから、普段しないそんなことで、あおに緊張が伝わってしまうかも!どうしよう......。うわべで落ち着いたように見せても、あおにはバレる。

 この時僕は以前、川野輪さんに教わっていた「深呼吸」をしていなかった。プロである川野輪さんも、犬と接する前にはするという「深呼吸」。僕はなぜその時深呼吸をしなかったのか?!それは、すっかり忘れていたからである!(絶対にプロになれない)

 この時ははっきり言って心理的・過呼吸。

 その間に、相手の犬はずんずん近づいてくる、リードを緩めていたいが、でも、でも、あおが、あおが前へ......前へーー!!

「ガウガウガウ!!」

 行くな行くな行くな!!リードを引いてあおが飛びかかろうとするのを止める。あー、またこうなってしまったーー。

 向こうの犬の飼い主さん(男性)と犬は、ガウガウやっているあおを横目で見ながら通り過ぎていった......。
(そしてその目は"人も犬も"呆れていた)

 2歳までに高まると言われた警戒心。とはいえ、川野輪さんと散歩する時は、やってくる犬に対してガウッといくことはまったくないらしい。これまた、あおの問題ではなく連れている人の問題なのだ......。あおよ、人によって散歩の態度を変えるのは、いいかげんやめてください......。

 そして洋犬並みとははいかなくても、いつも人にやっているみたいに、
「こんにちは!わたしあおです!あなたは?!」
 と、友好的な態度で触れ合ってもらいたいものである。

(だってあおー、小さい頃はやれてたぜ)

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(つづく)

◎プロフィール

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舘川範雄 (たてかわ のりお)
1966年9月19日生まれ。1987年4月から作家活動に入る。
「コサキン」「SMAPxSMAP」「ポンキッキーズ」「スクール革命!」などテレビ、ラジオで多数の番組構成を担当。また関根勤主宰「カンコンキンシアター」の他、オリジナルコメディーやミュージカルの作・演出など、活動は多岐にわたる。
インスタグラム(ao20150721)で白柴「あお」が毎日、犬の目線で日々の出来事を投稿中! 

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