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2018.04.02

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トレーナー直伝!愛犬との暮らしに役立つワンポイントアドバイス vol.13

ブリーディングを考える

こんにちは。ドッグトレーニングインストラクターの三井です。今日は犬のブリーディングについて少しお話してみたいと思います。

#Activity / #Lifestyle

Author :写真・文=三井 惇

ブリーダーとは

 犬を家族として迎えようと考えた時、母の時代では「知り合いのところで生まれた子犬をもらってくる」ということが多く、私の子どもの頃に「『愛犬の友』という雑誌で繁殖者(ブリーダー)の広告を見て電話をかける」という方法が新たに加わり、私が成人してから迎えた犬も『愛犬の友』の広告で探した犬でした。

 そして時代は変わり、今はインターネットでブリーダーを探したり、ペットショップに並んでいる中から子犬を選んだり、あるいは保護された野犬や遺棄されて飼い主を失った犬たちを行政や愛護団体経由で引き取るといった選択肢が用意されるようになりました。また、保護犬の中には、「ブリーダー崩壊」という理由で保護された犬たちが含まれることも。ここでは、ブリーダーについて考えてみたいと思います。

 そもそも、ブリーダーとはなんなのでしょうか。
 当然のことながら、犬には姿かたちや特性を長い間受け継いできた犬種が存在します。もちろん、それらは人間によって作り出されたものではありますが、牧羊犬、猟犬、護衛犬といった作業犬や愛玩犬などなど、それぞれの目的(用途)に合った犬種があります。ブリーダーにはこれらの個々の犬種のスタンダード(標準)を守り、次の世代に受け継いでいくと言う使命があります。そこでブリーディングする際には、スタンダードの犬で、かつ犬種特有の遺伝的疾患などを発症しないことを調べてから交配を行うことが最低限のモラルとなります。つまり、健康で、その犬種のスタンダードを守っている犬たちを残していくという義務があるわけです。

 ブリーダーと言われる人たちの中には一つの犬種に特化している人もいれば、多犬種を取り扱っている人もいます。いずれにしても取り扱っている犬種に対する知識は一般の飼い主より豊富でなければ信頼できません。その犬種をこよなく愛しているからこそ育てられるものであり、商品(物)と考えてしまえば、犬の福祉は守られなくなるでしょう。

 例えば、人気が出てきたからたくさん繁殖させて儲けようと思えば、母犬の健康は損なわれ、結果的に健康で気質のいい子は生まれてきません。限られたスペースで多くの犬を飼育しようとすれば、当然のことながら過密化し、スペース的にも自由な行動は制限されてしまい、鶏のブロイラーのような環境になってしまうでしょう。

 親犬が自由に動き回れるスペースがあり、運動ができ、他の犬たちとの接触による社会性を兼ね備えることができる。それが、ブリーダーが持つべき最低限の環境ではないでしょうか。

 そして、元気に生まれた子犬たちが、晴れて新しい家族の元に旅立つとなれば、ブリーダーとしてはかわいい子どもを嫁がせるのと同じで幸せになって欲しいと思うのが親心。そうなると、お金を払ってくれるなら誰でもいいと言うわけにはいきません。犬飼い初心者であれば、犬種の特性だけでなく、犬の飼い方から伝授します。そうでなければ子犬が幸せになれないからです。もちろんその後のサポートもブリーダーは厭いません。

 時には家族会を開いて、自分の犬舎から育った犬たちを所有するオーナーたちの意見交換の場を設けたり、トレーニングの相談会を開いたりとさまざまなサポートをしてくれます。万が一行先が決まらなかった場合は、自分が最後まで面倒見るつもりでいなければなりません。そのために、欧州のブリーダーの多くは、希望者から予約が入ってから交配させるというのが慣例になっています。ですから、子犬が欲しいと思ったらまずブリーダーを探すところから始め、実際手元に来るのは数か月先と言うスパンで考えることになるのです。ブリーダーの仕事はとても大変なものなのです。

ブリーディングとは?

 ブリーダーが犬を繁殖しようとする場合、一番に考えなくてはならないのは生まれてくる子犬の健康ではないでしょうか。そのためには両親犬がどんな犬かということが大事なポイントになります。気質に問題があったり、健康上問題があったりする犬を交配に使えば、生まれてくる子犬の中にその因子は当然受け継がれていきます。初めからわかっているならば、好ましくない因子を持つ犬のブリーディングには、リスクを伴うことを理解しておかなくてはいけないでしょう。

 そこでブリーダーは交配させる時も、両親犬それぞれを確認し、近親交配※にならないよう、交配によって好ましくない因子が引き継がれないようにと、最大限の努力をして交配させます。犬種によっては「毛色」が問題になる場合もあります。例えば珍しい毛色の「マール(霜降りのような混ざり合った色)」の子犬が欲しいからと、マール同士を交配させてしまうと、聴覚に障害のある犬が生まれる確率が高くなります。また、両親犬だけでなく、両親犬の親犬のことも念頭に入れなければならないこともあります。なぜなら隔世遺伝も起こるからです。
(※この場合の近親交配は兄弟姉妹だったり親子だったりというごく近い交配をいいます)

 知人の家では、ブラック&ホワイトのボーダーコリーの両親犬から、レッドアンドホワイトばかりの子犬が生まれたことがあります。なぜなら両親犬のどちらかがレッドの因子を受け継いでいたからです。ブリーダーはその犬種のことを勉強するだけでなく、遺伝学的な知識も備えていなければ、正しいブリーディングをすることはできないのです。

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幸い元気に生まれてくれた我が家の5頭

「犬は安産」と昔から言われ、人間が出産前に使用する腹帯も「犬印」などと言われるほどです。すべての子犬が元気に生まれてくるのが当たり前だと思われがちですが、実際は違います。犬種によっては帝王切開でなければ出産できない犬もいます。私は我が家での出産もふくめ、数回犬の出産に立ち会いましたが、残念な結果に遭遇したこともあります。娘のようにかわいがっている愛犬が出産で頑張り、生まれた子犬たちを一生懸命育てている姿を見ると、環境が整えばまたブリーディングをしてみたいと思ってしまいますが、生半可な気持ちではやるべきではないでしょう。

血統書の意味

「血統書付の犬」と言われると、とても高価な感じがしますが、実はそうではありません。血統書は単にその犬の家系図です。もちろん各国のケネルクラブが発行するものですので、発行自体に費用はかかりますが、内容としては、その犬の氏素性、もしドッグショーやトレーニングにおいて優秀な成績を修めていれば、そのタイトルも記載されます。もちろん所有者の名前も記載されていますので、自分の犬だと主張することができます。

 子犬の広告に「チャンピオン直子」と書かれている場合、その犬はドッグショーで優秀と評価されてポイントを取得したことでチャンピオンになった犬の子犬だということです。その場合、子犬の両親犬のどちらか、あるいは両方に「CH」が記載されています。チャンピオンも日本国内のチャンピオンなのか、インターナショナルなのかでグレードは異なりますが、いずれにしても、ドッグショーに出て評価された犬であることに違いありません。また、「T.CH」や「G.T.CH」のようなものが付いている場合は、トレーニング性能の評価を得て、トレーニングチャンピオン、あるいはグランドトレーニングチャンピオンというタイトルを持っていることを証明しています。見た目も美しく、トレーニング性能も高い犬となれば、それなりにブリーダーであるオーナーさんが手塩にかけて育ててきたと言う証明にもなるでしょう。

 ブリーダーさんとの関わりが少ない飼い主さんの場合は、血統書を見ながら、インターネットで愛犬の親戚犬を探す人もいます。もちろんブリーダーでなくても、知り合いから「〇〇ちゃんの子どもが欲しいわ」と言われて交配を考える人はいるでしょう。そんなときも、血統書があれば、まかり間違って血の濃い犬をお相手に選ぶことを避けることができます。血統書があることで、犬の価値が変わるわけではありませんが、血統書があることで、その犬の両親犬や祖父母犬がわかり、系図を知ることができるわけです。

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血統書は愛犬の家系図

ブリーダーは儲からない

 さて、「ブリーダーとは」でも少し書きましたが、ブリーディングに際し、母犬の健康を考えると、1頭の母犬を1年半から2年ごとに繁殖をさせたとしても、生まれてくる犬の頭数を考えれば儲かる仕事ではないと言うことがわかるでしょう。

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離乳期になると母犬は大きくなってきた子どもたちに追いかけられて大変です

 犬の妊娠期間はおよそ63日。出産後離乳が始まるのがおよそ1カ月、そして新しい家族の元に旅立てるようになるまで更に1カ月。その間、母犬や兄弟姉妹犬たちとしっかり犬としての行動を身に付けさせながら、人間への愛着を育て、加えて環境刺激に慣らす社会化もさせるとなると、ブリーダーの仕事はとても忙しいものです。

 さらに、先ほど血統書の話しにもありましたが、チャンピオンにするためにはお金がかかります。ドッグショーにしても、トレーニングの競技会にしても、出陳するだけで数千円から10,000円ぐらい費用がかかります。もちろん1回いい成績を修めただけではチャンピオンにはなれないので、何回も出陳することになります。チャンピオン犬から生まれた子犬として付加価値をつけることは可能でしょうが、そんなことは全く気にしない一般の飼い主さんもたくさんいらっしゃいます。「チャンピオンでなくても、性格がよければいいわ」とか、「トレーニング性能がよくなくても、健康ならばいいわ」など、一般の家庭犬であれば当然のこととも言えるでしょう。それでも、スタンダードを守るため、愛犬の良い血を繋いでいくことがブリーダーの役目です。犬を一番に考えるブリーダーこそが、信頼できるブリーダーと言えるでしょう。本当に犬のことが好きでなければ続けられませんね。

おわりに

 初めに書きましたが、犬を家族に迎える方法はさまざまですが、15年前後共に暮らすことを考えて、時間をかけて選ぶということも大事です。もしチャンスがあるのでしたら親犬(母犬)に会ってみましょう。犬を飼うと言うことが少しずつ現実味を帯びてくるに違いありません。もちろん、縁を感じて迎え入れることもあるでしょう。どんな場合であっても、きちんと納得したうえで同居生活が始まれば、安易に手放すこともなくなるはずです。

 これから犬を迎えようと思っている方々には、いい出会いを探してほしいと思います。

◎プロフィール

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三井 惇
CPDT-KA(国際資格)ドッグトレーニングインストラクター。1997年に迎えたボーダーコリーと始めたオビディエンス(服従訓練)をきっかけに、犬の行動学や学習理論を学ぶ。2004年にドッグダンスをと出会ってその奥の深さに魅了され、愛犬家に広めたいと2006年からインストラクターとしてドッグダンスを教え始める。自身も一競技者として、オビディエンスやドッグダンスの競技会に参加。

●ブログ: Dance with Dogs
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●主な著書:『ニコルとドッグダンス』/エー・ディー・サマーズ

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