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2018.04.18

「いたずら」は飼い主の対応次第<前編>

モノをくわえたり壊したり......これって嫌がらせ?

荒田明香 東京大学 大学院農学生命科学研究科

「またいたずらして!」と飼い主が思っている行動をするとき、愛犬はどんな気持ちなのでしょうか。犬のいたずらと子どものいたずらは、似ている部分と、少し違う部分があります。似ているのは、親(飼い主)の気を引こうとしている点。違うのは、子どもは悪いこととわかっている場合もあるのに対して、犬は道徳的な善悪をわかっていない点です。今回は、モノを壊したりくわえたりといった愛犬のいたずらについて、動物行動学の視点から見た原因や対策を、東京大学の特任助教・荒田明香先生に聞きました。2回に分けてお送りします。

写真=大浦真吾 文=山賀沙耶

#しつけ

いたずらをする理由の多くは、飼い主が好きだから

 あなたが何かの拍子にスリッパを脱いだとき、愛犬がそのスリッパをくわえて遊び始めたとしたら、「オモチャも与えているのに、わざわざスリッパをくわえていくなんて、嫌がらせに違いない!」と思うかもしれない。
 ところが、愛犬にとってどれがくわえてもいいオモチャで、どれがいけないモノなのか区別することは難しい。単に、自分のオモチャをくわえるよりも、スリッパをくわえたほうが飼い主の注目が得られるから、スリッパのほうを選んでいるということは少なくない。

「愛犬のいたずらとは、問題行動=飼い主にとって困る行動ではあるかもしれませんが、動物としては異常な行動ではなく、何かをくわえたい、噛みたい、あるいは人とコミュニケーションを取りたいという欲求に基づく正常な行動と言えます。例えて言うなら、好きな子にちょっかいを出す小学生男子と同じ。決して飼い主をこらしめたいわけではなく、飼い主のことが好きだからやる。だから、人とのコミュニケーションを求める犬ほど、いたずらをするんですよね」
 と、東京大学の特任助教である、荒田明香先生は話す。

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 犬たちがいたずらをする理由の大半が、実は飼い主の注目を集めるためなのだ。愛犬がいたずらばかりして困っている飼い主は、「悪さばかりして!」と思う前に、まずはその背景にある愛犬の気持ちを想像してみよう。

いたずらを繰り返す理由の多くは、飼い主が反応するから

 それでは、愛犬がいたずらを繰り返すメカニズムを、下の図で確認してみよう。

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 このメカニズムは、基本的に誤飲のときと同じ。愛犬がいたずらを繰り返している大きな要因は、愛犬がいたずらをした後の飼い主の反応だ。

 上の図に当てはめたとき、③の「行動」がオモチャを噛むことだった場合、その行動に対して飼い主が何も関心を示さなければ、④の「報酬」はオモチャを噛むのが楽しい、ということだけになる。ところが、③がオモチャ以外のモノを噛むことの場合、④は噛む楽しさに加え、飼い主の注目まで獲得できることが多いため、より多くの報酬が得られる可能性が高い。つまり、オモチャ以外のモノはオモチャよりも価値が上がることになるのだ。

 また、愛犬がいたずらしたときは叱っているから、報酬にはなっていないと思う飼い主もいるかもしれない。しかし、叱られて嫌だと感じるか、さっきまで無視されていたのに注目してくれたと感じるかは、犬次第だ。子どもの教育分野などでも広まりつつある応用行動分析学では、ある行動が増えている場合、その行動を示した直後に何らかの状況変化があり、それが行動増加の原因と考える。愛犬がいたずらした直後に起きる飼い主の何らかの反応が、その状況変化に該当する可能性もある。特に、留守番中のように飼い主の注目を得られない状況ではいたずらをしない場合には、いたずらを繰り返す原因は飼い主の反応であると推測できる。
 飼い主はいたずらをやめさせるために愛犬を叱っているわけだが、このような悪循環になっていることも少なくないのだ。

大事なモノほどいたずらされるワケ

 実際、どんなモノがいたずらの対象になりやすいのだろうか。ここでは、モノをくわえる、かじる、破壊するなどの行動を「いたずら」と定義して、話を進める。

「いたずらのターゲットになりやすいのは、素材で言えば、噛み心地のいいクッションやカーペットなどの布製品、椅子の脚や棚などの木製品の他、キッチンのゴミ箱などの食べ物関係。スリッパやリモコン、スマホなど、愛犬の届く範囲に置いてある持ってきやすいモノも、よく狙われます。その他、いたずらされないよう飼い主が大事に管理しているモノを、ふとしまい忘れていたりすると、珍しい物好きの犬たちの餌食になってしまうこともあります」

 特に子犬のころは、生え変わりで歯がかゆいのもあるだろうが、好奇心が強いため、とりあえず何でも口に入れて確認しようとする行動が見られる。この時期に、いたずらをすれば飼い主の注目を集められると学習すると、同じようないたずらを繰り返すようになってしまう。

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 また、実はいたずらの起きやすいシチュエーションというのは、たいてい決まっている。時間帯で言えば、飼い主は夕飯の準備で忙しく、愛犬は昼寝から覚めて元気な、夕飯前など。朝起きてすぐの散歩前などでは、いたずら→散歩の順番になってしまい、いたずらをすれば散歩に連れていってもらえると学習しているかもしれない。

 シーンで言うと、家族みんながそろっている時間帯は、人間だけで集ってしまい、犬は放っておかれがちになるので、気を引くためにいたずらをすることがある。また、誰かが帰宅したときや散歩の前など、興奮しているときに勢いで何かをくわえてしまうこともある。

 いたずらの対象になりやすいモノと、いたずらの起きやすいシチュエーションを把握しておくだけでも、いたずらは防ぎやすくなる。愛犬の場合はどうか、普段の行動を見直してチェックしてみよう。

(2018年3月取材記事)

>>後編では、愛犬のいたずらを防ぐための具体的な対策法を解説します!

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