magazine

  1. トップページ
  2. MAGAZINE
  3. あお、落ち込む

2018.03.23

ブログ        

コントみたいな犬との暮らし【柴犬生活漂流記 vol.21】

あお、落ち込む

2015年・秋。「あお」と名付けた柴の仔犬を迎え入れ、生まれて初めて「犬の飼育員」となった「僕」と「もうひとり」。あおにとって苦手なモノのひとつ、それは「服」......。

#activity / #lifestyle

Author :写真・文=舘川範雄 協力=(株)浅井企画

服ヤダ!

 どうも柴犬は"服"が苦手らしい。レインコートを着せた途端に動かなくなるパターンも多いと聞く。あおも何かを身に付けるのが苦手だった。雨の日。レインコートを着せるまでが一苦労。おやつと交換でなんとか着てくれたが、テンションは低い。

おやつがあれば着ていることも忘れられる

180314_02.jpg

おやつが終わると気持ちが下がる(尻尾が落ちそう)

180314_03.jpg

 さらに顔が濡れるのがイヤで、三度目の雨中散歩は、降ってくる雨を玄関から見た途端、座り込んで外出を拒否したが、練習のために少しだけ歩かせたら、こんな感じだった。

180314_04.jpg
180314_05.jpg
180314_06.jpg

 レインコートを着るのは仕方ないとして、柴犬に服は必要ないという話もあるが、それでもあおに服を着せようと思ったのは、何かに書かれていた「柴犬は抜け毛が多いのでカフェや他人の家では服を着せるのが良い」というのを読んだから(いつもの安直行動)。でもそんなにしょっちゅう人の家に行くわけでもないので、着せていたのは大体シャンプーをしたあと。少しでも綺麗な状態をキープしたいという、こちらの都合だった。

 たしかに服を着せられるのは好きではなさそうだった。

大好きなカフェでも服着用だと元気なし

180314_07.jpg
180314_08.jpg

あおのココロ

 そんなあおがあの日、爆発した。

 2016年11月27日はシャンプーの翌日だった。散歩の時間となり、公園で他の犬とじゃれあったり、走り回ったりすれば確実にカラダは汚れる。ここは服だねと、"もうひとりの飼育員"が服を着せようとした。するとあおは、いつになく強く拒否。服を見るなり家中を逃げ回り、もうひとりの飼育員が強引に服を着せようとすると、ガウガウと威嚇し始めた。

(※こんな顔で)

180314_09.jpg

 さらに甘噛みではあったが、服を持つ手に噛み付いてもきた。

「あおを抱っこして!」もうひとりの飼育員に頼まれ、逃げるあおを捕まえて抱きかかえた。すると今度は僕の手にもガウガウ噛みついてきた。そしてついに、鼻に思い切りシワを寄せ、悪いグレムリン顔でもうひとりの飼育員を威嚇し始めた!

(※こんな感じ)

180314_10.jpg
180314_11.jpg

(なんだこいつ......コワイ......)
 しかしここで服を着せるのをやめてしまったら、「こうやって脅せば自分の思い通りになるんだ」「噛んだらイヤなことってなくなるんだ」と、あおにとっての勝利となる。久しぶりにあおを強く叱る時がきた。

 ひたすら噛み付いてくるあおの首輪をつかみ、強い口調で言った。

「なんでそんなことするんだ!」

 つい大きな声になってしまった。これじゃ叱るというより恫喝か?するとそれまで「ダメ!」「痛い!」と、甘噛みされた時に我々が発していたいつもの言葉を聞いても全く攻撃をやめようとしなかったあおが、その一喝で瞬時に黙った。

 よかった〜。飼育員の務め、完遂だ。

 ようやくあおはおとなしく服を着せられたが、見ると尻尾はダダ下がり。服でテンションが下がっているのではなく、どうやら強く叱られたことがショック、もしくは僕に対して「なにこの人......コワイ......」の様子。

 いかんいかん、ここは服を着たことを褒めなければ、『服=嫌なこと』とインプットされてしまう。お気に入りのおやつ、(その頃の1番、オリジンのトリーツ)を与えて褒めた。しかし口にはするが、その目は"うつろ"。

 まずい......。気分を変えさせよう。

「じゃあ仲直りに、散歩しようか!」と、声をかけてみた。いつもなら『散歩』と聞くと尻尾を振り、前足を上げて嬉しそう飛びかかってくるのだが、まさかの一切反応なし。無表情......。明らかに落ち込んでいる。

 確か犬って、すぐその前のことを忘れるんじゃなかった?いけないことをしたら即叱らなくていけないって、そうだからなんじゃないの?なのに目の前の犬、さっき叱られたことをまだ引きずってるように見えますけど......。

 まあ、散歩をすれば気分も変わるだろう......と、覇気のないあおを外に連れ出した。

 が、そのテンションは依然として下がったまま。いつもなら、家を出た瞬間、あまりの嬉しさにダッシュに近いグイグイで歩きだすのに、この時は思わず
「えーーー?!」と驚きの声をあげたくなるぐらいのトボトボ歩き。

 尻尾はあいかわらず下がったまま、おまえ牛歩戦術か!と言いたくなるぐらいのノロさで歩きながら、なんとか家から1番近い公園に到着した。

 ここはあおのお気に入りスポットのひとつ。いつもなら駆け出すのに、あおはただボーッと立っている。いつもなら、着いてすぐ隅っこの草むらへ行き「小」をするのだが、動かない。
(こいつ大丈夫か......)ちょっと心配。

 数分後、やっと広場に向かってトボトボ歩き出したが、いつもは駆け回る広場でも、またもやただただ立っている。呆然と立ち尽くしている。

(※以下、あまりに変なので撮ったがほぼ動かなかった動画より)

180314_12.jpg

 広場では親子が野球をやっていた。いつもだったら、転がるボールが気になって追いかけようとするのだが、ただ見ているだけ。
(うそ?それも追いかけないの?)

 おかしい。いつものあおじゃない。顔を見ると

180314_13.jpg

遠い目......

180314_14.jpg

そして鼻に砂利

180314_15.jpg
180314_16.jpg

 なにより異常だと感じたのは、あおの目の前、しかもものすごく近いところを数羽のハトが歩いているのに、まったくもって、無反応だったことだった。

 いつもなら10メートル先からでも、ハトがいたら飛びかかっていこうとするあおが、目の前をハトが通り過ぎているのに、ただ見ている。

(完全に心が折れとる......)

 とんでもないことになったと思った。目の前のあおは、白い抜け殻......。
(どうしよう。強く叱りすぎたか?!もしかして心療内科に連れて行かなきゃだめなのか?!そもそもあるのか?犬のそういうところ)

 次々と不安が襲ってくる。

 とりあえず「小」と「大」をさせなくては!と、公園の端っこ、誰もこない落ち葉ゾーンに連れて行こうとしたが、さすが抜け殻、動かない。

 仕方なく抱きかかえて連れていくと、「小」はするが「大」はしない。いや、しないのではなく、ぐるぐるぐるぐる回って、しようとはしているのだが、出ない、出せないように見える。しばらくして、あおは出すのを諦めた。
(精神的なストレスによる急性便秘だ......)

 そんな病名があるのかどうかは知らないが、そんなことを思いながら困った。

 どうすればいいのか?見るとあおはその場に座り込み、ただじっとしている......。抱きかかえて広場に戻り、ボールを投げてみる。いつもなら即、追いかける。でもあおは、見もしない。心、完全にここにあらず......。

 と、知らない犬がやってきた。向こうはあおに挨拶しようとやってきた。あおも、いつもなら様子を伺いつつご挨拶。

 しかしその時のあおは、その犬が近くに来た瞬間、ガウガウガウ!と歯をむき出して吠えかかった。挨拶する気マンマンでやってきたその犬は、「え?なんでいきなり?」と顔で言っている。
(完全な八つ当たりだ......)

 でも、さっきまで"白い抜け殻"だったあおが、元気にガウガウやってくれた嬉しさの方が勝って、いけないことだが心の中では「もっとやっていいぞ」と、つぶやいていた。

 とばっちりを受けた犬が去ると、あおはまた元の"白い抜け殻"に戻った。

 このままここにいてもらちが明かない......。抱きかかえ、いつも会う犬仲間がいる別の公園へ向かった。

 途中、赤柴のピーナッツと黒柴のハチを発見!この2頭とあおはとても仲がいい(ピーちゃん!ハチ!頼む、あおのテンションをあげてくれ!)。2頭のところへ駆け寄り、あおを地面におろした。飼い主のご夫婦も、あおをいつも可愛がってくれる。

「あおちゃんおはよう!」

 あおの尻尾が左右に動く。さらにピーちゃんとハチも大歓迎!あおのテンションが徐々に上がっていく。効果アリ!2人と2頭にお礼を言って別れ、公園へと向かったが、あおのテンションはまだ完全には上がりきらない。歩いては立ち止まり、歩いては立ち止まりをくり返しながら、ようやく目的の公園に到着した。

 その時いたのは、柴犬のてんこちゃん。遊んでもらってテンションが少し上がる。そのまま隅っこの枯れ葉ゾーンに移動して「小」、そして待望の「大」をした!あおの顔はさっきとは別犬のようだ。

 続いて、いつもかわいがってくれるクーちゃんの飼い主さんにおやつをもらい、テンションはさらに上がった。

(よし!ここでボール、いってみよう!)

 さっきは見もしなかったボール。投げた!あおは、全力で走り出した!!やった!戻ったー!あおに戻ったーーー!

 あとで考えてみると、確かにあおにとってはいい迷惑だった。

 勝手にシャンプーされ、カラダを汚さないようにと窮屈な服を勝手に着せられ、イヤだと言っているのに押さえられて、さらにイヤだ!と主張したら、こっぴどく叱られて......。理不尽といえば理不尽である。それについてはこちらも申し訳ないと思う。でもさ、着てよ たまには、服......。

 後日、トレーナーの川野輪さんに聞いたところ、叱り方を間違わなければ、いいとの答え。間違った叱り方は、まず叩いたりするのは論外だが、「ネチネチ叱る」のがいけないらしい。さっきこうだった、あの時ああだった......など、後からしつこくネチネチ叱るのはよくないそうだ。だが、犬は叱られてもそれで飼い主を嫌いになることはないそうで、そこが犬の(動物の)いいところだと川野輪さんは言っていた。

 でも、もしかしたら あおは思っているかもしれない。

「うちの人はキレやすくて嫌だわ」と。

(つづく)

◎プロフィール

mitsui_pr.jpg

舘川範雄 (たてかわ のりお)
1966年9月19日生まれ。1987年4月から作家活動に入る。
「コサキン」「SMAPxSMAP」「ポンキッキーズ」「スクール革命!」などテレビ、ラジオで多数の番組構成を担当。また関根勤主宰「カンコンキンシアター」の他、オリジナルコメディーやミュージカルの作・演出など、活動は多岐にわたる。
インスタグラム(ao20150721)で白柴「あお」が毎日、犬の目線で日々の出来事を投稿中! 

掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法等により保護されています。



 この記事が気に入ったらいいねしよう!
 最新記事をお届けします。

犬を飼うのは楽じゃない!?

イノシシと共に生きてきた男と猟犬たち

イノシシと共に生きてきた男と猟犬たち
犬を飼うのは楽じゃない!?