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2018.03.02

ブログ        

コントみたいな犬との暮らし【柴犬生活漂流記 vol.18】

さんぽ・主導権争い

2015年・秋。「あお」と名付けた柴の仔犬を迎え入れ、生まれて初めて「犬の飼育員」となった「僕」と「もうひとり」。月齢11か月。あおは、様々な場面で自己主張をするようになっていた......。

#Lifestyle

Author :写真・文=舘川範雄 協力=(株)浅井企画

がんこ・あお

 月齢11カ月に突入して大人になってきたあおは、朝の散歩ではなかなか帰ろうとせず、お気に入りの公園に向かって勝手にグイグイ進む。

 リーダーウォークしようとすると、その場に座り込み、引っ張られると、反対方向に体重をかけて動かない。そうなると最終手段、抱き上げて強制退場となる。あおも抱えられるとそこで観念していた。けれどあの日はいつもと違った。

 よく行く大きな公園。到着早々、初めて会う飼い主さんと犬たちの集まりを発見したあおは、たまらずグイグイダッシュして近づいていった。

「かわいいわね〜」

 褒められ、撫でられ、オヤツをもらえ、はじめましての犬とも上手く挨拶ができて、あおは嬉しそう。他の犬もやってきて、集いの輪はさらに大きくなる。

 新たに来た飼い主さんたちからも、オヤツの配布。こういう時のあおは礼儀正しく、その人の前でオスワリをし、キラキラした目で見上げながら「オヤツください」と、欲しいオーラを出しまくる。

 でもあおは、初めてもらうオヤツは警戒心から、一旦ポロッと出してからでないと食べられない。それを拾い上げるのが僕の仕事。

 オヤツをくれた飼い主さんにいちいち「すみません、慣れない物をうまく食べられなくて」などと言い訳しながら謝りつつ、すぐに別の犬と飼い主さんのところに挨拶しようとチョコチョコ動くあおを監視するという、精神的にもつらい時間を過ごす。そうこうしているうちに、ふと時計をみるともう10時。朝7時に出発して3時間! こちらはあおと違ってこれから用事がけっこうある。

「あお、そろそろ帰ろうか」

 もう十分だと思った僕が声をかけると、あおは無視。

「行くよ」

 リードを引っ張ると逆方向に体重をかけて拒否。

※イメージ

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「だめ、いくよ」
(仕方ない、、、いつもの強制退場だ)と、あおの左側に回り、右手であおの胴体を持ち上げようとした、その時!

「ガウ!」

 振り向きざまあおは、僕の右手を噛みつくような動きで制した。

「ガウ」は「まだ!」と聞こえた。

「だめだって」

 もう一度抱き上げようとすると、身をくねらせて逃げる。リードを引いて無理矢理抱き上げようとすると、さらに本気でガウガウ!とやってきた。

「まだ遊んでるの!」
「もうちょっといいじゃん!」
「なんでイヤなことするの!」

 まるで駄々っ子女子小学生のような態度だ。抱き上げようとするのをやめない僕に、あおは完全にマジギレ!「ガウガウガウ!」と攻撃をくらわせてきた。

あおとの格闘

 決して血が出るような本気噛みではないが痛いし、声はマジだ。逃げるわ、噛むわで大暴れ!

 これに僕がひるんでやめれば、あおの主張が通ったことになる(教えてくれたのはもちろんトレーナーの川野輪さん)。一気にあおを抱き上げる!と、あおは僕を"真剣噛み"して逃げた!

 もうシャレにならない!

「お前、いいかげんにしろ!」

 捕まえようとする人と捕まりたくない犬の、激しい戦い。取っ組み合いのケンカとはこのことだ。

 傍から見れば、なついていない小さな犬に、やたらガブガブ噛まれているダサい飼い主に見えただろうが、そんなことは気にしていられない!負けられないこの戦い、全力でぶつかるのみだ。

「ギャンギャン!ガウガウ!ヤダヤダ!さわんないで!来ないでよ!」と、騒ぎ暴れるあお!

 僕は心の中で「ふざけんなよお前!」と怒鳴りながら、凶暴化したあおの制圧に挑んだ。数分後、なんとか噛んでくるあおの口を掴み、抱き押さえて動きを止めた。

 久しぶりに本気の力であおを押さえ込む。そして耳に口を近づけ威圧的に言った。

「そういうことやっていいんだっけ?!!いいんだっけ!!??」

 これだけ叱るのは久々だ。それでもあおはまだ、身をよじって抵抗する。
(こいつ生意気だな!)

 近くのベンチに移動。座ってあおをひっくり返し、顔を見下ろしながら、さらに話した。

「お前が遊びたい気持ちもわかる。でも7時に出掛けてもう10時だぞ」
 細かい時間まで言う必要があるかないかと言われれば、ない。でも、頭ごなしではなく、帰ろうと言った理由がちゃんとあることを伝えたかった。

「これからどんどん言葉がわかるようになるわよ。どんどん話しかけてあげて」と女性の飼い主さんに言われたのは、どの散歩の時だったか......そんなことも思い出しながら、いつもなら長くて1分で解放だが、この時はこちらが伝えることが多すぎて2〜3分は仰向けにしたまま説教しただろうか......。

 あおの興奮は冷めた。もう大丈夫だ。

「お先に失礼しま〜す」

 心配そうに遠くで見ていた飼い主さんたちに笑顔で挨拶しながら、公園を後にした。

 公園からの帰路のことは覚えていないが、互いに機嫌は良くなかっただろう。そして帰宅。玄関前で、いつものようにマズル(もうひとりの飼育員はよく「ノズル」と呼ぶ。ホース?)を拭き、さらにカラダを拭く。

 いつも嫌がらないわけではないが、この日は無理矢理帰らされたことが不満だったのか、いつにも増して抵抗した。

「触らないでよ!」思春期の女子中学生クラスの冷酷さでキバをむく。あおとの格闘、第2ラウンドの開始だ。

 浴室に移動、シャワーで足の汚れを洗い流そうとしたらまたも抵抗!有無も言わさず洗う。

 浴室から出て、濡れた足を拭くために仰向けにすると「う~~~!」とケモノっぽい唸り声を出して威嚇してきたので、こちらもカッとなり、それ以上の声で威嚇しながら押さえ込む。「う゛オー!」まさかの僕の唸り声に、あおは目を見開き、おののいていた。僕はケモノとしてあおに勝った!(今思えば、ダサい戦い)

 そしてまた説教だ。

「足を拭くのは散歩のあとの決まりなんだよ!」
「せっかくの散歩なんだぞ、楽しくしようぜ!さっきはこっちの都合で帰ろうと言ったかもしれないけど、仕方ないってことをわかってくれる?だったらひとりで散歩行くか?行ける?帰ってこれないだろ?オートロック開けられないだろ?わかるか?」

 わかるはずはないが、またこんこんと話をしたところで、僕もちょっと疲れてしまった。

 独り言のような、あおとの話し合いの声を聞きつけ、もうひとりの飼育員がやってきた。

 三時間の散歩の疲れが一気に出て、足拭きがうまい彼女にここで交代。するとあおはおとなしく足を拭かれ、爪の間に入った土を爪楊枝でおとなしくほじられていた。

 疲れたーーー。こちらもシャワーを浴びてソファーに腰掛け、先にリビングでぐったりしていたあおに声をかけた。

「今日の散歩は残念だったよ。あお、楽しく散歩しようぜ」

 いつものようにあおは無視......と思いきや、あおは急にソファーにピョンと飛び乗り、僕の太ももに頭を乗せてきた。

「ごめんね、怒らないで」そんな顔だ。
 お前は彼女か?!!スキンシップで甘えて、すべてなかったことにするタイプの女子か?!
 普段ソファーに座っていても横に来ることなどない。あおがソファーにいて、こちらが横に座ると逃げるのに、この時は自分から、しかもいきなりのメス猫化。

 犬のプロ川野輪さんの言葉、「さつきの名言」がまたも思い出された。

「哺乳類のメスはみんな腹黒いですよ。気をつけてください」

 川野輪さん、これですね!!しかし、一向に動こうとしないあおの重みを感じながら、人間の女子だったらかなりの悪女なんだろうなとも思いつつ、「いや、俺も悪かったよ」と思わずあおに言ってしまうダメな男がそこにはいた。

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(つづく)

◎プロフィール

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舘川範雄 (たてかわ のりお)
1966年9月19日生まれ。1987年4月から作家活動に入る。
「コサキン」「SMAPxSMAP」「ポンキッキーズ」「スクール革命!」などテレビ、ラジオで多数の番組構成を担当。また関根勤主宰「カンコンキンシアター」の他、オリジナルコメディーやミュージカルの作・演出など、活動は多岐にわたる。
インスタグラム(ao20150721)で白柴「あお」が毎日、犬の目線で日々の出来事を投稿中! 

掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法等により保護されています。

簡単そうで意外と難しい「マテ」

「生きる」「食べる」「生と死」。宮崎の青い空の下で体感した狩猟文化

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