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2018.03.05

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トレーナー直伝!愛犬との暮らしに役立つワンポイントアドバイス vol.11

簡単そうで意外と難しい「マテ」

こんにちは。ドッグトレーニングインストラクターの三井です。今回は犬のトレーニングの中で、ついつい後回しにされてしまう「マテ」についてお話しします。

#Activity / #Lifestyle

Author :写真・文=三井 惇

犬にとっての「マテ」とは

「オスワリ」と言えば犬は腰を下ろすものだと当たり前のように思っている人は少なくないのではないでしょうか。道で知らない子どもに会っても、犬に対して出てくる言葉と言えば、「オスワリ」や「オテ」です。大人はあまり「オテ」とは言いませんが、よその犬にオヤツをあげようとするとき「オスワリ!」と声をかける人は多いようです。

 きちんと「オスワリ」の意味を教えられた犬たちは、とりあえずキューを出されれば座ることはできますが、じっと座ったままでいられる犬は多くはありません。もちろん目の前にオヤツがあれば、ひたすら待っているかもしれませんが、それでもすぐにオヤツがもらえないとわかると、だんだんじれてきて動いてしまったり、吠えてしまったりします。なぜでしょうか。犬にとって、「オスワリ」は腰を下ろすことと理解しているので、腰を下ろしたらすぐご褒美が出ないと混乱してしまうのです。つまり、「オスワリ」という行動は教えても、持続を意味する「マテ」は教えていない場合が意外と多いのです。

「マテ」できますか?とお聞きすると、「ごはんを前にしていれば待っていられます」とおっしゃる方がいます。フードボウルを犬の前に見せて「マテよ!」と声をかけている間は食べてはいけない。ということを毎回食餌の度にやっていると、犬はフードボウルを目の前にしてもすぐに食べてはいけないと学習しているので待つことができます。では、目の前にフードボウルが無かったとき犬はちゃんと待てるのでしょうか。おそらく待てないでしょう。この時点では、フードボウルやオヤツが目の前にあるからできるというレベルの「マテ」です。しかし、一般家庭であっても、「マテ」の最終目標は飼い主が手に何も持っていなくても、「待っててね」と言われれば、オスワリやフセ(あるいは立ったままで)をした状態で、その場から離れないでいることではないでしょうか。

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「マテ」と言われれば、とりあえず動かないでいること。この場合は「オスワリ、マテ」

「マテ」の意味は広義に解釈されます。特に日本語で「マテ」と言っても、英語で言う"Stay"なのか"Stop"なのかわかりづらいところもありますが、今回の「マテ」は"Stay"です。

 例えば、飼い主が外の安全を確認するまで玄関のドアから飛び出さないというのも「マテ」ですし、飼い主が日中仕事に出ている間、家の中で待っているのも「マテ」であることに違いはありません。ここでは、長時間待たせる「マテ」ではなく、短時間その場を動かないでいることに焦点を当ててお話したいと思います。

「マテ」は必要ですか?

 そもそも、「マテ」って必要ですか?

 はい!犬との暮らしの中ではとても大事な行動のひとつです。数秒であろうと、数分であろうと、場合によっては数十分かも知れませんが、「オスワリ」や「フセ」の状態を維持してもらうこと、ふらふらしないでいることは日常生活のさまざまな場面で必要になるのではないでしょうか。

 例えば玄関に来客があった時、インターホンを聞いていち早く玄関に向かって走り出すことをさせない「マテ」。食事をダイニングに運ぶとき、足にまとわりつかせない「マテ」。人間が食事をしているとき、傍でおねだりをさせない「マテ」など、いろいろな場面で犬が待てると人間はとても助かりますし、犬にとっても余計なストレスがかからない上に、安全です。

 家の中よりさらに重要なのが、外にいるときの「マテ」です。信号待ちの「マテ」や、目の前のパン屋に買い物に行っている間、外に係留されているときに大人しく待っている「マテ」。何か気になるものがあっても、それを追いかけて行かない「マテ」などなど、実は多くの場面で必要なはずです。しかし、外に出ればリードが付いているので、待てない犬をリードで引き寄せたり、ガードレールに繋いだりすることで、強制的に動かさないようにしてその場をしのいでいることが多く、実際きちんと犬に理解させて待たせている人は多くないのではないでしょうか。動けないから仕方ない。でも気持ちは我慢できないから犬は吠えたり、鳴いたりしてしまう。初めからきちんと待つことの意味を教えておいてあげれば、犬も興奮したり、不安になったりすることは減るのではないでしょうか。

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家の中だけでなく、散歩の途中でも「マテ」の練習をしてみる

「マテ」の教え方

 先に述べた「マテ」の最終目標が達成されている方は、以下読まなくてもかまいません。でも、もしまだの方、自信のない方は続きを読んでみてください。

 はじめに、「フードボウルやオヤツを見せれば待てる」とおっしゃる方がいると書きましたが、逆に言えば、フードボウルやオヤツが目の前に無い時は待てないということになります。それでは犬が「マテ」の意味をきちんと理解したことにはなりません。まずフードボウルなどのモチベーターを使って「マテ」をさせている段階から脱しなければ次のステップにはあがれないのです。しかし、もともとフードボウルを使って「マテ」を教えているところですでにNGかもしれません。なぜなら、犬にとってごはんは無償で提供されるものでなければならないからです。日々のごはんを前にして、「あれやれ、これやれ」と言われたら、食の細い小型犬などは「もういらない」となってしまいます。一方食べることにある程度欲のある犬たちは、ごはんを目の前にすればなんでもやってくれますが、逆に頭の中はごはんのことだけになってしまい、落ち着いて回答が出せなくなります。場合によってはごはん前の儀式になってしまい、「オスワリ、フセ、マテ、ヨシ」のパターンでしか学習していなかったなんてことにもなりかねません。

 我が家でもごはんの前に一瞬「マテ」があります。それはごはんをセットする前にじっとしていて欲しいと伝えるためです。常に多頭飼いのため、1頭目のご飯をセットしているときに、2頭目が顔を突っ込みに来たりという混沌を避けるために、セッティングが終わるまでの数秒間じっとしていてもらい、セットが終われば「いただきます!」で一斉に食べ始めます。よだれが滝のように出ている犬たちに、長い間待たせてがまんを強いることはありません。

 では、どうやって「マテ」を教えたらいいのでしょうか。こういうときこそ「オヤツの使い方」で書いているように、最初はオヤツを手に持っているとき、犬が自分から座ったり、伏せたりして動かなかったら、褒めてオヤツをご褒美にあげる。ということを繰り返してやってみてください。ちょっとでも動かない様子が見えたら、「マテ」という言葉のキューをのせながら時間を数秒ずつ伸ばしていきます。1秒でも2秒でも動かなかったら、褒めてオヤツをあげていきます。ここで注意しなければいけないのは、オヤツをあげるタイミングで「ヨシ」などと声をかけてしまうと、犬が動いていいと判断して、「マテ」が持続できなくなることです。最終的に動いていいと思うまで、「ヨシ」などの解除のキューを言わないことがポイントです。「いい子だねぇ。マテだよ。そうそう」と言いながらオヤツをあげ、最後に「ヨシ」で解除するという流れができれば、犬は最後の「ヨシ」を聞くまで動いてはいけないと学習するようになります。上手にできるようになってきたら、オヤツは犬の視界からはずします。ポケットに入れておいたり、手を後ろに組んでおいたりして、犬の頭が落ち着けるように配慮してあげます。

(注釈:オビディエンスなどのトレーニングにおいては、「オスワリ」や「フセ」などの合図が出された場合、敢えて「マテ」と言わなくても、解除されるまで、あるいは次の合図が出るまではその姿勢を維持するように犬たちに教えていきますが、今回は一般家庭犬にわかりやすく教えることを前提としています)

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小さい子どもが傍に寄って来るような場合は、「フセ、マテ」でむやみに動いて子どもを驚かせないように教えておきます

おわりに

 簡単そうに見える「マテ」ですが、飼い主が目の前にいればできても、ちょっと離れてしまうと不安になってできなくなってしまうこともあります。愛犬の安全のためと思って、ちょっとトレーニングをやり直してみませんか?

 家の中など、安心していられる場所で練習してから、外でも練習します。「家ではできるのに外ではできません」という方の大部分が、外での練習を省いてしまっていることが往々にしてあります。家の中でできても、外の沢山の刺激の中で同じことができるとは限りません。ポイントは少しずつ犬に自信を付けさせてあげること。くれぐれも、最初からハードルを上げすぎないように。

◎プロフィール

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三井 惇
CPDT-KA(国際資格)ドッグトレーニングインストラクター。1997年に迎えたボーダーコリーと始めたオビディエンス(服従訓練)をきっかけに、犬の行動学や学習理論を学ぶ。2004年にドッグダンスをと出会ってその奥の深さに魅了され、愛犬家に広めたいと2006年からインストラクターとしてドッグダンスを教え始める。自身も一競技者として、オビディエンスやドッグダンスの競技会に参加。

●ブログ: Dance with Dogs
●HP:http://wanbywan.com/
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●主な著書:『ニコルとドッグダンス』/エー・ディー・サマーズ

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