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2018.02.06

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猟犬を知る エピローグ【猟犬が猟犬らしく日本で生きていくために】

狩猟の抱える問題と、猟犬の未来

猟犬のタイプについて5種類、そしてプロローグとエピローグを合わせると、期せずして7本もの原稿を書いてしまった「猟犬スペシャル」もいよいよ最終回。原稿を書き進めるうちに、犬種による猟技や才能の違いなどがわかってきて、ますます猟犬種の奥深さを実感。と同時に、今、日本で暮らしている猟犬の実態も見えてきた。犬を愛するもの、自然を愛するものとして、日本に住む猟犬種の未来について、冷静に考えていきたい。

#Activity / #Lifestyle

Author :写真=白石かえ、中村雅子、桜井求、E. Matsuda 文=白石かえ

猟犬に望むこと。正解は一つじゃない

 現代の日本では、猟犬種に、現役猟犬としての役目を与えている人もいれば、完全な家庭犬として可愛がっている人もいる。猟犬種の本来の気質を理解している人もいれば、そうでない人もいる。猟犬種に対する価値観、意見、愛情表現などは、人によりさまざま。「現代でも猟犬は必要なのか。猟犬は、虐待なのか」。この答えはどうすればいいのか。猟犬の原稿を書けば書くほど、また読者からの感想を聞けば聞くほど、その温度差を感じずにはいられなかった。

 しかし、先に結論を言うと、正解は一つではない。立場、住むエリア、職業、ライフスタイル、思想などによって、望むことは違う。わかりやすい例を言うと、農業や林業を営む人にとって獣害は経済的損失も深刻な問題だし、里山で接触事故が起きそうなエリアに住んでいる人にとっては最悪死亡するほどの事故につながる恐れがあるので、イノシシやシカ、クマの有害鳥獣駆除は賛成されることが多い。ボランティアで有害鳥獣駆除を行っている週末猟師は、地元の人からミカンやジュースを渡され労ってもらうことがあるという。有害鳥獣駆除という名のハンティングは、それくらい感謝される行為でもあった。野生動物とバッティングする生活圏にいない、都会に住んでいる人が、地方の獣害のあるエリアに住む人の気も知らないでいろいろ言うな、と言いたくなる気持ちも理解できる。

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鳥猟で活躍するブリタニー・スパニエル。この犬種を迎えたことをきっかけに<犬のために>普通の都会に住むお父さんが、狩猟免許を取得。犬が生き生きとする姿を見るのがたまらないらしい

さまざまな問題、対立をはらむ狩猟という行為

 かといって狩猟圧が高まり過ぎると、野生動物の乱獲を招き、生態系のバランスを崩してしまう懸念もある。そしてこの記事を読んでいる人は何よりも、猟犬の扱い、遺棄などの問題を心配している人が多いと思う。

 そこで、いくつか問題点や対立点、感覚の違いの例を挙げてみる。本当は、対立的な構図で列記すると、ますます対立が深まってしまいそうで心配ではあるが、あくまでもわかりやすく伝えるために、端的にまとめてみる。どうか部分的なことだけを見て判断するのではなく、現状を知る基点としていただきたい。以下のことは、猟犬にまつわる問題の、ほんの断片的なことである。

  • ●【有害鳥獣駆除賛成派 VS 反対派】
  • ●【狩猟を趣味または生業とする人 VS 狩猟は残酷な行為であり、不要だという人】
  • ●【昭和の猟師 VS 狩りガール】
  • ●【ジビエ産業推進派 VS 乱獲を心配する慎重派】
  • ●【猟犬を使う人 VS 猟犬に使ってほしくない人(猟犬として飼うのは虐待だという人)】
  • ●【猟犬を遺棄する人 VS 猟犬を保護する人】
  • ●【猟犬種を猟犬種として飼う人 VS 猟犬種を家庭犬として飼う人】など

有害鳥獣駆除の光と影

 さて日本では、狩猟の中でも実は大きな割合を占める有害鳥獣駆除。自治体からの要請があれば、猟期に関係なく1年中、動物を捕獲できる。駆除を行うのはそれ相応の理由と行政の判断がある。たとえば「東京電力福島第1原発事故に伴い、宮城県内で有害駆除されたイノシシが急増している。特に県南は2011年度から5年間で約5倍に伸びた」という(2017年5月。河北新報より)。「農作物被害も年々深刻化し、11年度に5294万円だった県内の被害額は13年度に1億円を突破した。関係市町はイノシシ被害の対策に追われている」。1億円の被害。そりゃ大変だ。

 こうした農作物被害の被害額は、本州、九州の広いエリアで報告され、そのための駆除にかかる費用も増加している。イノシシだけでなく、シカの食害の問題も大きい。環境省が発表した2014年度のニホンジカ密度分布を見ると、シカはニンゲンの住むエリアのすぐそばにも生息域を広げていることがわかる。北海道のエゾシカも同じで、農家や林業家の頭を悩ませている。

 一方、「駆除」そのものに反論を唱える動物愛護家もいる。動物の権利(アニマルライツ)の視点から言うと、ニンゲンの都合でほかの命を奪うことは良くない、という考え方だ。自然で暮らすシカやイノシシを、ニンゲンが勝手に殺す権利はないという思想である。この思想の人は、有害鳥獣駆除も狩猟も(動物実験も、極論を言うと畜産も)、反対の立場をとることが多い。

 たしかに、駆除が盛んになるにつれニンゲンの身勝手さを痛感する問題も起きている。たとえば駆除の報奨金をだまし取る事件(2017年5月。朝日新聞より)。「イノシシやシカなど農作物を食い荒らす有害鳥獣の捕獲頭数を水増しするなどして国や自治体の報奨金をだまし取る不正が後を絶たない」という。地方自治体によって報奨金は違うが、1頭あたり5000〜30000円などらしい。駆除した証拠に写真やイノシシのしっぽやシカの耳を切り落として提出したりするのだが、虚偽の申告をするなんてなんと浅ましいことか。これはれっきとした犯罪行為である。猟師のモラルや倫理観が、一般人とずれているとしたら、それは厳しく追及、断罪すべきではなかろうか。

 これは私見だが、そういうルール違反をする人は、ほかでも平気でルールを破ったり、モラルが低かったりする可能性もあるのではないかと考える。

 たとえば、秋田県内では今年度、推定生息数の6割弱にあたる817頭のツキノワグマを捕殺した(2018年1月。朝日新聞より)。森のドングリなどが凶作で人里に下りてきてしまったクマが、ヒトとバッタリ出くわすと人身事故になり、死者やケガ人が出る。クマ情報が出ると、小学生は大人が引率して集団登校になるなど、親御さんの心配も尽きないと思う。しかしツキノワグマは、東北にはわりと生息数が多いが、九州では絶滅したとされており、四国でも絶滅のおそれがある。広島県と島根県にまたがる西中国山地のクマも危ない。森が分断され、生息域が狭まり、森と森を移動できなくなった自然環境で(九州や四国もひとつの島だったために、壊滅的になった)、そこに狩猟圧がかかると、一気に絶滅しかねない。

 今まで地球上の動物を数多く絶滅させてきた人類は、同じ過ちを繰り返さないように、学習し、行動を改めることが務めだ。だから日本でも、地元自治体、環境省はしっかり見張る必要がある。生態系や野生動物を「管理」「マネジメント」「コントロール」するという思想すら、西洋的発想で傲っている気もするが、そこは百歩譲って、森を管理し、クマやシカやイノシシの数をコントロールするというのなら「日本のツキノワグマがいつの間にか絶滅しました」という失敗は、絶対にしないでほしい。絶滅した動物はもう二度と会えない。さらに自然のバランスが崩れ、ほかの野生動物にも影響を及ぼすことになり、芋づる式に生態系が破壊されていくだろう。たとえばニホンオオカミが絶滅したために捕食動物がいなくなり、シカやイノシシが増大したとも言われている。かたや今は悪者扱いされているシカやイノシシがいなくなったら、森の植生も変わることになり、あとで困ることになるのは私たちだ。

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昭和の時代から続く古きよきイノシシ猟スタイルを貫く、九州の猟師たちの相棒のプロットハウンド・ミックス

2015年度から日本のシカやイノシシは減少に転じている

 また、驚いたことにシカやイノシシは今はもう増えていなかった。2017年8月、環境省発表の報道資料によると「平成27年度末の、全国(本州以南)のニホンジカの推定個体数は中央値約304万頭となり、増加が止まり減少に転じている可能性があることが明らかになりました。また、平成27年度末のイノシシの推定個体数は中央値約94万頭となり、減少傾向であることが明らかになりました」とのこと。つまり、シカやイノシシは今まで増え過ぎていると言われ続けていたが、そうではない。奈良のシカ猟師が、最近なかなかシカに出会えないとぼやいていたのは、この予兆だったのか。

 やはり猟師こそ肌感覚で、イノシシやシカの増減を誰よりも早く感じ取る存在なのかもしれない。モラルの高い猟師が増え、ドイツの森林保護管(森を守り、狩猟数を管理する人で、猟師でもある)のような、倫理観と知識を蓄えた自然保護のプロフェッショナルが、日本にも望まれる。流行りのように「狩りガール」などと持ち上げるのはいかがなものかという意見もあるが、猟師の高齢化を懸念し、若者をこの世界へ取り入れたいのなら、「森林保護管」や「レンジャー」制度を導入し、生態系の守り人として教育を促すのはどうだろう。

 猟師=森を守る人、野生動物を守る人、であることが理想だと思う。誰よりも森のそばにいて、野生動物のことを熟知している人たちだからだ。そういえば日本のマタギは、そういう人たちだったと思う。根こそぎ命を奪えば、いつか野生動物は絶え、そうすれば自分たちの食べ物はなくなり、あとでニンゲンも困る。サステナブルに森の恵みをいただく、という価値観を昔の人はちゃんと実践していた。現代こそもう一度ちゃんと見直し、取り組むべきことではないか。

 とにかく有害鳥獣駆除や狩猟は、必要なものであり、文化でもあるが、かたや獲り過ぎもいけない。森の野生動物が持続可能に存続し、未来永劫、私たちと共存し、日本でジビエも食べられるように、猟師自身がモラルと誇りを持って狩猟をしてほしいと願う。

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獲れたイノシシに感謝して、猟のあとみんなで食べる、昔から伝わる「骨」という名の猟師めし。昔は普通にみな食していたが、今も食べている人は数少ないそう。自動車もなく、のんびり山あいの中で暮らしていた時代は遠くなり、今はみんな時間優先、効率重視の世の中となってしまったようだ。「骨」の食文化ももうじきなくなってしまうのかも。ちなみに「骨」は、イノシシ肉と大根と里芋の味噌炊き。甘めの味噌味で、体が温まる。作ったあとは、容器に入れて、家族へのお土産としてそれぞれが自宅に持ち帰る。後ろは、味噌をコーラで溶かしたものに漬けたイノシシ肉の焼き肉。囲炉裏を囲んで、猟仲間と食べる森の恵み。時間がゆったり流れていく

鳥猟犬はそんなに遠くへ行かないはずなのに

 おそらく動物福祉や愛護に関心のある人ならご存知のとおり、猟期の終わる2〜4月頃に、毎年猟犬種が数多く収容される現実がある。それがやむをえずに猟師(飼い主)の元へ帰れなくなった迷子犬なのか、遺棄犬なのか、判別がつかない。いや、判別できないことをいいことに、捨てているとしか思えない(と断言したくなる)。ちなみに姿を見れば、ショー系なのか、実猟系なのか、ちょっと犬に詳しい人なら一目瞭然。明らかに実猟系の犬たちである。

 でも、すべての猟師が非人道な行為をしているわけではない。愛犬のアイリッシュ・セッターと鳥猟を行い、また仲間と大物猟(イノシシ)や自治体から依頼された有害鳥獣駆除にも参加している趣味のハンター歴50年の方に話を聞いてみたら「俺の仲間の中には(犬を捨てるような人は)いない」と言う。彼からしても、何年も訓練して育てた犬をなぜ捨てられるのか、理解できないそうだ。

「昔は犬を道具として扱っていた人はいたけれど、今は本当に少なくなっている。犬が帰ってこないと、みんなものすごく心配しているよ。たしかに遠く離れて帰ってこないときはある。でもGPSや無線機を首輪につけている。暗くなったらいったん引き上げるが、翌日ふたたび探しに行くと、たいてい見つかる。もとの出発地点に戻ってきていることが多いよ。道路で座って待っている(笑)。あるいは首輪に電話番号付きの名札をつけているから、地元の人が電話をくれることも多い。だから(毎年収容される犬がたくさんいるのが)本当に信じられない」

 何度も言葉を換えて尋ねてみたけれど、嘘偽りはないようだ(疑ってすみませんでした)。一概に「猟師は犬を大事にしていない」「狩猟する人はみな悪者」と決めつけてはいけないと思った。

 そもそもガンドッグ(バードドッグとHPR犬種)に関していえば、追跡能力が高いハウンドはレンジ(探索範囲)が広く20〜50kmも遠くに行ってしまう犬もいるが(だからGPSや無線機をつける)、ガンドッグの場合は、基本的にそんなにレンジは広くない。一般的にキジを獲るならショートレンジ(50m以内)になるように訓練し、ヤマドリならロングレンジ(100m超)に訓練すると聞いた。子どもの短距離走レベルの距離ではないか。意外なほど鳥猟の犬はハンター(飼い主)から離れない。たいていは見える範囲内にいる。

 だいたい国内では、鳥猟にライフルは使われておらず、散弾銃が使われる。散弾銃の飛距離は約300m(ライフルだと約3~4km)。だから犬はそれ以上遠くでポイントしても意味がない(鉄砲の玉が当たらない)。鳥猟犬がハンターを置いてそれこそ鉄砲玉のようにいなくなっていては猟にならないのである。たいていのセッターやポインターたちは、わざわざ教えなくても遺伝子の中でそれを知っていて、そんなに遠くには行かないものだ。人並みのトレーニングをすれば、呼び戻しも普通にできる。そもそも鳥猟犬は訓練性の高い犬(従順で反抗心がなく、ヒトと共同作業するのが大好き)。なのに、なぜ失踪してしまうのか。

 犬の気質から考えて、レンジが広くなく、呼び戻しもよくできる鳥猟犬が、千葉県などのシェルターに数多く収容される原因は、心ないハンターの遺棄、あるいは適切な猟犬訓練をせずに適当な状態で(犬を使い捨ての道具のように)猟野に放つからではないかと邪推せずにはいられない。

 しかも普段、犬舎に入れっぱなしで散歩にも行かず、ずっと鬱積した毎日を過ごしていた犬が、野山に放たれたら、そりゃ興奮のあまり、鉄砲玉にもなるだろう。確信犯の遺棄ではなく迷子だったとしても、それは日々の飼養状況の悪さや訓練の未熟さといった飼い主側の過失によるところが大きい。ハンターの資質が問われる問題である。犬は使い捨ての道具ではない。今の時代、そんな古い感覚は、早急に淘汰されるべきだ。

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ポインターもセッターも訓練性は高く、ちゃんとすれば呼び戻しのできる犬。そうでなければ欧米でこれだけ需要の高い猟犬になるわけがない。呼び戻しもできない犬を猟野に放ち、迷子にさせるなんて、猟師の風上にも置けない

猟犬にも「5つの自由」を!

 結局は、猟師のモラルや道徳心、倫理観にかかっている。ある現役猟師は「猟師の9割はゲスな奴」と苦笑した。裏側では、さらにひどい現実があるのかもしれない。たしかにYouTubeで、犬に吠え止めをさせて、鉄砲を使わないでナイフで(これは違法)イノシシを刺し殺す動画をアップしている人が複数いる。家庭犬飼い主の感覚からすればびっくりする、寒くて暑くて狭くて臭そうな屋外の檻に、大勢のハウンドがギュウギュウに入れられ、吠えまくっている写真や画像もある。それで「子犬売ります」とブログに書いている(ちなみにハウンドもガンドッグもけっこう多産だ。1腹で10頭以上産まれることも多い)。子犬を販売している人は「動物の愛護及び管理に関する法律」や各自治体の条例に基づいた第一種動物取扱業の登録を行っているのだろうか。

 たいてい実猟系の子犬の値段は、1万〜3万円くらいらしい。安過ぎないか。だから使い捨てにするのではないか。猟期ではない春〜秋までの餌代やフィラリアの薬代などを払うくらいなら、(猟期が終わったら犬を捨てて)また秋に新しい犬を買えばいいと思っている人もいそうである。言語道断。また実際収容された猟犬たちは、フィラリア陽性のことも多い。予防薬さえ飲ませればフィラリア症で死なせないですむ時代になったのに、なんて扱いなのだろう。時代錯誤も甚だしい。

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イノシシが獲れたあとに、おこぼれをもらう北海道犬。ワイルドだ〜

 プロローグで、「ペット(家庭犬)」「ショードッグ」のほかに、表舞台にはあまり出てこないが「猟犬」という別世界がこの日本にも存在していて、同じ犬なんだけれど「同じレベルで考えてはいけない」世界だと紹介した。しかし、意見を変更させてほしい。子犬の値段が違うのは、これは犬にはわからないことなのでかまわないとしよう。けれども、家庭犬でもショードッグでも狩猟犬でも、犬は犬である。痛みや苦しみを感じ、お腹がすき、喉が渇く。知性も感情もある。飼い主との共同作業を悦び、信頼関係を深めると安定するのは、どの犬でも変わらない。

 だから、最低限の生活を保障し、痛みや苦しみや飢えを取り除き、そして悦び、楽しみを与えることがオーナーの責任。つまり狩猟犬にも、動物としての基本的ニーズ(欲求)を満たし、苦痛を与えないための指標である「5つの自由」を保障するべきである。ウシやブタやニワトリなど、今から食べられるために生きている産業動物も、ヨーロッパでは「5つの自由」を守るように言われている。日本に暮らす猟犬が、それ以下の扱いでは批判の対象になるのは当然といえる。だから日本の猟師さん、どうかこれからは「5つの自由」を猟犬にちゃんと与えてほしい。

 でも裏を返せば、猟師は、猟犬種に「5つの自由」の大事な5つ目、「自由な行動をとる自由(正常な行動を表現する自由)」を与えている。猟犬が、猟犬らしい本能を発揮できる場を与えることは、まぎれもなくこの正常な行動を表現させることにつながる。猟犬が、猟犬として生きる場を与えられることはこの上なく幸せなこと。これは猟師でないと与えられない犬の悦びである。

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犬種特性に見合うだけの自然環境で、思う存分、走り、ニオイを嗅ぎ、探索し、追跡し、捕獲する悦び。猟犬種を、部屋の中やケージの中に入れっぱなし、庭でつなぎっぱなしでは「正常な行動をとる自由」を与えているとはいえない

よりよい猟犬の未来をつくるために

 そのほか猟犬の身の安全を守るために、望まれることを挙げておこう。

  • ●GPSまたは無線機、迷子札、マイクロチップの装着ない猟犬の使用を禁止(逸走防止)
  • ●猟犬をマイクロチップで管理(遺棄禁止)
  • ●狩猟団体は、マイクロチップなしの猟犬登録を認めないようにする
  • ●有害鳥獣駆除を依頼する(=報奨金を与える)地方自治体も、マイクロチップ入りの猟犬かを確認する
  • ●狩猟団体による猟犬の遺棄禁止・逸走防止の啓発
  • ●狩猟団体による猟師のモラル、倫理観向上の啓発
  • ●狩猟団体に入ってない猟師の管理、意識改革の強化(狩猟免許を発行する自治体、環境省など)
  • ●猟師仲間同士での意識改革の推進

 最後にもう一つ。これを書くとよけい炎上しそうだが、正直に書こう。実猟犬の多くは、避妊去勢をしていない。大物猟を行う犬は、勇猛さを保つ男性ホルモンが狩猟の際には必要と思う。またハウンドなどを集団生活させる上では、むしろオスらしいオス、メスらしいメスである方が統率がとりやすいということもあるかもしれない。そもそも狩猟本能を指揮する根幹としてホルモンがもたらすもの(強い骨格や筋肉などをつくることを含み)は大きいように感じる。しかしながら、避妊去勢をしていない以上、遺棄や迷子などということはあってはならないこと。このことをもっと本気で考えてほしい。猟師の捨てた犬が、2代、3代と子孫を産み、野犬を増やす原因をつくる。そして、その膨大なツケを、野犬が収容された自治体や保護団体に押しつけている。だから猟師全体、狩猟そのものを否定されてしまう、という事の重大さに気がついてほしい。自分の軽率な行為が、狩猟界のイメージを悪くさせているという自覚を持つべきであろう。

 なぜならば、犬は、野生動物ではない。猟犬は、長い時間をかけて獲物に応じて能力を伸ばすようニンゲンが改良してきた。そしてニンゲンと共に生きたいと思っている、希有な動物である。猟犬は、これまでもそしてこれからも、ニンゲンの最高のパートナーであり、最良の友であってほしい。

 この日本でも幸せな猟犬が増えていきますように。そう心から願い、この猟犬スペシャルを終えることにしよう。

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猟犬種は、人類の最高の友!

◎著者プロフィール

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白石かえ
犬学研究家・雑文家。家族は、ジャーマン・ショートヘアード・ポインターのクーパー、ボクサーのメル、黒猫のまめちゃん、夫1、娘1。前職は、自然環境保護NGO・WWFジャパン。犬猫と暮らして30数年。彼らの存在は可愛いだけでなく、尊い。犬が犬らしく生き生きと暮らせる、犬目線の原稿を書くのがライフワーク。

●執筆サイト: dogplus.me 犬種図鑑 ほか多数
●ブログ: バドバドサーカス
●主な著書:
『東京犬散歩ガイド』、『東京犬散歩ガイド武蔵野編』、『うちの犬 あるいは、あなたが犬との新生活で幸せになるか不幸になるかが分かる本』、『ジャパンケネルクラブ最新犬種図鑑』(構成・文)




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