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2018.02.09

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コントみたいな犬との暮らし【柴犬生活漂流記 vol.15】

あおさんぽ。はじめての頃

2015年・秋。「あお」と名付けた柴の仔犬を迎え入れ、生まれて初めて「犬の飼育員」となった「僕」と「もうひとり」。犬との暮らし、その楽しみのひとつが「散歩」。しかし新人飼育員にとっては、恐怖の時間だった......。

#Activity / #Lifestyle

Author :写真・文=舘川範雄 協力=(株)浅井企画

散歩デビュー!

 はじめての散歩は"抱っこ散歩"、家の近くの緑道を飼育員二人体制で歩いた。本に載っていた、「クルマやバイクや自動販売機などに慣れさせて・・・」に従い、その近くに連れていき、怖がったら対処しようとかまえていたが、あおは特にそれらに興味も恐怖もないようで拍子抜けした。

 それからしばらくして、ついに"歩き散歩"である。2015年11月3日。この日、僕は仕事で、「もうひとりの飼育員」が記念すべき初歩き散歩を担当した。飼育員連絡ノートにその時の様子が記されていた。

「15:20 ほぼ止まっていたけど......まだ歩けない。人が気になるみたいでじろじろ見たり近寄ったりする。帰宅して元気に走り回り、自分からクレートに入って休む」

 ......大きめの字でざっくりと3行半。なので雰囲気だけはわかった。
 翌日も僕は朝から仕事だったので、2度目の散歩も、もうひとりの飼育員が担当した。連絡ノートに書かれていたのは

「16:45〜17:15 さんぽ 2人の女性とお話する。ネコ18年の人」

 ......あおのことがなにも書かれていない上に、ネコ18年の人?よくわからない。
(聞くと、「たしかネコを18年飼っていたみたいな」という曖昧な返答だった)

 その翌日。この日も僕は原稿書きで時間を取られていて、もうひとりの飼育員が三回目の散歩も担当した。連絡ノートに書かれていたのは、

「散歩1時間 黒太郎くんと出会う。2人の子どもと出会う。警備のおじさん」

 ......で? で?!あおとこの人たちが一体どうした?そこ書いてー。
(あと「出会う」うるさい。「会う」でいいでしょ)

 もうひとりの飼育員との歩き散歩を3回経験したところで、我々は川野輪さん(※愛犬のしつけ教室「ドギーステップ」ドッグトレーナー)に、マンツーマンで散歩レッスンを受けた。(※ちなみに、もうひとりの飼育員はノートに「今日はワンツーマンのお散歩レッスン」と書いていた。犬だからワンなのか?)

「左側につかせてリードが「し」の字になるくらいたるませて」
「『一歩散歩』(犬が人より前に出たら止まる)」
「止まった時はフードやおもちゃで気を引く」
「拾い食いに注意」など、基本を教わりそれをノートに忘れないように記した。

 家の中でも練習をして、数日後、トレーニングを受けた我々飼育員とあおとの、本当の意味での初散歩に出かけた。

もうひとりの飼育員と「し」の字でスタート

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でも歩き出すとグイグイ

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何かが気になって止まり

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引き返そうと

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ぐるっと回って

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回って

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回って

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巻きついた

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その後はまたグイグイ

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クンクン

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そしてグイグイ

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スピードも上がり、「し」の字であるべきリードはピンと張られてしまう
これじゃまずいと、「し」の字に戻す

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実はただ、あおのスピードに負けない早歩きで「し」の字にしているだけ





初対面の犬とあいさつ(まだ「柴」のガウガウは出ていない)

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あおも我々もちょっと疲れて休憩

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散歩ヤダな〜

 あおの散歩が本格的にはじまった頃、僕には、それが苦痛でしかなかった。「散歩ヤダなぁ......」と毎日思っていた。元々は、犬と一緒に散歩するのを楽しみにしていたのに......。僕が想像していた、周りの景色を眺めながら楽しく歩く「愛犬との散歩」は、「あおとの散歩」と大きくかけ離れていた。

 歩き始めると、外の世界に大興奮である。先に行きたくて、リードをぐいぐい引っ張リ出す。人間の感覚では、首が絞まって死んでしまうんじゃないか?と思うぐらいの強い力で引っ張りながら、あっちへ行ったり、こっちへ行ったり。いろいろな匂いを嗅いでるなぁと思っていると、急に車道へ出ようとしたり、飛んできた葉っぱめがけていきなり飛んでいこうとしたり!......

 クルマ、バイク、自転車、たばこを吸いながら歩く人、走ってくる子供、大きな荷物を持った人、お年寄り、犬が苦手そうな人......道行く全ての人、全方向に注意を払いながら歩き続ける。気が休まらない。さらにあおは前にいても、たまに横にいても体高が低いので、僕が普通に歩いているとほとんど視界に入らない。よって、あおの姿を目に入れるために背中を丸めて歩く日々。犬の散歩で猫背ってなに?"周りの景色を楽しみながら歩く"?そんなの無理です。下ばっかり見てる!でも散歩中にそんな事を考えている余裕など、ない。

(急に道路に飛び出してひかれちゃったらどうしよう)
(いきなり走り出して、それで思わずリードを放しちゃったらどうしよう)
(変な物が落ちてて、それを拾い食いしちゃったらどうしよう)
1秒たりとも油断できない。

 さらに油断できなかったのは、走っている人、歩いている人、座っている人、とにかく誰にでも絡みたがるところだった。。

知らない人にやたら絡んでいくあお(しかも大体おじさん)

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 どの飼育本にも、こんなにビョンビョン、あっちこっち飛び跳ねて散歩する犬の写真なんて載ってなかった......。みんなおとなしく歩いてた......。言ってよ〜そういうのあるよって......。

 この頃から、どうも犬の飼育本は、少なくともあおとの暮らしに当てはまることがほとんどないと、感じ始めていた。そのことを川野輪さんに話してみると、「犬はそれぞれ違うので、その犬に合わせた方法を取らないと意味がない」とあっさり言われ、転げたくなった。

 改善されないあおのグイグイ散歩。そこで川野輪さんの散歩レッスンを受けることとなった。

 川野輪さんが教えてくれたのは「後ろ手リード」。あおに引っ張られないように、リードを持った手を腰の後ろに回し、前を向いて歩く。僕がいつもやっている「あおの後ろ姿を確認しながら猫背で歩く」と真逆。あおの姿が見えないことを気にせずに、ただ前進する。すると、持っているリードに抵抗がない。え?あお逃げた?と思うぐらい軽い。振り向いてみると、あおは僕の後ろをトコトコついてきている。リードはぶらんと垂れ下がったまま、引っ張られることなく宙に浮いている。思わずにやけた。

「軽〜い!!こういうことですか!これが散歩ですね!!」

 さらにリーダーウォーク。こっちに行ったと思ったら、急に反対に進む。後ろ手でリードを持っているので、あおが見えない分、気兼ねなく方向転換できる。時々あおの様子を見ながら歩く。これだとずっと猫背でいなくていい。なにより、胸を張って歩ける感じが素敵。さらに余裕が出てきたら「ツイテ」のコマンドを使っていくことも勧められた。

 我々はリーダーウォークができるように努力を続けた。けれど、以前よりは減っていったが、あおはなかなかグイグイをやめなかった。そんな前へ前へと進もうとするあおを見ながら、ある日、ふと思ったことがあった。

"あおは生き急いでいる......"

 あおは、僕らの何倍ものスピードで、一生を一気に駆け抜けていく。

「急がなきゃ!早く、早く!」

 あおは心の中でいつもそう言いながら、毎日を生きているような気がしてきた。

「わたしには時間がない。だから行かせて!」

 そう言いながら前に進んでいるように思えてきた。そんなあおを止めず、あおのスピードに合わせて早足になる自分がいた。
(これがあおの生まれながらのスピードなんだ)

 あおの好きな速さで、あおの好きなところへ行かせてやりたい......。

 そんな、中途半端なエッセイみたいことを考えながら、あおにリードをグイグイ引っ張られていると、川野輪さんの顔が浮かんできた。

「でもあおちゃん、わたしと一緒の時はちゃんと横について、いい子で歩いてますよ」

【ドギーステップでの散歩】

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【我々との散歩】

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顔も態度も全く違うーー!

 川野輪さんは言うだろう。

「結局、"誰がリードを持っているか"ですから」

 あおがグイグイ行く理由。それは僕らがただナメられているだけでした!

(つづく)

◎プロフィール

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舘川範雄 (たてかわ のりお)
1966年9月19日生まれ。1987年4月から作家活動に入る。
「コサキン」「SMAPxSMAP」「ポンキッキーズ」「スクール革命!」などテレビ、ラジオで多数の番組構成を担当。また関根勤主宰「カンコンキンシアター」の他、オリジナルコメディーやミュージカルの作・演出など、活動は多岐にわたる。
インスタグラム(ao20150721)で白柴「あお」が毎日、犬の目線で日々の出来事を投稿中! 




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