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2018.02.22

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犬の飼い主に求められること vol.12

犬があなたの言うことを聞かないわけ

多くの飼い主が犬の問題行動の矯正を「犬だけに」与えるが、果たしてその方法は犬にとってフェアなのだろうか?私は、飼い主の行動や犬へのコマンドが一貫していないために、その意思が正しく伝わっていないと感じるのだ。

#Activity / #Lifestyle

Author :写真=山﨑 睦、五十嵐廣幸 文=五十嵐廣幸

あなたはどっち?

質問:あなたは犬の散歩をしようと草原にいます。左横にはリードで繋がれた犬が座っています。あなたの散歩の第一歩は右足、左足どちらから歩き始めますか?

私の答え:「左足」

 リードを使っての歩行はソーシャルウォークとヒールウォークの2つに分けられる。オーストラリアでは、この2つはドッグクラブやドッグスクールのBasic Obedience(初歩の服従訓練)の習得メニューであり、犬を飼い始めた多くの人が習う歩き方である。

■Social walkとは
右手でリードを持ち、「Let's go」の掛け声(コマンド)で犬と飼い主が同じペースで歩く。犬はリードを引っ張ること、飼い主の前方、後方を横切ることをしてはいけないが、飼い主の左半身180度を動くこと、匂いを嗅ぐことができる。

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■Heel walkとは
脚側歩行のこと。ヒールウォーク中に犬は匂いを嗅ぐことなく、飼い主の左横について歩く必要がある。この歩き方は、横断歩道を渡る時や混雑した道、自転車とすれ違う際などでも安全に散歩を続けることができる。 Social walkでは「レッツゴー」Heel walkでは「ヒール」と犬に声をかけて、飼い主は左足を第一歩として歩き始めることが「犬への合図」となる。

【なぜ右足ではないのか?】

 右足の第一歩は、犬を待たせるコマンド「Stay(マテ)」に使うからだ。左足横にいる犬に、「ステイ」と声と手によるコマンドを伝えて、飼い主は右足を第一歩にして、犬がいる場所から離れる。これが私の「ステイの合図セット」になっている。

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私と愛犬のステイの動作コマンド:聞き取りやすい言葉と毎回同じ動作で伝える

 多くの飼い主が、「うちの犬は言うことを聞かない」「コマンドが届かない」また、「スクールでは上手くできたのに、自分一人だとうまくいかない」と悩んでいる。しかし、その原因は決して犬だけにあるのではない。

  • ・はっきりしない動きや、毎回違う動作での指示
  • ・一定しない声のトーン、大きさ、言い方

 このようなコマンドは犬を迷わせるし、飼い主側にも原因があると感じる。

 犬は飼い主の手などを使った「動作コマンド」にプラスして、「言葉でのコマンド」でその指示を理解する動物だ。だから飼い主自身が「最初の第一歩を間違えないこと」は、「これからソーシャルウォークで歩くよ」「ステイだよ」という意思を愛犬に正しく伝えることに繋がる。これら「決められた初めの一歩」は、飼い主自身が何度も練習し、身体に覚えさせない限り簡単に忘れてしまう。前日までできていたのに、翌日にはすっかり忘れてしまう人も珍しくない。

ダブルスタンダード

 左足、右足の「初めの一歩」だけでなく、飼い主が知らず知らずに愛犬を混乱させている場面は沢山ある。

 例えば呼び戻しで、なかなか戻ってこない犬が、最終的にあなたのもとに戻ってきたとする。その時の飼い主に見られる行為は、「犬を叱る」もしくは「褒めない」が多い。飼い主は「戻るのに時間がかかったから」という理由で犬を叱ったつもりでも、犬にとっては「呼ばれて戻ったら怒られた」と感じ、犬はそれ以降、気持ち良く戻ることをしなくなる。

 また同様のケースとして、「スピーク」と呼ばれる「吠える」トリックがある。しかし、それが深夜や庭などでトリーツ欲しさに吠えた場合、飼い主は「近所迷惑だから」と叱る行為をする。あなたが「吠えること」を教えるのであれば、「吠えることを止める」というトリックも教える必要があるはずなのだ。

 このように、「戻ってくる」「吠える」という本来求めている動作と何も変わらない犬の行動に対して、飼い主が一方で喜び、一方では叱るというダブルスタンダード(二重規範)を持ってしまうことは、犬を大変混乱させてしまう原因だといえる。

 本来は1つの行動結果、求められている行動に対して、犬を褒め「正解の行動だよ」と伝えるのが犬には分かりやすい。しかし私たち飼い主は、そこに「深夜」「住宅事情」などの状況や環境、そして「呼び続けたのになかなか戻ってこない」といった飼い主の感情によって、犬にダブルスタンダードを使ってしまうことが多いように思う。

 このようなダブルスタンダードや犬を混乱させやすい飼い主の行動は、さまざまな場面で見かけることができる。例えば......

  • ・犬の名前に「ちゃん」「くん」または「犬の名前を変えて」呼ぶ
  • ・飼い主の気分次第で、犬に赤ちゃん言葉を使って伝える
  • ・たくさんの人がいる公園だから、人前だから、といって「いつもと違う言い方、伝え方」をする
  • ・自宅では飼い主の食事の際、そのおこぼれを犬にあげるのに、カフェでそれを求める犬にはダメと叱るといった「違うマナーの適用」
  • ・犬が成功したその行動に対しての「撫でる」「褒める」など飼い主からの報酬が少ない。または「賞賛」に手を抜いてしまう

 など、挙げればどんどん出てくる。これら飼い主のダブルスタンダード、飼い主の一貫性のない行動を気がつかないうちに犬に対してやってしまっていることが多い。

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コマンドは1つ、教え方は無限

 今回取り上げた、初めの一歩やコマンド、犬への教え方などは、ドッグトレーナーやドッグスクールによってさまざまだ。むしろ、違って当然ともいえる。

 私が実際に経験したのは、ドッグクラブの「フセ」のコマンドは「ドロップ」と言って犬に指示を出すことになっていたが、既に私と愛犬は「ダウン」という言葉でフセを確立していた。またドッグクラブでの、棒を飛び越すコマンド「オーバー」という言葉は、私の愛犬にとってはシープハーディングで時計回りに移動することを指している。このようにコマンドが重複してしまう場合は、無理に周りの人たちに合わせる必要はなく、使い慣れたコマンドでその行動を強化すればよいだろう。

 犬との共通言語で大切なのは「1コマンドは、1つの動き」と飼い主が守ることだ。似たようなコマンド動作や、NoとGoのような似た響きの言葉を避けることで、犬も飼い主も理解しやすい共通言語を身につけることができる。そのために、飼い主は個々の犬の習得スピードに合わせること。根気をもって、ポジティブに、楽しみながらコツコツと続けることだ。「なぜできないんだ?」とがっかりするのではなく、「どうしたらできるのようになるんだろう?」「どうやったらそこに辿り着けるのか?」と、時には頭をひねり、成功しない時間すらも犬と楽しんでもらいたいと思う。飼い主はたくさん、犬を想い、犬を考える時間があってよいはずなのだ。

 犬という動物は、犬種という括りだけでなく、その犬の個体によって得意、不得意がある。また覚える早さも犬それぞれだ。それが、犬一頭一頭の個性といえる。犬は工場で生産された決まった性能のあるクルマや掃除機と違い、その能力は未知数であり、飼い主次第ともいえる。犬も飼い主も、苦手なことはゆっくりと時間をかけてステップアップし、得意なことは違う環境を織り交ぜて、犬の個性をさらに伸ばしてやってほしい。飼い主が犬と楽しみながら、一貫性のある行動と柔軟性のある考えで犬に伝えることをすれば、彼らは学習し続ける動物なのだ。

 ぜひ愛犬との一歩一歩を、毎日大事にして欲しい。

◎プロフィール

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五十嵐廣幸

オーストラリア在住。元dog actuallyライター。週末は愛犬と一緒にSheep Herding(羊追い)をして過ごす。サザンオールスターズ、クレイジーケンバンド、そして動物を愛す。犬との生活で一番大切にしているのは、犬が犬として生きるためのクオリティ・オブ・ライフ。

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