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2018.02.08

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オーストラリアの犬事情 vol.5

オーストラリアの動物病院事情

カンガルー、コアラ、ウォンバット、そして色鮮やかな鳥たち。それらオーストラリア固有の野生動物が怪我や病気をしたら、どの動物病院でも無料で治療をしてくれる。その優しさは私たち愛犬の診察でも感じることができる。今回は、そんなオーストラリアの獣医師、動物病院について触れてみよう。

#Lifestyle

Author :文・写真=五十嵐廣幸

地元密着のローカルVET

 私のかかりつけの動物病院は現在2カ所ある。一つはローカルVETとよばれる地元の動物病院だ。毎年の予防接種や、予想外に長引いている下痢、そしていつもと様子が違うという場合には、家から車で5分ほどの動物病院に予約をして診察を受けに行く。診察時間は平日は朝8時から夜7時、土曜日は朝9時から午後1時まで、日曜日は朝9時から昼の12時までとなっている。祝祭日は休診であるが、オーストラリアの動物病院は月曜日から日曜日という週7日の診療をしているところが多いようだ。また、日曜日は診察費用が休日料金になるが、それでも何か起こった時に大切な家族を診てもらえるのはありがたい。

 私がこの動物病院を気に入っているポイントは、

・自宅から近いこと
・診察が混み合っていたり、診察時間が終わる間際でも、犬の症状によって予約の合間に診察をしてくれるような融通を利かせてくれること
・比較的予約がとりやすいこと(常に混み合ってないこと)
・犬の診察に十分な時間を費やしてくれること
・担当獣医師が親身になって私の話を聞いてくれること。また獣医師からの説明が十分で納得ができること
・治療の選択肢を提示してくれること、また他の治療方法を得るために、ちがう動物病院を紹介するというセカンドオピニオンを持っていること

 これらが、私にとって、現在「安心して任せられる動物病院」といえる。また、私のような海外生活では、症状の説明、治療方法、薬のことなど全て英語でのやり取りになるわけだが、動物相手でも人間と同様に医療用語を使って説明される。例えば、小指は一般では the little finger や the pinkieという英語を使うが、医療用語ではfifth digitと言われる。つまり英語プラス、聞きなれない専門用語を理解しなければ、愛犬の症状や状態、治療方法を正しく把握できない。だから、獣医師と飼い主とのコミュニケーションがスムースであること、理解しづらい点でも、飼い主のわかりやすいように説明してくれることは、多くの飼い主にとって非常に大事なポイントであるだろう。

 この獣医師の説明能力の高さはがあるのは、6年制のオーストラリアの獣医学部で5年間、コミュニケーションテクニックを学ぶことが課せられるほど「コミュニケーション」は獣医師にとって大切な技術という認識だからだ。

 すべての患畜は人間の言葉をしゃべることができない。具体的にどこが痛いのか、その症状等を犬や猫に代わって我々飼い主に伝えてくれるのは、獣医師しかいない。また。その患畜の症状によって、これから必要な検査や高額になるかもしれない治療費の承諾等を飼い主に正確に伝えるためには、高いコミュニケーション能力が獣医師には求められるのだ。

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ローカルVETにいる新米猫と触れ合う

スペシャリストの存在

 地元の動物病院で治療を続けても、愛犬の症状が思うように改善しない場合や、飼い主が違う治療方法を望む場合などは、かかりつけのローカルVETからスペシャリストと呼ばれる「専門医」のいる動物病院を紹介してもらうことができる。その際には、ローカルVETで今までの治療内容のカルテやレントゲン写真などが専門医に転送される。飼い主は後日、この専門医に予約をとって受診にいくことになる。

 私の行く「スペシャリスト」は24時間診察の救急外来の動物病院でもある。そこには、MRIといった高価な医療機器だけでなく、フィジオセラピー、ハイドロセラピーの設備もあり、愛犬の手術後の運動の仕方、犬へのマッサージや、ストレッチといったリハビリもここで受けることができる。

 スペシャリストで手術や治療を受けた患畜の状況、治療経過や使った薬などの情報はすべて、紹介元の「ローカルVET」に送信される。またスペシャリストで受けた手術ではあるが、数週間後の抜糸ために、自宅からスペシャリストまで距離がある場合などは、かかりつけの動物病院で、抜糸や消毒を受けることもできるように連絡されている。

オーストラリアの獣医さんってどんな感じ?

 さて、私がオーストラリアの動物病院に通って興味深いと思ったことを、診察の流れに沿って書いてみようと思う。

【犬の体重は飼い主が計る】
 動物病院の受付で診察に来たことを告げると、「体重を計ってください」と言われる。受付の横に備え付けられている体重計に飼い主は犬を乗せて、その重さを伝える。私の犬はこの体重計にのるのが大好きである。もちろん最初は「なんでここに乗らないといけないのよ?」という感じで、体重計の上を歩いて渡ったり、乗ったと思ったら降りてしまったり、体重計の上で飛び上がったりもしていた。しかし、「体重計に乗ることを喜びにしてみよう」と動物病院に何度かお邪魔をさせてもらって、「体重計に乗る」という練習をしたのだ。

 体重計に乗ってお座りをし、その場で「マテ」を指示し出来たら、Good girl!!!とたくさん褒めてやる。もちろんこのやり方でなくても、ヒールポジションを利用しても犬を体重計に乗せる方法も可能だろう。

 日本の動物病院では診察台に体重計がついていて、犬を診察台にのせたらそこで何キロと表示されると聞いた時、「さすが日本はハイテクだなー」と思ったのだが、私は逆にこのオーストラリア式の「体重計に乗せる」という犬と飼い主とのやりとりできることが大事に思う。

【診察は床の上で】
 オーストラリアの多くの獣医師は犬を診察台にのせることなく、犬は診察室に入ったまま、床に足をつけた状態で診察、治療をすることが多い。

 これは、犬は怪我や病気、また動物病院という場所からすでに多くのストレスを抱えているにも関わらず、高い診察台にのせることは、余計に犬を怖がらせることであったり、診察台から飛び降りることも考えられる。だから、オーストラリアでの犬の診察は、患畜である犬も獣医さんも、飼い主がみんなで床にしゃがんだり、座り込んだりして、同じ目線で病気や怪我と向き合うのだ。

【白衣を着ない獣医師】
 私はオーストラリアの獣医師で「白衣」を着ている人をみたことがない。どちらかというと紺といった濃い色のユニフォームであったり、シャツにネクタイ姿のまま診察をしている姿を見かける。これは、小児科医師が白衣を着ることが少ない理由と同じで犬が「白衣姿を怖がるから」だという。

【獣医師が大好きな犬】
 動物病院では診察中や治療中、また爪を切られるなどの犬にとって「苦手なもの」がある時には、獣医師から乾燥レバーなどのトリーツがもらえる。多くの犬が目を輝かせて「はやくトリーツくれないかなぁ」とよだれを垂らしながら診察を受けていたりするのだ。ほとんどの犬たちが動物病院を怖がらない様子をみると、このトリーツの効果は相当たかい。

【傷ついた野生動物は動物病院へ】
 私は風の強い日には木から落ちてしまった野生のポッサムをよく動物病院に連れていく。ローカルVETの診察時間が終わっていれば、車で30分ほどの距離の24時間診療の動物病院につれていく。オーストラリア固有の野生動物の怪我や病気の治療は無料で動物病院が行ってくれる。また野生動物が多く見かけらる道路などには「傷ついた野生動物がいたら、こちらに電話ください」という標識をみることができる。ポッサムなどの小さい動物は発見者が動物病院につれていくことができるが、カンガルーやワラビーなど大型の動物は、地元のレンジャーと呼ばれる公立公園の管理人、警備員が傷ついた動物を運んでくれる。

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動物病院の床に置かれた体重計に乗る愛犬

あなたの求める獣医師は?

「私の犬でもこの症状なら専門医のS先生に診てもらうわ」私のローカルVETは私の愛犬の症状をみて、そう伝えてくれた。「正直であること」「まるで獣医師自身の愛犬のように患畜のことを考えてくれること」というのが私が獣医師に求める姿だ。もちろんそこにしっかりとした獣医師としての医療技術は必要であるが、患畜の回復にむけての最善なアドバイス、飼い主とのコミュニケーション能力、人間としての魅力や信頼感は獣医師に欠かせないと感じる。

 しかし、獣医師はスーパーマンではない。予約でいっぱいの診察や治療の日々もあるはずだ。患畜一頭にかけられる時間も永遠ではない。だから患畜である愛犬のため、そして獣医師に十分な情報を知ってもらうために、私たち飼い主自身が、できるだけ愛犬の症状や状態を「いつ、どこで、どんな風に起こり、どんな症状があったのか?また普段食べているドッグフードのブランドであったり、食欲、予防接種の日付け、体重の極端な増減などの愛犬にまつわる情報を知っておく必要がある。

 それらの情報は愛犬の健康の回復を早めることにもつながるはずだ。毎日愛犬と接している我々飼い主が愛犬の一番の"獣医さん"であると自覚してほしい。愛犬のココロとカラダの健康を作るのは私たち飼い主なのだ。

 では最後に読者のみなさんにお聞きしたい。あなたは獣医師に、動物病院に何を求めますか?どんな獣医師に愛犬を診察をしてもらいたい、治療してもらいたいのだろうか?

 下記の約束を守って、本記事のFacebook投稿コメント欄に、みなさんが獣医師・動物病院に求めることを記載いただけると嬉しい。
(*約束が守られていないコメントは削除させていただきます)

  • ・動物病院名、獣医師名などを書かないこと
  • ・動物病院や獣医師の苦情や批判などをしないこと
  • ・全てのコメントに対しての意見や反論などをしないこと

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◎プロフィール

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五十嵐廣幸

オーストラリア在住。元dog actuallyライター。週末は愛犬と一緒にSheep Herding(羊追い)をして過ごす。サザンオールスターズ、クレイジーケンバンド、そして動物を愛す。犬との生活で一番大切にしているのは、犬が犬として生きるためのクオリティ・オブ・ライフ。

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